語られる逆転〜another story〜過去の呪縛〈前編〉
※注意。この物語は、自分が連載した語られる逆転の番外編の物語となります。     したがって、内容が少し理解できない部分もあるかもしれません。     また、語られる逆転のネタバレもあるかもしれません。     そこを理解した人だけ、お読みください。     「語られる逆転」本編は第3回逆転裁判小説大賞ノミネート作品欄にあります。 私には未だ抜け出せない呪縛がある。 1つは、過去の事だ。愛するものを守ってやろうと本気で思った。だが、それは無理で逆に守られてしまった。 だから私は精一杯、あいつの代わりに戦ってやることを決意した。 そして2つ目、これは、完全に私のミス・・過失だ。私がもっとしっかりしていれば守ることは出来たはずなのに。 これではあいつに顔向けできない。だから私は、死んだあいつに誓った。彼女を最後まで見届けると、そして救ってやると。                     語られる逆転 〜another story〜                         過去の呪縛  3月4日 午後7時1分 国立総合病院・入口 私はお見舞いに来ていた。過去にある事件に巻き込まれ、意識を失っていた人間が目を覚ましたと聞いて。 私の名前は刀技快登(かたなぎかいと)。検事をやっている。左耳に聴覚障害があり、 今では左耳を覆ってしまうような大きなレシーバーをつけている。人は私を見て、型破りだと言う。 恐らくは服装が、革ジャンにジーンズ、そして靴がスニーカーだからだろう。 「刀技検事。上片君、落ち着いてましたね。少し安心しました。」 話し掛けてきた男は、成歩堂龍一。弁護士だ。彼とは以前、法廷で戦った。 「そうだな。」 上片君とは、上片正義(かみかたせいぎ)。弁護士で先ほど言った意識を失った弁護士のことだ。 「ところで刀技検事?」 「何だ?」 成歩堂弁護士が問い掛けてくる。成歩堂弁護士の助手・綾里真宵と、 私の助手をしている検察事務官の刃多進(はたすすむ)は、助手同士2人で話をしている。 「あのですね。あの事件の後、気になる話を聞いたんです。」 成歩堂弁護士は声を小さめにして言う。あの事件・・おそらく私たちが以前戦った、自販機連続薬物混入事件のことだろう。 「その話って、何だ?」 まぁ、最も私には心当たりもないことはない。一部の週刊誌が記事にしたこともあったような気がした。 「あの事件の最終日です。刀技検事が脅迫されていたっていう話なんですが・・。」 嫌な思い出だ。まさか、この弁護士がここまで知っているとは。 「そんな記事を信じるのか?」 「い、いえ!別にそう言うわけじゃ・・」 成歩堂弁護士はまずい事を聞いてしまったと感じているだろう。 「ふっ、好きにするがいいさ。信じるのも自由だ。でもな、私から話す気にはなれない。」 そう言うと私は、成歩堂弁護士とは別れた。 「思い出させてくれるじゃないか・・。」 私はそう呟いていた。  同日 午後7時55分 検察庁・刀技の部屋 刀技は部屋にこもっていた。机の引出しからおもむろにある写真を取り出す。 「すみれ・・わたしはこれで正しかったのだろうか?」 写真に写った女性を見ながらそう言った刀技。目を閉じると、あの時のことが鮮明に思いださられる。 そう、それは今から3、4年程前のことだった。  〜今から3年前〜  1月7日 午前11時5分 海岸 海岸である殺人事件が起きた。容疑者は現行犯逮捕され、身柄は検察へと送られた。 その事件を担当したのが、3ヶ月ほど前に検事となった刀技だった。 冬の海岸というものは寂しいものだ。スーツの上にコートを着ていた刀技は、身を震わせながらカモメを見ていた。 「いいよなぁ・・、カモメは空を飛べて。私も空が飛べたら事件から逃げたのに。」 ぶつぶつと文句を言いながら、海岸の調査にきた刀技。 「よりによって正月明けにこれか、もうちょっともちを食べたかった。」 どうやらこの男、もちが好物らしい。 「でも、この間もちが喉に詰まったよな。やっぱりもちはもういいや。」 どうやらこの男、信念というものを持ち合わせていないらしい。 「検事殿!もうよろしいでしょうか!?」 1人の警官が叫んだ。そろそろ満潮の時刻なのか、あたりのものは退散している。 「必要な証拠品は全て回収したのか!?」 「はい!!捜査員を100人導入して徹底的に回収させました。」 100人の捜査員。刀技が無理を承知でそう要請したのだ。1つでも証拠品を見落としたら海に流されてしまう。 それだけは防ぎたかったために、ここまで念入りに作業をしたらしい。 「そうか、分かった!!じゃあ戻ろう!!」 