18年目の逆転〜放たれたDL6・5の死神〜(第10話)
 2001年12月28日午後2時11分。  国営・各民営放送局は、一斉にこの臨時ニュースへと番組を切り替えた。  『只今入りましたニュースによりますと、今日午後2時3分頃。  都内を中心とした広い範囲で震度5強の地震が発生しました。M6,1ほどと推定されており、  のちほど気象庁・地震対策本部からの地震発生報告が行われるもようです。』                       Chapter 10 〜大地を揺るがす悪夢〜  第1部・発覚  同日 午前10時21分 地方裁判所・第1法廷前  「どうして立ち入らせてくれないんだ!?」  法廷前で係官に対し憤る男。  「ですから、法廷はもう開廷していていますから、部外者の入廷は許可できないのですよ。」  係官は2人がかりで男の入廷を阻止する。  「何を言っている!?俺はこの事件の捜査を担当した刑事だぞ!何故立ち入らせない!」  だが、係官は男を通そうとしない。  「しかし、この事件の担当は本庁がしていると聞いています。所轄署の人間は無関係でしょう?」  「ふざけるなっ!俺は確かに所轄の人間だが、初日の捜査をしたのは俺たちなんだぞ!」  だが、もう1人の係官が冷静な口調でこう言う。  「ですが、それは所詮初日の話。今では本庁が捜査権を握っています。 あなたたちは結局、部外者に過ぎません。出て行ってください。」  男はつき返されそうになる。だが、男もここで引くわけにはいかない。何故ならば・・  「だがな、俺はどうしてもここで引くわけにはいかないんだよ!これを見ろ!」  男はある証拠品を取り出した。  「俺はな、この証拠品を法廷に届けに来たんだよ!こいつはこの事件の重要な証拠物件だ!だから入廷させろ!」  取り出されたのはオートマのピストル。これを見た係官2人は、顔を見合わせると何か話し合う、そして・・  「下手な冗談はよしてください。証拠は全て審理で提出されているはず。今更そんな証拠は受理できません。」  予想外の冷たい反応。  「何だと!?これは確かにこの事件の捜査で見つかった証拠品で・・」  「捜査で見つかった全部の証拠品は、本庁が管理し、検察側に提出しているはずです。裁判中にそんな証拠が出てくるはずがない。」  係官は男は突きかえす。  「本庁がだって・・だが、現にこうして証拠が残っている!それにこいつは証拠法にも違犯していない!提出は認められるはずだ!」  「いいえ、本庁はきちんと凶器も提出しています。この証拠は何かの勘違いでは?」  「勘違い?」  話は一向に進展しない。この法廷も、本庁から何かされているとでも言うのか?でなければ、 ここまで所轄に拒絶反応を示すなどありえない。  「・・それは違うな。本庁の奴らが何か不正でもしているからこの証拠が今、俺の手にあるんじゃないのか!?」  「だったら、その証拠を提示して、きちんとそいつを提出できる環境を整えてください。 そうでない限り、その証拠の受理もあなたの入廷も認めない!!」  やがて、応援に駆けつけた係官が男を掴む。  「おい!?何をする!?やめろ・・」  だが、係官達は男を離さない。そしてそのまま、男はつまみ出されてしまう。    同日 午後10時57分 地方裁判所・第1法廷  「ふむ、確かに桟橋の奥に血文字があった形跡が残っているのなら、本当の犯行現場は桟橋の奥。 そう考えるべきなのかもしれません。」  「そう考えるべきなのだ。」  狩魔は満足そうにそう主張する。  (馬鹿なっ!本当の犯行現場が名松池の看板前なのは明らかだ!それなのに・・それはありえない!)  そもそもそんな証拠品、都合が良すぎる。  「どうですか?弁護人?」  「!?」  裁判長は御剣に尋ねる。  「この証拠品がある限り、犯行現場は桟橋奥だったと考えられますが、これに対し異議は無いですか?」  裁判長の問いかけ。異議があるかないか?  (ここで引くわけには行かない。となれば、主張すべきことは1つ!)  御剣は机を叩く。  「裁判長!弁護側はまだ納得できない!本当の犯行現場は名松池の看板前だった!」  「異議あり!ならば弁護人!我輩のように証拠を見せてみろ!」  狩魔が睨みつけるとそう言った。証拠・・この場合証拠は問題ではない。  (証拠なんていくらでもある。ただ、検察側や本庁の証拠がそれを否定しているだけの事。 ならば・・道は1つ!それらの証拠品をさらにこちらが否定するしかない!)  御剣はメガネをかけなおす。  (明らかにこれらの証拠品が存在するはずがない・・だったら、指摘することは1つだけだ。)  御剣は1つの真実に辿り着く。  「裁判長。いいでしょう・・弁護側は証拠を提示します。本当の犯行現場が名松池の看板前だったことを示す証拠を!」  「面白い・・では提示してください。その証拠品を。」  裁判長のその言葉を聞くや否や、御剣は1つの写真を取り出す。  「全ては明らかだ!この桟橋の血文字が事実を物語っている!」  「異議あり!その証拠品は犯行現場が桟橋の奥だということを物語る証拠ではないか!?」   狩魔はそう言う、だが・・果たしてそれは事実か!?  「異議あり!この証拠品はあらゆる意味であり得ないんだな・・狩魔検事。」  そう、これこそが結論だ。  「な、何だとっ!?」  よく考えれば、これは決定的にありえないものなのだ。  「これは、すべておいて矛盾している!そうっ!これが本当に桟橋に残された血文字ならば、 ある現象が起きていないとおかしい!!」  「あ、ある現象とは何ですか?弁護人?」  裁判長・・これは考えればすぐに分かるのだ!  「ポイントは桟橋が、水面ギリギリのところに設置されているというところです。だからこそ、こいつは矛盾している。」  御剣はあざ笑うかのように狩魔を見ながら主張した。  「そう、完璧すぎるからこそあり得ないんだ。狩魔検事。」  「・・ど、どういう意味だ!?」  どうやら、これがトドメだな。  「狩魔検事。完璧主義が裏目に出たようだな!こいつがはらんでいる矛盾。それは、文字がはっきりと残っていることなんだよ!!」  「なっ・・あああああああああっっ!!!!!!」  狩魔はその指摘された事実に驚愕する。  「つまりそれはどういうことですか?御剣くん?」  「裁判長、分かりやすいことです。水面ギリギリの桟橋に血文字が書かれたのなら、 その血文字は水で多少流されたような感じになっていないとおかしい。」  「・・・ああっ!!」  裁判長もこの指摘でようやく事実に気づく。  「つまり、ルミノール反応で出た血文字が、こんなにもはっきりと出ているのは矛盾している!」  そう、だからこそ・・この証拠品ははっきりといえるのだ。  「そういうことだ。狩魔検事・・つまりこの血文字は、不正な証拠品ということだっ!!」  「ぐっ・・!!」   そして、奴は決定的なミスをもう1つ犯している。  「そして、アンタはこれを自分が見つけたと提出のさいに言った。神風刑事もこの血文字に関しては知らなかったようだしな。」  メガネの奥から狩魔を睨みつける。もうすぐで完全に、奴に決定的なダメージを与えることができる。  