18年目の逆転〜放たれたDL6・5の死神〜(第6話)
 法廷・・そこは神聖なる裁きの庭。  誰もその裁きの庭からは逃げられない。  しかし、時としてこの庭の力から逃げ出すことも不可能ではない。  それを可能とした者たちはいくらでもいるからだ。  では、何故逃げ出すことが出来たのか?それは簡単・・  法廷に潜む魔物が牙をむいたからだ。だからこそ、裁きの庭は恐ろしい。  Chapter 6 〜法廷に潜む魔物〜  第1部・起訴  同日 午後12時59分 警察署・第1会議室  「東山恭平管理官。先ほど、鑑識からの正式な報告が出ました。」  手錠をかけられた状態で会議室に連行されていた管理官。たくさんの捜査員達が彼を見ている。  「狩魔冥殺害未遂に使われた弾丸。線条痕が一連のものと一致しました。」  糸鋸刑事も見守っている。管理官は手錠をつけられた状態で、一番前のいつもの管理官席に座っている。  「そして、あなたの所持していた銃の発砲テストをしたところ、線条痕が一致しました。」  管理官の横でそう言っているのは、本庁の捜査員だ。  「さらに、あなたの所持していたコートから硝煙反応が出ました。間違いなく、あなたはその銃を使用した。」  御剣も会議室の一番奥でずっと見守っている。  「よって、捜査本部はあなたを一連の事件の犯人だと断定しました。逮捕状も先ほどに出ました。 東山管理官。あなたをDL6・5号関係者連続殺害事件の犯人として、逮捕します。」  捜査本部内でざわめきが起こる。  「そして、あなたの身柄は只今より、簡単な取調べを行った後・・検察へと送らせていただきます。」  そう言うと、本庁の捜査員2人が、管理官を連行する。  (管理官・・ついに終わったな。)    同日 午後1時21分 検事局・局長室  「局長。無理を言って申し訳ないが、この事件・・私に担当させてください。」  局長室での会話。長い長い沈黙が場を支配する。  「この事件は非常に大きいものだ。それなりに、この事件を担当する検事は優秀なものでないといけない。」  局長は静かにそう言った。  「だから、私にお願います!この事件、私の身内も被害を受けているのです! だから、どうか私の手で彼を裁かせていただきたい!!」  この事件・・私自身の手で決着をつける。私は固くそう誓っていた。  「事件に自分の私情を持ち込むのはもってのほかだ。だが・・」  局長はゆっくりと書類を取り出すと、そこにボールペンでいろいろと書き出した。  「いいだろう。この事件・・キミを担当検事に任命しよう。」  そう言って渡された書類。私が担当検事になったことを現すものだった。  「か、感謝します!!」  これで私は、剣を手に入れた。  同日 午後1時43分 検事局・上級執務室1202号室  遂に、送検されてきた管理官が私の部屋にきた。  「やはり・・私の担当はあなたでしたか。御剣検事。」  「ウム・・そういうことだ。」  逮捕され、送検されてきたというのにその態度は、いまだ管理官の威厳を保っているようにも見える。  「とりあえず、簡単に取調べでも行うことにしようではないか。管理官。」  「そうですね。」  執務室でのにらみ合い。1歩も引かぬ状態だ。  「そえではまず、あなたは警察の取り調べを受けて送検されてきましたね。」  私の担当事務官が、ゆっくりと説明をはじめた。まず、これを始めないと取調べは始まらない。 あとでこれがなかったことを指摘されては、違法の取調べと判断され、すべての取り調べによる証拠が、無効化されてしまうからだ。  「ここでは検事が、調書を元に改めて取り調べて犯罪の事実確認と、序審制度をもとに起訴するかどうかを判断します。」  「知ってるさ。」  管理官は静かにそう言った。だが、事務官は続ける。  「ちなみに、警察からも言われているでしょうが・・あなたには黙秘権と弁護人を選任する権利が保証されています。以上です。」  これがまぁ、取調べを行う上で言わなくてはならない諸注意だ。  「まぁ・・そう長ったらしく言ったところで、私を起訴する気は変わらないのでしょう?御剣さん?」  「そういうことだ。」  東山管理官は、私の部屋にあったチェスの駒をいじりだした。  「あなたは戦略を立てるのが上手い人間だ。検事という職業柄・・」  左手でしきりに駒を動かしている。  「しかし私も、管理官という職業柄。人を使うのは上手くてね・・きっと私もあなたも、 戦場では兵士達に指示をするだけの人間でしょう。そう・・」  駒をそのまま左手の人差し指で弾く。駒は周りの駒までもを巻き込んでいき倒れる。  「私たちは、この盤上で踊る駒たちを、笑いながら見ている指揮官に過ぎない。」  「何が言いたいのだ?」  だが、管理官はまだ笑いながら盤上を見て、その質問に答える気はないようだ。  「今、この盤上の駒を操っているのは、果たしてあなたか?それとも私か?」  そうして、体を私のほう向き直すと、最後に一言・・。  「そして、この盤上で踊らされている駒は・・果たして私か?それともあなたか?」  管理官は軽くため息をつくと言った。  「聞いてあげましょう。あなたの質問。」  明らかな挑戦・・しかし、ここで挑発に乗ってはいけない。  「単刀直入に言おう。私はあなたを起訴するつもりでいる。しかしだ、その起訴に関連して、いくつかの事を聞きたい。」  幸い証拠はいくつも揃っている。これだけあれば管理官の罪を立証するのは難しくないだろう。