「了解です!!」 そう言って刀技は誰よりも早く海岸から去った。  同日 午前11時45分 レストラン・吐麗美庵 ランチサービスの看板を見て入店した刀技。1人で早めに昼食を済ませることにする。が、 「こ、コーヒー980円!?どこまで贅沢なコーヒー豆使ってんだ!?」 味はとてもすっぱいコーヒーだ。それはゴドーも認めている。幸い刀技は、コーヒーに興味はないので頼まなかった。 「ボンジュウル。いらっしゃいませえ。ご注文はお決まり?」 「ん・・なっ!?」 ウエイトレスでもない、格好からするとシェフだろうが、刀技は絶句した。 「今の時間はランチサービスの時間よぉ?ニクハチセットはどう?」 「に、ニクハチセットですか・・。」 刀技は目をそらしながらメニューを見る。ニクハチセット。2980円だ。 (た、高いだろ!?ランチサービスの割には!?) しかしまぁ、見た目はゴージャスそうだ。頼んでみる価値はあるかもしれない。 「じゃあ、ニクハチセットをお願いするよ。」 「かしこまりましたぁ。」 シェフは厨房に入っていった。刀技は絶句していた。この店の内装も、あの店長の趣味と考えると恐ろしい。 その後彼が、ニクハチセットを食べて気分を害したのは言うまでもない。    同日 午後12時53分 ビタミン広場 刀技はビタミン広場で吐き気をもよおしていた。2980円を払ってしまったことから、 意地でも全部食べようとして食べたのだが、それが失敗したらしい。 「おええっ!ありゃ詐欺だろ!?ニクハチセット!!保健所に訴えてやろうかな。」 リンゴの滑り台の上で苦しんでいる刀技。再び吐きそうになる。 「うえっ!!」 言葉にならない苦しみだ。とそこに 「大丈夫ですか?」 1人の女性が心配して声をかけてきた。 「あぁ・・あなたは?」 刀技は腹に異常が起き、さらに顔を歪めながら言った。 「いえ、あなたが苦しそうだったので。」 「だ、大丈夫ですよ。心配しないで。」 刀技は滑り台から降りると、ふらふらとした様子でビタミン広場を去った。女性はその姿を心配そうに見ていた。  同日 午後1時12分 フラワーショップ・蒼井 刀技はいつの間にかこの店の前で気絶していた。どうやら、完全にニクハチセットの餌食になったらしい。 刀技は薄れ行く意識の中、こんな言葉を聞いた。 「だ、大丈夫ですか!?もしもし!?」 「どうしたの?姉さん?」 「あ、すみれ!!この人が店の前で倒れたのよ!!」 「えっ!!あ、この人さっき、公園で苦しそうにしているところを私見たわ!!」 刀技は聞き覚えのある声を聞いた。 「とにかく、店の中に運びましょう!これじゃあお客さんの迷惑だわ!」 「そうよね、じゃあ姉さん、1,2,3ハイッ!で持ち上げましょう!」 話がどんどん勝手に進んでゆく。 「1,2,3ハイッ!!」 掛け声と同時に刀技は持ち上げられた。というより、引きずられた。 (一体、何が起きている!?) ずるずると引きずられていることは分かる。やがて、刀技は頭を何かにぶつけ目が覚めた。 「うわっ!!」 ぶつかったのはレジの台だった。 「あ、だ・・大丈夫ですか!?」 「すみれ、どっ、どうしよう。」 2人は慌てている。姉妹らしい。とりあえず起き上がった刀技、まずは事情を把握したいが、 自分もよく分からない上に2人も混乱している。しばし、3人は勝手に混乱していた。 ・・30分後 事情を把握するのに30分の時間がかかった。 「そうだったのか、すみません。よく分からないけど助けていただいて。」 とりあえず礼をする刀技。 「いえいえ、こちらこそ。」 「とんでもない。」 姉妹はまだ混乱しているようだが。 「あの、よろしかったらお礼をしたいので、名前を聞きたいのですが。」 名前を聞こうとする刀技。が、 「そ、それってナンパですか?」 「は?」 公園であった女性がそう言った。ナンパ、刀技には似合わないような気もする。 「いえいえ、そんなわけでしょう!!」 刀技は慌てて反論する。検事のくせに、弱々しい。 「はは、冗談ですよ。私は“蒼井(あおい)すみれ”。これでも弁護士なんですよ。」 「!?」 刀技は一瞬ドキッとした。弁護士、それは検事と敵対する可能性もある職種だ。 「そして私が姉の“蒼井あざみ”です。両親の残したこの花屋を経営してるんです。」 姉は花屋を経営しているらしい。2人とも刀技より小柄な人だ。 そしてまた、双子のように顔がそっくりである。目は丸く、口は小さく、鼻も・・ 「はっ!!」 刀技はここで、2人の顔を何故か分析していることに気づく。 「どうしました?」 すみれのほうが尋ねてきた。 「い、いえ・・何でもありません。では、私はこれで」 刀技はそそくさと帰ろうとする。 