「そう、これはアンタが警察が知らないところで作り上げた、被告人を有罪にするためのでっち上げの証拠だったんだっ!!!!」  「ぬっ・・うおおおおおおおおおおおおおおおおおをををををををををををををををををををををををををををを をををををををををヲヲヲヲヲヲヲヲヲヲヲヲヲヲヲヲヲヲヲヲヲヲヲ!!!!!!!!」  狩魔豪は悲鳴をあげた。拳で机を叩きつけると、そのまま壁に頭を打ち付ける。  「はっ・・狩魔豪、余計なことをしたがために、墓穴を自ら掘るとはなっ!」  その言葉に、法廷中の誰もが耳を疑う。  「しょ、証人?」   裁判長は態度が急に変わった男に目をやる。  「そんな証拠品などなくてもっ!我々の提出した証拠で完璧だったではないかっ!」  神風刑事は声を荒げる。  (な・・仲間割れか!?)  御剣はどうも先ほどの血文字提出のあたりから、妙に崩れだした狩魔と神風の関係が気にかかっていた。  「何を言うか・・貴様らの証拠品に穴があったからこそ、我輩はそれを完璧にするために証拠品を提出したのではないかっ!」  「な、何だとっ!?」  頭を壁に打ち付ける狩魔。だが、そこから発せられる言葉ははっきりとしている。  「完璧な我輩の立証ができないほど、不完璧な証拠をよこしおって・・我輩の完璧な経歴にドロを塗る気なのか!?お前達は!?」   「何だとっ・・狩魔っ・・貴様・・どうなるか分かってるんだろうなっ!?」  この会話、完全な仲間割れだ。  「静粛に!静粛に!証人っ!それに検察側!口を慎みなさい!」  裁判長は慌てて静止に入る。  (ちょっと待て・・不完璧な証拠・・どういう意味だ!?)  不完璧な証拠・・考えられるのは見つかったボートなどの証拠品が考えられるが、狩魔も認めた!?ということは。  「裁判長!」  「な、何ですか?弁護人?」  御剣はメガネをかけなおす動作をすると言った。  「どうやら、不完全なようです。桟橋奥が犯行現場だったというのは・・証拠不十分という面で。」  その言葉に神風と狩魔がハッとする。  「でっち上げれた血文字の証拠。さらにはありえない証拠の数々。 どうやら、本当の犯行現場は名松池の看板前で間違いないようです。 先ほど、狩魔検事も認めたように・・不完璧な証拠と。」  嘲笑しながら言う御剣。  「ぐっ・・!!」  「っっっ!!!!」  狩魔と神風は共に言葉に詰まる。  「なるほど・・確かに弁護人の主張も分かります。しかし、そうなるとある1つの問題がありますね。」  裁判長は考え込みながらそう言うと唸る。  「・・?ある1つの問題とは?」  御剣は裁判長が何を思ったのか純粋に気になった。だが、それは至って自然なことだった。  「何故、犯行現場が看板前だった事実が隠蔽されたのでしょうか?」  「・・隠蔽?」  そう、どうして本庁は事件現場を偽装したのか?その問題が残る。  「っっ・・裁判長っ!本庁は断言するっ!犯行現場は桟橋奥で間違いなかったとなっ!」  神風は隠蔽という言葉に憤慨しながら紛糾した。  「しかし、証拠品は偽造されたものでしたが・・」  「それはだっ!検察側が勝手に行ったことだっ!本庁は一切関与していないと断言するっ!」  「何だと!?」  その言葉に狩魔は壁に頭を打ち付ける行為を止める・・というより呆然とする。  「なっ・・何を言うか!?本庁も・・」  「黙れ。」  狩魔の言葉を神風が遮った。  「これ以上、完璧な経歴にドロを塗られたくなければ黙ることだな・・ 査問委員会がお前に厳重な処罰を与えることになる。」  「・・!!!!!!!!!!」  査問委員会・・検事の適正を問う委員会の事だ。  (か、狩魔が切り捨てられた!?)  神風は次に御剣を見て言った。  「弁護士っ!血文字の証拠は確かに存在しなかったようだっ! だが、それ以外の証拠がでっち上げだったと立証ができるかっ?」  「!?(な、何だって?)」  神風の言葉には、妙な重みがあった。  「ボートなどの証拠品が不正だった。その証拠は存在してないがなっ!」  「な、なにっ!?」  確かに、現時点で本庁の証拠がでっち上げだったという証拠は無い。不自然なのだが・・。  「そもそも、犯行現場を何故偽証する必要がある?」  「ど、どういう意味だ!?」  神風は不敵に笑った。  「犯行現場を何故、警察が偽造するのかということだ?我々がそんなことをする必要はないではないかっ!!」  「・・!!」  神風の放ったその言葉・・果たしてそうだろうか?偽造する理由はなかったのか?  「異議あり!本庁の人間が現場を偽造した理由。それは、ある人物とこの事件の関与を抹消するためでは?」  御剣は大真面目に答えた。もしかしたら・・全てはそこから始まっていたのかもしれない。  「ど、どういうことだ・・弁護士よぉ・・。」  そして、その言葉を真実のようだ。その証拠に神風の顔は引きつっている。  「弁護人・・これは一体!?」  裁判長は不思議がっている。この事件における・・ある人物の存在を。  「裁判長!おそらくはこの事件、この人物が関係しているはずなのです!!」  御剣は1人の男の顔写真を提出した。  「か、彼はどなたで・・?」  「黒安公太郎。本庁で有名な捜査官で、一時は公安部でも活躍をしていたといわれる。 現在の国家公安委員会のメンバー・・黒安公吉の息子です。」  その言葉に法廷中が騒がしくなる。  「静粛に!静粛に!」  「異議あり!弁護士・・貴様っ、これ以上何をする気なのだ!?」  狩魔はこれまでにない表情で御剣を怒鳴りつけた。  「簡単なことだ。黒安公太郎は、所轄署が初動捜査の段階で、最も疑わしい人物・・ つまり、最重要容疑者として挙げていた人物なのです!!」  この言葉が、さらに法廷中を騒がしくする。  「静粛に!静粛に!静粛に!」  木槌の音がなりやまない。  「だが、その後捜査の指揮権は全て本庁に移され、本庁はこの被告人を容疑者として逮捕。 さらに、その証拠品に関しては偽造の疑いがあることを本法廷で指摘される。」  御剣がここまで指摘すれば、もう誰だって分かるだろう。この事件の裏の顔が・・。  「誰だって分かる。この事件・・本庁が実際の証拠を揉み消して、 他の人物を犯人に仕立て上げようとしていることを!!」  傍聴人の騒ぎは治まらない。  「き・・きさまぁ!!」  神風はしきりに証言台を叩いている。  「いいだろう・・弁護人がそこまで言うのなら、確認してみようではないか?」  とここで、静かにそこ言葉が響いた。瞬時に法廷内は静まる。  「ど、どういうことですか?狩魔検事?」  裁判長はその声の主に尋ねた・・その声の主は狩魔だった。  「ならば、犯人が誰だったのか?それが分かる人物を証言台に立たせようではないか。」  「そ、そんな人物がいるというのですかっ!?」  裁判長は目を丸くしている。  「我輩が最初に発言した内容を忘れたのか?裁判長?」  狩魔は黙ってそう言った。  「・・・・・・まさか、目撃者のことですか?」  裁判長は静かに尋ねる。  「無論だ。」  「なるほどな・・確かにそれなら全てがはっきりするはすだ。犯人が誰なのかがなっ!」  神風もその言葉に同意する。だが、  「・・・・・・・・・。」  御剣だけは無言だった。  (本当に、目撃者が証人として出廷することで・・事件は解決するのか?)  ましてはだ、それは本庁が見つけた目撃者・・当てになるのだろうか疑問がある。  (さらに、証人には狩魔が接している。そこに証言の操作まであったら?)  だとしたら、この裁判はまた振り出しに戻ってしまう。  「異議あり!」  御剣はすぐさま異議を唱えた。  「弁護士・・何か?」  狩魔は不機嫌そうだ。  「裁判長。1つ提案があります。」  御剣はメガネをかけなおすとイチかバチかの賭けにでる。  「何ですか?弁護人?」  (・・これが、全ての事実を知る手がかりになることを祈る!)  御剣は机を叩いた。  「その目撃者は本庁が見つけた人間です。今回の証拠に手が加えられていた疑いが出てきたのと同様、 その証人にも同じことが発生するかもしれない。」  「何だとっ!!」  神風は証言台を拳で叩きつけると御剣を睨みつけた。  「きさまっ!好き勝手言いやがって!!」  「静粛に!証人は黙ること。それで弁護人・・1つの提案とは?」  裁判長は至って冷静だ。  「簡単なことです。弁護側はこの事件の全貌を知る、1人の証人を出廷させようと思います。 警察も検察も証言操作をしていないだろう人物の。」  「異議あり!そんな人物が目撃者以外にいるとでも言うのか?」  「異議あり!目撃者以外の人間じゃない。彼は事件の目撃者だ。まさに、目と鼻の先でその事件を見ている。」  「・・!!」  狩魔はその言葉にある人物の存在を思い出す。  「裁判長、弁護側は・・目の前で両親を殺された被害者の息子。平凡太君に目撃したであろう犯人を聞くべきだと考えます!」  「ひ、被害者の息子ですか?」  裁判長は意外そうな顔をしている。そりゃそうだろう。これまでこの息子の存在は出ていなかったのだから。  「異議あり!この子は心に深い傷を負っている。事件の時の記憶も曖昧で、何も覚えていないのだ! その子供に証言を求める?不可能に決まっている!!」  「異議あり!しかし、この少年は唯一本庁が手を出していない重要な証人だと考えます! 記憶が残っているか残っていないは別にして、語る内容は全て紛れもない事実だと考えます!!」  もう、真実を知るためにはこの子の話を聞くしかない。  「異議あり!5歳の少年を証言台に立たせる!検察側は断固反対だ!」  「異議あり!裁判長!犯人を覚えていなくとも、この子は全てを知っている!そこから新事実が発覚する可能性も十分にありえる!」  「異議あり!それでもだ!そもそも5歳の子供に完璧な証言ができるわけがない!」  「異議あり!目の前で両親を殺されたのです!事実を語ろうが黙っていようが、嘘をつくことはない!」  そして、裁判長が木槌を叩く。  「そこまでっ!本法廷は弁護側の提案を受け入れましょう。」  「なっ、何だと!?」  狩魔は言葉を失う。  「しょ、正気か!?裁判長!?」  神風も言葉を失う。だが、裁判長ははっきりとこう言った。  「私の正直な意見を述べます。警察側・検察側の証拠に証言。ともにとてもじゃないが信用できない。」  狩魔と神風。ともにその言葉に反論もできない。  「少しでも証言が可能なら、この子供から証言を聞くべきだと考えます。それで真実が明らかになるのなら、 本法廷は平凡太君の出廷を命じます。」  そして、御剣に向かって裁判長はさらにこう言った。  「弁護人、この子が証言する内容は、嘘だけは決してない。そう言いましたね。」  「はい。」  御剣は頷いた。裁判長はそれを見て決めた。  「では、この子が犯人の姿を見ていた場合、それは事実だと考えられるわけですね?」  「・・おそらく、そうでしょう。」  裁判長は大きく息を吸った。そして・・   「係官!今すぐ平凡太君を出廷させなさい!これは本法廷が行います!警察とは接触させず、本法廷が単独で出廷させるのです!!」  裁判所が単独で平凡太を法廷へ出廷させる。つまり、警察がこの子に触れないようにする処置。  (真実が・・語られるかも知れない。)  第2部・父親  同日 午後12時51分 地方裁判所・入口  男は車の中にいた。  「くそっ!どうしたらいいんだ!?」  あれから約2時間。裁判所内に入ることすらできない状態にいる男。  「こうしているうちにも、裁判は刻々と進んでいるんだ!なんとかならないのか!?」  車から聞こえるラジオのニュース。まだ判決は下されていないようだが、この裁判に決着がつくのも時間の問題だろう。  「・・それにしても、裁判所が少し慌しくなってきたな。」  色々と出入りが激しくなる裁判所。おそらくは、平凡太出廷の準備によるためだろう。    ・・コンコン  「ん?」  誰かが窓を叩く音に気づいた男、すぐに振り返る。  「どうしました?こんなところで・・」  窓を叩いたのは、裁判所の係官・・だが、1つ違ったこと。それは・・  「“こうちゃん”じゃないか!?」  「あれ・・?信二じゃないか?」  2人は共に驚く。無理もない・・2人は友人なのだ。  ちなみに、信二とは男のことだ。この刑事、名前が“小城伊勢信二(おぎいせしんじ)”という。  「いやな・・今裁判をしていると思うんだが。」  「裁判?ひょっとして連続殺人犯“Q.E.D.”の裁判か?」  こうちゃんと呼ばれた係官はそう尋ねた。  「あぁ、それの事件のことだ。」  「ふぅん・・それで、その裁判がどうかしたか?」  ここで小城伊勢は、例のピストルを取り出した。  「この証拠品が、あの裁判で必要なんだ。だが、何故か俺が持っていこうとしてもつき返されて受理されない。」  そう言ったところで小城伊勢はあることを思いつく。  「そうだ・・!!」  「・・どうした?」  不思議そうな顔をしている“こうちゃん”に、小城伊勢は頼んでみる。  「お前、法廷係官だからさ、この証拠品を裁判をしている第1法廷まで持っててくれないか!?今ならまだ間に合うかもしれない!!」  それは、必死の頼みだった。  「・・・・信二の頼みだ。いいよ、それを持ってってやろうじゃないか。」  「ほ、本当か!?悪いな・・本当に助かるよ!!」  小城伊勢は例のピストルを手渡した。  「ただ、ちょっとこの資料を色々と持っていかなきゃならない。ちょっと遅れるかもしれないが、それでもいいか?」  「あぁ、構わない。俺はもう裁判所には入れないからな。持っててくれるだけでかなり助かるよ。」  渡されたピストル。それが“すべて”だった。    同日 午後12時56分 地方裁判所・第1法廷  召喚を求めてから40分後だった。証言台に1人の子供が立たされた。  まだ幼い5歳の子供だ。  「係官。みかん箱を持ってきなさい。」  裁判長の命令で、係官がみかん箱を3箱持ってきた。そしてその上に子供を立たせた。  「僕・・お名前とお年を言ってください。」  検察側はこの子供・平凡太の証人としての証言に反対している。よって、裁判長が名前を尋ねる。  「・・平凡太。お年は5歳。」  彼は消えそうな小さな声でそう喋った。  「ありがとう。職業は資料によると、近くの名松幼稚園の園児だそうです。」  裁判長が綺麗にまとめた。  「弁護人。それではこの子に質問しなさい。