だが・・  「名松池の事件についてだが、これもあなたがやったことか?」  名松池・・唯一線条痕が違った事件。だから、捜査本部は一連とは関係ないと断定した事件だった。  「それはどうでしょうか?分かりませんね。」  黙秘権・・とも違うが、管理官は証言を拒否した。  「しかし、名松池の事件の被害者・・黒安公太郎は、あなたの父が有罪になったDL5号事件の最初の有力容疑者だった。」  「そうですね。」  そこを否定するつもりはないらしい。まぁ、当然だろう。  「殺害する動機としては十分なはずだ。父親の復讐として・・」  「そうかもしれませんね。」  この言葉・・どう見るべきか?これ次第では名松池の事件については起訴するかどうかが微妙になってくる。 だが、警察としては名松池については一連の事件とは見ていないらしく、その件では送検していない。 こっちの指示で捜査のしなおしをさせることは可能だが・・  「まぁ、その事件は一連の事件とは少し違っている。起訴するかどうかはあなた次第ですよ。 もう捜査本部は、身柄を拘留している検察・・そう、あなたに指揮権が移っている。」  管理官の言葉・・非常に微妙だ。しかし、ここで惑わされるのもどうだろうか? ここは一応あの事件に関しては起訴しない方針が無難かもしれない。そのほうが、裁判のときに不利にならなくて済む可能性が高い。  「まぁ・・いいだろう。とりあえず、時間をかけてゆっくりと検討させていただく。明日の昼までには結果が出るだろう。」  「そうですか。」  とりあえず、取調べはこれで終わらせることにする私。とにかく・・この1日くらいゆっくりと考えせてほしいものだ。    同日 某時刻 堀田クリニック  またここに来るとはな・・。  冥が運ばれた病院にきた私はそう思った。  「御剣!こっちだこっち。」  成歩堂が病室の前で呼んでいる。私はゆっくりと向かった。  「冥の容態は?」  「大丈夫。思っているよりは悪くはないみたいだ。」  「そうか・・。」  私は少し安心した。そういえば・・真宵君が見当たらないが。  「成歩堂。真宵君はどうした?」  「あぁ、真宵ちゃんなら春美ちゃんの所に行っているよ。」  「春美君か・・。」   そう言えば、彼女はまだ意識が回復していないと言っていたな。  「まぁさ、そんなことより早く行ってあげなよ。狩魔検事のところに。」  成歩堂はそう言うと、私を冥のところへと連れて行く。  「れ・・レイジ?」  ベットに横たわっていた冥は、私の姿にいち早く気づいた。  「め・・メイ・・」  私はなんといって言いか分からず、しどろもどろな状態になってしまう。  「犯人は、捕まったのかしら?」  冥は私のそんな様子を見ながら尋ねてくる。ひょっとしたら、あの時私が冥に言った台詞を覚えていたのかもしれない。  「あぁ・・何とか捕まえた。」  「そう・・。」  何だか会話が続かない。何故なのだろうか?  「やっぱり、あなたが裁判を担当するのかしら?」  「あぁ。そうだ。」  口数少ない会話。いつ途切れてもおかしくない会話だ。  「だったら、こんなところで油を売っていてもいいの?」  「?」  私は一瞬、冥の言った言葉の意味が分からなかった。  「だから、私に会う以外にもしなくてはいけないことがあるんじゃなくて?」  私はこれで、やっと冥の言いたいことが理解できた。  「しっ、しかしだな・・。」  「いいからとっとと捜査へ行けぇっ!!」  ヒュ・・バシッ!!!!!!  「ぬおっ!?」  私に向かって情け容赦ない鞭が飛んできた。  「しかし・・やはりメイのことが・・」  「いいから行けぇっ!!!!!!    バシッ!!!!バシッ!!!!!  「ぬおっ!!わ、分かった!分かった!」  私はそう言うとすぐさま病室から出る・・というか逃げる。危うく鞭のフルコースを食らうところだった。  「御剣・・何してたんだ?」  病室の外で会話を聞いていたのであろう成歩堂は、不思議そうな顔をしている。  「見ての通りだ。」  私は顔にヒットした鞭の跡を見せた。赤く腫れている。  「そういうことだ。引き続き冥を頼む。」  「そうか・・。」  「それじゃあ、私は検事局に戻るからな。」  私はそのまま病院を後にする。  「あ、ちょっと待って!!御剣!!」  とここで、成歩堂は私を呼び止めた。  「何だ?」  「これ・・」  と言って、手渡されて物は・・  「フリルか。」  フリルだった。そう言えば、今の私はそれを身に付けていないことに気づく。  「これさ、狩魔検事が急いで洗って乾燥機で乾かせって言うんだ。 だからさ、鞭に打たれながら近くのコインランドリーで洗濯してきたよ。」  なるほどな。素直じゃない奴だ。  「ありがとう。冥にもそう伝えてくれ。」  私はそう言うと、今度こそ病院を去った。  12月26日 午前10時11分 検事局・上級執務室1202号室  「だいぶ・・証拠品が集まってきたな。」  警察の捜査で集まった証拠品を見ながら私は考える。  「これだけあれば・・起訴は可能か。」  だが、以前不安要素も残っている。動機だ。彼がDL5号事件に対して動機を持つのは分かる。 しかし、DL6号事件に関してはその動機が見当たらない。  「管理官の自宅の家宅捜査。見つかったのものはほとんどなしか・・。 強いて言えば、パソコン内から“クリーニング・ボンバー”のデータが発見・・」  これはこれで有力な証拠にはなる気がする。しかし、実際は分からない。  「目撃証言があれば話が早い。