18年目の逆転〜放たれたDL6・5の死神〜(第14話)
 「あ、懐かしい資料だなぁ・・これ。」  「ん?どうしたの?」    年末で仕事納めが近づく今日この頃。最も、ここに仕事納めがあるのかが謎だが。    「あー、こいつか。これは僕が弁護士になって初めて担当した裁判だったな。」  「そうそう、染毬戊遺跡訴訟事件。そんなのもありましたね。」    何の変哲もない会話。    「確か、この事件で僕たちは出会ったんだよな。懐かしいなぁ。」  「何言ってんですか!私にとってはまだまだ最近の話ですよ!」  「最近ねぇ・・でもその頃は、学生だったろ?」  「まぁ、そうでしたけど。」  資料棚の前で、当時のファイルを懐かしい顔で見ている2人。  「そういえば、この事件の時さ。僕を見ていると何か思い出すって言わなかったっけ?」  「・・・・本当に、そういう無駄なことだけは憶えてますね。」   「確か、家族の事じゃなかった?家族って言えば、半年前にちょっと触れたけどさ。」  男は何か考え込んでしまう。  「そういえば、家族の事ってあまり聞いたことなかったなぁ。」  「まぁ、私が今まで言った覚えがないから、多分言ってないんでしょうけどね。」  「半年前に、家族については少し触れたけど・・」  「あれ以前のことは話した事ないですもんね。」  もう、外の景色は真っ暗である。  「あれ以前・・って?」  「だから、あの事件が起きる前の事ですよ。まぁ、私自身も記憶が幼い頃だったから・・あんまり覚えていないんですけど。」  「まぁ、今日はもう遅いからなぁ。今度聞こうかな?それは。」  「そうですね。」  夜の10時半を回った時計。確かにもう遅い。  ・・プルルルルルルルル  「あ、電話だ。ちょっと待ってて!戸締りお願い!」  「分かりました。」  慌しく動く2人。1人は電話へ・・もう1人は戸締りに。  (家族か、はっきりしないけど1つだけ・・ある記憶があるんだよなぁ。とっても温かい。)  今はない家族の温もり。  その温もりを取り戻すことは出来ないのに・・どうして彼らは復讐をしたのか?  それはきっと、空っぽな心を満足させるためだったのかもしれない。  気休めにしかすぎない・・哀しい現実しか待っていなかったのに。  Chapter 14 〜死神の体と人間の心〜  第1部・21桁  同日 午後4時45分 マンション・地下駐車場  「これは、どこかの住所がメモしてあるッスねぇ。」  車の鍵を業者に開けてもらった糸鋸は、1人車内の捜索を行っていた。  「これは・・どこかのマンションッスか?」  そしてここで、1つの興味深いメモを見つけた。  「ひょっとしたら・・これは真宵君の監禁場所ッスか?」  限りなく、それに近づいているのは確かだろう。  「となれば、こうしちゃいられないッス!御剣検事に連絡しなければ!」  糸鋸は仲間から持たされた携帯を取り出す。署の事務課から借りたものだ。  「・・え?何で電源が切れてるッスか!?」  しかし、つくづく運が悪い男だ。電池切れを起こしている。さらに・・  「あ、あれ!?こ、故障ッスか!?そ、そんな!弁償なんてとても・・」  携帯を持っていない彼は、電池切れに気づくことができなかった。なんと哀れなのだろう。  同日 午後4時43分 警察署・第4会議室  「それでは、我々はあの兄弟の母親の行方を調べてみます!」  「よし、分かった!」  捜査員たちが一斉に動き出す。御剣が出した結論・・それが母親の調査。あの兄弟については、 DL5号事件で有罪判決を受けた父親にしか注目をしていなかった。  (よく考えてみれば、父親のほうに目を向かせておいて、母親に対してはノーマークだったのは盲点だった。 これもあの2人の罠・・?)  しかし、そう考える暇すら事件は与えなかった。ここで1人の捜査員が、血相を変えて会議室へ入ってくる。  「た、大変です!こ、殺されました!!」  「!?」  捜査員が早々に言った一言。これが捜査本部に新たな激震を走らせる。  「はぁ・・はぁ・・神風国斗が、入り口で・・エントランスで撃たれました!!」  捜査員の顔が強張っていく。理由は考えるまでもない。最後の関係者が殺されたのだ。 あの事件に関わった本庁の捜査員の生き残りが。  「おい!誰に撃たれたんだ!?神風は!?」  捜査員がまさか・・と言った表情で尋ねる。その撃った人間が問題なのだ。  「御剣検事・・撃った人間はあいつだ。どっちかは分からんが、東山だった!」  「そ、その声は・・小城伊勢刑事!?」  捜査員の後ろからゆっくりと現れた小城伊勢。顔は真っ青だ。  「目撃したのだろうか?神風が撃たれた現場を。」  「あぁ、しかも目の前で撃たれたよ・・正直震えが止まらんかったがね。」  小城伊勢は今も悪夢を見ているような表情だ。  「一体どうなってるんだ!?奴らは逮捕されたはずじゃ・・!!」  逮捕・・それに意味がないのなら。  「とにかく、答えはあとで見つかることだろう。今は、ある謎を解かなくてはならない。」  御剣は頭を抱えた。この事件に待ち受けている結末とは一体・・。                               ♪♪♪  とここで、御剣の携帯がなる。着信は・・公衆電話だ。  「もしもし、御剣だが・・」  『検事!見つけたッスよ!!ついに手がかりを!!』  電話口から聞こえる濁声・・これはまさしく、あの男である。  「その声は、糸鋸刑事か!?」  御剣は電話口の糸鋸の声を聞いた瞬間。ある手がかりが見つかったことを知る。  「見つけた・・ということは、真宵君監禁の手がかりを見つけたのだな!?」  『そうッス!!管理官の車から、監禁場所にしていると思われる貸しビルの住所のメモが見つかったッス!』  その言葉を聞いた御剣、ついに新たな手がかりを掴んだ気がした。  「そうか・・分かった!すぐに私も急行しよう!糸鋸刑事!住所を私にも教えてくれ!」  『了解ッス!!』  御剣はその例の貸しビルの住所をメモし始める。  「御剣検事・・。」  メモをとっている御剣の姿を見る小城伊勢、その視線は妙に不安げだ。  「よし、メモができた。今すぐ私も捜査員たちを連れてそこへ急行する!糸鋸刑事は先に現場へと向かってくれ!」  『分かったッス!では検事、現場で!』  そう言って電話を切った糸鋸・・もしくは公衆電話の期限が切れたかだが。  「今からある貸しビルへと向かう!そこはおそらく、東山兄弟が行方不明になっている綾里真宵を 監禁していた可能性のある場所だ。何人か一緒に来てくれ!」  御剣の要請で捜査員の何名かが頷いた。  「よし、では行くぞ!」  御剣は会議室の扉に手をかける。  「御剣検事!!いや・・・・御剣くん!!」  が、それを小城伊勢がとめた。その目は先ほどからずっと不安そうだ。  「どうしました?小城伊勢刑事?」  「・・御剣くん。彼は、現場を立ち去る前にこう言った。」  扉に手をかけたままの御剣、その御剣に背を向けた状態で立っている小城伊勢。  「・・何と?」  「・・・・“あとは、アンタに取り憑くだけ”・・とだ。」  御剣はその言葉を聞いた時、体が震えた。  (まったく・・何と恐ろしい奴だ。あいつは。)  だが、この瞬間疑惑は確信へと変わった。どうやら今回の事件を理解するには、 御剣自身が否定し続けてきた“ある事実”を認めざる得ないようだ。  「今回の事件・・確かに彼らは死神だった。その確信を得ました。」  あとは、その決定的な証拠。しかし、この場合本当に、法律的処罰は意味をなさない。  「残りは直ちに、神風捜査員殺害の現場検証へ。あと、何人かはここに残って連絡を待つのだ。」  御剣は扉に相変わらず手をかけた状態で指示を出す。  「御剣くん・・。」  「小城伊勢刑事。」  御剣は扉をゆっくりと開く。  「確かに彼らには私を殺害する動機がある。それは法廷でもはっきりした。」  そうなのだ、つまりこの一連の事件で最後に殺されるのは・・  「最後の標的は紛れもなく・・私だろう。」  だからこそ、決着はつけなくてはならない。  「この事件最後の謎・・そして決着。それをつけるのは私自身だ。」  御剣はそのまま会議室をあとにした。  同日 午後5時1分 某所・貸しビル7階フロア  住所どおりの貸しビルへ到着した御剣たち。  「検事!到着ご苦労様ッス!!」  「ご苦労だったな、糸鋸刑事。」  メモに記されていたこの貸しビル。東山恭平のメモに残されていたのは、ここの貸しビルの7階フロアだった。  「しかし、ここは署から比較的近いのだな。」  窓から景色を眺める御剣。そこからは捜査本部のある警察署が見える。  「そうッスね、ここから署までは10分もあれば十分に間に合う距離だと思うッス。」  捜査員たちがせわしくなく現場を調べている。  「盲点だな、警察署から見える位置に存在していた建物とは・・。」  窓から冬独特の乾いた風が入る。御剣の着ていたコートが舞う。  「イトノコっ!御剣検事殿!むこうのほうに興味深いものがっ!!」  窓から外の様子を眺めている御剣、その横で御剣を眺めていた糸鋸。その2人に1人の捜査員があることを告げる。  「何かあったッスか!?」  「えぇ!とにかくこちらへ!」  捜査員の顔から、何か重要なものを見つけたのだろうということは伺えた。  「これです!この個室!」  「個室・・だと?」  部屋の通路を抜けて辿り着いたある小部屋。  「・・こ、これはっ!!」  御剣はその光景に唖然とした。  「これは・・どう見ても明らかに・・監禁された形跡があるではないかっ!!」  