「あ、ちょっと待ってください!あなたの名前は?」 そう言われて、自分が名乗っていなかったことに気づく。  「私は“刀技快登”。このお礼は、いつかまた・・。」 そう言うと去ろうとする刀技。だが・・ 「刀技・・快登・・。あああああっ!!!!!!!!!!」 「なっ、何ですか!?」 刀技はその声で足を止めた。 「い、いや・・ひょっとしてあなた・・検事さん?」 すみれは恐る恐る尋ねた。 「そうですが?何か?」 刀技は状況を理解できない。だが。やがてすみれの放った一言で、刀技もその状況を理解する。 「海岸の事件の、担当検事さんですよね。」 「そ、そうですが。ん?何故あなたがそれを?」 だが、予想は出来た。彼女は弁護士だ。ということは・・ 「私、その事件の担当弁護士なんですよ。」 にっこりと笑いながら言われた。が、刀技にとってそれは驚くべき事実だった。 な、何ですってええええええええええええっ!!!!!!!!」 「あ、そうそう。それとですね。これから検察庁に行く予定だったんですよ。」 すみれはさらに続けた。 「実はですね。あの事件の目撃者にあったんですよ。」 「も、目撃者?」 刀技は思い出す。確か、刑事たちの話によると、目撃者はいなかったと言っていたが。 「それでですね。目撃者の方が写真を撮られてて、その写真に写っている犯人が、逮捕された私の依頼人とは違う人物みたいで。」 「な、何ですって!?」 刀技はその写真を見た。 「た、確かに背格好も服装も髪型も全て違う!!」 刀技は愕然とした。だったら、海岸で100人も導入してやった捜査は・・ 「あ、ありがとうございます。早速、起訴を改めて検討しなおします。」 刀技はそう言うと、写真を貰って花屋を去った。 「まさか、弁護士にこんなことを言われてしまうとは。」 それまで弁護士を、犯罪者のお守り役としてしか見ていなかった刀技。 そんな彼の考えが、彼女たちとの出会いで徐々に変わりつつあった。  1月10日 午後7時16分 イタリアレストラン・イタリアン とてもひねりのない名前のレストランに刀技はいた。すみれとあざみを連れて、先日の事件と助けてもらったお礼らしい。 「いいんですか?こんなレストランに?」 「いや、別に構いませんよ。おかげで冤罪をなくすことができたわけですし。」 すみれの問いにそう答えた刀技。それになにより 「前回助けてもらった御礼がありますからね。2人には。」 とは言っても、こんなレストランに招待するとは思ってなかった刀技。友人で同期の御剣に尋ねたところ、 有名なフランスレストランとイタリアレストランの割引券があるから、好きなほうを選べばいいと言われたのだが、 (フランス料理はどうもトラウマになっちまったんだよな。) それでイタリアレストランらしい。しかし刀技には不安があった。 (イタリアレストラン・・という前に、そう言うところのマナー知らないんだよな。) それでよく、前回はフランス料理を昼食として食べようとしたものだ。 「大丈夫ですか?刀技さん?」 あざみが心配そうに尋ねる。どうやら、冷や汗をかいているらしい。 「だ、大丈夫ですよ。はは・・。(昨日、御剣に丸1日マナーを叩き込まれたから大丈夫だ。)」 昨日は無駄な努力をしたらしい。ナイフで指を切ったのだろうか?左手の中指と人差し指にバンドエイドがある。 まぁ、結局のところ、その練習も虚しく・・マナーで失敗しまくったらしい。 すみれとあずみの2人に、笑われながら正しいマナーを教えてもらう。 綺麗な夜景が売りのレストランだったらしいが、刀技はちっとも夜景を楽しめなかった。 すみれとあざみは違う意味で、楽しめたようだが。 会計のためレジに行く3人。 「私のおごりです。2人は払わなくても結構ですよ。」 せめてこういう時にこそ、格好をつけていないと今日はいいところがない刀技。 指にはさらにバンドエイドの数が増えている。何回ナイフで指を切ったのだろうか? 「会計は12万3600円になります。」 「はい?」 刀技は聞き返していた。12万・・そんなに食べていないはずだが。 「ちょっと領収書いいかな?」 3人で割引をして3万のはずだったのだが、何が9万円使っているのだろうか? 「こ、これは・・ワインか?」 9万円のワインがあった。刀技はここで数時間前のことを思い出す。 そう、あの時いいところを見せようと、確か自分が唯一理解できた銘柄のワインを頼んだのだが。 (こ、これが9万円!?) 簡単に言う、これは誤算だったらしい。 「あ、あの?刀技さん?私たちも出しましょうか?」 すみれが刀技の尋常ではない汗の量を見て尋ねた。 「い、いえ!け、結構ですよ!お礼の意味がないですしね!