ただし、優しく刺激させないように。」  「分かりました。」  御剣はメガネをゆっくりとかけなおすと、証言台の平凡太の横へゆっくりと歩み寄る。  「きみ、とっても辛い思いをしたんだろうね。」  「・・うぅ。」  彼は泣きそうになる。  「嫌なら嫌でいいんだ。1つ質問しても良いかな?」  優しく頭を撫でながら、御剣は尋ねた。  「君は、お父さんとお母さんを撃った人を・・憶えてるかい?」  「異議あり!まだ心の傷が残っているこの子供に対する質問には問題がある!裁判長!即刻弁護人の尋問を中止するのだ!」  狩魔は指をシャキーンとならして怒鳴った。しかし・・  「異議を却下します。弁護人。かまわず続けなさい。」  「はい。」  御剣は目線を彼に合わせると、優しく語りかける。  「辛いことならいいんだ。でも、できるなら教えてくれないかな?君のお父さんとお母さんを撃った悪い人を。」  長い長い沈黙。そして、彼は口を開いた。  「ぼくは・・見た。」  「!?」  法廷中がその言葉に息を呑む。  「パパとママをうったひとを・・おぼえてる。ゆめにでてくるもん。」  か弱い声。御剣は彼に大きなショックを与えないように、静かにゆっくりと・・ある写真を取り出す。  「それは・・この人かい?」  「・・うぅん。ちがう。」  「!?」  法廷中の人間がその言葉に目を大きく見開く。  (な・・何だって!?)  御剣は写真を落とした。その写真に写っている人間・・それは“黒安公太郎”。  「そ、それでは・・一体?」  御剣は震えていた。まさか・・最悪の展開が頭の中を過ぎった。  (いや、それはない!この子は真実を見ている唯一の人間!!)  そして狩魔は、この子の小さな変化に気づいた。  「少年・・指を指すなら、分かりやすくしたほうが皆にわかるだろう。」  御剣は顔を下に向ける。震えてはいるが、少年の右手が動いている。  「あ・・あのひと・・ぼくがみた・・わるいひと。」  その指が捕らえた人間。法廷中の誰もが言葉を失った。  (そ・・そんな!!)  御剣はメガネに写るその衝撃の展開に言葉がでない。  「どうやら、全てははっきりしたようだ。やはり犯人は被告人である・・“東山章太郎”だったのだ!!」  狩魔は指をシャキーンとならした。何故ならば、この子が犯人として指した人間が、 他ならぬ・・被告席に座っていた“東山章太郎”だったのだ。  「い・・異議あり!」  御剣は平凡太の肩を両手で激しく揺さぶる。  「凡太君!!本当なのかっ!!犯人は・・犯人は違うんじゃないのかっ!?」  御剣の頭の中で一瞬だが描かれた、最悪なシナリオが現実のものとなる。  「こ、こら!弁護人!この子に対し、刺激を与えるのは止めなさいっ!」  「し、しかしっ!」  狩魔はチッチッチッと指を振る。  「どうやら、この少年の言うことは事実なようだ。これで、全ては解決だな。」  「なにっ!?」  御剣は狩魔を睨みつける。だが、御剣自身のミスがそこにはあった。  「弁護人。あなたはこの子を証人として出廷させる前、私のこの質問にこう答えた。」  裁判長は表情は厳しい。  「この証人が黙っていようが、またどんな発言をしようが・・確実にその証言内容に嘘だけはないと断言しましたね?」  「・・ああああああああっっ!!!!」  御剣は最後のやりとりに致命的な自分のミスがあることに気づいた。  「そうなのだよ。そして弁護士、貴様は“この子が犯人の姿を見ていた場合、それは事実だと考えられるか?” の質問に、“そうでしょう”と答えた。」  狩魔は笑いながらそうトドメをさす。  「そっ、そんな馬鹿なああああああああっっっっっ!!!!!!!!!」  御剣はまだ納得できない。  「裁判長。これで判決は言い渡せる。直ちに判決を!!」  「そうですね。私の迷いもなくなりました。これは決定的な証言です。」  裁判長が木槌を持った。  「異議あり!ちょっと待ってくれ!この子は・・警察に何か記憶の操作をさせられた可能性がある! だから、間違って被告人を・・」  「異議あり!だったら、その証拠を見せるのだ!弁護士!」  「ぐうっ・・!!」  狩魔の言葉に反論もできない。そしてさらに、裁判長は御剣に決定的な一言を言い放つ。  「それにですよ、御剣君。私は証人が記憶の操作をされないように、警察ではなく裁判所に、 この子の出廷をさせました。よって、これだけは断言します。裁判所職員はこの子の記憶の操作は行っていないと。」  御剣は自分が自分の首を絞めていた事実にようやく気づく。  (しまった・・最悪な結末だ。私が・・私の詰めが甘かった!!)  御剣は右手で机を叩くと、必死に訴える。  「ですが、これらの事件には不正と思われる証拠品が多々ある!この状態で判決を下すことなど不可能だと言うのが弁護側の・・」  「異議あり!しかし、証人の証言は証拠品と同等の価値がある。それが、 目の前で事件を目撃した人間ならなおさらなのだよ。弁護士。」  狩魔は自らの勝ちに確信して笑った。裁判長もそれに頷くとこう言った。  「そのとおりです。弁護側の言う通り、確かに狩魔検事の証拠には不正がありました。 しかし、それが被告の無実を決定的に立証するとも限りません!!」  裁判長の言ったこの一言は、御剣や傍聴をしている被告人の親類を初めとする人々に衝撃を与えた。  「それに、警察の証拠に関しては不正であるという決定的な証拠も存在しない!」  「そ、そんな馬鹿な!!」  御剣は唇を噛み締めた。もう、打つ手はないのか?  「ふっ、当然なのだ。」  狩魔は目を閉じると腕組を始めた。狩魔には今、裁判で勝ったという誇りと同時に、裁判長から指摘された自らの不正に 動揺しているという様子も見て取れる。  「とにかく、これ以上弁護側に異議がないのなら判決を言い渡します!」  裁判長が木槌を振り上げる。  (まだ・・まだ何かあるはずなのに!!もう、打つ手がない!!くそぉっ!!)  御剣が全てを投げ出すのを覚悟で異議を唱えようとした時だった。                                「有罪。」  その宣告は無常にも響き渡る。終わってしまったのだ。  「嘘だ・・。」  静まり返ってしまった法廷内。そこから聞こえる1つの言葉。  「と、父さんは犯人なんかじゃない!!」  やがてその声は大きくなり、誰が放った言葉なのかはっきりと分かるようになる。  (あ、あの子は!)  御剣は傍聴席から立ち上がった少年に見覚えがあった。その少年は、係官に連行されていく章太郎に向かって、 必死にそう叫んでいた。  「係官!今すぐその子供を黙らせるのだ!」  検察側がシャキーン!と指をはじくと同時に、係官が私から3、4人ほど離れたところにいた少年の体を掴もうとする。  (あの子は・・恭平君!?)  御剣の頭の中に、今朝の控え室での出来事が思い出された。間違いなく、あの時にやってきた、章太郎の息子の姿だった。  そして、その必死に父親の無実を訴える恭平に、係官が掴みかかろうとした時だった。  「止めてくれ!!」  連行されていく章太郎がそう叫んだ。  (しょ、章太郎さん!!)  章太郎は、泣きながら無実を訴える恭平に、やさしい顔で一言。  