1辺が2メートルほどの小部屋。天井には小さな電球が1つ備え付けられている。  「この部屋の扉は電子ロック式で、部屋に似合わないほどの厳重なシロモノです。」  捜査員が電子ロックの暗証番号入力版を指しながら言う。  「しかもこの部屋・・食料が入っているリュックがあるッス!おにぎり・パン・サンドイッチ・リンゴ・ バナナ・お菓子・お茶・水・ジュース!まさに夢のリュックサックッス!」  糸鋸はリュックの中身を漁りながらはしゃいでいる。  「君、ここに今すぐ鑑識を!」  「はっ!」  捜査員はそのままどこかへ走り去っていく。  「監視カメラか・・。」  天井を見上げるとそこには、1台の監視カメラが設置されている。  「しかもこのリュック・・カップラーメンも入ってたみたいッス!ここにバッチシ食われた形跡が残っているッス!!」  糸鋸がカラになったカップラーメンのカップを、残念そうに見つめている。  「カップラーメン?刑事・・少し見せてくれ。」  御剣はカップラーメンのパッケージに目をやった。  「味噌ラーメン・・。」  問題のカップラーメンは“カッポレラーメン”。朝から晩までテレビで《ハッと見りゃカッポレ!》と、 連呼している有名なカップ麺だ。  「他には未使用のオムツもあるッスねぇ・・。」  糸鋸は夢のリュックサックを漁っている・・食料でも探しているのだろうか?  「糸鋸刑事。証拠品だ・・食べ物を勝手に私物化しないようにすることだ。」  「・・・・!!!!」  コートのポケットに詰め込んでいたパンやらリンゴやらが、今の言葉で床に虚しく落ちた。 糸鋸はそれを物欲しそうに眺めていた。  「他には何か・・?糸鋸刑事?」   「な、何ッスか?」  未だにそれらの食べ物を見つめている糸鋸に、御剣は天井を指して尋ねた。  「あれは、何だろうか?」  「あれ・・ッスか?」  天井の電球横にある、“丸い何か”。  「よくデパートとかで見るッスね、アナウンスで声とかが聞こえるあれッスよ。きっと。」  「アナウンス・・?」  ということは、この小部屋にはそれを通じて何かを伝えていたのだろうか?  「この部屋・・間違いなく監禁場所だろうな。」  御剣は部屋中を見渡す。他に何か手がかりはないのか?と。  「御剣検事!あちらのほうにモニタールームがあります!」  ここで、現場の捜査にあたっていた1人の警官が報告に来た。  「モニタールームだと?」  「そうです!モニターと言っても1つしかありませんが、あと・・マイクがありました!」  その言葉を聞いた御剣は考え込んだ。そして・・  「糸鋸刑事、ちょっとここで見張りをしてくれるだろうか?」  「み、見張りッスか!?」  「そうだ。」  糸鋸は心なしか嬉しそうな顔をしている。  「了解ッス!!」  御剣はその言葉を聞くや否やモニタールームへと向かった。  「テレビモニターが1つか・・。」  小さな長机が1つ。モニター1つにマイクなどの機器が揃えてあった。  「君、このモニターの映像を記録したテープは?」  「それが・・このモニターは映像を記録するためのテープがセットされていませんでした。」  「セットされてないだと?」  御剣はモニターの周辺を確かめた。すると確かに、ここには映像を記録する媒体はなかった。  「転送装置も見当たらない・・となれば、このモニターは単純に映像を写すだけ・・。」  映像を残さないことで何か利点でもあるのか?御剣はそこが不思議でたまらなかった。  「っと、また私物化か・・。」  ふと、モニターに写った糸鋸が、再び食料を盗もうとしているシーンが出てきた。  「こら、何をやっているのだ!?」  『う、うわああッス!け、検事・・どこからッスか!?』  モニタールームのマイクを通じて糸鋸を叱る御剣。一方糸鋸は、相当驚いている。  「恐らく奴も、こうやって指示をしたのか・・ん?」  御剣はここで気づく。部屋には食料等がどっさり入ったリュックがあった。まず餓死することはない。 次に部屋だが、どうあがいてもあの電子ロックは部外者には解除できない。無論、閉じ込められた人間にもだ。  (だったらどうして・・中にいる真宵君に一体何を奴らは指示したのだ?)  指示内容・・とここで、ある答えが見えてきた。  「君、今すぐ現場を調べてくれ・・何か、何かあるはずなのだ!そう・・例えば・・装束などだ!」  御剣はそう言うとすぐに例の個室へと走って戻った。  「うわっ!け、検事!!今度は何も自分・・盗ってないッスよ!」  糸鋸は物凄い表情で戻ってきた御剣を見てそう思わず叫ぶ。  「そんなことはどうでもよい!糸鋸刑事!そのリュック・・さらに調べてみるのだ!」  「え・・リュックッスか?」  「そうだ!今すぐ!」  御剣はそのまま部屋中を見渡す。ひょっとしたら、落ちている可能性もある。  「・・ん?」  とこここで、目の前に再び電子ロックの暗証番号入力版が見えた。                    『433465971494971423041』  目に見えた21桁の番号。                  『認証シマシタ。ドアヲ開錠シマス。』  21桁の番号と、その文章が交互に点滅しながら写される、電子ロックの入力版。  「これが・・暗証番号。」  御剣は何やら思案に耽っている。  「御剣検事!ゴミ箱からこんなものが見つかりました!」  ここで、御剣の指示を受け、あるものを捜索していた警官が、ゴミ箱を持って走ってきた。   「・・こいつは、髪の毛?」  ゴミ箱にあったのは“長い頭髪”。しかも色は黒で、まとめてバッサリ切られたような毛だ。束になってある。  「どうやら・・見えつつあるな。死神はやはり・・そうきたか。」  御剣はそんな言葉を呟いた。  『・・おい、そちら聞こえるか!?』  「ん?あぁ、聞こえるが?どうした?」  ふと、ゴミ箱を持ってきた警官の無線機が反応した。  『さっきな・・かん・・・・が・・・ゃく・・た・・ザザー』  「・・?おい、何言ってんだ?」  警官が無線機に向かって叫ぶ。  『あ・・・おかし・・・・・さっ・・・・へんじ・・・った・・に』  「聞こえないぞ!?あれ・・おっかしいなぁ・・」  無線機の故障かと思い何度も叩く警官。  「無線機の調子がおかしいのか?」  「・・え?あぁ・・そうなんです。どうもさっきから、ここの現場に入ったときから何か変で。」  警官は首をかしげている。  「この現場に来た時から・・だと?」  「電波障害ッスかねぇ・・?」  リュックを調べている糸鋸は、その言葉を聞いてふとこう漏らした。  「電波障害・・?」  御剣は納得ができない。  (あのモニターは、映像を転送する機能はなかった。そうなれば、電波を使うはずがない。)  だとしたら、一体何の電波が発生しているのか?  (胸騒ぎがする・・一体これは・・)  そう考えている御剣の目に、ふと外の窓が映った。そこからは何度も言うが、警察署が見える。  「まさか・・・・おい!君!」  「なっ、何でしょうか!?」  御剣は大至急の指示を出す。  「今すぐここを隅々まで調べてくれ!特に、調べるのが困難な壁や天井・・1度剥がされた形跡がないか!?大至急だ!」  「は・・わ、分かりました!!」  警官はゴミ箱をその場に放置すると、走ってそこから去っていく。  (何かの電波が・・この部屋に来ている。もしくは無線機か何かが・・)  「・・あっ!御剣検事!これを!!」  とここで糸鋸、リュックから紙切れを見つけた。  「どれどれ・・。」  御剣は黙ってその紙切れを見る。  「これは・・一体どういう意味ッスかねぇ?」  糸鋸は困惑している。  「どうも、成歩堂あたりに聞くしか手段はないだろうな。」  「は?」  御剣は確信を持った。未だに信じることが出来ないが、もはやこれが事実。  「他ならぬ、この電子ロックを解除したのはあいつだ。そして、ここから真宵君を連れ出した。」  「それは、あの兄弟がこの電子ロックを外から解除して、真宵君を連れ去ったということッスか!?」  糸鋸は外にも備え付けられている電子ロックを指さしながら尋ねた。だが、御剣は首を横に振る。  「違う・・奴らはこの室内からロックを解除して、真宵君を連れ出したのだ。」  「え・・!?しかし、それだと真宵君と犯人は一緒に監禁されていたことに・・。」  糸鋸は困惑しているが、御剣はさらに首を横に振る。  「それも少し違うだろう。だが・・1つだけ言えることがある。」  御剣の頭の中であの言葉が甦る。      死は見かけによらず、惨くもないし苦しくもない。死神はそれを知っている。    シはミカケにヨらず、ムゴクもナイシクるシクもナイ。シニがミはそれヲシってイる。    4は3×2(33)に4らず、659も714、9る49も71。42が3はそれ04って1る。                 433465971494971423041  「奴らも考えたものだ。口癖から語呂合わせとはな。」  電子ロックを見ながら不敵に笑う御剣。  「ここから放たれた死神は、真宵君を人質にとっている。何故ならば、このロックを解除したのは・・・・・・・・・・・・・。」  御剣の言葉を聞いた時、糸鋸は絶句した。  「な・・なんすとおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!!!!!!!!」  ことは緊急を要するものとなった。    