逆転のホワイトホース(第4話)
                予想外の事件の真相を突き止めようとすると、              必ずと言っていいほど現れるのは予想外の衝撃的な事実。               冤罪を扱った裁判ならば、それは避けては通れぬ道。              今ここで、1つ目の衝撃的事実を明かすときが来たようだ。                         第4章・馬野と圭羽  刀技の弁護側に対する反論として、1人の証人がこの法廷に召喚された。  「・・証人。名前と職業を。」  その男は、見た感じ馬野と同じくらいの年齢に感じる。服装は下が普通の長ズボン。 上は半そでのシャツと、イマイチファッションには気を使う人間には見えない印象が強い。  「名前は圭羽剛(けいばつよし)。職業は、今は道路工事関係です。」  (今は?)  妙なところで突っ込んだ成歩堂。だが、あえて口にしない。刀技から嫌味を言われそうな気がしたからだ。  「それで、この証人は馬野高次郎さんのアリバイ証明者とのことでしたが?」  裁判長が刀技を見ながら尋ねる。  「あぁ、アリバイ証明者だ。」  刀技はレシーバーをいじりながらそう言っている。  「なるほど君。アリバイ証明者って言うことは、その空白の10分間。馬野さんが何もしていない。って証明できる意味なのかな?」  真宵は考えながらそう意見する。  「どうだろう?正直なところ僕にも分からないけど。間違いなく犯行は無理だったと言う証言はできるのかもしれないね。」  「ふーん。じゃあ、どのみちこの証言が、とても重要だってことだね。」  そう言うことだろう。今までの法廷で、真犯人のアリバイ証明者というのは初めてかもしれない。  「じゃあ、この証人の話でも聞いてもらおうか。成歩堂弁護士。」  刀技は急に真面目な顔になるとそう言う。  「(どうしたんだ?急に真面目な顔になって・・)そうですね。」  とりあえず頷くと証言を聞くことにする成歩堂。  「それでは証人。馬野さんのアリバイ証明について証言をお願いします。」  「分かりました。」  裁判長のその一言で、問題の証言が始まる。  証言開始〜馬野のアリバイ証明〜  「自分はあの日。當競馬場の馬野さんと事務所で話をしていました。時間はちょうど1時20分くらいだったと思います。 話の最中に第2レース開始の合図も聞こえましたし。それで、10分か15分くらい会話してから別れました。」  意外と短い証言だ。  「なるほど君。この証言・・。」  真宵が言いたいことは分かる。  「刀技検事?」  裁判長の同じ考えを持ったようだ。  「何だ?」  刀技はいささか、周りの人間が不思議そうな顔をしているのに不機嫌なようだ。  「この証言。馬野高次朗のアリバイのどこを証明しているので?」  裁判長のその一言を聞いた刀技。ため息をつく。  「ふぅ・・本当にこの法廷は錆付いてしまったな。ここに私が1度、新風でも吹き込んでやろうじゃないか。」  そう言って法廷内にやってきたのは、新風ではなくホワイトボード。この男のもう1つの特徴だ。  「なるほど君。ホワイトボードだよ!」  「はしゃぐなよ。たかがホワイトボードだぞ。」  刀技と言う検事は、昔からよく事件の説明をするのにホワイトボードを使う。2年前もそうだった。  「いいか、ここに時間の流れを簡単に書く。」  そう言うと革ジャンのポケットからマジックを取り出して書き始める。  「彼が馬野と会話をはじめたのは午後1時20分頃。それから10分か15分後だから、 話が終わって別れたのは午後1時30分か35分だろう。」  「!?(何だって!?)」  成歩堂は徐々に、この証言の重要度が上がっているような気がしてきた。  「で、馬野が通報をした時刻が午後1時36分。走ってい1分だから逆算して現場での遺体発見は午後1時35分。」  刀技はそのままマジックで書きつづける。  「馬野と圭羽の会話が終わったのが午後1時30分から35分の間だ。事務所から現場までは走ってい1分だが、 歩くと2,3分だ。助手や糸鋸刑事、それに自分の足で確かめた結果だ。間違いはない。」  成歩堂はこの言葉で徐々に顔が青ざめていく。  「会話が終わった時刻が午後1時30分頃と仮定すれば、馬野がそこから現場まで行くのに大体2、3分から、現場へついた 時刻が1時32分か33分。