しかし・・生存者は皆意識不明の重体。冥に至っては狙撃のため犯人は見えていない。」  それに、問題はそれだけではない。  「あの日・・管理官を狙撃した人間は誰なのだ?」  ただ、問題は多いが、起訴するだけの証拠もあるといえばある。起訴は不可能ではない。 しかし、これらの点を裁判で突付かれると痛い。                               ♪♪♪  とここで、携帯が鳴り出した。  「ム・・糸鋸刑事からか。」  私は電話に出る。  「もしもし・・どうしたのだ?」  『やったッス!!検事!!ついにやったッス!!』  電話の向こうの刑事は、とてもはしゃいでいる。  「どうした!?何かあったのか!?」  『そ・・それが!検事・・驚いて欲しいッス!嬉しいニュースッス!!』  私はその嬉しいニュースとやらに耳を傾ける。そして・・  「でかしたぞ!糸鋸刑事!これで起訴ができる!!よくやった!!」  ついに・・ついに・・運は我々に味方した。  同日 午後12時18分 検事局・上級執務室1202号室  「管理官。あなたの起訴が決まりました。」  「そうですか・・。」  管理官を呼んでそれを告げる私。  「決定的な証拠が出ました。まず、名松池の事件。目撃者が見つかりました。」  「ほほう。」  さらに、それだけではない。  「そして、星影氏の事件。星影氏が意識を取り戻したのだ。」  管理官はその言葉を聞いて黙っている。  「それに、あなたに不利な証拠もぞくぞく出ている。それが起訴の理由だ。詳しいことは明日の法廷で分かるだろう。」  管理官はくだらない・・と言った表情でチェスの駒をまたいじる。  「裁判・・明日に決まったのですか?」  「そうだ。」  すると管理官は、チェスの駒を宙に放り投げるとこう言った。  「いいでしょう。私も頼りになる弁護士を雇って、徹底的に抗戦しようじゃありませんか。」  落ちてきた駒を左手でキャッチする管理官。駒を盤上に戻すと、自らの髪をはらう仕草をした。  「言っときますが、あなたが相手ならそれ相応の弁護士を雇わせていただきます。」  前髪の間からかすかに見える隠れた管理官の目が、今まで以上に凶悪な目だった。私は思わず身震いした。 そしてまた、何故か軽い既視感を憶える。  「それでは、これで失礼しますよ。」  管理官は自ら立ち上がる。最後に、盤上にあったチェスの駒を1つ掴むと、去り際に言った。  「あなたは、死神の力を信じますか?」  「しに・・がみだと!?」  振り向いた管理官の目。前髪に隠れているが・・そこからかすかに見える。それはまさに、死神。  「私は、そんな非現実的なことは信じない。」  きっぱりと言い返す。しかし、管理官は言った。  「いつか、自分が否定した言葉に苦しむ日も来る。」  そして、口元を歪めながら最後に・・  「死は見かけによらず、惨くもないし苦しくもない。死神はそれを知っている。」  「な・・何だと!?」  そう言って管理官は部屋から出て行った。  同日 某時刻 留置所・面会室  「そういうわけだ。」  面会室で俺は話していた。この国に弁護士を選任する権利があって助かったぜ。  「すべては、あなたの無罪のため。」  「そういうことだな。」  あとは任せたぜ。法廷じゃ、俺は何も出来ねぇ。  「心配は要らない。私は13歳で弁護士になってから無敗。その実力を信じるがいい。」  「あぁ、信じてるぜ。だからよぉ・・頼んだぜ」  俺の目の前にいる男。そいつこそが、完全無敗、伝説の弁護士・・  「ツイン弁護士さんよぉ・・」    第2部・ツイン  12月27日 午前10時 地方裁判所・第1法廷  傍聴人でごった返している本法廷。どうやら今回の法廷。世間では相当な関心を呼んでいるらしく。 抽選会が行われるほどのものだったらしい。まぁ、犯人が今まで、捜査の指揮をしていた管理官ならなおさらだろう。  「静粛に!静粛に!」  傍聴人達の声で、いつもの裁判長もいつ現れたのか分からないくらいだ。  「静粛に!静粛に!静粛に!審理が開始される前からこのようであれば、傍聴人全員に退廷を命じますぞ!!」  その言葉で、やっと静まり返った本法廷。  「ふぅ・・やっと静かになりましたな。それでは、只今より、東山恭平の法廷を開廷いたします。」  やっと、審理が始まった本法廷。  「弁護側・検察側ともに、準備はよろしいですかな?」  「検察側。準備完了している。」  私はその問いに普通に答えた。一方、私の向かい側に居る男は・・  「準備・・そんな簡単な動作も出来ない人間が、この神聖なる法廷に入り込むくらい・・ここの司法制度は廃れてるのか?」  いきなり私たちにそう尋ねてきた。  「?」  私は意味が分からない。  「?」  裁判長もあっけに取られている。  「みんなで黙りん子か?面白くないな・・この国は。」  (だ・・黙りん子・・!?)  彼のセンスに衝撃を感じる。  「そ、そんなことより・・弁護側は準備のほうは?」  裁判長は改めて尋ねた。  「勿論・・完了している。でないと、私は腹を切って死んでやってもいい。」  「!!!!!!!!?」   裁判長は、何故かその言葉に衝撃を受ける。しかし・・この男。気になるところがかなりある。例えば・・  「そ、それよりあなた!その仮面は何ですか!?法廷内で!!」  裁判長は弁護席に立っている男の、仮面姿を見てそう叫んでいる。  「愚問・・私を知らないのか?裁判長?」  「なっ!ぐ、愚問・・!!」  