第2部・動機  同日 午後5時23分 貸しビル7階フロア  金属探知機など様々な機材を持った捜査員・鑑識が、続々と現場へと到着してきた。全てはあるものを見つけ出すため。  「予想の範囲ではあるが、可能性は十分にある。慎重に行ってほしい!」  御剣は全員にそう注意を促した。  「さて・・あとはどうしたものか。」  御剣が次の行動を考えているときだ。  「検事、東山恭平の取り調べが署で行われるそうッスが・・どうするッスか?」  「取り調べか・・通常なら明日に行うはずじゃないのか?」  全てが終わった今、急に兄の聴取を行う必要もないだろうに・・。だが、今どうしても行わなければならない理由がそこにはあった。  「まぁ・・なんと言ってもあの出来事のあとッスからね。」  「そうか・・。」  御剣はしばし考え込む。そして、まだ家族関係の謎が明らかになっていない以上、別の観点しか攻める点はないと判断した。  「よし・・では、我々は一旦署へ戻ろう。」  「分かったッス!」  署へ戻る決断を下した御剣。とりあえずここの捜査は、この捜査員たちに任せることとした。  同日 午後5時41分 警察署・取調室前  御剣と糸鋸は、真っ先に兄の東山恭平がいる取調室へと向かう。  「御剣検事!!大変です!!」  とここで、本日何回目だろうか?またしても1人の捜査員が御剣の元へ、ある出来事を伝えに来る。  「どうしたのだ・・今度は。」  御剣もいい加減、この状態に慣れつつある。  「それが・・こいつを見てください!」  「これは・・?」  そう言って御剣の前に差し出されたもの。それは新聞だった。  「今日付けの夕刊ッスね。しかもこれ、夕日新聞ッス。」  糸鋸が御剣の横から新聞を見るとそう言った。どうやら、ここの新聞に関する思い出があるようだ。  「この一面を見てください!!」  捜査員は何度も、その問題の一面を叩く。  「・・分からない。どういうことなのだ!?」  御剣の新聞を持つ手は震える。まさに謎だ。          “警察上層部が揉み消しか!?犯罪者利用法ことSSUプラン”  「検事・・SSUプランって・・。」  糸鋸も愕然としている。しかも、記事内容はさらに意外なことばかりが書かれていた。    “今年6月に発生した警察関係者連続殺害事件。この事件の被害者達は、 この一連のSSUプランに関わっていた疑いが濃厚と考えられる。 今日の午後に有罪判決が下った東山容疑者の動機としても考えられるのではないかと本紙は予想する。”  「おかしい・・この情報は・・取引で漏れていないはず!!」  御剣は記事を再度読む。夕日新聞がどうしてこの情報を知っているのか?    “このSSUプランについては、匿名で警察関係者からの投書を受け、本紙記者が独自に調査をしたものであり、 情報提供者の身元は提供者の身の安全のことを考え伏せておくこととします。”  「警察関係者からの投書・・ッスか?」  「どうやらそのようだな・・しかし、そうなるとおかしい。ある事実の辻褄が合わなくなる!」  御剣は頭をむしった。そう、このSSUプランが外部に漏れていたという事実は、 今日の法廷で明らかにしたある事実が無効になることを意味している。  「だったらどうして・・事件は止まらなかったのだ?」  そう考えたときだ。何かの闇を感じた御剣。  「止まらなかった理由・・まさか・・。」  ある疑惑が御剣の中で芽生えた。とてつもなく恐ろしい疑惑が。  (しかしそうなると・・自然とその人間は反対の立場に居たこととなる。)  分からない謎。SSUプランが漏れていた事実が導き出す結論。  (もしくは、闇を嫌っていた・・そう言えば、1つだけ無理やり辻褄を合わせたあの事実は?)  御剣が今日の裁判で、1つだけ納得できずに無理やりこじつけたものがあった。  (まさか・・それが罠だったとしたら?だが、そうなると動機が分からない。)  御剣はまだこの事件で理解できていない事実があるのでは?そう悟った。  「糸鋸刑事。」  「な、何ッスか?」  御剣の顔は非常に険しかった。  「DL5号事件の資料で・・被害者関係の資料。特に、平夫妻殺害事件のデータを持ってきてくれ。大至急だ。」  「は・・ははっ!了解ッス!!」  糸鋸は大慌てで資料室へと駆け出していった。  「御剣検事・・どうしたのですか?」  捜査員が驚いた表情で御剣を見ている。  「・・まだ自信がない。しかし、この事件の謎は大きい。」  「は?」  放たれたDL6・5号の死神。その本当の意味が・・見える時。  同日 午後5時45分 警察署・取調室  取調室には刑事が2人。そして椅子に座っている東山恭平の計3人が居た。  「失礼する。」  御剣はドアを開けると一礼して東山恭平を見た。  「やぁ・・また会うとはね、御剣怜侍。」  椅子に座ったままふてぶてしく笑っている男。奴の笑みは法廷で見せたものと変わりがない。  「そうだな、また会ってしまった。」  御剣はそのまま取調室の窓を見た。あの貸しビルがここからでも見える。  「まったくもって悲しい限りさ、この国の警備体制を疑うぜ。」  「・・お詫び申し上げよう。」  御剣は軽く頭を下げる。だが、決して本気では下げない。これが奴らの計画の一部だからだ。  「貴様らの一連の事件についてだが、未だに解けない謎もある。」  「解けない謎ねぇ・・。」  御剣は被害者リストを取り出すと、早速話を切り出した。  「DL5号事件の当時の捜査員・・彼らを殺害した理由は言うまでもない。 父を陥れた不正捜査に協力した人間に対する復讐で、間違いないな?」  「そうだな・・。」  東山恭平は窓の外の景色を眺めた。  「では次に聞く。何故DL6号事件の当時の捜査員を殺害した?DL5号事件とは無関係なはずだが?」  窓の景色から御剣の顔へと目をやった東山。  「そう考えているのなら、そいつは大きな間違いだ。御剣怜侍。」  「何?」  奴はため息をつくと話し出した。  「DL6号事件とDL5号事件は大きな繋がりを持っている。凶器と言うポイントだよ。 あの事件の凶器は、DL5号事件の本当の凶器が使用されていた。」  「・・そうだったな。」  「そうさ、そしてそのDL5号事件の裁判時、凶器は偽のものが提出されていたが、 裁判後本物であるDL6号事件の凶器にすり返られた。分からないか?つまりだよ、 DL6号事件の捜査員もDL5号事件の都合を知っている奴らじゃないとこんなことできねぇんだよ。」  奴が不敵に笑った。  「つまりそれは、DL6号事件の捜査員もSSUを知っていて且つ、DL5号事件の真相を知っていたと?」  「その通りさ。」  御剣は軽く納得した。ここまではまだ想定の範囲内だ。問題はここからだ。  「では次に聞こうか。斬島検事を殺害した動機は何なのだ?」  「斬島検事・・ねぇ。」  そう、問題はDL6・5号事件の捜査員以外の人間の殺害の動機だ。  「DL6号事件の際に警察から協力を依頼され、霊媒を行った綾里舞子がそれに失敗し、 警察に詐欺容疑で逮捕された・・その彼女を起訴したのが斬島検事なのだ。」  「そうだな。」  依然として表情を変えない東山恭平。  「何故、彼を殺害した?」  「・・・・恩人のためさ。」  東山恭平の口から出た言葉・・“恩人”。  「恩人・・だと?」  「そうだ。俺たちの父さんを救ってくれようとした人間は2人いた。1人がアンタの親父さんだよ。」  その右手の人差し指を御剣に向けて言った東山。  「では、もう1人が?」  「そうだよ。俺たち父さんを救おうとしてくれた恩人が殺された、DL6事件の真相を暴くために 霊媒を行ってくれた“綾里舞子”さ。」  つまり、自分たちの父を救おうとした恩人である“御剣信”。その御剣信が殺害された事件の真相を 明らかにしようとした“綾里舞子”もまた、彼らにとっては恩人。  自分たちの恩人の恩人は自分たちにとっても恩人。  「まさに、敵の敵は味方・・というやつか。」  「ちょっと意味は違うがな。」  そう考えれば、少しずつ分からなかった点も見え始めてきた。  「ということは、その恩人を起訴した検事に対する・・復讐か?」  「そういうことだな、現に綾里舞子は嘘を付いていなかった。 それは3年前の“ひょうたん湖事件”の裁判で明らかにされたじゃねぇか。」  世間は最初、誰もが綾里舞子の霊媒は失敗したと思われていた。だが、それは今では正しかったことが判明している。  「利用するだけ利用して、自分たちは霊媒だけに頼りきって何もしねぇ。その結果自分たちが誤認逮捕しちまったってのに、 それを綾里舞子だけの責任として押し付ける。随分身勝手なことしてくれてるじゃねぇか?」  綾里舞子にこれだけのものを抱いている。彼らにとっていかに、父を救おうとした御剣信が恩人であり、 またその御剣信が殺された事件の真相を暴こうとした彼女も恩人であったのかが分かる。  「DL6号事件の捜査員を殺した理由としては、そいつもあるんだ。SSU以外にな。」  御剣は今の供述から1つの推理をする。東山兄弟にとって綾里舞子の存在が分かれば、この事件の謎も明らかだ。  「ならば、綾里キミ子・葉中未実を撃った理由は・・。」  「当然、もうアンタなら分かるはずだろう?」  その口調から察するに、恐らくは間違いないのだろう。御剣は恐る恐る口にした、その推理を。  「恩人である綾里舞子の実の娘・・“綾里真宵”を、2年前の倉院の里で起こった殺人事件で、 殺人犯として陥れようとしたから・・だな?」  奴はコクリと頷いた。御剣は動機の広がり方に恐怖を抱いた。  「星影弁護士を撃った動機は何なのだ?」  