ささっ、2人は先に外にでも出ていてください!」 「で、でも・・。」 「大丈夫!私にはほら、カードがあるから!!大丈夫ですよ!この店、カードOKですよね!?ね!?」 刀技は財布からカードを取り出すと店員に尋ねる。必死だ。 「は、はい。大丈夫ですが・・。」 「じゃあカードで支払うよ。はは・・君はいい人だ。ほら、チップだ。」 なけなしの3万を何故かチップとしてレジの店員に渡す刀技。何度も言う、必死だ。 そんなこんなで、不安そうに店を出る2人をよそに、刀技は大量の冷や汗をかいてカードの説明を受けていた。 何しろ、カードを使うのは初めてだったからだ。 ・・20分後 カードの支払いに成功した刀技。外で待たせている2人を探す。最後の礼をもう1度言おうと思ったからだ。 色々マナーについてなど学んだ事もあったので。 「あ、すみれさん!あざみさん!」 2人を見つけた刀技は声をかける。が、2人は振り向かない。よく見ると、2人の前には1人の男が立っているではないか。 「てめぇの弁護のせいで、妻とは離婚されるわ慰謝料を払わされるわ、しまいにゃ裁判所命令で妻にすら近づけねぇじゃねぇか!?」 男はサバイバルナイフを持っていた。顔が若干赤い。酔っているようだ。 「私は暴力で苦しめられている奥さんを救っただけです!」 「それが余計なお世話なんだよ!」 すみれは男に真っ向から反抗している。 「止めなよ、すみれ・・。」 あざみが隣ですみれの肩を揺さぶっている。 「いいんだよ。お姉ちゃん。事実よ。それは。」 「ごちゃごちゃうるさいなぁ!!俺たちは愛し合っていたんだ!」 男は持っていたナイフを今にも振り回しそうだ。 「そんな愛し方があってたまるもんですか!!あなたのやったことは犯罪よ!今度何か言ってみないさい!刑事告発しますよ!」 「おぉ!?できるもんならやってみな?今日は俺、あんたに復讐しに来たんだからよ!!」 男はそう言うと、すみれの胸倉を掴み、もう片方の手で持っていたナイフを刺そうとした。 「すみれぇぇぇぇぇぇっ!!!!!!!!」 あざみが叫んだ。その時だ。 「おいおい。レディーに大の男がナイフで何やってんだ?」 その声の主はナイフを、右手で掴んでいた。ナイフは今にもすみれの左胸に触れそうだ。 「か、刀技さん!?」 すみれは驚いた。何しろ刀技は、右手でナイフの刃の部分を掴んでいたからだ。血がぽたぽたと落ちている。 「しかも酒で酔ってるな?てめぇのやってることは銃刀法違反と傷害罪にあたるんじゃねぇのか?」 刀技も口調が変わっている。よく考えれば、この男も先ほどレストランでワインを飲んでいる。ひょっとして、 「私はよく知らんが、逆恨みはいけねぇな・・。」 にやりと笑う刀技。次の瞬間。相手の髪の毛を掴むとそれを思いっきり下のコンクリートに叩きつけた。  ガコンッ・・ 刀技はそれっきり倒れて動かない男の背中の上に腰掛けると、携帯をかけた。 「あ、もしもしぃ・・御剣かぁ?」 『ム。刀技君か?どうした?その声、酔ってるのか?』 何故か電話相手は御剣だった。 「そんなわけねぇだろ?それより、レストランに警察よこしてくれよ。」 『その口調、酔った時の口調ではないか?』 御剣は冷静に答える。 「ふっ、そんなこたぁいいだろ?それより、現行犯で男を捕まえたんだがよ。 警察よこしてくれよ?レディー2人が危なかったんだぜ?」 どうやらこの男、酔っていたらしい。 『よく分からんが了解した。私も行く、酔った君をほうっておくとやばいからな。』 電話は切れた。そして刀技は、あろうことかそのまま寝てしまった。  1月11日 午前0時20分 フラワーショップ・蒼井 パトカーで2人を送った御剣。運転席には刑事になったばかりの糸鋸がいた。この時から2人の関係はこんな感じだったようだ。 「すみません。事情聴取につき合わせてしまったせいで、こんなに遅くなってしまって。」 助手席で寝たまま動かない刀技を見て、御剣は何度、忌々しく思っただろうか。 「いえ、こちらこそ。刀技さんに助けていただいたので、妹を。」 あざみは御剣に礼をした。 「今度は私たちがお礼をしてあげなくちゃね。すみれ。」 すみれを見てそう言ったあざみ。すみれは何故か先ほどから元気がない。 「それでは、私は彼を自宅まで送るのでこれで失礼します。」 御剣がパトカーに乗り込もうとした時だった。 「ちょっと待ってください。」 すみれはそう言うと、一旦店の奥に行った。そして数分後、小さく折りたたんだメモ用紙を御剣に渡して言う。 「あの、これを起きた時でいいので、刀技さんに。」 御剣はそれを受け取ると、笑いながら言う。 「分かりました。彼には目覚めたら渡しておきましょう。」 