「大丈夫だ!父さんは必ず戻ってくるから・・」  「父さん・・」  恭平を掴もうとした係官の動きが止まると、章太郎は安心した様子で法廷を去っていく。  「しょ、章太郎さん・・。」  御剣はその姿を見ることができなかった。  「御剣さん・・。」  そんな御剣に、章太郎は最後に・・振り返ると言った。  「あなたを恨んだりしません。あなたは私のために必死に戦ってくれた。いや、私の息子のためにも戦ってくれました。 それだけで、十分ですから。」  そのまま顔を前に向け、連行されていく章太郎。  「・・・・すみませんでした。章太郎さん。」  御剣はただ、頭を下げて謝るしかなかった。  (じ、自分の力が足りなかったせいだ・・。)  そんな御剣に聞こえた声。その声は、法廷中に聞こえるほどの大きさだった。  「父さん・・絶対に・・絶対に・・無罪を証明してみせるから・・絶対に・・父さんをこんな目にあわせたヤツを・・許さない!!」  そしてだ、その声は聞こえた。  「レイジ・・」  「!!」  誰かが私の息子を最後に呼んでいた。だが、もうそんなことはどうでもよかった。  真実は、葬られた。  同日 午後1時26分 地方裁判所・第1法廷傍聴席    少年は信じられないような顔をしている。  「そ・・そんな。父さんが・・負けた・・。」  おかしい。矛盾している。父さんはあの検事の不正を暴いて、無罪判決を勝ち取るといったのに! 結果はどうだ!?不正を暴いたのに有罪判決が下ったではないか。  「な・・何で?」  弁護席で頭を抱えたまま動かない父。そして、不正を暴かれたことでふら付きながらも、壁伝いに法廷から去っていく検事。  勝負はついたはずなのに、どちらも相打ちだったかのように顔色が悪い。そんな法廷の様子を見て呆然としていた少年。 やがてふと何かを思い出す。  (あ・・そうだ!!父さん!!)  立ち上がると、そのまま傍聴席を駆け出していく。ふと父の事が心配になったのだ。 少年の手が傍聴席の扉に触れる・・この時だった。  「レイジ・・」  「!!」  少年は振り返る。たった今、誰かが自分の名前を呼んだ気がしたのだ。  「・・だ、誰?」  だが、誰も少年を呼んだと思われる人は居ない。少年は変だと思いつつも、扉の向こうへといってしまった。  同日 午後1時37分 地方裁判所・玄関  「はぁ・・はぁ・・そこにいたのか!?」  1人の少年が、玄関の壁の隅でうずくまっている少年に声をかけた。  「あの時なぁ、お前が傍聴席で叫んでたのを見て、俺はビックリした。お前・・裁判所に来てたんだな。」  だが、それは嘘だ。ずっと前からそんなことは知っていた。控え室前で父に会うべきか悩んでいた彼を、影からそっと見ていた。  「お前が叫んだ後だよ、そのままどこかへ走っていこうとしたのを見て、俺はすぐに反対側の傍聴席からお前を呼んだんだぜ。」  肩にそっと手をやる。  「俺だって・・悔しいさ。」  少年の目から落ちたもの。それはずっと前から、うずくまっている少年が流しているものと同じだった。  同日 午後1時35分 地方裁判所・第1法廷  「父さん!」  「・・怜侍!?」  少年は傍聴席を出て、真っ先に父のところへと向かった。  「怜侍・・どうしたんだ?」  父の様子はおかしかった。少年は父の様子を見て言葉をかけることができなかった。  「まだ・・まだ審議すべき点は残っていたんだ。事件現場が移動された謎。これも解明できていなかったというのに!」  しかし、警察の不正を立証できなかったために、その道は絶たれた。  「くそっ・・!!私は救うことができなかった!!」  「・・父さん。」  少年はゆっくりと父の隣へと歩み寄る。やさしく・・やさしくとだ。  「父さんは、頑張ったじゃないか・・。」  その手が、優しく父の肩へと触れていく。  「うぅ・・。」  父は無言で、息子の頭を撫でた。机は涙で濡れていた・・悔しさを象徴するかのように。  第3部・鉄槌  同日 午後1時48分 地方裁判所・公衆電話前  「検事局長。・・・・もうしわけない。」  裁判所職員から、裁判終了後に検事局へ電話をかけるようにとの連絡があったと聞かされた男。  電話をしての一言が、まずこれだった。  『・・・・狩魔くん。君らしくもないヘマをしたものだ・・・・あの御剣弁護士に、シッポをつかまれるとはね。』  当然、検事局には今回の不正の事実はもう伝わっている。弁解の余地はなかった。  「・・・・油断・・・・したようだ・・・・。」  油断・・としか言いようがなかった。まさか、自らの“完璧”な証拠に“不完全”な部分が存在したという事実。 これがまた、男のプライドを許さなかった。  『査問委員会が・・君への出頭を求めているよ。』  「!?」  査問委員会・・男にとってそれは、初めてのことだった。今まで出頭されるようなことはしてきた。 だが、その証拠は“完璧”に消していたために、“完璧”な経歴を傷つけることはなかった。  『査問委員会は、君に厳重なる処罰を求めている。おそらく、それまでの過去の清算もさせる気だろう。』  「か、過去の清算だと・・!!」  今まで査問委員会は狩魔豪に対して、幾度も出頭をさせようと試みた。だが、完璧な証拠がなかったためにできなかった。 そして今日、それが可能になった。  『警視庁・・つまり、本庁のほうも君に対する処罰を求めている。』  「け、警察も・・だと!?」  神風の言葉が頭を過ぎる男。  『本庁は、正当なる捜査内容を・・君の不正によって歪められたと。そして、 国民の警察に対する信頼性を著しく低下させたと抗議している。』  「な・・何を言う!?不正は捜査は本庁も・・」  その言葉を局長が遮った。  『狩魔君。相手が悪すぎだ・・今回の捜査、確かに本庁が不正をしたのは事実だろう。』  「・・!!ならば・・」  『だが、この事件の裏で動いていた組織が悪すぎたんだよ。狩魔君。』  局長は躊躇いながらも、その言葉を発した。  『この事件、動いていたのは本庁の・・“公安課”だ。』  「こ・・公安課・・。」  出る言葉も出なくなる狩魔。  『君が不正捜査をした警察を告発しようと、例え完璧な証拠で告発しようとそれは無意味だ。 相手が公安課では・・手も足も出ない。さすがの君でも・・。』  狩魔は震えだした。となれば、どのみち自身に待っている道は・・  「局長・・我輩は・・解雇になるのか?」  『おそらく。』  狩魔は思った。このままでいいはずがない・・。  「局長!!」  『なっ、何だね!?急に大声を出して・・』  怒鳴っていた。  「我輩はまだここで屍となるわけにはいかないのだ!!何とか・・何とか解雇だけはっ!!」  狩魔には、完璧なプライドがあった。それが、余計彼の恐怖を煽る。  『解雇を防ぐ・・その方法は1つだけある。』  局長は、ため息混じりになりながらもそう言った。  「ほ、本当か!?」  狩魔は救われたと思った。だが、次の瞬間・・彼はどん底に突き落とされる。  『それなりの誠意をこちらが見せて、許しを請うしかない。検事局としてはだ・・。』  「誠意・・だと?」  しばしの沈黙、やがて・・局長は決定事項を狩魔に話す。  『残念だが、君には“処罰”を受けてもらうよ。