想像はつくが、聞かずに入られない御剣。  「はっ・・あいつか。あいつはな、金に目がくらんで小中に情報を売ったからだよ。霊媒捜査のな。」  東山恭平は淡々と語る。その口調はあくまで冷静。  「そのせいで綾里舞子は破滅したんだからな。」  だったら、もう1つのポイントがある。  「ならば、綾里春美を何故撃った?彼女は何も関係が・・」  「ないと思うか?」  その速攻での否定。寒気がした。  「綾里キミ子がこの家元騒動で、ここまでの狂気を起こせた理由は何だ?」  御剣は息を飲んだ。一番恐ろしい動機かもしれない。  「それは、強い霊力を持った春美という娘がいたからさ。逆に言えば、春美が生まれなかったら、この家元騒動はなかった。 それに、いつまたキミ子の遺志を継ぐ分家が現れるか分からない。いや、 もっと言えば、春美自身がキミ子の遺志を継ぐ可能性も捨てきれない。」  驚愕の動機。そしてそれを、死者である狩魔豪を霊媒して再び殺害するという、これまた驚愕の殺人を計画させた きっかけとなったと思えば、震えずにはいられない。  「泣かせるだろ?部外者である俺たちが、本家を守ってやったんだ。」  「・・かける言葉もないな。」  徐々に明らかになる動機。その1つ1つの理由に、もはや驚く気力すら残されていない。  「志賀真矢を殺害した動機は何だ?」  「志賀真矢かぁ・・言うまでもないだろ?」  志賀真矢。DL5号事件の真犯人だ。  「あいつがいなければ、DL5号事件は起きなかった。全ての元凶だよ、俺たちのな。」  「全ての・・元凶。」  御剣はその言葉に何か妙な物を感じた。まさに言う通りではあるのだが・・何かが変だ。  「では次だ。木槌太郎元裁判官殺害の件についてだが、動機はやはり父親の有罪判決を下した人間だったからか?」  最後に、被害者の1人である木槌太郎についての動機の裏づけを取る。奴の返事は1つ。  「分かってるじゃないか。」  「まぁ、想定の範囲だな。」  成歩堂を撃った動機が、狩魔豪への復讐のチャンスを奪ったことなど。実に信じられないものが多い。 だが、今更御剣はどうしようとも思わない。ただ・・  「ならば何故、綾里舞子の娘になる“綾里真宵”を誘拐した?」  1つの矛盾する事象。それは、奴らにとって守るべき存在である本家の人間を誘拐しているということ。  「アンタにはもう、分かってるんじゃないのか?御剣さん。」  そう言うと、取調室の窓から見える貸しビルに真っ直ぐと右腕を伸ばした男。ただ顔だけは、動かずに御剣だけを見つめていた。  「・・・・。」  御剣はその腕の方向を見やる。その先にある人差し指が指している建物。  「綾里真宵は人質だ。それに、俺たちも心配していないからな。アンタたちなら、絶対に綾里真宵に手出しできないって。」  まさにその言葉のとおりだった。  「最後に・・」  御剣は長い長い沈黙のあと、こう付け足した。  「どうしたって言うんだ?」  とても考えにくいが、聞かずにはいられなかった。  「どうやって、黒安公吉という人間まで辿り着いたのだ?」  「辿り着いた?」  そう、これだけが唯一の謎。  「DL6・5号事件の捜査員たちを断定した方法。それは貴様の弟、東山恭平が入手した“クリーニング・ボンバー”を使い、 警察のコンピューターに侵入し、当時の捜査員リストを入手したからだろう?」  「そうだが、それが何かあるとでも言うのかい?」  大有りである。何故ならば、それはあくまで捜査員リスト。  「問題が1つだけある。そこには黒幕である“黒安公吉”の名はなかったはずだ。奴は裏で捜査に関わっていたのだからな。」  「・・・・・。」  無言。そう、あとはこの事件・・黒安公吉まで辿り着いた方法が問題なのだ。  「平夫妻を殺害した真犯人が、黒安公太郎じゃねぇか?その疑惑が俺たちに生まれた時だ。」  奴はそれを口にした。  「あの事件、最初から本庁が偽造をした疑いがあった。その時な、どうして本庁が偽造までしたのかが謎だった。 けど、その容疑者候補の父親が本庁の上層部と分かった時、自然と黒幕が分かったのさ。」  「それも一理あるだろうな。」  普通ならば、それで全ては納得できるはずだった。  「それも一理・・だと?」  奴は怪訝そうな顔をする。  「確かに、普通ならばそれで納得できるはずだが・・貴様らは1つだけ強みがあったはずだ。」  その強みが、今一番問題となっているもの。  「“SSUプランの存在を知っている”という事実だ。」  この存在自体が、今回の事件に大きく関わっている。  「この存在を貴様らが知っていたため、本庁は貴様らの犯行を野放しにするしかなかった。 ただ、ここでの問題は、貴様らが“SSUプランを何処で知ったのか?”だ。」  何も喋らない東山恭平。  「黒安公吉に辿り着くことは容易だったかもしれん。だが、SSUプランの存在をどのようにして知ったのかが聞きたいのだ。」  よく考えれば一番の謎だった。このプランを知っている当事者は、皆口を固く閉ざしていた事実から、 どう考えても聞き出すことは不可能だ。  「それは、クリーニング・ボンバーでコンピューターに侵入した時に・・」  「SSUプランはまだ計画段階だったはずだ。そのような資料はパソコン上に記録される段階にはまだなかったはずだろう?」  そう、このプランはまだ計画段階だった。その証拠に、警察はDL5号事件の真犯人・志賀真矢を逮捕せずに、 そのプランに乗っ取って監視を行っていたくらいだ。  「つまり、貴様はこのSSUプランを誰かから聞いたことになる。DL5・6号事件の捜査員、黒安公吉、 当時のSSUプランを提唱した上層部・・それら以外の人間からな。」  それら以外の人間・・全ての答えはそこにある。  「そこまで考えているなら・・」  奴はゆっくりと口を開いた。  「あとは自分で考えるんだ。御剣怜侍。」  何ともいえない返事が、御剣の耳に届いた。  同日 午後6時19分 警察署・取調室前  「・・君。」  「はっ!何でしょうか?御剣検事!?」  取調室から出た御剣は、一緒にそこから出た捜査員にこう言った。  「留置所での殺人・・記者会見はするのか?」  「はい、今現在準備中ですが・・。」  御剣は天井を見やる。取り調べをしていてずっと思っていたこと。  (奴らは・・真相を予想していたのか?)  御剣はあの兄弟の意図を考えた。  「君・・その記者会見についてなのだが。」  「何でしょう?検事。」  よく分からないが、あの2人の意図が、もう1つの方向に向いているのなら。  「記者会見・・どっちが被害者なのかは伏せてくれ。」  御剣にできることは、それだけだった。  「伏せるの・・ですか?」  「あぁ、そうだ。私の許可無しで公表することは許さんからな。もしそうなったら、給与査定でドラマが起きるだろう。」  御剣は念入りに忠告をする。何故だか分からないが、そうせざる得ない気がしたからだ。  「御剣検事ぃ!!」  とここで、廊下の遠くから御剣を呼ぶ声がした。  「やっと来たか・・糸鋸刑事!」  その御剣の目線の先には、大量の資料を両手で抱えている糸鋸の姿があった。  同日 午後6時23分 警察署・第4会議室  「ご苦労だったな。糸鋸刑事。」  「なんてことないッスよ!御剣検事!」  会議室中央にある大きな机。そこに糸鋸が持ってきた大量の資料を一面を広げる御剣。  「問題は・・平夫妻についてだ。」  御剣はDL5号事件最後の被害者・平夫妻に注目していた。  「この事件が色々な意味でキーとなっている。私の考えが正しければ、そこには何か手がかりが眠っているはずなのだ。」  平夫妻のデータを調べ始めた御剣。ここで重要なのは、事件の概要ではない。  「ポイントは、平夫妻という人間だ。」  御剣は平夫妻のデータを徹底的に調べ始めた。  「被害者概要・・これだ!」  被害者概要のページを見つけて、そこに食いつく御剣。  「検事・・この平夫妻には、何が手がかりがあるッスか?」  「そうだな・・。」  御剣は見ていた資料のページを動かす手を止めた。  被害者データ     19、12月4日午後4時10分頃発生。     被害者・平凡吉(ひらぼんきち)/凡子(ぼんこ)     現場・名松神社・名松森付近。名松池の看板に被害者の血で“Q.E.D.”。     凶器・ピストル     状況・夫の凡吉氏・凡子氏ともに銃で心臓を撃たれ即死。その後ナイフで刺され、その血で        血文字が書かれた可能性が高い。一緒にいた息子の凡太(当時5歳)は無事。     補足・犯人逮捕  「被害者データか・・糸鋸刑事!」  「な、なんスか!?」  御剣は直ちにある事実確認を急ぐ。  「過去の事件を記録したCD-ROMを!日付は2001年から2002年程度でよい!その時に起きた事件のデータファイルを!」  「りょ、了解ッス!」  糸鋸はそれを聞くと、猛スピードで会議室から駆け出していく。    被害者概要  <平凡吉・当時34歳>  職業・平裏(ひらうら)病院の外科医師。  <平凡子・当時29歳>  職業・平裏病院の整形外科医。  「2人とも外科医だった・・。」  御剣は2人の職業にある種のものを抱く。  「検事!持ってきたッス!」  猛スピードで駆け出していった糸鋸は、息をぜえぜえさせながら会議室に戻ってきた。  「何度もすまない。糸鋸刑事!」  御剣はそう詫びるとすぐに、CD-ROMを糸鋸からもらい、ノートパソコンにセットした。  「過去の事件のデータを調べる。検索内容は・・“平裏病院”だ。」  