状況を把握するのに1、2分掛かったとしたら、現場を走って出た時刻は大体1時35分頃。」  意外と筋が通っているこの主張。そうなれば、通報時刻は言うまでもなく・・  「ダッシュで1分だ。通報時刻は午後1時36分となり、筋は通る。」  刀技は最後にそう言った。  「そ、そんなあああああああああっっっっ!!!!!!!!!」  成歩堂の叫びだけが虚しく、この法廷内に響く。  「なるほど。それなら筋は通りますな。」  裁判長が納得する。  「ご理解を感謝する。裁判長。わざわざ検事局の自分の部屋から運んできたんだ。分かってくれないとむしろ困る。」  刀技はそう言うとホワイトボードを片付ける。  「あのホワイトボード。わざわざ検察局から持ってきてたんだね。」  真宵はむしろそっちに感心している。だが、成歩堂にとってはそれどころではない。  「異議あり!しかし!馬野さんの証言にはこの証人の事は出ていない!」  「言い忘れもあるさ。人間だからな。」  「しかし!それ以外にも馬野さんは、現場で第2レース開始の合図を聞いている。 しかし、その証言だと第2レース開始時刻に馬野さんは、この証人と事務所にいたことになる!」  「そういうことさ。成歩堂弁護士。」  成歩堂の反論を一言でかわしてゆく刀技。  「冗談じゃない!馬野さんの証言ではこの証人の存在がなかったのに、都合が良すぎます!」  机を叩いてそう叫ぶ成歩堂。  「異議あり!都合がいいのはお互い様だ。成歩堂弁護士は馬野が殺害したと主張しているからな!」  刀技はその独特なポーズで成歩堂に指を突きつけると叫ぶ。  「しかし!状況的に見てそれは間違いない!」  「異議あり!状況的にはな。しかし物的証拠が存在しない!」  「ナニッ!?」  刀技は笑っていた。  「いいか?確かに検察側の主張も状況証拠に頼っている部分が多いかもしれない。だがな、そのために証人の証言がある。」  「どういうこと?なるほど君?」   真宵は理解していないようだが、結構単純な話だ。  「証人の証言は重要な証拠として扱われる。つまり、弁護側が状況証拠だけに対し、 こちらは状況証拠+証言という強力な証拠が存在してるのさ。」  まぁ、その証言と言うものにも伝聞証拠という論外も存在するが、だいたいは刀技の言う通りだ。  「それに馬野は遺体の発見者だ。殺人現場を目撃するなんていう衝撃的な場面。 仕事上私や成歩堂弁護士なら多いから慣れているかもしれないが、馬野は一般人。ましては調教師だ。 馬の死を見ることはあっても、人が殺害された現場なんて普通見ない!!」  「その通りですな。」  裁判長も頷いている。ここまでくれば検察側の主張なんて、大体1つしかないだろう。  「馬野は混乱していたんだ。この証人との会話も証言し忘れただけだろう。」  「ですが、第2レース開始の合図を聞いたあの証言は・・」  「聞き違い。の可能性もある。」  刀技は冷静にそう切り返す。  「異議あり!そんな馬鹿な!ありえない!」  「異議あり!だったら成歩堂弁護士。この証人が聞いた第2レース開始の合図は何だ?」  「!!」  確かにそうなる。圭羽も第2レース開始の合図を聞いているのだ。  「それにな。あの時に第2レース開始の合図が、2回あったらどう思う?」  「な、何だと!?」  刀技の笑いが1番、何かを企んでいる顔に見えた瞬間だった。  「ど、どういうこと!?第2レースの合図が2回!?」  真宵も良く分かっていない。成歩堂は反論する。  「そんな馬鹿な!第2レース開始の合図が2回なんてありえない! それだったら、その合図は第3レース開始の合図じゃないですか!!」  「異議あり!違うな。あの時に第2レース開始の合図は確かに2回あったんだ!! 何しろ、第2レースはやり直しが行われたのだからな!!」  刀技は拳を叩くとある証拠品を投げつけるようにして提出する。  「こ、これは何ですかな!?」  裁判長は資料を見ながら尋ねた。  「これは當競馬場のレース記録だ。事件当日の午後1時25分に行われた第2レース。 ありえないことに、騎手が落馬すると言うハプニングが発生した。 そして、それを皮切りに続々と他の騎手も落下、よって、全員落下してレースがレースとして成り立たなくなったんだよ!!」  「なっ!!まさかそれは!!」  