さすがに今回ばかりはかばうわけにもいかないのでね。』  「!!!!!!!」  男の頭の中は真っ白になった。  『これが、私たちができる精一杯のことだ。検事を統治・管理する検事局が、検事に責任を持って処罰を下す。 これが、君が生き残る最後の手段だ。』  男は生き延びる。だが、死ぬこと以上に苦しいことを再び味わう。それは、完璧という名の自尊心を汚される事。 いや、もっと言えばこの男の、生きる原動ともなっている“完璧”の2度にわたる消滅だ。  「・・・・ミ・・・・ツ・・・・ル・・・・ギ・・・・」  生きる原動の消滅は、死を即ち意味する。  “検事・狩魔豪”は、この瞬間死んだ。法の番人である検事の狩魔豪は、その役目を終えてしまった。 それは数時間後、もっと目に見える形で姿を現す。    同日 午後1時59分 地方裁判所・玄関前  裁判所から2人の少年。  「なぁ、恭平・・これから俺たち。どうするか?」  「さぁな、俺たち・・父さんがいなきゃ、帰るあてなんてねぇよ。」  足取りは重い。  「母さんが、いればな・・。」  「その話はよせよ。余計寂しくなっちまう。」  家族・・今の2人が、一番欲しているものだ。  「父さんが有罪なんて間違ってる!!父さんが犯人なわけないじゃないか!!」  「それは俺だって同じだ!父さんが犯人だったら・・もし父さんが犯人だったら・・」  ここまで出かかって言葉に詰まる。  「分かってるさ!だから尚更、父さんは犯人じゃありえないだよ!!」  少年には、自分の父が犯人じゃないと思える理由があった。勿論、父が殺人なんて犯す人間はないことを 知っているというのが1つの理由だが、実は・・もっと大きな理由がある。  「この事件のせいだ・・この事件のせいで、俺たち家族はメチャクチャになったんだ!!」  「そうだぜ・・許せない、俺たちをこんな目にあわせた奴を絶対に許さねぇ!!」  少年達は決意する。  「時間はかかっても、いつか絶対に・・復讐してやるんだ!どんな手を使っても、どんな人間になろうとも!!」  決意は固かった。それはもう、誰にも止められない。  「だったら俺は弁護士になってやる・・そして、父を救おうとしてくれたあの御剣さんのような弁護士になって、 真相を暴いてやるんだ!!」  「それだったら、俺は警察で一番偉い奴になって、この事件の真相を暴いてやるさ!!」  ともに、目指すものは1つだ。  「例え自分が、どんなになろうとも・・絶対に復讐するんだ。そのためには、全てを知らなきゃならない。全てを・・!!」  手を強く握り締める。これまでにないほど・・。  「その為だったら・・死神だろうが何だろうがなってやらぁ!!」  その瞬間だった。2人の強い何かが、目に見える形で表れたかのような現象がおきる。                ・・グラグラグラグラグラグラグラグラ  「!?」  2人は立ち止まる。景色が歪んで見えた。  「これは・・地震?」  そう言った瞬間だった。        ・・ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ  物凄く強い揺れが2人を襲った。  「うわあっ!!」  2人は立てずに、その場で倒れた。  同日 午後2時1分 地方裁判所・4階エレベーター前  「何だよ、また下の階で資料を貰わなきゃならないのか・・面倒だな。」  1人の係官がぶつぶつと呟いていた。  「この頼まれた証拠品を・・法廷に持っていかなきゃならないのに、急がないと終わっちまう。」  とここで、先ほどから待っていたエレベーターの扉が開く。乗っていたスーツ姿の人間が2人、そこから出ていく。  「っと、急がないと。」  係官はエレベーターに乗り込むと、1階のボタンを押した。  同日 午後2時2分 地方裁判所・3階エレベーター前  「父さん・・大丈夫?」  少年は父の様子を見ながらそう尋ねた。  「あぁ・・大丈夫だ。だから怜侍は心配しなくてもいいんだよ。」  そう言うと御剣信は、エレベーターのボタンを押した。  「本当に・・?」  「あぁ、本当だ。」  エレベーターの扉が開く。中には1人の係官がいた。  「さぁ、乗ろうか。」  「うん。」  2人はそのままエレベーターに乗った。  「何階ですか?」  係官が信に尋ねる。  「あ、すいません・・1階です。」  「じゃあ、同じですね。」  扉が閉まる。ここは3階、1階までは2階分の距離だ。さほど遠くもない。 なのに、このエレベーターから出るのに、これから長い時間を費やすことになる。  (2階か・・)  エレベーターの表示ランプが2階を照らす。あと1階・・そのたった短い数秒が、次の瞬間数時間にも及ぶものとなる。                ・・グラグラグラグラグラグラグラグラ  「!?」  3人は揺れだしたエレベーターに気づく。  「地震か!?」  係官があまりの揺れに耐え切れず倒れた。        ・・ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ  揺れは激しくなる。  「うわっ!!」  少年が倒れる。  「怜侍!?大丈夫か!?」  父が叫ぶ。と同時に、エレベーター内の明かりが消える。                        ・・ガクンッ  そして、明かりが消えたて1秒もしないうちに、地震のゆれとは違う大きな揺れを3人が襲う。  「っっ!!?」   3人の体が一瞬浮く。そして激しく床に叩きつけられる。  「・・・・・・・揺れが、止まった。」  御剣信は暗闇の中、ただ一言そう言った。  「ちょ、ちょっと待てよ。」  係官の声だった。彼はエレベーター内の異変に気づく。  「え、エレベーターは・・どうなったんだ?」  御剣親子はその言葉に凍りつく。そう、さっきの地震とは違う何かの衝撃。  「緊急停止・・なの?」  息子は父に不安そうな顔で尋ねた。だが、現状はそれより最悪だった。  「いや、エレベーター内の明かりも消えているから・・停電したんだろう。」  停電・・それを聞いた係官、そしてそれを言った御剣も、もう1つのあることに気づいた。命に関わる、とてつもなく重要なことだ。  「ま・・さ・・か・・。」  2人は上へと顔をやる。そして、音を必死に聞き取ろうとする。だが、聞こえない。  「空気が・・嘘だ・・。」  死へのカウントダウンが始まった。電気が無事に復旧した時、3人全員は・・生きているか死んでいるか?そのどちらかだった。  同日 午後2時頃 地方裁判所・地下1階カフェテリア  テーブルにずっと座っている男が居た。  (我輩は・・これからどうすれば?)  その男は、悔やんでいた・・そしてまた、苦しんでもいた。  (我輩の完璧な人生が・・完璧が・・)  完璧に依存していた男。完璧に取り付かれていた男。完璧に自分の全てをかけていた男。 その完璧すぎるほどの完璧な人生を歩んできた男の、初めての失敗。  (処罰・・一生消えぬ・・処罰・・)  その男の苦しみはあまりにも大きい。地震に気づかないほど、そして・・停電にも気づかないほど。  もうすでに、彼の頭の中は真っ暗だったのだろう。  