パトカーは御剣がそう言った直後、刀技のマンションへと向かって走り出していった。 「それにしても、酔ったところを女性2人に見られるとはな。」 御剣はふと、すみれから渡された紙を見た。そして、何気なく広げてみる。   今日は本当にありがとうございました。 後日よかったら、一緒にお茶でもしませんか? 連絡先を書いておきます。暇な時でもいいですから、連絡ください。                                    BY すみれ 御剣は思わず苦笑した。 (この男、そういうのは鈍感だからな。まぁ、私も人のことは言えないが。) 御剣はそっと、コートのポケットにそいつを入れてやった。どうやら、すみれは惚れたのかもしれない。 後日、2日酔いで仕事にやって来た刀技が、コートの中にあったその紙切れを見て驚いたのは言うまでもない。 しかも、それが原因なのかその日は、4回もドアに頭をぶつけていた。  4月3日 午後8時29分 海岸 あれから約3ヶ月。2人は付き合いだしたのか、よくデートをしている。 が、刀技自身は自覚がないため、普通に会話をしてるだけ。見たいな感じでとらえているらしい。 よって、デートと言われると不機嫌になる。 「まぁ、あの時は公安のパソコンにハッキングして、大変な騒ぎになりましたよ。 その時に研修生として入ってきた刃多君のおかげで助かったのですがね。」 楽しそうに近況を話す刀技。すみれも楽しそうだ。 「そう言えばすみれさん?最近、忙しそうですね。」 刀技は突然そう尋ねた。 「えっ?あぁ・・そうなんですよ。今、訴訟の裁判で忙しくて。」 「どんな内容なんです?」 2人はよき相談相手にもなっていた。 「MD製薬関連なんですよ。」 「MD製薬・・最近癒着が発覚したあの会社ですか?」 刀技自身も、MD製薬の癒着事件を担当していた。大物政治家も絡んでおり、圧力が検察側にも掛かっていて、捜査妨害も起きている。 「えぇ、でも私のほうは、癒着じゃないんです。」 「癒着じゃない?」 「はい、新薬の臨床実験でMD製薬が、人を殺したって言うんですよ。」 臨床実験・・新薬の実験で、人にその薬を試すという最終段階のことだ。 「喘息の新薬なんですけどね。他にも体調不良を訴える人がたくさんいたんです。それで、今回の訴訟になったんです。」 どうやら、同じMD製薬関連の事件だが、そちらのほうも大変らしい。 「あ、そうだ。刀技さんっていつもスーツですよね。」 「ん?あぁ、一応そうだけど・・。」 「たまには私服姿も見てみたいな。」 私服姿、そう言われてみれば刀技。いつもはほとんどスーツ姿だ。私服という私服は着た覚えがない。 「そうそう、これ、プレゼントです。」 すみれはそう言うと、ベンチに座っている時から持っていた大きな紙袋を刀技に渡した。 「これは?」 刀技は中身を見ようとする。 「これは私からのプレゼントです。刀技さんはこう言うのも似合うと思うんですよ。」 会話内容から察するに、中身は服か何かのようだ。 「ありがとう。すみれさん。」 刀技は礼を言う。純粋にそれが嬉しかった。 「あ、あとですね。もう1つお願いがあるんです。」 「お願い?」 「はい・・その、ですね。」 「?」 刀技は何も気づいていない。すみれが顔を赤らめていることも。本当に鈍感な人間だ。 「あのですね・・4日後のこの時間に、ビタミン広場に来てくれませんか?」 「ビタミン広場に?構わないけど。どうして?」 本当に鈍感な人間だ。今の刀技はさすがにもう気づいているが、4日後にビタミン広場。 そう、あの日だ。ただあの時は、本当に分からなかったようだ。 「いいんです。特に意味はないですから。」 すみれも刀技のそう言うところは分かっているらしい。 「そしてですね。その時、これを着て来てくれたら嬉しいんですけど・・。」 「えっ、これを・・着てくるの?」 少しは空気を読めと言いたい。 「ダメですか?」 さすがにこれで、少しは空気を読めたらしい。その言葉を聞いた刀技は慌てて言った。 「あ、いや・・その、大丈夫。うん!着てくるよ。」 かなり焦っている。やはりこの男は恋愛に関してはバカなのかもしれない。 「そ、そうですか!嬉しい!あっ、もう時間だ。すいません、そろそろこれで・・。」 「あぁ、気をつけて。」 すみれは立ち上がった。空をとても美しい星空だ。 「わぁ、綺麗。」 そう言われて空を見てみる刀技。確かに美しい星空だ。とここで、ふと思った。 「建物の明かりなんざ、夜が終われば消えちまう。人の幸せも・・そんな風に時間が経てばやがて消えゆくものなんだ。」 刀技は続ける。 「だが、空には建物の明かりなんざよりも沢山の数の星が耀いている。 