成歩堂は馬野の証言に入る前の真宵との会話を思い出した。確かに第2レース。そんな事件があったと話した。  「それでな、第2レースはやり直されたんだよ!午後1時35分にな!!」  「な、何ですって!?(午後1時35分だって!?)」    <第2レースの記録>  午後1時25分に開始。しかし騎手達の落馬のより35分に再びやり直した。  刀技はさらに追い討ちをかける。  「そうさ、馬野が現場で聞いたレースの合図は午後1時35分のものだった! で、その10分前に馬のと圭羽は事務所で1回目の合図を聞いたんだ!これで矛盾は消える!」  法廷内がザワザワとうるさくなる。  「静粛に!静粛に!検察側の主張を認めます!」  木槌を叩きながら検察側の主張を認めた裁判長。  「よって、弁護側には尋問に移ってもらいます。よろしいですね!?」  「は、はい。わかりました。(くそっ!なんてことだ!)」  成歩堂は冷や汗をかきながら尋問を開始する。とにかく、ここから先はパンドラの箱のようなものだ。 尋問でさらに何がおきるか分からないがために・・  尋問開始  「圭羽さん。あなたは當競馬場の職員じゃないですよね。」  「えぇ。」  圭羽は早口に言う。  「何故、當競馬場にあの日いたのですか?」  「あぁ、そのことですか。自分は馬野さんの友人なんですよ。」  圭羽は笑いながらそう答えた。  「友人・・?学生時代のですか?」  年が近いからそんな感じがした成歩堂。だが、答えは違った。  「いいえ。そうじゃないんです。昔同僚だったんですよ。」  「同僚?當競馬場のですか!?」  今は道路工事をしていると言った圭羽。だが、昔と言うことは考えられることは1つ。  「えぇ、昔は自分。當競馬場で調教師をやっていました。」  調教師。馬野と同じである。  「またどうして、當競馬場を辞めたんですか?あなたは?」  成歩堂は不思議に思ってそう尋ねた。  「えっ!それは・・」  「異議あり!」  誰よりも早くそう発した刀技。  「証人のプライバシーに関する。よって却下を要請する。その質問のな。」  プライバシー。確かに言えてるかもしれないが、何かがあるような気がする。成歩堂はもう少し粘ってみる。  「それもそうですが、事件に関係があるかもしれない!」  指を突きつけてそう言ってみた成歩堂。とここで刀技。簡単に一言。  「競走馬を育てる事業をこの証人は始めるために當競馬場を辞めたんだ。以上。これで満足か?」  「競走馬を育てる?(おかしいな?)」  成歩堂は違和感を感じた。  「なるほど君。あの人って工事関係の仕事じゃなかったかな?」  真宵も気づいていた。そう、競走馬を育てる事業と言った割には、今の職業が全然違う。  「証人・・しかし今の職・・」  「異議あり!プライバシーにまだご執着か?」  刀技の目は本気だった。  「うっ・・。(やばいな。これ以上は突っ込めないな。この証言。)」  以前この目で見られた後、法廷侮辱罪で刀技に退廷させられかけた経験のある成歩堂。これ以上の質問は自然にヤバイと察知した。  「分かりました。それでは違う質問をしましょう。」  無難に質問を違う内容に切り替えることにする成歩堂。  「証人は事務所で第2レースの合図を聞いていたんですよね。」  「はい。間違いありません。」  自信満々だ。しかし、こう言う証言に限って穴が多いことは成歩堂も知っている。  「その話していた時間は憶えていますか?みんな“〜だったと思います”と推測みたいですが。」  記憶というものは分からないものだ。意外とそこに穴があったりする。  「時間ですか、まぁ・・自分もはっきりとは覚えてなかったんですけど。 第2レース開始の時刻で25分くらいだろう。と思っていたんですよ。」  (なるほどね・・。)  成歩堂はこの証言について納得しかける。  「ちょっと待って!なるほど君!」  「ん?どうしたの?真宵ちゃん?」  とここで、真宵が何かに気づく。  「あの日。第2レース開始の合図で、正確な時間が本当にわかったのかな?」  「!!」  その言葉が、成歩堂にあることを思い出させた。あの時に、刀技がこれを言わなかったら真宵も気づくことはなかっただろう。  「圭羽さん。少しに気になるのですが・・あの日、第2レースは2回あったんですよ?」  「そうですが?それが何か?」  圭羽はよくわかっていない。