さっきからやられぱっなしの裁判長。だが、私はこの男・・見たことがある。  「貴様・・ツイン弁護士だな?」  私は軽く奴に指を指しながらそう尋ねた。  「ほぉ・・私を知っている人間がいたか。光栄だね。」  やつはそう言う、しかし・・その表情は分からない。何故なら、大きな仮面を顔につけているからだ。 ゴドー検事とは違う、いろんな意味での完全な仮面。  「一応、この国じゃ初法廷だ。自己紹介でもしておこうじゃないか。」  そう言うと奴は、髪をはらいながら言った。  「自由の国・アメリカで13歳で弁護士になり、以来負け知らず。」  そんな前置きはいらないのだが・・  「そう、私こそがあの有名な、仮面弁護士ツイン!!」  法廷が違う意味で騒がしくなる。  「私が目指すものはいつだって被告人の完全無罪!日々冤罪に苦しむ人々を救うのを日課としている。」  私は呆れるしかなかった。  「おおっ!そう言えば思い出しましたぞ!あなたはアメリカで、狩魔検事を破ったということで、一時有名になっていましたな。」  裁判長は、どこから聞いたのかは知らないが、その情報を思い出したらしい。  「へぇ・・一応知ってるのか。だが、あれは最低の検事だったな。」  「!?」  ツイン弁護士の態度が、少しだが変わった。  「あいつは鞭なんぞ持っている。それだけでダメな人間だ。しかも・・あの狩魔の娘と聞く。あれは悪魔だな。」  「待った!!」  私はたまらず待った!をかけた。  「ツイン弁護士!貴様・・何が言いたいのか知らぬが、この神聖なる裁きの庭で、侮辱をすることは・・」  「そう言うあんたも、狩魔の弟子だろ?」  「!?」  明らかに相手はふざけた仮面男だ。それなのに、その仮面からは威圧感を感じる。  「自分の師をかばう言動にしか聞こえない。そんな感情・・この法廷では切り捨てないと生きていけない。」  「ぐっ・・」  この男、何故だか知らないが、私・・いや、狩魔に対する何かを抱いている。  「静粛に!静粛に!もうよろしい!!」  裁判長が木槌を叩いて、この場を静める。  「ツイン弁護士も発言を慎むように!法廷侮辱罪を適応しますぞ!」  「侮辱罪か・・」  しばらくの間、何かを考えているようだったが、ツイン弁護士は言った。  「いいだろう。従ってやる。」  従ってやる・・随分と態度がでかい男だ。  「それより、ツイン弁護士・・その仮面は?」  「ん?これか?」  裁判長はツイン弁護士の、その仮面に興味津々なようだ。  「これは、幼い頃火災に遭遇して・・顔を酷く火傷してしまった。皮膚移植をした今でも、醜い顔さ。 それを隠すためにこの仮面をつけている。」  仮面はどう見ても、仮面舞踏会などで人がつけるようなデザインだ。  「もはやこれは、私のもう1つの顔。勘弁して欲しい。」  ツイン弁護士・・その生い立ちも気になる存在と言えよう。  「いいでしょう。そういうことならその仮面を許可します。」  裁判長はそう言うと、次に私の顔を見た。  「では、御剣検事。冒頭弁論をお願います。」  「了解した。」  私は資料を持ち上げると冒頭弁論を始める。  「被告人・東山恭平は、DL6および、DL5号事件の関係者を、次々と殺害した罪に問われている。 その殺害方法は銃殺などと残忍で、許せざるえない。しかも、被告人は警視庁の管理官。 本来そのようなことを防ぐ立場にいる人間なのだ。その人間が、このような犯行を重ねさらに、 その事件の捜査本部で指揮を行っている。こんなふざけたことがあっていいのだろうか!?」  私は法廷中に問い掛けた。まわりかな深い同意の声が聞こえてくる。  「よって、検察側は被告人を、現在確認できているだけでも26件の殺人。 及び5件の殺人未遂について、完璧に罪を立証するだろう。」  私は冒頭弁論を終えて資料を机に置いた。22件の殺人と5件の未遂。普通なら死刑確定の罪状だ。  「よく分かりました。」  裁判長は頷くと、次に反対側のあの弁護士を見る。  「ところで弁護側。」  「何だ?」  ツイン弁護士は笑っていた。唯一見える彼の顔のパーツ・・口でそれが分かった。  「あなたは弁護側の主張として、“完全無罪”を主張していますが、それでよろしいのですかな?」  (なにっ!?完全無罪だと!?)  この状況で完全無罪を主張する。かなり無茶な話だ。  「私は検察側の話を聞くに、完全無罪と言うのは限りなく難しい主張だと考えます。 それでも、完全無罪という主張は変えませんか?」  その問いに、ツイン弁護士はやれやれと言った様子だ。  「いいか?裁判長。私は目指すものはいつだって完全無罪。それに変わりはない。この被告人は無実だ。」  その発言に法廷内がまたも騒がしくなる。  「静粛に!静粛に!」  木槌がそれを制した。  「分かりました。それでは、検察側は最初の証人を呼んでください。」  「いいだろう。」  私はそう言うと、証人の出廷を係官に促す。  「楽しみだな・・御剣怜侍。」  「!?」  ツイン弁護士は静かに言う。  「心配すんな。アンタの辿る道・・しっかりと見届けさせてもらう。狩魔冥と同じ、敗北という名の道のな。」  その言葉は、恐ろしいほど私の胸の中に響いた。  第3部・手段  「それでは証人。名前と職業を。」  証言台に立っているのは糸鋸刑事。いつも通り変わらない姿だ。  「ハッ!自分は糸鋸圭介ッス!所轄署の刑事ッス!」  はきはきとした口調。変わらぬ自信。多少不安になる。  「それでは証人。