18年目の逆転〜放たれたDL6・5の死神〜(第1話)
 僕は復讐する。父さんの無念を晴らすために・・  そして、12月28日の悪夢を忘れない。  僕はあの日から、悪魔に・・いや、死神になったんだ。  もう、誰も逃がさない。僕がこの手で必ず。  Chapter1 〜始動〜  第1部・レイジ  12月28日。私が父を失い。地震を恐れた日。  私はあの日、父の裁判を見るために裁判所へ行った。  「怜侍。見に来てくれたのか?」  「うん。もちろんだよ。」  「そうか・・。」  この日はとても幸せだった。今思えば、これがその後に起きる不幸の予言だったのかもしれない。  「どうしたの?父さん?険しい顔をして。」  「ん?そうか・・怜侍。」  父はメガネをかけなおすと、そのわけを話した。  「今回はな。相手の検事が手ごわいんだ。」  「手ごわい?」  手ごわい・・というよりも、卑怯とでも言うべきだったのだろうか?  「あぁ、有罪にするためなら証拠のでっち上げだってしてしまう。卑怯な検事が相手なんだ。」  父さんは、あの時から狩魔のやり方を嫌っていた。  「大丈夫なの?」   「大丈夫だ。父さんは、今日の法廷でその人のやり方を否定し、正義が必ず立証されることを証明して見せるさ。」  私はその時、父の顔を見て何を思ったのだろうか?  「さぁ、お前はそろそろ傍聴席に行くんだ。」  「分かった。」  私は父にそう言われ父のいる控え室を去った。その時だった。扉に1人の私を同じくらいの少年が立っていた。  「君・・弁護士さんの子供?」  真っ直ぐな目。それは父のような弁護士になりたいと思っていた私の目にそっくりだった。  「そう・・だけど・・?」  「僕の父さんを・・助けてくれるよね。君の父さんは・・。」  僕の父さん?そういえば、父が今回弁護するのは男性だった気がする。  「うん。大丈夫さ。父さんは言ってた。正義が必ず立証されるって。 君のお父さんが無罪なら、それをきっと父さんが証明してくれる。」  「・・・・・。」  彼は黙っていた。だが、しばらくすると蚊の鳴くような小さな声でこう一言。  「ありがとう・・。」  だが、結果は最悪なものとなった。    「確かに狩魔検事の証拠には不正がありました。しかし、それが被告の無実を決定的に立証するとも限りません!!」  裁判長の言ったこの一言は、弁護側や被告人の親類を初めとする人々に衝撃を与えた。  (そんな馬鹿な!?父さんは確かにあの検事の不正を立証したじゃないか!?)  父さんは必死だ。冷静なように見えて、実はじわじわと追い詰められているその様子は見るに耐えない。  「そ、そんな馬鹿な!!」  いつの間にか、形勢は逆転していたのだ。  「ふっ、当然なのだ。」  父さんのその言葉にそう答える検事。だが、検事も動揺している様子が良く分かる。恐らく、不正を指摘されたからだろう。  「とにかく、これ以上弁護側に異議がないのなら判決を言い渡します!」  裁判長のその言葉に、異議を申し立てようとした父さん。だが、無常にも判決は下ってしまった。  「有罪。」  その時だった。私の隣から声がした。  「嘘だ・・。」  その声に聞き覚えがあった。つい数時間前。聞いたその声は、今でもはっきりと覚えている。  「と、父さんは犯人なんかじゃない!!」  1人傍聴席から立ち上がった少年は、係官に連行されていく男性に向かって必死にそう叫んだ。  「係官!今すぐその子供を黙らせるのだ!」  検察側がシャキーン!と指をはじくと同時に、係官が私から3、4人ほど離れたところにいた少年の体を掴もうとする。  (あ、あれはさっきの!!)  私が父のいた控え室から出たときにいた少年だった。その少年に係官の手が伸びた時・・  「止めてくれ!!」  連行されていく男性がそう叫ぶ。  「大丈夫だ!父さんは必ず戻ってくるから・・」  泣いていた。なんて切ないのだろうか。  「父さん・・」  少年を掴もうとした係官の動きが止まると、男性は安心した様子で法廷を去っていった。  「うぅ・・父さん・・絶対に・・絶対に・・無罪を証明してみせるから・・」  私はその少年の目を一瞬だけだが見た。それに私は・・  「絶対に・・父さんをこんな目にあわせたヤツを・・許さない!!」  