この星達は、朝がくれば見えないが、決して消えるわけじゃない。どこかで必ず輝いているんだ。 人の幸せってもんは、そんな星みたいにあってほしいもんだよ。」 しばしの沈黙。そして・・ 「なんてね。ちょっと格好つけてみたよ。」 せっかくのいいムードもぶち壊しだ。だが、すみれは黙って見ている。 「どうしたの?」 「酔ってるんですか?刀技さん?」 その言葉を聞いた刀技。ベンチから転げ落ちた。 「そんなわけないじゃないか!?」 「いや、でも・・いつも酔うとキザな性格になるから。つい・・」 刀技はそれを聞いて後悔した。やはり慣れない事はするべきじゃないと。  4月6日 午前11時9分 フラワーショップ・蒼井 約束の日の前日。偶然仕事上の関係でここを通った刀技は、あざみに挨拶でもしようと店に寄った。 「こんにちは。あざみさん。」 「あ、こんにちは。刀技さん。」 あざみは片手にチューリップの花を持っていた。 「今日はどうしました?」 「いえ、ちょっと、ここの近くを通ったもので。」 刀技は軽く頭を下げる。 「いろいろと話はすみれから聞いています。MD製薬の癒着事件を担当してるとかで。大変でしょう?」 「はは、まぁ、何とかやってますよ。」 そう言うものの、実際はかなり苦戦を強いられているのだが。 「そう言えば、すみれさんもMD製薬の訴訟を担当しているとかで、」 あざみの動きが少しだが止まった。 「何だか、喘息に関する新薬の臨床実験で死者がでたやつの話とかで。」 刀技はそう言っていたが、やがて、あざみの顔色がおかしいことに気づく。 「どうしました?あざみさん?」 「え、いや・・何でもないんです。」 そう言うとあざみは店の奥へと行く・・いや、逃げようとする。 様子がおかしいと感じた刀技はあざみの後を追う。妙な胸騒ぎがしていた。 「待ってください!あざみさん!」 あざみは足を止めた。 「何かあったんですか?ひょっとして、すみれさんに何か?」 妙なところには鋭い刀技。やがてあざみは口を開く。 「すみれは、それに関して何か言ってましたか?」 「い、いいえ・・。」 嫌な予感がした。何か嫌な予感が・・ 「これは、あなたには言っておくべきなのかもしれない。」 あざみは振り向き、刀技の顔を見た。 「1つだけ、あることを教えます。でも、すみれには言わないでください。 あの子、生まれつき喘息もちで、今回の臨床実験に参加してるんです。」 「!?」 臨床実験に参加。刀技はこの時、初めてその胸騒ぎの正体に気づいた。 「実は、あの実験に参加した人の5割が、もう亡くなってるんです。4割は体調不良を訴えていて、残りの1割は意識不明で・・。」 「そ、そんな・・。」 これは、薬害だったのだろうか。しかも、あろうことに彼女がその実験に参加していたと言うことは。 「あの子も最近、体調が優れてなくて・・下手すれば、死ぬ可能性もあるんです。」 「死・・。」 刀技は言葉が出なかった。この時、鈍感な彼は初めて気づいた。 自分はひょっとしたら、彼女を愛していたのかもしれないと言うことを。 「あの子、今それで法廷に立とうとしてる。自分も倒れそうなのに・・ 同じ境遇に立たされた人を、きっと放って置けなかっただと思います。」 刀技はその場に倒れこんだ。 「あの子、言ってました。弁護士は困っている人を助けるのが仕事だと。」 「!!」 弁護士・・このとき彼は、弁護士と言う人間が、信頼できる人物であると、 敵対する人物では決してないと言うことに気づいた。だって、現に今、そうではないか。  4月7日 午後7時 今日は約束の日だ。 刀技と、研修生として刀技の助手を当時していた刃多は、今日も夜遅くまで資料の整理をしていた。 この2人、昔からの付き合いらしい。ちなみに明日は刃多の研修最終日である。 「刃多!もう今日はいいぞ。帰っても。」 「え・・でも検事はまだ残るんじゃないですか?」 刃多は資料の整理をしている。資料には“MD製薬癒着事件”と書かれている。 1・2週間ほど前にMD製薬の元社員が癒着を告発したのだ。そして捜査のメスが遂に入った最近、 刀技は自ら事件の捜査に出て、政治家から圧力が掛かる中、関係者を起訴していた。 「検事・・だいぶ疲れてませんか?最近は何だか色々な妨害工作もありましたし。」 刃多は刀技の体調を気遣った。最近は妨害工作らしき出来事も発生していて、2人にとっては気がめいるばかりだ。 「大丈夫だ。とはいっても、最近そういうものが増えているのも事実だ。知ってるか? この情報をリークした元社員と弁護士が死んだって言うニュースは?」 妨害工作とは言っても、これは立派な殺人だが。 「えぇ・・知っています。恐ろしい話です。」 