まずは事件の経緯について証言をお願いします。」  「了解ッス!」  ここまでは予定通り。さて、あとは打ち合わせ通りの証言をしてくれればいいだけだ。 そんな御剣の思惑が、成功すればいいのだが・・。  「事件は今年の6月中旬頃から発生したッス。」  この言葉からすべてが始まる。  「最初の犠牲者は警視庁公安部の部長・裏山信二(うらやましんじ)だったッス。 自宅付近で何物かに心臓を銃で撃たれて即死だったッス。 それから、2週間おきくらいに警察関係者が殺されだしたッス。 みな、本庁の幹部や長官、それに公安などと大物ばかりッス。」  膨大な被害者の資料・・読むのでさえうんざりとしそうなものだ。  「そして我々は、7月下旬に被害者が、みな“DL5号・DL6号事件”の当時の捜査員・・ しかも、かなりの上の人間だったということが発覚したッス。」  そう、それがこの事件の大きな特徴だ。  「さらに12月。被害者はDL5号事件の当時の検事と裁判官も殺害されたッス。 すべての事件は線条痕が一致。同一犯だったというのが我々の見解ッス。」  とここで、刑事が一度証言を止める。私の指示どおりだ。  「ふむぅ・・この事件の経緯はよく分かりました。」  裁判長は深く頷く。  「裁判長。検察側はこれらの資料を証拠として提出する。」  「分かりました。受理しましょう。」  <一連の被害者のデータ>  被害者のほとんどは警察の幹部クラス。6月下旬から被告の逮捕まで事件は続いた。  <弾丸>  一連の被害者達の体内および、現場で見つかった線条痕は一致。  「それでは弁護人。尋問をお願いします。」  裁判長の要請を受けたツイン弁護士。ただこう一言。  「分かった。」  ツイン弁護士は笑っていた。  「真実とは驚きにみちていているのを見せてやろう。」  「!?」  嫌な予感を残しながら尋問が始まる。  「それで刑事。ライフリングマーク(線条痕)が一致しているから、一連の犯行は皆被告人の仕業だと?」  「そ、そうッスけど。」  ツインはその仮面の奥から見える鋭い眼差しで指摘する。  「だったら、何故凶器が提出されていないのです?問題の銃自体が?」  「・・うっ!そ、それはッスね。」  法廷内がにわかに騒がしくなる。  「確かに、凶器の銃が提出されていないのはおかしなことです。御剣検事。凶器を提出してください。」  「ム・・わ、分かった。」  <ピストル>  ベレッタM92Fと言う名の銃。ほとんどの弾丸の線条痕と一致。被告の所持品。  私は半ば無理やり銃を提出させられた。  (う・・この件については厄介なのだ。次の証言でじっくりと注意を促した後、提出させる気だったのだが・・)  向かい側で微笑しているツインを見ながら御剣は思う。  (この男・・既にこちらの作戦を見切っているのか?)  作戦が見切られる・・となれば、いきなり状況は苦しいものとなる。  「ベレッタか・・よくアメリカでは警官が腰に下げているもんだ。」  資料を見ながらそう言うツインは、さらにゆさぶりを続ける。  「それで、こいつは被告人が持っていたと?」  「そうッス!被告人が持っていたッス!」  刑事は自信満々に言う。  「まぁいいさ。それより、今回の被害者は皆警察関係者だってな。」  「そうッス。DL6・5事件の当時の捜査員ッス。」  そう、そこは自信を持って言っても構わない。が、ここでその男は動き出す。  「異議あり!この国じゃ、“犯罪識別ナンバー”がつけられた事件は相当なヤバイ事件と言う。 そして、その捜査員たちのデータは厳重なセキュリティで管理されたデータベースに保管されてるらしいじゃないか。」  ツインは少しずつ、微妙な点を突付いてくる。  「いくら被告が管理官とは言え、そんな情報を入手する手段はない!」  「異議あり!立派な異議だ・・と言いたいところだが、ツイン弁護士。そうはいかないのだ。」  私は彼を嘲るようにして笑いながら、例の資料を取り出す。  「今年の1月7日。署のデータベースにコンピューターウイルス“クリーニング・ボンバー”が侵入している。」  その言葉を聞いた裁判長。首をかしげる。  「検察側、コンピューターウイルスとは?」  「ム・・まぁ、コンピューターのプログラムを破壊するデータのことだ。」  「そ、そのコンピューターとは?」  「・・・・・・・。(話の無駄だ。)」  ツイン弁護士も呆れている。  「この国の司法制度は廃れている。」  裁判長は自然と黙ってしまった。それもある意味情けない。  「それでだ。これを使って被告人は、警察関係者を調べだしたと思われる。裁判長、その資料を提出しよう。」  <クリーニング・ボンバーのデータ>  被告の自宅のパソコンにあった。これで警察のコンピューターに侵入したと思われる。  「それにしても、貴様もまだまだだな、ツイン弁護士。」  さらなる確実な証拠。これで相手側も絶対絶命。そう思っていた・・だが。  「甘いのはどっちだ?自惚れるな。」  「なっ・・何だと!?」  ツイン弁護士は、逆に捕まえたと言う顔をしている。  「この自宅パソコンのデータがある。ということは、家宅捜索をしたんだな?警察は?」  「そ、そうッスけど・・。」  糸鋸刑事はすこし慌てている。がしかし、何を企んでいるのかが分からない。  「それがどうかしましたか?弁護人?」  裁判長も分かっていない。  「裁判長。弁護側は要求する・・その家宅捜索の報告書を!!」  「ほ、報告書ですか!?」  報告書・・こいつの狙い。