御剣が検索ワードを打ち込みエンターキーを勢いよく押す。すると、1秒もしないうちに2件の事件がヒットした。      平裏病院での検索の結果 表示件数2件  1、DL5号事件    (被害者・平凡吉の職業、平裏病院の外科医師。)  2、平裏病院職員連続殺人事件(未解決)  「平裏病院職員連続殺人事件・・だと?」  御剣は迷うことなく、その事件のデータを開く。  平裏病院職員連続殺害事件(未解決)  <事件発生日時>  2001年12月30日・2002年1月14日・26日  <被害者データ>  平裏病院看護士4人  <死因>  全て銃に撃たれ即死。  <補足>  4人はいずれも2001年5月14日の2件の手術に関わっているという共通点以外は不明。  「2001年5月14日の2件の手術?」  時間の流れから考えると、事件が発生したのはDL6号事件後で、被害者達の共通点である手術は、 DL5号事件発生前に行われている。  「もう少し、詳しく探る必要性がありそうだな。」  御剣はさらにその補足を調べる。  <補足・詳細>  4人の被害者は、2001年5月14日に運ばれた2人の急患の手術を行っていた。  1人は大量出血の男子学生。これには被害者である2人の看護士と1人の医師が手術をした。  もう1人も同じく、大量出血の男子学生。ここでは被害者である残りの2人の看護士と、同じく1人の医師が手術を行った。  なお、この2人の手術に関わった医師は、DL5号事件で殺害された平夫妻と判明している。  ちなみにこの手術を受けた2人の急患のうち、1人は一命を取り留めたが、もう1人は死亡した。             「2人の大量出血の男子学生の手術か・・。」  御剣は何度もそう呟いた。何かが気になる。  「御剣検事・・何か問題でもあるッスか?」  糸鋸は訳が分からないと言った様子だ。実際、御剣にも分かってはいない。  「刑事・・。」  「なんスか?」  御剣は最後の結論を出した。  「今から18年前の5月14日。平裏病院に運ばれた2人の大量出血の男子学生・・身元は割り出せないだろうか?」  「身元・・ッスか?ちょっと難しい問題ッスねぇ。」  糸鋸は頭を掻きながら答えた。  「頼む。恐らくその2人の男子学生・・今回の事件に関わっている可能性があるだろう。」  「な、なんスと!?」  事件は最後の最後で、大きな局面を迎えつつある。  同日 午後6時43分 警察署・エントランス           糸鋸は過去の事件の資料について調べに行った。過去の資料とは、御剣が言っていた “平裏病院職員連続殺害事件”の“2人の男子学生”についてだ。  「あとは、最初に真宵君の件を解決させなければ・・。」  一方御剣は、真宵誘拐事件を解決するために、ある行動をとる。  「真宵君のことについて詳しい人間は、奴しかおらぬだろう。」  御剣がエントランスから、自分の車を駐車している駐車スペースに向かおうとする。  「・・・・・・。」  ふと、妙な空気が御剣の周りを包み込んだ。    ・・パァン!!  空気を引き裂くかのように鋭い銃声。  「ぐっ・・!!」  御剣はその異様な空気を瞬時に察し、体をしゃがめた。  「出たな・・死神め!」  遠くから見える姿。黒スーツを着ているのが分かる。  「言ったはずだ。俺たちは死神だとな。」  御剣の目線の先、数十メートル。あの男の姿があった。  「やはり、私を殺す気なのだな!?」  「無論さ。」  緊迫した会話。その会話は時に、自然に流れていく。    「銃声だ!銃声が聞こえたぞっ!」  「いそげっ!!」    銃声を聞きつけた警察関係者の声が、遠くからかすかに聞こえた。  「どうやら、決着はまた次のようだな。」  奴は背を向けると、御剣にこう言葉を残した。  「お前にとっての名松池で待っている・・そこで最後に語り合おうじゃないか。」  「私にとっての・・名松池だと!?」  男は静かに頷くと、最後にこう言って現場を走り去る。  「言っておくが、1人で来いよ。妙なマネをしたら・・綾里真宵の命は無い。 それだけは、きっとアンタなら分かってるはずだ。御剣怜侍。」  12月は日が短い。暗闇の中に消えていく男の後姿を見ながら、御剣は呟いた。  「望むところだ・・東山!!」  同日 午後7時23分 堀田クリニック・病室002号室  「失礼するぞ。」  病室のドアを2回ほどノックすると、中から「どうぞ」との返事がした。  「どうだ?調子のほうは?」  中へと入った御剣は、ベットに寝ている・・というよりは、寝かされている友人の姿を見ながらそう尋ねた。  「調子は多分・・良いと思うよ。それより、真宵ちゃんは見つかったのか?」  顔色はあまり良くないようだ。理由は体調面というより・・真宵君の件について精神的にまいっているのか?  「成歩堂。それについてなのだが・・真宵君は誘拐された可能性が濃厚だ。東山兄弟によってな。」  御剣は椅子に座ると、ベットで横になっている成歩堂にそう告げた。  「やっぱり・・あいつらに誘拐されたのか。」  成歩堂はベットから起き上がった。どうやら、この事件の真相については、成歩堂もニュース等で既に知っているようだ。 東山兄弟が犯人だったこと。裁判で御剣が有罪判決を勝ち取ったことも。  「それで、行方のほうはどうなんだ!?」  「行方か・・。」  御剣は言葉に詰まった。これ以上難しい答えは無い。  「真宵君がどこにいるのか?それは今捜索中だ。しかし、もうほとんどは何処にいるか分かっている。」  「だったら、すぐに真宵ちゃんを!!」  成歩堂は御剣の両肩を掴んで揺さぶった。  「いいから黙って人の話を聞け!!だからこうして私は貴様に“ある話”を聞きに来たのだ!!」  だが逆に、今度は御剣が成歩堂の両肩を掴んで揺さぶった。  「あ・・ある話だって!?」  成歩堂は掴んでいた腕を放した。  「そうだ。実はだ・・私もまだ信じきれていない事実がある。その事実を・・貴様に確かめてもらうために来た。」  御剣は、今回の事件と真宵誘拐の事件について・・自らの考察を成歩堂に語り始めた。  ・・長い話だった。  「あぁ、御剣・・多分お前が思っている事件の真相は、ほぼ9割以上間違いない。」  「そうか・・。」  成歩堂がはっきりと断言をした。となれば、やはりこの事件におけるある真相は、認めざる得ないらしい。  「だけど、そうなればあの東山兄弟・・かなり恐ろしい犯人だな。」  成歩堂は悪寒がしたのか、体を震わせている。  「さて、そうなればあとは・・どうやって真宵君を救出するかにかかっている。」  御剣が頭を抱えてしまった時だ。    ・・コンコン!    誰かがドアを大きく叩いた。  「失礼するぞ。」  成歩堂と御剣・・2人の返事を待たずして病室に入ってきた男。  「御剣検事。届け物だ。」  「あ・・あなたは?」  成歩堂はその男を見て、不思議そうな顔を。だが、御剣にはその男が誰なのかが分かる。  「お、小城伊勢刑事ではないか!?どうしてここに!?」  御剣はさぞビックリしたことだろう。それも無理は無い。全くの予想だにしていない出来事だったからだ。  「どうしたもなにも、届け物だ。アンタがここに向かったと聞いてね。」  小城伊勢は何枚もの資料が入った封筒を差し出した。  「これは・・?」  「こいつはな、糸鋸が調べ上げた18年前のある資料さ。」  御剣に資料を持たすと、小城伊勢はあることを告げる。  「そうそう、これを調べた糸鋸だけどな・・過労でぶっ倒れたぞ。流石に限界が来たらしい。 だから俺が代わりに持ってきてやったのさ。」  「そ、それは済まない。小城伊勢刑事。」  御剣は頭を下げた。  「御剣・・あんまりイトノコ刑事をこき使うなよ。最近ますます痩せてきている気がするし。」  「う・・ウム。そうだな。今度ステーキでもご馳走することにでもするか・・。」  小城伊勢と成歩堂、2人の痛い視線を浴びながら、御剣は今度・・糸鋸を労ってやる事を約束させられた。  「それで、肝心の資料だが・・」  御剣は糸鋸に頼んだ。2人の大量出血の男子学生についての身元を見た。  「・・ん?この2人は?」  御剣は2人の男子学生の苗字を見て、何かを感じた。  「どうした?御剣検事。」  「いや・・それがですね・・小城伊勢刑事。この2人の苗字・・どこかで昔、しかも最近どこかで見たような。」  御剣は2人の身元に関する資料を、成歩堂のベッドの横にある台に置いた。  「どれどれ・・。」  小城伊勢は資料を覗き込む。  「僕にもちょっと見せてくれよ。御剣。」  成歩堂もベットの横から覗き込む。  「小城伊勢刑事ならともかく成歩堂・・お前が見ても何も分かるわけが・・。」  だが、事実とは実に奇妙なものだ。  「・・こっ、こいつの苗字は!?」  「えっ!?この2人の苗字って!?」  小城伊勢と成歩堂。2人は同時に衝撃を受けた。  「なっ・・小城伊勢刑事!!それに成歩堂!?2人とも・・この2人の苗字を知っているのか!?」  御剣は両サイドの2人を見て、これまた衝撃を受ける。  「知ってるも何も・・こいつはあの事件の関係者じゃないのか!?」  小城伊勢は言葉を失っている。  「僕だって知ってるさ!この2人の苗字・・それと全く同じ苗字の人と半年前に会っている!!」  成歩堂も驚きのあまり言葉を失う。  「そ、それは一体・・どういう意味なのだっ!?」  御剣だけが分かっていない。そもそも、何故成歩堂が知っているのか?  「御剣検事・・DL5号事件の資料を持っているなら、そいつをよく見るんだ。」  