昨日関係者全員の起訴を終えた2人は、明日の裁判に向けての準備を進めていた。 「明日が裁判だ。そして、刃多の研修最終日でもある。明日の法廷は必ず勝利して、 あとはどこか美味いところで夕食を食べながら、刃多を暖かく見送ってやりたいもんだよ。」 刀技はそう言うと、まとめた資料を机の上に置いた。 「よし!今日はこれで終わりだ。明日は大変だろうから、今日は互いにこれで帰ろうじゃないか。」 「そうですね。こっちも整理終わりましたし。今日はこれで切り上げましょうか。」 刃多はそう言うとコートをとる。刀技は部屋で持ってきた紙袋を開いてなにやらしている。 「検事?何をしているんですか?」 「ん?あぁ・・ちょっとな。今日は約束があるんだ。」 そう言うと刀技は時計を見る。午後7時だ。今日はあの約束の日である。 「約束の時間まで後1時間。十分間に合うな。」 そう言うと刀技は、袋から取り出した革ジャンとジーパン、それにスニーカーを見て言った。 「なるほどな。コイツは結構私に似合いそうだ。」 初めて袋の中身を見た刀技。やはり服だったか。と1人で納得する。 「彼女とのデートの約束ですか?」 刃多は尋ねた。そう言えば・・刀技には彼女がいたような噂を聞いたことはあるが、実際のところは刃多も知らない。 刃多は興味本意で聞いてみたのだろう。 「デートか・・まぁ、そうかもしれないな。」 そして刀技はスーツを脱ぎ始める。やはり、まだ完全には恋人とは思っていない感じだ。 「検事?ひょっとして着替えるんですか?ここで・・。」 「あぁ。」 刀技はスーツを脱ぐと、例の革ジャンとジーパンに着替えている。 「こいつはな。まぁ・・私の彼女からの誕生日プレゼントみたいなものだ。今日は着ていく予定にしていたんだ。」 刃多は意外と刀技が、彼女想いな人だと知った。だが、よく考えてみれば分かることだが、実際は誕生日プレゼントではない。 ここで刃多がそう思ったように、読者は刀技が意外といい加減な性格だという事が分かるだろう。  「あいつをビックリさせてやろうと思ってね。 で、いちいち帰ってたら時間がないから、ここでそのまま着替えていこうという作戦さ。」 刀技はそう言った。ビックリも何も、すみれからそう言われているではないか。いかに職場でいい加減に説明しているかが分かる。 というか、男女関係に関してはいかにシークレットにしているかが分かる。 「じゃあ、自分はこれで・・。」 刃多は先に部屋を出る。刀技はそれを確認すると、ジーンズなどに着替えていく。そして窓に写った自分を見て思った。 (結構いいな。) とにかくそのまま急いで、ビタミン広場へと向かおうとする。しかし、正直言って刀技は、昨日聞いたことが頭から離れなかった。 (すみれさんが死ぬかもしれない。その時私は、初めて自身の気持ちに気づいた。これは、どう受け止めるべきなのだろう?) そう考える刀技は、意外とナイーブな男なのかもしれない。とにかく、悩んでいても仕方がないので、 移動中にどう受け止めるか考えることにしようとドアを開けた。 「おい!刃多か?どうしたんだ?」 ドアを開けた刀技は、そこに帰ったはずの刃多がいたことに驚いた。 「いや、検事・・こんな資料がスタッフルームのテーブルの上に。」 刃多にそう言われて、その資料を手に取る刀技。 「関連資料?そんなもの・・頼んだ覚えはないがなぁ・・。」 2人はスタッフルームのソファに腰掛ける。資料を2人はじっと見ている。 「コーヒー、飲みますか?」 1人の男が2人に紙コップに入っていたコーヒーを持ってきた。 「あぁ・・すまないね。」 「すいません。ありがとうございます。」 2人は礼を言うとコーヒーを受け取った。 刃多はそのままコーヒーをテーブルに置いた。刀技はコーヒーを一口飲んだ。 「ダメだ。やっぱり思いせない。こんな資料私は頼んでいないな。」 コーヒーを飲んだ刀技は、その時ふと思った。 (!?・・・・待てよ、今のは誰だ?) だが、気づくのが少し遅かった。 (!!?か、体が・・!!)                             バタンッ・・ 刀技は倒れた。 (しまった、油断した。毒が盛られてたか!!) そう考えていくうちにも、意識は遠のいていく。 「か、刀技検事!!!!?」 刃多の叫ぶ声が聞こえた。床には自身が飲んだコーヒーが入っていた紙コップが落ちている。 (参ったな・・今日は約束の日なのに・・) 周りの者も、この異様な風景を見てやっと、事の重大さに気づいた。 「おい!誰か救急車を呼べ!」 「刀技君!?どうした!!?」 「コーヒーに毒が入ってたのか!!?」 あたりが次第に混乱していく、とにかく刀技は、刃多に何かを伝えるべきだと考えた。