怯えたのだった。  (あ・・そうだ!!父さん!!)  その時私は、父のことを急に思い出した。父はそうとうショックを受けているようだ。急いで父のところに行かなければ! そう思い、傍聴席の扉に手をかけ、廊下に出ようとしたとき・・  「レイジ・・」  「!!」  誰かが私を呼んだ気がしたのは、今でもはっきりと憶えている。だが、 その記憶はしばらくの間、あの悪夢によって記憶の片隅に追いやられていた。  第2部・邪魔  8月18日 午後1時2分 拘置所・取調室  「おい!早く言うんだ!いつまでも手間を取らせるな!!」  「ワイは知らん言うてるやろが!!」  真夏の取調室。ワイは死刑判決を言い渡され、とっと死刑になる予定やった。 せやけど、ワイは意外なところで死刑を今延期させる方法を思いついた。  「くそっ!いつまでもとぼけやがって!!」  もうかれこれ1ヶ月か、やつらはワイからある情報を引き出そうとしている。  「やはり、彼から情報を得るしかないのかね?」  「えぇ、この死刑囚しか知りえないでしょう。」  取調室の外から2人の人物がそう話している。この取り調べ、警察の上層部から公安まで関わっているらしい。  「いいか、もう1度言おう、実は2ヶ月前から警察関係者が次々に殺されているんだ。」  ワイは再びこの話を聞く事になる。面倒だ。  「ほとんどは刑事は官僚なんだが、一部には公安の人間もいる。」  どうやら、ワイがこんなむさ苦しい独房にいる間、凄いことが起きてるらしいやないか。  「そしてだ、その被害者達には1つの共通点があったんだ。」  取り調べをしているヤツの顔を見ながら、ワイは面倒なので言ってやった。  「何度も聞いたわ。DL6号事件の捜査関係者とか何とかやろ?さすがにワイでも憶えるわ!!」  イラついて叫んでしまった。取調官は笑いながら言った。  「よく分かってるじゃないか、そうだ。DL6号事件の関係者だ。それとDL5号事件もだ。 何度も言うが、おかしいんだよ!18年前の事件の捜査関係者を狙える犯人がな!!」  叩きつけられた資料。被害者はみな銃殺らしい。しかも極めつけはなんや? えーっと、線条痕とやら同じらしい。 だから犯人は同一犯とか。  「そしてだ。当時の捜査関係者の資料は、特別保管庫というところにあって誰も見ることが出来ない! つまり、誰も18年前の事件の関係者を知ることが出来ないんだよ!1度のチャンスを除いてな!」  どうやら、ワイがこうやって取り調べを受けているのは、それが理由らしい。  「さぁ言え!お前、クリーニング・ボンバーを誰に売った!?」  「知らん。」  ワイはソッポを向く。  「とぼけるな!!今年の1月7日。署のデータベースにこのウイルスが流れてサーバーがダウンしたんだ! その時に同時にセキュリティシステムも解除されちまったんだ! その時に外部犯がデータを盗んだとしか考えられないんだよ!当時の関係者の!!」  だから、そこから犯人を特定しようと言うのだろう。だが、ワイも言えない。 そしたら死刑が執行される前に鹿羽組に殺されてしまうやさかい。                          ※    ※    ※  1年前 6月3日 午後9時36分 カリヨーゼ  ワイは事務所に帰った途端倒れこんだ。何故なら、事故を起こしたからだ。  だが、逃げている理由はそれだけではない。  「あ・・あれはあかん!鹿羽組の車やった・・見たことある・・あの車の後ろに乗っていたのは・・組長の孫娘や!!」  ワイは何度も頭を机に叩きつけた。このままじゃ、いずれ捕まる。  その時だった。扉を叩く音がした。  「おい!芝九蔵!出て来い!鹿羽組や!!そこにいるだろうが!!」   き、来てしまったやないか!!  「組長が外で待ってる!はよ来んかぁ!!」  なっ!?く、組長が!?ワイはここでとぼけるわけにも行かず、恐る恐る扉を開けた。  「ひえっ!!」  そこには、鹿羽組の幹部達がワイに向けて銃を構え取った。さらに、その幹部達の真ん中には、泣く子も黙る鹿羽組・組長。 鹿羽権太が、ワイの鼻先に日本刀の切っ先を当てていた。  「お前が・・芝九蔵虎ノ助だな?」  