「お、小城伊勢刑事!?」  DL5号事件・・全てはそこにあるというのか?  「多分・・小城伊勢さんの言う通りだ。御剣。DL5号事件の資料があるならば、その資料にこの2人の家族が存在するはずだ。」  成歩堂もそのように発言した。  「な、何だと・・。」  御剣はDL5号事件の概要をくまなく調べた。すると・・。  「・・な、なんと言うことだ。」  絶句するしかなかった。  ・・数分後。  「この2人の関係者がDL5号事件の関係者の中にいた。これは・・どういう意味なのか?」  考えても謎は深まるばかりだ。  「・・そうだ。さっきの衝撃で忘れちまってたが、糸鋸とは別に捜査員たちが、これを御剣にと。」  「こ、こいつは?」  ここで御剣に手渡されたものは、またしても書類が入った封筒。  「どうやら、家族関係についてらしい。東山兄弟のな。」  「な、何だと!?」  御剣は思わず声が裏返った。  「そ、それはありがとうございます。早速・・こいつを見させてもらいます。」  一度礼を言い忘れたことに気づいた御剣は、小城伊勢に礼をすると早速その中身を取り出した。  「家族関係・・ついに分かったか。」  中には様々な資料がある。  「まぁ、大まかな話は俺が聞いた。重要事項もメモしているから、俺が話そう。」  「・・すまない。お願いします。」  御剣は小城伊勢による調査報告を聞くことにした。成歩堂もベットで黙って聞いている。  「まず、あの東山兄弟が落とした写真だが・・あいつは偽造であることが判明した。」  「やはり偽造だったか。」  まぁ、この写真の件については予想通りのようだ。  「恐らくは捜査の混乱を狙ったものだろう。となれば、あの2人に三つ子の兄弟はいないということになる。」  「・・もしくは、三つ子以外の兄弟がいる可能性だな。」  御剣は1つ1つ状況を整理していく。  「でまぁ、次からが本題だな。アンタも気になってたあの双子の母親についてだ。」  さて、ここからが本当に知りたかった部分となる。  「まず、この母親の名前だが・・“東山理沙”。ということが分かった。彼女が正真正銘の東山兄弟の母親だ。」  小城伊勢は手帳をめくりながら、その母親についての情報を話し出す。  「彼女の職業は、本庁公安部捜査員だ。」  「本庁!?公安部だと!?」  御剣はその言葉にギョッとした。またしても本庁の登場だ。しかも公安部の。  「まぁ、驚くのはそれくらいにしておくがいいさ。問題はその次・・離婚についての話だ。」  「離婚・・?」  御剣は首をかしげた。  「そう、離婚だ。離婚時に父親である章太郎は、恭平と怜次の2人の息子を連れて行った。これが親権問題で訴訟沙汰になってな。 ただ、ここで訴訟問題の対象となった子供は、恭平と怜次の2人だったが、訴訟対象にならなかった子供が1人いるんだ。」  「訴訟問題にならなかった?」  御剣は目を大きく見開いた。それはつまり・・  「そうだ。早い話・・あの2人には兄弟が確かにいたんだ、1人な。そしてその1人は、母親である理沙が引き取ったんだ。」  御剣はその言葉を聞いたとき、こいつを聞かずにはいられなかった。  「小城伊勢刑事・・その3人目の子供の名は?」  小城伊勢は、手帳を見ながら答えた。  「その子供はな、奴らの・・で・・・・・・・。」  その小城伊勢の言葉で、誰よりも驚いた人物がいた。  「な、何ですって!?」  「わっ!!い、いきなりどうしたっ!?成歩堂!?」  御剣はあまりの驚きに心臓が一瞬停止した。  「いや・・その子供の名前、知っている!」  「なにっ!?お前が知っているのか!?成歩堂っ!?」  御剣は成歩堂の衝撃の告白に、頭がついていけない。  「あぁ、知ってるも何も・・僕の知っているその人と、名前が全く一緒なんだ!!」  「名前が一緒だと・・・・・!?」  御剣がここである事実に気づいた。  「小城伊勢刑事!東山は確か、父方の苗字であろう!?」  「え・・た、確かそうだが。」  成歩堂の知っているその人物。それがその子供と同一人物である可能性を確かめる方法があった。  「小城伊勢刑事!母方の苗字は何なのだ!?」  「母方の苗字!?ちょ、ちょっと待ってくれ・・えーっとな。」  小城伊勢は手帳の中を何度も確かめる。そして・・  「母方の苗字はな・・・・・・・」  母方の苗字を聞いた御剣、直ちに後ろにいる成歩堂に確認をとる。  「成歩堂!そのお前が知っている人間の苗字もそれかっ!?」  「あぁ!間違いない!」  なんと言う偶然だろうか?さらに、成歩堂はここで御剣にさらなる手がかりを言う。  「そしてな、御剣。その子についてなんだが・・。」  「・・・・なにぃ!?」  御剣はその言葉を聞くやいなや、すぐさま自分の資料を調べた。  「・・ほ、本当だ。」  あまりのことに言葉が出ない御剣。  「あ、あとな。捜査員たちがC4を見つけたらしい。あの貸しビルでな。」  小城伊勢が最後に付け足した。  「・・C4?」  成歩堂はその言葉に聞き覚えがないのか、またも首を傾げる。  「小城伊勢刑事。それは何なのだろうか?」  「ん?御剣検事も知らないのか?C4ってのは・・。」  小城伊勢の言葉を聞いたとき、御剣と成歩堂は愕然とした。  「な、なんでそんなものか!?」  成歩堂は考える。一体何の目的でなのか?  「どうやら、電波障害の原因はそいつによるものだったらしい。」  小城伊勢は付け足した。  (一体・・どういうことなのだ?)  御剣はあの兄弟の意図を考える。  「・・・・!!」  ふと、御剣にある2つの光景が見えた。  「小城伊勢刑事。東山恭平の聴取は、まだ続いているのだろうか?」  「ん、あぁ・・まだ続いていると思うが。今夜はまだ長くなりそうだけどな。聴取。」  「そうか・・。」  御剣は病室の窓から外を見る。ここからは見えない2つの建物。  「そうとしか、考えられぬか。」  御剣は大きなため息をついた。  (動機が繋がった・・そして、真宵君救出の方法も見つかった!!)  第3部・家族  同日 午後10時31分 堀田クリニック・公衆電話前  ・・プルルルルルルルル  テレホンカードを入れ、電話をかける成歩堂。廊下はとても暗い。    ・・プルルルルルルルルル・・プルルルルルルルルルル  長いコール。だが、5回ほどで電話は繋がった。  『もしもし・・』  成歩堂は1人で、どう伝えるべきか悩んでいた。  「あぁ、もしもし。成歩堂です・・」  『あ、成歩堂さんですか!?いきなり電話をくれるなんて・・何かあったんですか!?』  電話の主は成歩堂からの電話に驚いている。  「うん・・まぁね。ちょっと大事な話があって・・」  『大事な話?』  電話の主は不思議そうな声だ。  「うん・・とりあえず、今ここにいるかな?彼女は?」  『あぁ、いますよ。』  成歩堂は俯き加減だ。これが電話でなかったら、相当心配されているだろう。  「代わってくれるかい?大事な話が・・あるんだ。」  同日 午後11時43分 ひょうたん湖自然公園・広場  12月28日も残すところあと、17分。  1人ベンチに腰掛けていた御剣は、コートを深く羽織っている。  「よく、ここが分かったな。」  夜空に寂しく光る星。ふと目の前から、同じくコートを羽織った男がやってきた。  「私にとっての名松池・・推理すればすぐに分かった。」  御剣はその男の姿を確認すると立ち上がった。  「貴様ら東山兄弟にとって、18年前忘れることのできない場所と言うのが、名松池だ。」  風が時折、2人のコートを大きく動かす。  「私にとっての名松池。つまり、DL5号事件によって発生したDL6号事件。そして、DL6号事件によって発生した 3年前のひょうたん湖の事件。これを指していたのだろう?」  バサバサ・・という音が、妙にはっきりと聞こえる。  「これくらいは、アンタが分かって当然の範囲なはずだ。御剣怜侍。」  男はコートから銃を取り出した。コートの下は、黒のスーツ。  「あとはここで、お前を28日中に殺すだけなんだ。」  「それにしては、来るのが遅かったではないか?私は11時ごろから待っていたというのに。」  2人の対峙する人間。  「まぁ、アンタのことだ。いつどこで見張りの刑事がいるか分からない。まずはじっくりと、 アンタの身の回りを確かめさせてもらったよ。」  「念には念を・・か。」  大きな風が吹いた。公園の街灯が寂しくあたりを照らす。  「それよりも、真宵君を大人しく解放してもらおうか・・東山怜次!!」  御剣は男を睨みつけた。その瞬間、街灯に照らされていた男の顔がはっきりと映った。  「それはお前が、大人しく死んでくれればの話だ。御剣怜侍!!」  東山怜次は、御剣に真っ直ぐと銃を突きつけて叫んだ。  「どのみち、アンタは俺に対して下手に行動を起こすことは出来ない。それだけは分かっているんだからな。」  相手は確実に御剣の心理状態を読んでくる。  「・・何故、真宵君が誘拐されたのか?ずっと不思議だった。」  御剣は東山怜次の顔をずっと見つづけていた。  「東山恭平と共犯の東山怜次。有罪判決の瞬間・・貴様は緊急逮捕され、今度こそ事件は解決したと思っていた。」  だが、全ては最終決戦の始まりに過ぎなかった。  「だが、2人が逮捕され留置所へ連行されたというのに・・神風国斗がそのあとに殺害された。目撃者によると、貴様によってな。」  これは普通ならば、ありえないことだった。  「今度こそ犯人は2人とも逮捕し、終わったはずだった。なのにまた、貴様が人を殺している。 