何なのだ?  「報告書がダメなら、そこの刑事の証言でもいい。その結果の証言を要求する。」  何故だ?何故そんなものを要求する!?  「弁護人。何故その結果を知りたがるのだ?」  「簡単なことですよ。御剣検事・・あなた方の捜査に違法性がなかったか?それを知りたいだけだ。」  ツイン弁護士は済ました顔をして言う。  「い、違法性だと!?」  「そうです。明らかに法に背いた捜査によって得た証拠は、証拠としての能力を持たない。だから、それをはっきりとさせたい。」  確かに、こいつの言うことも最もだ。  「そうですね。分かりました。弁護側の主張を認めます。証人!家宅捜索についての結果を証言するように。」  「え・・!!け、結果ッスか!?」  糸鋸刑事は慌てている。そりゃそうだろう。  (この主張・・何かそれ以外にも目的があるような気がするが・・)  しかし、裁判長が許可した以上それはもう断れない。糸鋸刑事は少し考えながら証言をする。  「うーん・・そうッスね。被告の自宅を家宅捜索した結果。クリーニング・ボンバーのデータ以外は見つからなかったッス。」  「異議あり!」  そう証言した瞬間。やつの鋭い異議が発せられた。  「裁判長。只今の発言は被告が犯人だと言う証拠が見つからなかったと言う証言に等しい。」  「ど、どういうことですかな?」  マズイ・・何かがマズイ。  「簡単なことだ。ここに、一連の事件の資料がある。そこの12月13日に見つかった死体についての事件を見て欲しい。」  「!?」  それを聞いた瞬間。やつの家宅捜索の結果の本当の意図に気づいた。  「ここには名松池で見つかった銃殺死体についてが書かれている。」  「そうですな。確かにそう書かれています。」  マズイ。これは非常にまずい。  「つまり、検察側はこの事件でも被告を起訴している。が、この事件には決定的に違う点がある。」 「ち、違う点とは!?」  ここまで言われれば、私にも奴が主張したいことはわかる。  「違う点。それは、ライフリングマークが一連のものとは違うことだ。」  「・・!!な、何ですと!?」  ツイン弁護士は笑っていた。  「さぁ、検察側。お聞きしよう・・そのもう1つのライフリングマークが見つかった弾丸。そいつはどの銃から撃たれたのか!?」  「なにっ!?」  法廷内がざわめきだす。確かに、これはやられた。  「確かに!御剣検事・・もう1つの線条痕が見つかったこの弾丸。こいつが撃たれた銃はあるのですか!?」  「そ・・それはだな・・(う・・こっちがそれを言う前に指摘するとは・・)」  おかげでこちらの計画が台無しだ。かなり筋書きを狂わされてしまう。  「正直に言ったらどうだい?なかったと・・家宅捜索ではそんなものが発見されたと言ってないのだからなぁ!!」  「う・・うおおおおおおっ!!!!」  しまった・・今のは逃げ道を封じさせるための手段だったか・・。  「静粛に!静粛に!検察側!発見されなかったのですか!?その問題のもう1つの銃は!」  「ウム・・た、確かに発見されなかった。しかしだ、被告人がそれをどこかに処分した可能性も否定はできない!」  バン!と机を叩いて反論する。だが、  「異議あり!しかしだなぁ、これまで同じ銃を使用してきた犯人が、何故ここで違う銃を使うのだろうか? それは簡単・・被告人はこの名松池に事件においては無実なんだ!!」  ツイン弁護士の主張は的確だ。かなり正確なところをついてくる。  「確かに弁護側の言う通りです!どう考えても、被告は名松池の事件の犯人とは考えにくい!」  「異議あり!裁判長!少し待っていただきたい!」  私は急いで待ったをかけた。  「検察側は確かにこの事件においては不自然なところが多いと考えている。しかし!それでも犯人は被告としか考えられない!」  私は急いで次のカードを切り返す。  「何故なら!名松池の事件では目撃者がいるのだからな!!」  さらに法廷内が騒がしくなる。  「静粛に!静粛に!そ、それは本当ですか!?検察側!?」  裁判長はその目撃者の話に食いついてくる。  「事実だ。その目撃者は、はっきりと名松池で1ヶ月ほど前。遺体で見つかった黒安公太郎を撃つ被告を見ている!!」  どうだ・・これでひっくり返ったぞ・・。私はそう思った。  「検察側。その目撃者を本法廷に証人として出廷する用意は?」  「無論、出来ている。」  さぁ、これで再び状況は良いほうへ流れてくるはずだ。裁判長は木槌を叩くと係官に言う。  「よろしい。係官!その目撃者を証人として出廷させなさい!」  裁判長のその要請を受け、係官が動いた時だった。  「異議あり!」  どこからともなく異議があがった。それは係官の動きを止める。  (い、今の異議は・・)  私は向かい側に居る男を見た。そう、異議を唱える人間はあいつしかいない。  「な、何ですか・・ツイン弁護士!?」  裁判長は目を大きく見開きながらそう尋ねる。今の異議の意味が分からないと言ったところだろう。  「私が異議を唱える理由。簡単なことだ・・そんな証人を呼ぶ意味はない。」  「な、何ですと!?」  証人を呼ぶ意味がない。全く持って何を言い出す気だ?  「異議あり!証人を呼ぶ意味がない!?貴様にそんなことを言う権利はない!」  「異議あり!しかし、それで事件の真相が明かされると言うのかい?」  「な、何だと!?」  ツイン弁護士は語りだした。  「確かにその証人を呼べば、事件は解決したように感じるかもしれない。