組長の顔はワイの首を今すぐにでも斬ってしまいそうな勢いやった。  ワイはその結果、とんでもない落とし前をつけなければならなくなった。  1億円。これが払えなかったら・・ワイは死ぬ。  11月3日 午後12時3分 鹿羽組・組長の部屋    「毎度毎度すまんな。わが組のために・・。今回も闇金融の一斉摘発の時期がわかったから事前に対策が出来た。」  組長は私に向かって礼を言っている。  「いえいえ、組長。資金源が減ることほど困ることはないでしょう。」  「まぁ・・そうだがな。」  組長は笑いながら俺に言う。  「しかし、お前さんのように警察関係者の人間がいると本当に助かるよ。恩に着る。」  「いえいえ・・。」  警察関係者ねぇ・・確かにそうだが。つまり、鹿羽組が警察の目をかいくぐりながら勢力を伸ばせるのは俺が原因というわけだ。  「それより組長。気になる話を聞くのですが?」  「何だ?いつも世話になっている。話を聞こうじゃないか。」  ふふ・・やはり人望は必要だよな。俺は組長の傍に近づくとそっと言う。  「芝九蔵虎ノ助が、1億円を必要としているとか?」  「あぁ・・虎ノ助か。」  組長から話を聞いた俺は思った。これは使えると。  (こいつを上手く使えば、やっと計画準備が整うな。)  俺は組長に礼を言うと鹿羽組を去った。周りの幹部からいろいろともてなしを受ける。どうやら俺は、実質ナンバー2らしいな。  (あとは、鹿羽組配下の金融業者から出資を断れたメンバーリストから、こいつをカリヨーゼに連れて行けば・・)  俺はリストのある人物に赤印をつけた。そこにいた奴の名は、“岡高夫”だ。  11月3日 午後1時10分 カリヨーゼ  「つまり、ワイに1億円を準備できる可能性があると?」  「そうだ。こいつにお前の会社から出資をしてやるといい。」  岡高夫のリストを見せる俺。  「心配はいらねぇ。俺が岡高夫がここに来るように仕向けてやる。」  「せやけど、こいつに返済能力は?」  それがポイントなんだよ。  「ねぇな。」  「なんやと!?」  芝九蔵が俺を殴ろうとする。いい度胸してるじゃねぇか。仕方ない、俺は自分の立場を分からせてやるためにある行動に出る。  「やぁ、うらみちゃん。おじいちゃんは元気かい?」  その言葉を聞いたうらみちゃんは俺に笑顔・・だと思うが答えた。  「えぇ、ヒガ様。とってもお元気です・・ククッ。」  「なにぃ!?」  そのやり取りを聞いていた芝九蔵の動きが止まる。俺は説明をしてやった。その途端、あの男は態度を変えた。  「そ・・そ、そ、そ、そ・・それはすまんことをして申し訳ないことを・・」  支離滅裂だ。まぁ、俺に手を出したら鹿羽組が黙っちゃいないことは分かったみたいだ。  「それでだ。続きに戻るがな。こいつに返済能力がないのに金を貸す理由は1つだ。」  「そ、それは・・?」  これが達成できれば俺の目標に1歩近づくわけだ。  「コンピューターウイルスを担保で作らせるんだ。彼の腕なら凄いのができる。そいつを担保としてもらい、売りさばけ。 裏の世界じゃ数億円で売れる。釣りが来るぜ。命が助かる上にな。」  だが、この男用心深いようだ。考え込みながら言う。  「せやけど、誰がそんな大金で買うか証拠がなぁ・・。」  仕方ない。俺は言ってやった。  「俺が買う。3億でだ。」  「んな!?」  一応これでも、鹿羽組から報酬を貰っているんでね。だが、この男はまだ応じない。  「せやけどな。アンタが本当に3億払うかは・・」  「これだ。」  俺は大きなスーツケーツらしきものをテーブルの上に置く。そして開く。  「こ・・これは!?」  「3億円だ。こいつで俺が買ってやる。いいか?」  芝九蔵はゴクリを唾を飲み込むと言った。  「いいやろう。アンタを信じようないか。」  「そうか・・よかった。」  契約成立だ。  「じゃあ、あと1つだけ言っておく。」  俺は忘れずに釘を刺しておく。  「俺のことを警察に言うなよ。もし言ったら、組長に殺されるぜ。」  脅し・・とでも言おうか。だが、確かに言ったら殺されるのは事実だぜ。  12月3日 午後9時2分 カリヨーゼ  「ほほぅ・・ついに手に入れたか。こいつを・・。」  「そうや、苦労して手に入れたんや。