確かに気づきにくいことかもしれない。  「圭羽さん。第2レースの合図は、午後1時25分と35分で2回ありました。 レースの合図だけで時刻がこの場合、断定できるとは考えにくいのですが。」  「何だ。そのことですか。弁護士さん。」  圭羽はそんなことか・・という顔になる。  「弁護士さん。あの合図は確かに25分のものだったんですよ。」  またしても自信満々だ。成歩堂はさらに突っ込む。  「それまたどうして?」  その言葉に圭羽。あの時のことを思い出したのだろうか?笑いながら言った。  「だって、あのレースは騎手が落馬してたんですよ。続々と。」  「落馬・・ですか。」  成歩堂はここで振り返る。確かに、騎手達が落馬したから、第2レースには2度目の合図が存在してしまったのだ。  「だったら、圭羽さんが聞いた合図は25分のものになるね。」  真宵も納得しているようだ。だが、成歩堂には1つだけ納得できないことがあった。  「異議あり!」  腹の底からそう叫ぶ成歩堂。だが、問題はこの矛盾の意味だ。  「圭羽さん。確かに落馬したのは25分開始のレースです。」  もしこれが事実なら、それが指し示す事実は、非常に意外性を持ったものとなる。  「あなたはそれを見たと証言した。」  「そうですけど。それが何か?」  彼は落馬した瞬間を見ている。それがありえないことなのだ。  「當競馬場の見取り図を見ていただけますか?みなさん?」  成歩堂のこの言葉で、みんな首をかしげながら見取り図を取り出してそいつを見る。  「現場のきゅう舎はレース場の東側にありますね。」  成歩堂は指を指しながら説明をはじめる。  「そうだな。確かに東側だ。」  刀技は頷きながらそう言った。  「そして、2人が会話をしていた事務所。つまり、きゅう舎以外のその他の施設はどこにありますか?」  「それは、その東側にあるきゅう舎の後方ですな。」  裁判長が事務所がある位置を指差しながら言う。そう、事務所はきゅう舎の後ろ、さらに東側のところにあるのだ。  「ここで考えて欲しいのですが、圭羽さんは事務所で落馬の瞬間を見たと証言した。 つまり、事務所からレース場を見たことになる。」  「そうだな・・!?」  刀技の眉がピクリとなる。気づいたようだ。  「お分かりになりましたね。皆さん。」  成歩堂はニヤリと笑った。その中で、圭羽と裁判長だけは不思議そうな顔をしている。 あとはこの2人の目を覚ましてやるだけだろう。  「いいですか?事務所からレース場を見ようと思ってもそこには、きゅう舎が立ちふさがっていて見えないのですよ!!」  「あっ!?」  「なっ!?」  裁判長がこの事実に気づき、圭羽は信じられないといった顔になる。  「つまり圭羽さん。あなたは事務所でこんな光景を見れたはずはない! もし見れたら、この當競馬場は、事件現場自体が消滅してしまうことになる!!」  机を思いっきり叩きつけてそう叫んだ成歩堂。  「うっ!・・しかし、自分は確かに見たんだけどなぁ・・」  圭羽は必死に考え込む。  「異議あり!しかし!圭羽はその光景を見ているんだ!」  「異議あり!しかし!そのためには事件現場のきゅう舎が消えていないと不可能です!」  だが実際に、事件がきゅう舎で起こっている以上、きゅう舎が消滅したなどと馬鹿馬鹿しいことを言うわけにもいかない。  「つまりです!この証人が落馬の瞬間を見たのなら、どこで見たか?ということなのです!」  成歩堂は起死回生をする一言を放つ。どこで見たか?というポイントだ。  「成歩堂君!あなたはどこでこの証人が落馬の瞬間を見たのか。分かると言うのですか!?」  裁判長の声は多少だが、驚きのあまり裏返っている。  「簡単なことです。」  成歩堂はそう言うと再び、見取り図を取り出して説明する。   「この見取り図からこれだけは断言できます。事務所からはきゅう舎が遮っていてレース場は見えない。 でも、その遮っているきゅう舎からなら見える。」  「!!まさか・・成歩堂弁護士。この証人が見た場所とは・・。」  刀技は倒れこんでいる。そう、そのまさかだ。  「もはや考えられる場所は1つしかありえません。馬野さんと圭羽さんが会話をしていた場所は事務所ではなかった!」  成歩堂は次の瞬間。本当の会話をしていた場所を大声で言った。  