同日 午後3時15分 エレベーター内  「くそっ!ダメだ。何度やっても繋がらない!!」  非常電話が繋がらないことで、一層恐怖が募る3人。最後まで外界と接触を試みようとした係官は、拳を壁に打ち付ける。  「父さん・・僕たち、ここから出られるの?」  少年の声は、恐怖で震えていた。  「あぁ、大丈夫だ。だから、落ち着くんだ。」  御剣信は息子の頭を撫でた。しかし、こうしているうちにも、酸素は徐々に減っていく。  「携帯もエレベーター内では繋がらなかった・・もう、電気が復旧するのを待つか、もしくは助けがくるまで待つしかないだろう。」  御剣信の言葉に、係官の顔は恐怖で歪む。  「そ・・そんな!!」  死の恐怖だ。次第に息ができなくなっていく恐怖・・暗闇がその不安を飲み込んでいき、さらに恐怖を助長させる。  同日 ??時??分 ?????????  「ここは・・どこなのだ?」  男がやっと我に返ったとき。そこは真っ暗だった。   「確か我輩は・・カフェテリアにいたような・・。」  記憶がはっきりとしない。ただ1ついえること。あの後自分は、無意識のうちにカフェテリアから出て行き、 裁判所内を彷徨っていたようだ。  「この暗闇・・何があった?」  あれからどのくらいの時間が経ったのかも分からない。そしてここがどこなのかも分からない。  「ここは、どこなのだ?」  2回目の台詞。次第に暗闇に目が慣れてくる男。やがて目の前にエレベーターが見える。  「2階・・なのか?」  暗闇の中、外から漏れる微妙な明かりで、ここが何階なのか把握する男。  「とりあえず、エレベーターに乗るか・・」  男はエレベーターの前に立つ。  「・・ん?エレベーターが止まっている?」   ここで初めて、男はこの状況を理解した。  「停電・・しているのか?」  男があたりを見渡してそれを確かめようとした時だった。                           ・・パァン!  (・・!?)  それはある種、運命の悪戯だったのかもしれない。  同日 ??時??分 エレベーター内  もう何時間経ったのだろうか?未だに助けは来ない。閉じ込められた人間達の精神は限界に達する。  (く、苦しい・・)  もはやその言葉すら発することができなくなってきた少年。御剣信もぐったりとしている。 底知れぬ闇の中、永遠にこの闇から抜け出すことはできないのではないか?という錯覚に陥る。  「助けてくれっ!い、息が・・・・」  係官がもがきだした。どうやら、もう全員に限界はきているらしい。少年はその声に、死という恐怖を感じる。  「うるさい!黙るんだ!・・・・こっちまでおかしくなる!」  父親である信は、息子のその様子を悟ったのか、係官を落ち着かせる行動に出る。 だが、係官の精神は、長時間にわたる密室から出られない状態と死が近づいているという恐怖。 それに暗闇という要素が重なって、もはや正常には戻らない。  「出せ!ここから出してくれえっ!」  「大声を出すな!酸素を余計に消費するぞ!」  エレベーターのドアを叩こうとする男。だが、息が出来ない苦しさから、腕が思うように動かない。 御剣信はそんな様子の男に一喝する。  「・・・・・・・・・・・・!」  エレベーターのドアを叩こうとして動かなかった腕、しかし、その腕が少しだが動き出す。  (そうだ・・苦しいのは人が3人もいるからなんだ!!)  能に酸素が供給されない。よって、思考回路までがおかしくなる男。体を少しずつ動かしていく、ある人物に向けて・・  「い・・・・息ができねえ・・・・!」  少年の意識が次第に遠のいていく。けれども、この密室での異様な気配が、自身の頭の中で何かを必死に訴えている。 危険だと・・何かが危険だと。  (そうさ・・俺が助かる方法は1つ・・!!)  男の意識は朦朧としている。だが、“生きたい”というこの世に生まれた生物が必ずと言っていいほど持っている本能が、 自らを生かすための手段へと突き動かしていく。   「お前が空気を汚すからだ・・・・」  「な・・・・何だと!」  死の恐怖から生まれる、生きろという本能の目覚め・・もとからこの世界は、弱肉強食・・ 弱いものは強いものから食われていく世界だった。だがこれも、己が生きていくため。高度な知能と感情を持った人間以外は、 生きるために皆・・普通にこれを繰り返している。  「俺の空気を吸うな!い・・・・息の根を止めてやる!」  だからまた、人間の世界には悲劇が多いのかもしれない。  「う・・・・うわっ!何をする・・・・止めろ・・・・!」  高度な感情というものを持っているばかりに・・  「俺の空気を吸うなァァァァ!」  係官が御剣信の息の根を止めようと、首をその手で絞めようとする。先ほどまで動かなかった腕が嘘のようだ。  (お父さんが・・・・)  少年の目の前で起きていること。それは紛れもない事実。  (お父さんが、襲われている・・・・!)  父は必死になって係官を振り払おうとする。父も生きるために必死だ。だが、振り払おうとするだけで、 あくまでも全員無事に助かろうとしていることを現している。そんな父を無視するかのような係官の行動。少年には理解できなかった。  (・・これは、ピストル?)  だが、理解できなくとも確実に言えることが1つだけあった。それは、父が殺されるかもしれないという事実と恐怖。 その2つの感情が自然と、争いの中で係官が落とした銃を、少年に拾わせる。  (僕のお父さんから・・・・)  必死だった。助けたかった。それが、意識が消えかけている少年に、最後の力を与えた。  (お父さんから、はなれろぉっ・・・・!)                          ・・パァン!  「うぐおおおおおおおおおおおおおおをををををををををを!!!!!!!」  この瞬間、3人の意識は途絶えた。  まるでこの叫び声が、子守唄の機能を果たしていたかのように・・3人はぐったりと、眠っているように動かなくなる。  エレベーター停止から約5時間後のことだった。そしてだ、皮肉にもその直後・・電力は回復する。                           ・・ブォン  密室に空気が供給され始める。それと同時に、明かりも回復する・・そして、運命の扉が開いた。    同日 午後7時7分 地方裁判所・2階エレベーター前  (あ、熱い・・我輩の体に何が起きた!?)  男は右肩を必死になって押さえている。あまりのことに、痛みの程度がよく分からなくなる。  (!?)  とここで、目の前が突如明るくなった。電力が回復したのだ。  (電力が・・回復したのか?)  それと同時に、目の前のエレベーターの扉が動き出した。ゆっくりと・・ いや、この男にはそう見えたのだろう、ゆっくりと開かれる扉。  (こ・・これは!?)  その先に見えた現実。これもまた、自分の右肩の状態以上に意味が分からなかった。 3人の人間が意識を失い気絶しているその姿は、あまりにも孤独で恐ろしかったエレベーター内での状態を想像させる。  「・・・・!!!!!!!!!!!?」  その時だった。男の目の前に人生を狂わせた宿敵がいた。  「・・・・ミ・・・・ツ・・・・ル・・・・ギ・・・・」  しかも、その宿敵は今気絶している。