だからヒガさん、お約束のものを・・」  なるほどね。だから人まで殺したわけか。岡高夫がウエイトレスに毒殺されたと聞いたが、どうせこいつが殺したんだろうよ。 まぁ、命は誰も大切だからな。  「まぁ慌てるな。こいつだ。ほら。」  俺は3億円入りのスーツケースを渡した。そして、CD-ROMを手にすると言った。  「あんたもこれでもうちょっと夢を見たいだろう?コピーしたヤツを後で送ってやる。 俺のことはアンタが仮に警察に捕まったとしても絶対に言うなよ。」  だが、やつは涙を流しながら札に頬擦りをしている。  「おおきに・・おおきに・・」  馬鹿なヤツだよ。自分の命のためにこうも簡単に利用されるとはな。                          ※    ※    ※  同日 午後3時30分 拘置所・入口  「結局今日も何もなしでしたね。」  「そうだな。」  数人の警察関係者が拘置所を後にする。  「何とか口を割らせる方法はないものか?」  公安の人間が言った。もはや、犯人を特定できる近道はやつしかいない。  「催眠術を使ってみますか?」  すると、1人の捜査員が言った。最近、警察もいろいろと取り調べにも試行を凝らしている。  「なるほど。それはいいですね。」  「だったら、明日芝九蔵を警察署に連れて行きましょう。そこでじっくりと聞き出そうじゃないですか。」  話はどんどん進んでいく。  (おいおい・・冗談じゃないぜ。それじゃあばれちまうじゃないか!!)  俺は、この“DL6・DL5事件捜査関係者連続殺害事件”の捜査本部に出入りしていたため、 その辺の情報を簡単に入手できる立場にいた。現に今、こうやって一緒に取り調べに参加していた。  (どうやら、明日までに芝九蔵を消す必要があるな・・)  どうせ死刑囚の刑の執行が早まっただけだ。文句はないだろう。  翌日。芝九蔵虎ノ助は何者かの手によって、拘置所を出たところを狙撃された。  ちょうど警察署で、催眠術を使った取り調べを行うために、拘置所から連行されている時だった。  弾丸は芝九蔵の頭を貫通しており、ほぼ即死だった。  彼は死ぬ間際に遠くを見ながらこう呟いたという。“アイツや”と。  第3部・再会  12月2日 午後12時4分 警察署・刑事課  私・御剣怜侍はわけあって警察署に来ていた。  帰国早々事件を担当し、その後書類整理などで用があったからだ。  「御剣検事!用意が出来たッス!」  「すまないな。糸鋸刑事。」  コーヒーを飲んでいた手を休めると、私は糸鋸刑事から書類を受け取る。それにしてもだ。何だか今日は騒がしい気がする。  「糸鋸刑事。」  「何ッスか?」  私は刑事たちが慌しく出入りしている様子を見ながら尋ねる。  「忙しいみたいだが、何か事件があったのか?」  よく見ると、所轄署の刑事に混じって本庁の人間もいるように見える。いや、もっとよく見ると公安らしき人間もいる。  「実はッスね。色々と言いにくいッスが、今回とんでもない事件が起きてるッス。」  糸鋸刑事は私の隣の椅子に座ると、密かに話した。  「検事殿は、今警察関係者連続殺害事件が起きているのはご存知ッスか?」  警察関係者が?そう言えば、新聞記事などで見たような気がするが。  「あぁ、知っているといえば知っている。6月から騒がれていたな。」  「そうッス。最初の事件は6月に発生したッス。」  そこで不自然だが会話が止まった。  「それだけなのか?」  「うっ・・それはッスね・・。」  ただの殺人事件じゃないからこうやって、本庁や公安がいると思うのだが・・。  「誰もいないッスかね?」  糸鋸刑事はあたりを静かに確認する。そしていないことを確認すると耳元でささやく。  「実は、今回の被害者にはある共通点があったッス。」  「共通点?」  実に興味深い話だ。確かにこの事件。公安の人間や本庁の官僚も殺害されていると聞いた。 そんな人物に共通点。一体何なのだろうか?  「共通点・・といったな?差し支えないなら聞かせてもらいたいが。」  糸鋸刑事は少し戸惑うが、長年の関係だけある。私にだけはという理由で話しくれることになった。  「実はこれまた驚きなんスが、その被害者達はみな、18年前のDL6号事件とDL5号事件の関係者なんスよ。」  