そしてこともあろうに、私の目の前にこうして現れている。」  東山怜次の銃は、真っ直ぐと御剣を捕らえたまま動かない。  「だが、ある事実を聞いたとき。私は思った・・貴様は本当に、死神になったのだと。」  本当の死神・・御剣は語りだす。  「私がこの知らせを聞いたのは、警察署でだった。連行された東山怜次が、留置所前で何者かに狙撃され、殺害されたと。」  目の前の男は沈黙を守っている。  「東山怜次が殺害されたと聞いた瞬間。私は何故、貴様らが“綾里真宵”を誘拐したのか?という事実を知った。 というよりも、悟った。」  御剣はコートのポケットから、写真とメモを取り出した。  「真宵君が監禁されたと思われる部屋にあった。貴様の顔写真と名前が書かれたメモ用紙だ。」  メモ用紙には、あの兄弟の名前が書かれていた。  「つまり、貴様らは真宵君を誘拐し監禁した。その際、予想ではあるが1日に何回か決まった時間に、 この人物の霊媒を試みるように・・と指示を出したのだ!」  御剣はメモ用紙に書かれた名前に指を指す。  「つまり、今ここにいるのは東山怜次ではない!正確に言うならば、 今ここで私に銃を突きつけている人物こそ、綾里真宵なのだ!!」  東山怜次がニヤリと笑った。  「東山怜次はもはや人ではない。本当に死んでしまったのだ・・ だが、こうして霊媒師の体を使うことで甦った!どうだ!?東山怜次!」  笑ったまま、何も言わない男。  「倉院流霊媒道・・私も信じることが出来なかったが、1人の親友からこのことについて聞くことで確信を持たざるを得なくなった。 倉院流霊媒道は、霊媒した人間と全く同じ顔・体格になる。」  御剣は笑っている東山怜次を睨みつけながら、この計画の全てを語りだした。  「まさか、自らが逮捕された時のことも計画に入れていたとは・・信じられん兄弟だ。」  メモをポケットに戻す御剣。  「もし逮捕された場合、自らが何者かに殺害されるように仕組んでいた。そして裁判中に綾里真宵を誘拐して、例の霊媒を指示した。 自らが逮捕されなければ、何も起きずにすむ予定だったのだろう。」  計画はかなり念密なものだった。  「だが、もし逮捕された場合は殺されるように仕組むことで、再び復活するように計画していた。霊媒によってだ。」  霊媒で復活を目論んでいたならば、全てが繋がる。例えばあの部屋。  「真宵君が監禁されていた部屋・・何故、部屋の中にも扉のロックを解除する装置があったのか? いくらパスワードが21桁とはいえ、解除されてしまう可能性も否定はできない。ならば、逃げられないように 解除装置は部屋の外側につければよかった。なのに内側にもあった。」  その矛盾点も、今考えれば納得ができる。  「それの答えは明らかだった。なぜなら、内側にも解除装置がないと、霊媒されて復活した自分が、部屋から出られないのだ!」  御剣は続ける。  「霊媒をする真宵君はパスワードを知らない。だが、東山兄弟は知っている。だから、霊媒された東山怜次も無論知っている! そう、部屋のロックを解除したのは、他ならぬ東山怜次を霊媒した真宵君自身だったのだ!」  そして、奴は次の段階に入ったのだろう。  「部屋から出た貴様は、まず真宵君の装束から自分の黒スーツに着替えた。無論、装束のまま殺害しに行ったら霊媒の事実が ばれてしまう。真宵君の髪を切ったのも同じ理由だ。」  現場のゴミ箱には、綾里真宵の頭髪があった。  「真宵君の長い髪のまま殺害に行っても、不自然さが残ってばれる可能性がある。だから切って自分の髪型にしたのだ。 その結果、神風殺害の時に犯人を目撃した小城伊勢刑事ははっきりと言った。犯人は東山兄弟であると!」  最後に御剣は、こう結論付けた。  「これが、最後の殺人のトリックだ。貴様は本当に・・死んでもなお人を殺す、死神となったのだ!」  東山怜次はため息をついた。  「言いたいことは、それだけか?」  東山怜次は引き金を引こうとする。  「あいにくだが、話はそれだけでは終わらない。」  そして御剣は、きっぱりと言い放った。  「貴様に銃は撃てない。いや、撃たせない。」  「・・馬鹿馬鹿しいな。」  だが、御剣には手があった。  「貴様には!まだ人としての心が残っているはずだ!あの弟にも、だから・・もう絶対に銃は撃てないのだ!!」  「・・人の心だと?馬鹿馬鹿しい!俺たちはもう何もかも捨てて・・」  「ならばはっきりと言おう!私がそう断言できる理由は、貴様らのこの事件のもう1つの動機が分かったからだ!!」  御剣はついに言った。この事件のもう1つの動機についてを。  「何・・だと!?」  もう1つの動機が分かった時。これほどまでに悲しいことは無いだろう。  「貴様らの動機は、父親の復讐だけでは無かったのだ!」  「じゃあ一体!他に何の動機が俺たちに存在するって言うんだ!?」  東山兄弟のもう1つの動機。それはきっと・・この兄弟が子供の頃から抱いていたある夢が関わっていのだろう。  「それは・・貴様らの家族だ。」  「家族?馬鹿馬鹿しい!その俺たちのたった1人の家族である父親の復讐が動機だと言っているだろ!? 他に俺たちに家族なんか・・」  銃を持つ手が震えていた。  「確かにあの時はいなかった。」  御剣が東山怜次よりも早くそう言った。そして・・  「だが、昔は居たはずだ。」  大きな突風が吹く。2人の体は風に押されそうになった。  「昔・・貴様らの両親が離婚する前だ。」  御剣は1枚の写真を取り出した。  「!?そ、そいつを何故お前がっ!?」  東山怜次は言葉を失っていた。  「こいつは、コピーさせてもらったものだ。貴様らが偽造した写真。こいつを元に作り上げていたのだな。」  御剣はコピーしたという写真を指さす。  「これは写真の日付によると、20年程前の写真だろう・・貴様ら家族がバラバラになる前の写真だ。」  とても幸せそうな家族がそこにはいた。  「家族は全員で5人。ここにはランドセルを背負っている双子の男の子が2人いる。東山怜次と恭平だろう。 ランドセルを背負っているということは・・小学校の入学祝だろうな。」  指はその後ろにいる男へと移る。  「ここに立っている男。それが貴様達の父親。東山章太郎だ。」  そして指は、問題の右側に写っている人間へといく。  「そしてここに立っているのが、貴様達の母親だろう。」  これで家族は4人。しかし、全部で家族は5人いる。  「母親のすぐ前に立っていて、貴様らの左側・・写真で言う右に立っているこの子だ。」  御剣はその子に指を指した。  「年齢は・・まだ2、3歳だろう。これが、離婚時に母親側に引き取られた貴様らのもう1人の兄弟だ。」  写真と東山怜次・・その2つを交互に見ながら話す御剣。  「ここに写っているその母親ともう1人の兄弟。この2人の名前を聞いた時、何かが引っかかっていた。 そして、その引っかかりこそが、貴様ら兄弟のもう1つの動機だ。」  「・・それが、何だと言うんだ!?」  声が震えていた。銃を持つ手も同じく。  「母親の名前・・調べさせてもらった。彼女の名前は“東山理沙”だ。」  この事件に隠されたある事実。それは、隠された人間関係。  「だが、離婚した結果・・母親とそのもう1人の兄弟は苗字が変わっている。母親の旧姓にだ。」  まず最初に、これに気づいたのは成歩堂だった。きっと、成歩堂がいなければこの事実に気づくのは、遅くなっていたかもしれない。  「その旧姓は・・“鹿山”だ!!」  奴の顔を見た御剣。確実に・・精神的に追い詰めている。  「・・この短い時間でこれだけのことを調べ上げたのには、驚きだな。」  そしてこれは、奴らのこれ以上の犯行を食い止めるチャンスなのだ。  「東山恭平の聴取をした時、奴は志賀真矢殺害についての動機でこう語った。」                       ※     ※     ※    「志賀真矢を殺害した動機は何だ?」  「志賀真矢かぁ・・言うまでもないだろ?あいつがいなければ、DL5号事件は起きなかった。全ての元凶だよ、俺たちのな。」  「全ての・・元凶。」                       ※     ※     ※  「全ての元凶・・これの意味が分からなかった。」  御剣は今考えてみれば、これほど分かりやすいことはないと思った。  「全ての元凶・・それは父親が逮捕された“平夫妻殺害事件”のはずだ。まぁ、確かに元を辿ればそこには、 DL5号事件も関わっていた。それに、DL5号事件の捜査員はSSUを知っていた。それだけでも確かに、 DL5号事件に関わった捜査員と犯人である志賀真矢を殺害する動機としては十分だ。」  しかし、時として運命とは恐ろしいものだ。  「だが、あの言葉にはそれ以上の何かを感じた。そしてその何かの正体がやっと分かったのだ!」  御剣はここで、写真と平行してある資料を取り出した。  「DL5号事件の特徴は、子連れの両親を殺害して、一緒にいた子供だけは殺さない。そのような特徴を持った事件だった!」  そう、ずっとそう思っていた。  「だから、我々はずっとDL5号事件の被害者は、母親と父親の2人セットだと思い込んでいた! だがしかし、1つの事件だけ例外が存在したのだ!!」  そこで御剣はその資料を指さす。  「まさに盲点だった。この事件が一連の事件のどこか途中であったのなら、不自然さに気づけたかもしれない。 だが、DL5号事件の初っ端だっただけに気づけない!まさに盲点だったのだ!!」   そう、一連の事件の第1号。  