男の憎悪が最高潮に達する。あの処罰の決定を聞かされた時と、 全く同じ言葉を発しているのがその証拠だ。  「・・・・・・。」  エレベーターのすぐ手前を見る。そこにはピストルがあった。本当にすぐ足元だ。  (これは・・運命なのだ。我輩の全てを狂わせた男を、狂わせてくれるために神がくれた、最初で最後のチャンス!!)  男は躊躇しなかった。それを手にとったとき。何を思ったのだろうか?  「貴様自身・・誰に殺されたのかも分からない。我輩にとっては、まさに完璧な復讐となるのだ。」  狙いを全てを狂わせたあの男に定める。実際、自分の人生が本当は色々な意味で狂いだしていることに、 こいつ自身は気づいていない。  「貴様はよくやった・・だが、所詮この程度だったのだ。」                            ・・パァン!  鉄槌が振り下ろされた12月28日。  有罪判決の時に振り下ろされたその木槌は、その後狩魔豪に処罰を与え、少年達には父親の復讐を決意させた。 そして狩魔豪は御剣信を殺害し、御剣怜侍は最愛の父を失ったことで苦しみ、灰根高太郎はその人生を狂わされた。 事件後、警察に依頼された霊媒に綾里舞子が失敗したことで、倉院流霊媒道は転落の一途を辿り、綾里舞子は失踪してしまった。  まさに、様々な人たちに振り下ろされた鉄槌は、色々なものを押し潰していった。  ・  ・  ・  ・  ・  ・  12月28日 午前9時43分 地方裁判所・被告人第5控え室  「今日で、終わるんだな・・。」  「そうだな。」  2人の少年は大人になった。  「それより、鹿羽組の奴らはどうなんだ?」  「多分・・大丈夫だろう?」  2人は少し不安そうな顔をしている。  「もし・・失敗したら、お前は本当にそれでいいのか?」  無言だった。  「何か言ったらどうなんだ?」  「・・・・いいんだ。」  そして、次の一言が・・とても重かった。  「俺は後悔しねぇから。それくらいの腹はくくってる。」  その言葉を聞いた時、男は何を思ったのだろう。  「そうか・・ならいいがな。」  同日 午前9時20分 地方裁判所・検察側第5控え室  私は戸惑っていた。  「今回の事件・・昔のあの事件が発端なのは間違いない。」  昔の事件、それは当然DL5号事件もそうなのだが・・。  「DL5号事件の裁判・・すなわちあの日の出来事も重要になってくる。」  私の手には、あの日に父が戦った裁判の資料があった。父が殺害された時に持っていた法廷記録がそのまま・・。  「とりあえず、あの事件には謎が多すぎる。本庁の不正な証拠の偽造や隠蔽、事件現場の工作・・それに。」  昨夜得た情報から、致命的な矛盾を見つけた御剣。  「凶器・・これが意味するものとは?」  それ以前に、この裁判でDL5号事件のあの裁判を再び扱うのかが分からないのだが、 動機面での立証になった場合、彼らの激しい反論を考えると・・。  「あの事件の議論に再びなりそうな気がするな。」  事件当時の父の法廷記録を見る御剣。  「凶器にあった致命的な矛盾。それの理由が分からない。何故、本物に“すり替わった”のかが?」  その答えが、この法廷で出るとしたら、その時は一体?  「そしてまた、18年前に日安寺健次郎(ひあじけんじろう)が行った内容も重要となるだろう。」  こころ診療所・・昨夜発覚した。もう1つの事実だった。  全ての始まりは昨夜だった。あの1本の電話が全てを決定付けた。    12月27日 午後10時50分 地方検事局・上級執務室1202号室  「直訳すれば明らかだったではないか!!」  私がツイン弁護士の意味に気づいた時だ。  ・・プルルルルルルル  電話が鳴り響く。しかもこんな時間にだ。  「一体誰なのだ?こんな時に?」  そう言いつつも電話をとる御剣。  「もしもし、御剣だが・・。」  『もしもし!御剣検事ッスか!?』  この独特な声、聞き間違えようがない。  「糸鋸刑事・・どうしたのだ?こんな時間に?」  だが、この電話が1つのおおきな変化をもたらした。  『ある男が、自分の身を保護していほしいと署に来てるッス!』  (保護?)  御剣は理解できなかった。だが、とりあえず詳細を聞かなければ判断は出来ない。  「その保護を求めている人間・・誰なのだ?」  それに対する糸鋸刑事の答えが、御剣にある決心をさせた。  『それが・・本庁の公安課の人間で、神風国斗と名乗っているッス。しかも自分は今回の事件で狙われていると言ってるッス!』  「本庁・・公安・・狙われている?」  どうやら、詳しく話を聞く必要がありそうだ。  「分かった。すぐに保護するのだ。あと、私もそちらへ今すぐ向かう。いくつか聞きたいことがある。いいな?」  『了解ッス!!』  ・・ピッ  自分も命を狙われている・・そう考える公安課の男。重要な手がかりがあるかもしれない。  過去へと直結する重要な手がかりを持った当事者が、やっと御剣の前に現れる。  今、真相へと事件は向かい始めた。  Chapter10 end  ・・・It continues to chapter 11

あとがき

 さて、Chapter10のタイトルは“大地を揺るがす悪夢”。  ついにあの事件が発生してしまいました。というわけで、過去編の完結編というわけです。    第1部・発覚。これはまぁ、狩魔の不正を御剣信が立証したところで、初めてある男の存在が明るみになった。 と言う意味ですかね。なんと言うか今回、不正な証拠というやつで結構悩みました。やっぱりそこは重要ですからね。 どうだったろうな?  第2部・父親。ここでは3つの父親が登場します。父親を目の前で殺された5歳の子供。 父親の敗北を目の当たりにした御剣怜侍。そして父親が有罪判決を受けてしまったあの少年たち。  逆に言えばこの第2部のタイトル、“息子”とも考えられるのではないでしょうか?  第3部・鉄槌。この意味は作中のどっかで書いた気がします。だから省略。ちなみにこの鉄槌。 自分が好きな漫画で加藤元浩さん作の“Q.E.D.証明終了”の“凍てつく鉄槌”というお話を読んで思いつきました。 えぇ、勘の言い方なら分かるかもしれません。連続殺人犯“Q.E.D.”って出すところから見ても、 自分はこの作品大好きです。(? 結構序章はこの漫画に影響されたりしてますね。 (別にそれはストーリーに反映はされてないけど、要はタイトルが・・ってことかな。)  えー、過去の因縁対決も無事に終了しました。ボリューム的にはどうだったか非常に謎ですね。  あとDL6号事件の発生。結構ここは神経使いました。しかし、楽しく書けたりもしましたが。(どっちだ?  個人的には結構満足した仕上がりですが・・微妙ですねぇ。読んでみると。  さて、次回からは時間軸が現在に戻ります。一応次回から最後の法廷もスタートかな?  これからますますヒートアップしていく物語。真相が徐々に明かされていく予定なので・・頑張っていきたいです。 序章とのつながりもようやく見えてきましたしね。以上です。

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