私はそれ聞いた時、思わず目を大きく見開いた。  「な、何だと!?」  思わず持っていた紙コップを落としそうになった。その時だった。    『緊急連絡です。警察関係者連続殺害事件の捜査員は、今すぐ2階、第1会議室に集まってください。』  警察署内に響く放送アナウンス。  「また事件か?」  「そうみたいッスね。」  そう言うと糸鋸刑事は立ち上がる。  「ん?糸鋸刑事も捜査員なのか?」  私はふと疑問に思った。  「えぇ、実は今月から担当になったッス。捜査員をさらに増やすという理由でッスがね。」  「そうなのか。」  どうやら、この事件はかなり大きいもののようだ。  「おい!そこの刑事!会議室に集まれという放送が聞こえなかったのか!?」  とここで、刑事課の外から男性の声がした。しかもこっちにやってくる。  「あっ!すいませんッス!今行くところッス!」  糸鋸刑事はその男に礼をする。男は私と同じくらいの年齢でスーツを着ている。  「君、そこに座っている彼は捜査員じゃないのか?」  男は私に指を指すとそう尋ねてきた。  「あっ!こちらは捜査員じゃなく検事殿ッス!!」  「検事・・だと!?」  相変わらずこの刑事は説明ベタだ。だからいつも弁護士にやられるのだ。  「挨拶が遅れました。私は検事局の者で、御剣怜侍を申します。」  「御剣・・・・怜・・侍?」  この男はその言葉を聞くや否や、明らかに怪訝そうな顔をした。  「どうかしましたか?」  私は一応気を使って尋ねた。  「ん?あぁ・・大丈夫です。こちらこそ挨拶が遅れてしまって申し訳ない。」  そう言うと彼は軽く自己紹介をする。  「私は本庁から来ました。東山恭平(ひがしやまきょうへい)と言います。」  本庁か・・しかも見た感じキャリア組っぽいな。  「東山管理官は優秀な人間として本庁では有名らしいッス。」  糸鋸刑事が私の耳元でそっと言ってくれた。なるほど。やはりキャリアか。  「さて、君。そろそろ行こうか。新たな被害者が出たらしい。」  「なんスと!?」  東山管理官は糸鋸刑事にそう言うと刑事課から去ろうとする。  (なるほど。新たな被害者が出たから騒がしかったのか。)  そう私が納得している時だった。東山管理官が私に向かってこう言った。  「御剣検事さん。今度の被害者・・一応あなただから言っておきますが、検事です。」  検事・・!?その言葉を理解するのに数秒はかかった。  「何ですって!?」  よく分からないが、これはつまり・・検事も犯人の殺害対象だったということなのか? 私はその言葉を聞いた直後から、妙な感じがしてたまらなかった。  だが、その妙な感じは実際・・私に向けられたある人物の視線のせいであるということを、私はまだ気づかなかった。  御剣怜侍・・まさかここで再会するとはな。  まぁ、もうちょっと待てよ。あともう少しで、楽しいショーが始まるから。  Chapter1 end  ・・・It continues to chapter 2

あとがき

さて、“Q.E.D.〜逆転の証明〜”が序章なら、ここからが本章の麒麟です。 本章はメチャクチャ逆裁色が強いです。シリーズ関係のネタが多いですし。 どの辺が序章と関わりをもつのかもお楽しみに。と言っておきましょう。 さて、このお話で初挑戦することは1つ。御剣です。それと全3部構成。 まぁ、基本的には1部ずつが短くなるでしょうが。自分のことです。 徐々に回が増すごとに長くなったらゴメンです。 では、この話の解説を少し。 Chapter1 〜始動〜 言うまでもなく、事件の始まりを表しています。冒頭が微妙です。 第1部・レイジ タイトルの意味。それは最後でもわかるでしょうが、この名を叫んだ人がいることです。どういう意味でしょう。 第2部・邪魔 文字通り彼が邪魔なのです。しかし、DL6号関係なのにコイツが出る。微妙ですね。 第3部・再会 御剣と彼の再会。と言えば分かるかな。だいたい誰と再会したのかは分かるかと思います。 今後はこの2人中心に話が進んでいく予定です。 そんなわけで以上です。

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