だが、それでも事件は終わらない。 あくまでふりだしに戻るだけだ。次の私の異議によってな。」  (あ、あくまで振り出しに!?)  私を含めた者たちはその意味が分からない。だが、奴は静かに言った。  「だったら、その次に唱える異議を今唱え、さっさと議論をしてしまおうと言うことだ。」  そう言うと奴は資料を取り出した。  「12月23日。綾里春美という少女が撃たれている。まぁ、彼女の事件については 例外が多すぎるので言いたいことは山ほどあるが、今はこれだけを言っておく。時間だ。」  「じ、時間・・ですか?」  時間・・まさか・・  「あああああああああああああああああっ!!!!!!!!」  「ど、どうしました!?御剣検事!?」  だが、今の私には裁判長の言葉が耳に入るほどの余裕はない。  (い、一番考えたくなかった事実だ。)  それに対して奴は笑っている。  「彼は気づいたようですね。裁判長・・事件が発生した時間を見て欲しい。 ここには、事件は午後3時30分から午後4時の間に発生したと書かれている。」  「そ、そうですね。確かに・・ですが、それがこの事件といかなる関係を?」  裁判長にそれを教えようとするツイン。それを私が止めることは不可能・・ だが、これは違った意味で波紋を呼ぶこと間違いなしだ。  「簡単なことです。その時間。被告人は捜査本部で捜査会議をしていた。」  「な、何ですって!?」  傍聴人達がその奇怪な事実に気づく。  「これは多数の捜査員たちが証言している。彼は午後3時から4時の間のアリバイがあるのです。」  そして最後に、右手をゆっくりと私のほうに伸ばす。奴は言った。  「彼のアリバイが成立しているとはどういうことか!?」  傍聴人達が一斉に騒ぎ出した。  「た、確かに・・この事件においては被告人のアリバイは成立しています!どういうことですか!?検察側!?」  「そ、それはだな・・」  さらにツイン弁護士はこの事態に拍車をかける。  「それはこの証言台に立っている刑事も一番よく知っているはず!さぁ、説明を頼もうか!!」  「うぐっ!!」  説明・・不可能ではない。しかし・・ここで霊媒を持ち込むのにはかなりの抵抗がある。 ここは違う形で立証を行いたい。なんとしても!!  「それはだな・・線条痕が一致したからだ!つまり、使用された銃は管理官しか持っていなかったからだ!!」  「異議あり!その銃を被告が持っていたから・・だからと言って、捜査本部から事件現場。 そんな離れたところにワープでもして犯行をしたと主張するのか!?」  「う・・うおおおおおおおおおおおおっ!!!!!!!」  法廷内はうるさい・・しかし、これだけの騒ぎになったのも仕方がないと言えば仕方がないことだ。  「静粛に!静粛に!弁護側の言う通りです。これだと、被告人は無罪としか考えられない!!」  「異議あり!だったら、誰が綾里春美を撃ったのか!?それが弁護人に主張できると言うのか!?」  しかし、奴は至って冷静だった。   「その主張。この国の司法制度が廃れている原因だろうよ。」  「何だと!?」  彼は机を叩くとこう言った。  「いいか?弁護側は真犯人まであげる必要はない!あくまで被告人の無罪が確実に立証できればそれでいい。 実際な、被告が無罪であると分かったら、それは警察・検察の捜査ミス。真犯人を挙げるのはアンタ達が本来やるべきことなのさ!!」  さらに彼はまくし立てる。  「そんな警察みたいな捜査を、警察みたいな権限が与えられていない弁護士が、捜査することなど不可能じゃないのか!? 少なくとも・・それはアンタたちの義務なのさ!!」  「そ・・そんな馬鹿なっ!!!!!!!」  か、完全にやられた。私は叫ぶしかなかった。  「静粛に!静粛に!確かに弁護人の主張するとおりです!被告が犯人でないということが分かれば、 これ以上の追及の余地はない!!」  裁判長が決定を下す。だが、これで引き下がれるわけがない!  「異議あり!この銃は常に被告人が携帯していたのものだ!線条痕は人の指紋と同じく、この世に2つも存在しない! だったら、どうして綾里春美は“ベレッタM92F”から発射された弾丸で撃たれると言うのだ!?」  「な、なにっ!?」  ツイン弁護士が1歩後ずさりする。  「確かに、アリバイが成立していると言う奇妙さもある。しかし、綾里春美を撃った弾の線条痕が一致する以上、 撃った人間も被告人しかありえない!!」  「う・・ぐおおおおおおっ!!!!」  法廷内は静まらない。今度はツイン弁護士が雄叫びを上げる。  「静粛に!静粛に!確かに、検察側の言うことも最もです。」  裁判長はこの意見にも同意する。  「異議あり!だったらな、検察側はどうやって犯行時。捜査本部にいた被告が綾里春美を撃ったのか!? 説明できるっていうのか!?」  「異議あり!それは貴様も同じことだろう!!だったら弁護側は、捜査本部にいた被告が持っていた銃が、 どうやって綾里春美を撃ったのか!?説明できるというのか!?」  互いに指を突きつけあって1歩も譲らない。まるで・・どっちが真実なのか分からない。  「はっ!何を言うかと思えば・・弁護側はだ、その被告が持っていた銃を、何者かが盗み、 それで犯行を行った後、被告のところに戻したんだと主張する!」  しかし、ツイン弁護士はどこまでも的確すぎる答えを用意している。  「た、確かに、それなら話に筋は通ります。」  裁判長は考え込む。だが、それだったら1つの矛盾がある。  