だから、必死に腕を伸ばし、刃多を掴む。 「検事!?」 「刃多・・・・あ、あいつだ。あのコーヒーを・・・わ、渡した・・奴だ。」 驚いている刃多の顔を見ながら、刀技は必死に喋る。 「コーヒーを渡した奴!?」 刃多はここで、やっとこれが仕組まれた罠だったと言うことに気づく。刀技は、さらに必要事項を伝える。 「わ、私の部屋の資料・・消えてい・・・たら・・例のところを・・見ろ・・・・・ もし・・な・・なかった・・ら・・・み、御剣・・・・だ・・・あいつに・・・・・予備を・・わたして・・る。」 「分かりました!!だから検事!!これ以上喋らないでください!!」 刃多は精一杯の声で叫ぶ。スタッフルームは大混乱だ。 (弱ったな・・喋るのも精一杯じゃないか・・) だが、まだ伝えないといけないことはあった。刀技は続ける。 「そ・・・それとだ。すまない・・・・・は・・は・・・・刃多。お前を・・・・・最後まで・・・見れなくて。」 「いいんですよ!!そんなことは!!」 「くそぅ・・・私としたことが・・・・・最後の最後で・・・・油断・・・・した。」 刀技の目は朦朧としている。まだまだ刃多には謝らないといけないことはたくさんある。 自分がきちんとした検事であったかどうか?それも不安だった。 (ふっ・・なんだか、遺書を口で伝えてるみたいだな。) とここで、刀技は最後に、決して忘れてはならない重要なことを思い出した。 だが、意識は今にも消えそうだ。刀技は必死になって伝える。 「あいつとの・・・・・約束・・・・・果たせな・・・・・・かっ・・たか・・ あいつに・・・・・謝らない・・・と・・・・すまなかった・・・とよ・・・・刃多・・頼んだ・・伝言だ。」 刀技はそう言うと目を閉じた。 「おい!しっかしろ!刀技!」 「救急車はまだか!?」 「不審者は!?不審者は見つからないのか!!?」 刀技は目を閉じてなお、思った。 (もう限界かよ・・まともに名前を教えてないから、刃多は伝えられるだろうか? 畜生、こんなことならちゃんと真面目に、刃多だけにでも話せばよかったな。) その時だった。この混乱したスタッフルームから出て行く1人の男の影を刃多は見た。 刃多はゆっくりと立ち上がると、人ごみを掻き分けて奴を追いかける。 (はぁ・・事件はどうなるだろうな?私がいなくなると・・) やがて、救急車のサイレンが聞こえる。 (それに・・やっと今だから気づいたのかもな。) 刀技は自分が今にも死にそうなこの状況で、やっと自分の正直な気持ちを見つけた。 (私はすみれさんを、愛してたんだ。) 刀技は後悔した。 (何でこんなこと、早く伝えられなかったのかな?やっぱりこの世は残酷だ。 でもそれ以上に、気づかなかった自分が腹立たしいな。) そしてさらに後悔する。 (これを伝言にして、残すべきだったよな・・。) この時だった。刀技は4日前、自分が何となく言ったあの台詞を思い出した。 建物の明かりなんざ、夜が終われば消えちまう。 人の幸せも・・そんな風に時間が経てばやがて消えゆくものなんだ。 だが、空には建物の明かりなんざよりも沢山の数の星が耀いている。 この星達は、朝がくれば見えないが、決して消えるわけじゃない。 どこかで必ず輝いているんだ。 人の幸せってもんは、そんな星みたいにあってほしいもんだよ。 (まさにその通りだな。幸せか・・星であって、ほしかった。)   その時、刀技を見た1人の検事が気づいた。 「おい、刀技君。泣いてるぞ。」   (やっぱり、星もいつかは消えるんだな。) みんなは刀技を見た。刀技は泣いていた。とても悲しそうな顔だった。 (星も・・所詮消えちまう・・か。)   写真立てを机の引出しの中に戻す刀技。 「嫌な思い出だな。いまだに。」 刀技はそう言うと立ち上がる。 「明日は、あいつのところにでも行ってやるかな。」 刀技はそう言うと、部屋を後にした。 あいつ・・それは2つの意味を持っていた。1つは、今は亡き“蒼井 すみれ”。 そしてもう1つは、“蒼井 あざみ”だ。 そう、彼を苦しめるもう1つの呪縛は、“蒼井 あざみ”を守れなかったことだ。 これは、上片弁護士が毒を盛られた2年前のあの日が、全ての始まりだった。  つづく

あとがき

この作品、初めは悲恋小説かな?と思ってました。 しかし、よく考えると恋愛より、刀技の後日談みたいなものを語っているに過ぎないな。と思いました。 そう言うわけで、勘弁してください(何故? ちなみにあの2人の名前、花の名前から取ってる入るのですよ。以上です。

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