「この2人が会話をしてのは、他ならぬ事件現場のきゅう舎だったのです!!」  法廷内が大騒ぎになる。  「静粛に!静粛に!静粛に!」  木槌が何度も鳴り響く。  「異議あり!2人の実際の会話場所がきゅう舎だって!?ありえない!何故事件場現場なんだ!?」  刀技は机に倒れこみながらもそう叫ぶ。  「簡単な話です。そこからじゃないと落馬の瞬間なんて見えないからだ!」  成歩堂は負け時と大声でそう叫ぶ。  「だったら成歩堂弁護士・・この2人は、午後1時25分には事務所ではなく、きゅう舎にいたと主張するつもりか!?」  「その通りです。」  成歩堂は頷いた。そう、事件当時きゅう舎には、松豊が去った後、3人の人間がいたのだ。  「あの時現場には、気絶していた梅裕さんと、落馬の瞬間を見た圭羽さんと馬野さんの3人がいたのです!!」  この言葉を聞いた裁判長が、信じられないと言った口調で尋ねてきた。  「それでは成歩堂君!まさか、馬野さんとこの証人は・・」  「そう、梅裕殺害の共犯だったのです!!」  「う、うがああああああああああああああっっっ!!!!」  圭羽が信じられないほどの大声で叫んだ。  「異議あり!この2人が共犯だと!?何故言い切れる!?」  刀技はなおも机に倒れこみながらもそう反論する。  「それも簡単なことです。事件現場で被害者が脳しんとうを起こして倒れた。被告がそこから逃げた。 とここで、2人が現場にやって来た。その時刻が馬野さんと圭羽さんの証言から25分だった。 何度も言いますが、被告は現場から逃げ控え室に閉じこもった時、第2レース最初の合図を聞いています!」  第2レース最初の合図は午後1時25分。つまり、そのとき松は現場にはいないことになる。 そして逆に現場には、この2人が存在していたことになるのだ。   「そして圭羽さんは、馬野さんと自分が犯人ではないことを印象付けるため、その時刻に事務所にいると嘘をついたのです!」  つまり、結果的にはこの2人が共犯だったと言う結論に至るのだ。  「ふむぅ・・確かに、それなら筋は通りますな。」  裁判長が納得しようとする。この人が納得すれば判決は決まったも同然だ。しかし・・  「異議あり!思いっきり主張したのは良いが、成歩堂弁護士の開いたものはパンドラの箱と似たようなものさ。所詮な。」  「何だと!?」  刀技はそう言うと、体を起こした。そして静かに反論を行う。  「2人は共犯だった。確かに筋は通るかもしれない。だがフィードバックの必要があるな。その主張。」  「ふぃ、フィードバック!?(いつから外来語まで使うようになったんだよ!!この男は!!)」  成歩堂は意味が分かっていない。  「なるほど君。読めるけど意味がわかんないよ。」  真宵も分からないようだ。だが、正直状況はそれどころではなさそうだ。  「いいか?2人が犯人だとしよう。だが決定的な証拠はあるのか?」  「うっ!」  言葉に詰まる成歩堂。勢いよく叩きつけた割には実際ない。  「それに、動機がない。」  「!!(ど、動機か・・)」  そこが1番大きな問題かもしれない。動機・・共犯だという事実が分かったにしろ。それだけは余計分からない。  「共犯って言うことは、当然馬野と圭羽には、共通する動機があったわけだ。梅裕に対する、殺意を抱くほどのな。」  「た、確かに検察側の言う通りです!どうなのですか!?」  裁判長もその意見に同意のようだ。困ったことに、動機が成歩堂には分からない。  (動機・・この2人に共通する動機・・分からない!)  ここ1番の勝負どころ。動機。それが成歩堂に証明できるのか?全てはそれに懸かっていた。                                                        つづく 

あとがき

さて、この2人の関係が明らかになりました。 しかし問題は動機。そこで終わってしまうのがこの第4章。 つまり第5章は、動機中心の話になるのですが、読んでいる皆さんはこの動機。果たして分かるでしょうか? いろいろとヒントはちりばめられております。例えば、圭羽さんの今の職業が???なこと。とかですね。 というか、タイトルがそのままヒントかもしれません。 以上、第4章投稿完了の麒麟でした

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