「異議あり!携帯していた銃を抜き取るなど、ほとんど不可能ではないか! そもそも犯行時、貴様が主張しているアリバイは捜査会議をしている時だ。一 番前の席で指揮官として座っている被告の銃を抜き取るなど、そんな行為をしたら見つかるに決まっている!!」  「っっ・・!!」  それに、ツイン弁護士の主張にはまだ穴がある。  「それにだ、もしその時抜き取ったのなら、抜き取った人間は捜査会議に参加していたことになる。 そいつが会議を抜け出し犯行現場で犯行・・地理的に不可能だ!!所轄署から倉院の里までは2時間以上だ!!」  木槌が法廷内に響き渡る。  「検察側の主張は最もです。」  だが、そんな主張も崩れ去る。  「異議あり!携帯しているからと言って、常に腰にぶら下げているとは限らない!車の中に置いていたのだろう。 それを何者かが盗んだんだよ!!」  「異議あり!鍵の問題はどうなる!?」  「そんなもの、抜き取ったんだろう!」  「異議あり!先ほど銃の抜き取りが不可能と言ったばかりだ!鍵も一緒だ!」  激しい応酬、裁判長はただ迫力に押され黙って見ている。  「異議あり!だったら、ピッキングでもして鍵をこじ開けたんだろうよ!痕跡が残らないようにな!」  「異議あり!それならば、駐車場の監視カメラが見ているはずだ!どのみち監視カメラが以上を捕らえていない以上、 車から盗ったのもありえない!そう・・」  私は真っ向から否定する。  「何者かが銃を奪った可能性もないのだ!!」  「っっ・・!!」  木槌が再び鳴り響く。  「静粛に!静粛に!互いに主張は良く分かりました!しかし、それだと1つの疑問がやはり残ります! どうやって問題の銃を使用して綾里春美さんを被告が撃ったのか?銃は間違いなく被告のものですが、 それを持っていた被告が捜査本部にいた。これは不可思議としか言いようがありません!」  法廷内は相変わらずうるさい。まるで・・これは人間の仕業ではないかのような事件だ。  「・・・・・・・・・仕方ない。」  「!?」   とここで、ツイン弁護士がふと呟く。  「何が仕方ないのですか?ツイン弁護士?」  裁判長もその言葉に疑問を感じている。  「実はだ。私が被告人を無実だと信じている理由は2つある。」  「何!?」  ツイン弁護士はゆっくりと弁護席を、右に・・左に・・移動しながら語る。  「1つは、彼が無罪だと自分の事を主張していたからだ。しかし、もう1つあった。」  「?」  私はそのもう1つに違和感を覚える。何か、何か嫌な予感がする。  「そのもう1つとは?」  裁判長も気になってたまらない。ツイン弁護士は、被告席の東山管理官のところへ向かうと、こう言った。  「もう1つとは、もし彼の殺害方法が本当なら、それに罪はないからだ。」  「なっ・・つ、罪がないだとぉっ!?」  私は思わず叫んだ。そんな馬鹿な!  「弁護側は正気か!?この世界には、何でもやって許される犯罪はないのだぞ!!」  私は顔を真っ赤にしてツイン弁護士に指を指す。だが、彼はその冷たい仮面をこちらにむけると、これまた冷たく言い放った。  「そうだ。たった1つを除いてな・・御剣検事。」  そして次の瞬間、法廷中に向けてこう叫ぶ。  「だからこそ、弁護側は信じたくなかったが、最後の手段を使わせてもらう!! 彼を・・東山恭平を!!証人として召喚する!!!!」  この言葉、それはまさに・・爆弾。  投げ込まれた言葉は、瞬く間に広がっていく。  (ど、どういうことなのだ!?この世に裁かれない殺人があるというのか!?)  まさにそれは、法廷に潜む魔物が私に・・牙をむく瞬間だった。  Chapter6 end  ・・・It continues to chapter 7

あとがき

 さて、Chapter6は法廷に潜む魔物。  逆裁3でそんな表現があったような・・うろ覚えです。  ちなみにこの章は、牙をむく瞬間です。確実に魔物は御剣を狙っています。  第1部・起訴。まぁ、言うまでもなく起訴するまでの流れです。個人的にはここに出てくる冥が好きだなぁ。 冥好きな人。これで勘弁してください(謎  そして、管理官の去り際の一言。彼は一体何を企んでいるのでしょうか?  第2部・ツイン。さぁ、ついに謎ばかりだったこの弁護士が姿を現しました。 しょっぱなからぶっ飛んでます。そう言えば、弁護士が新たな対戦相手っていうのは斬新だなぁ・・と感じたり。 結構強そうな彼の、初登場な話でした。  第3部・手段。このタイトルの意味は沢山あります。謎に包まれた殺害手段とか、 ツイン弁護士が最後に言っていた最後の手段とか。とにかく手段が謎なんですね。  一体次回、どんな事実が発覚するのか!?そんな感じで終わった第3部です。  いやぁ、ついに初法廷。   逆裁は弁護士が、はっきりと依頼人が無実だって分かってるところから始まって、 それを有罪にしようとする検事と戦うのがメインですよね。  今回自分はそれの、逆バージョンに挑戦しました。  検事がはっきりとこいつは有罪だと分かってるところから始まって、それを無罪にしようとする弁護士と戦う。  まぁ、実際彼が無罪なのか?は別として、だったら登場するのは当然最強弁護士だろう。 ってなかたちでツイン弁護士は生まれました。  完全な逆裁・検事バージョンかな?そんなわけで、法廷にも知能戦が入ってくるお話でした。

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