「ここにはっきりと書かれているのだ!2001年6月1日発生のDL5号事件第1号。そこの被害者が“鹿山理沙”とな!!」  「・・み、御剣・・」  銃口の狙いがずれる。何度もあわせるがずれる。  「理沙とは間違いなく貴様らの母親の名前で、鹿山とは間違いなく貴様らの母親の旧姓で、離婚後に戻った苗字だった。 そこで、この人物は同一人物なのか調べさせてもらった!」  そして、その結果が全てだった。  「するとだ、鹿山理沙は既に死んでいることが分かった。しかも、DL5号事件で殺されたと・・ つまり、貴様らの母親はDL5号事件の被害者第1号だった!そう、貴様らの母親は志賀真矢に殺されていたのだ!!」  「それが・・何だと言うんだ?」  奴が脂汗をびっしょりかいているのが分かる。何度も何度も銃を握りなおしている。  「そうなれば、もう1つの隠された動機が分かる。そう、母親を殺された復讐だ。そして、あと1つ・・。」  「あと・・1つだと!?」  切迫した空気。時計は今、午後11時58分。  「目の前で母親を殺人犯に惨殺された・・妹のための復讐だったのだ!!」  相手の息遣いは荒い。  「・・それだけ言って、満足か?」  大きく息を吸い込むと、改めて銃を突きつけなおす怜次。2人の間は今、およそ2、3メートルしかない。  「貴様は、目の前で母親を殺された妹のために、この犯行を行っていたのだ。志賀真矢を殺し、 また志賀真矢を逮捕しなかった当時の捜査員たちを!」  奴の銃を持つ手はまたも震えだす。  「もう、これくらいにしておけよ・・。」  28日が終わるまで、あと1分30秒。  「このくらいにしておくのは貴様のほうだ。いいか?貴様の妹はつまり、まだ生きていることになるのだぞ!」  「それが何だ!?」  今にも引き金を引きそうな怜次。しかし、撃てない。  「これ以上罪を重ねて、喜ぶと思っているのかっ!?」  御剣の持っていた写真のコピーが落ちた。そこには、2、3歳ほどの女の子が立っている。今だと丁度、23歳くらいか?  「うるさい!貴様に何が分かるっ!?今から半年前にDL5号事件の真相が明らかにされた時、 あいつはまたも苦しむことになったんだ!!」  怜次は声を荒げる。だが、心なしか声が震えているような感じがする。  「あいつはな、あの時弁護席に立ってすべてを見ていた!そして、一番信じていたはずの人間に裏切られたことになったんだ!!」  半年前の裁判・・DL5号事件の全てが明らかにされた裁判だった。そう、成歩堂はその事件を知っていたのだ。  「信じていた人間が・・自分の母親を殺した張本人だった。母親を目の前で殺された深い苦しみに加え、 あいつには更なる傷が生まれたんだ!だから俺は、俺たちは・・あいつを許さない!そして、この事件の全てを憎んだ!!」  そして今、父親を陥れた人間の1人、狩魔豪に弟子入りした御剣を殺そうとしている男。 本当に、憎しみが増大しているとしか言い様が無い。  「それにだ!ここまで調べたんだから、当然俺たちの母さんの職業も分かってるんだろう!? 母さんは当時、本庁公安部の捜査員だった!そして、父さんもあの頃は公安部の捜査員だった!」  足が震えているのが分かる。  「母さんはあの頃、公安部内で提案されていたSSUプラン反対派の人間だった!だが、父さんはこれの賛成派だったんだ! その結果、家庭内でも徐々に影響が出だして、終いにゃ離婚だ!」  奴は真っ直ぐと御剣を見ようとしている。そして叫ぶ。  「そして18年前の6月1日、俺たちの母さんは志賀真矢に殺された!あの時本庁は犯人を特定していたんだ! なのに、あの忌々しいプランを理由に逮捕せずに放置しやがった!!」  全てはそれが決定打だった。  「その理不尽さに、俺たちの父さんはプランの反対派にまわったさ!当然だ!そしたら奴ら、 俺の父さんを本庁の捜査1課へ異動させ、口を挟めないようにしやがった!そして最後は、 連続発砲事件に関わったことをきっかけに、平夫妻の事件で捕まっちまった!」  全てをSSUプランによって狂わされた兄弟。  「だから俺たちは、俺たちの家族をズタズタに引き裂いたプランに対して、復讐をしてやることを決心した! それが、俺たちの使命なんだ!!」  「だからと言って、これ以上罪を重ね喜ぶとでも思っているのかっ!?」  引き金を引こうと、奴の指は震えながらも動き出す。  「だが・・あいつもこの事件で失ってしまったものは大きい!!」  「ならば、何故気づかぬ!?これ以上罪を重ねることで、貴様の妹はまたしても、大きなものを失ってしまうことになるのだぞ!!」  御剣は腕を伸ばす。  「さぁ、早く銃をこちらに渡すのだ!!」  時計はすでに、午後11時59分を回っている。あと残り30秒だ。  「俺は・・俺たちは・・!!」  銃を持つ手が大きく揺れる。銃が落ちそうになる。  「罪を重ねることで、貴様達の妹はまたも、大切な・・そして残された最後の家族を失うことになるのにまだ気づかぬかっ!!!?」  御剣のその怒りが、そのまま男に突き刺さる。  「・・う・・ぐぅっ!!」  銃を持つ手の力が、一瞬弱くなった。  「早く銃を渡すのだ!!これ以上のことを・・貴様らの妹、う・・」  「・・だ」  腕が、次の瞬間御剣の目の前に伸びていた。銃口と共に。  「黙れええええええええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇっっっっっっっっっっっっ!!!!!!!!!!」  ずっとためらい続けた引き金を、奴は力の限り引いた。                         ・・ダダッ!!  そしてその数秒前。公園の茂みから何者かが走ってきた。成歩堂達の静止を振り切って。  「や・・止めて・・。」  その人物は、真っ直ぐとあの2人へと向かっていた。      「止めてぇっ!!お兄ちゃぁぁぁぁぁぁぁぁん!!!!!!!!!!!!!!!!!」  その2人は、その悲痛な叫び声がしたほうを見た。  だが、銃の引き金を引くタイミングのほうが若干・・                       ・・パァン!!!!  その銃声と共に、御剣と東山。その2人の間には走ってきた女が立っていた。  暗闇の中にあっても、とても明るく目立つ血しぶきと共に・・その姿は目に入った。                      「・・う・・さ・・・・ぎ?」  ポツリと、そう呟いた男がいた。  それは、他ならぬ銃を発砲した本人だった。  ひょうたん湖公園の時計台は、その瞬間28日の終わりを告げる。  ・・東山怜次と恭平。この2人の妹の名は宇沙樹。  ・・そう、“鹿山宇沙樹”だ。  Chapter14 end  ・・・It continues to the final chapter

あとがき

 Chapter14は“死神の体と人間の心”。  人の心を持ちつつも、既に人間の体を持っていないあの人を指しているのがこのタイトルです。  第1部・21桁。何気なく第1部のタイトルにもなっている21桁。真宵ちゃんが監禁されていた部屋を開けるための パスワードですが、ちゃんと意味があったんだ・・っていう話。  まぁ、基本的には真宵ちゃんが監禁されている場所を調べていくのが、ここでの主な内容ですがね。 ちなみにここで登場した“カッポレラーメン”。分かる人には分かるはず。蘇る逆転のキャラクターブログに 登場してましたね。今は消えてしまっているのが残念です。  第2部・動機。最初ここは“死神”っていうタイトルになる予定でした。しかし、完成して読んでみると、 当初より内容も変わり、全然タイトルとしては相応しくなくなっていたので変更しました。 でも、動機と言うタイトルで結構合っているとは思うが。  動機を語る東山・・意外とここが問題の部分だったり。だって冷静に考えればメチャクチャだもん。彼らの動機。(苦笑  第3部・家族。ついに判明、東山兄弟5人目の家族の正体が!!いや・・これに尽きます。 冒頭でのシーンで勘付いた人はいるかもしれませんね。ただ、あのキャラを知っている人でないと無理でしょうが。  序章と繋がりがやっと出てきた感じですね。というか、物凄い繋がりだと思います。書いてみて今思えば。 しかし、真宵ちゃんを霊媒して使う・・これってアイデアを思いついた時は凄いと思ったけど、今はどうなんだろう?  さて、序章との繋がりが最も濃いのがここでしょうか?と言っても、次回が一番濃い可能性も無きにしも非ず。(どっちだ?  わざわざ序章と言う作品を先に連載で長ったらしく書いて、その次に本章と銘打って出したからには、 絶対にどこかで序章ととてつもない繋がりを見せるのでは?というか見せないと!ってな感じで焦っていた自分でしたが、 やっと投稿完了しました。その部分が。  この家族関係は序章を書いていた時から既に出来ていました。だから、序章の時点でかなりの伏線はばら撒いていたわけです。 特にDL5号事件の被害者リスト。あそこに父親がいないことに何人が気づいたでしょうか?(いや、気づいてはいるだろうが)  そして、あの男は殺されたのか・・とまぁ、状況が凄いことになっている第14章。新たな事実も判明し、 何となく御剣が背後の妙な存在を感じ取っているなか、実際はどうなんだか?  そんなわけで、遂に次回が最終章。序章から始まった壮大なストーリーが、やっと終わりそうです。 一応、最終章はエピローグってやつかな?では・・・

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