初恋、そして逆転
ガチャッ!
ドアを開ける音がした。
「・・・お久しぶりね。弁護士サン。」
「た・・・確か、あなたは・・・」
「わたしは松竹梅世・・・。綾里千尋殺害事件の証人・・・」
「お、お前は真宵ちゃんをワナにはめようとした!罪人だ・・・」
「あの事件は随分とイジめてくれちゃって・・・。
小中大共々、お世話になっちゃったわねぇ・・・。」
「そもそもなぜ、お前がここに!」
「わたしの罪は盗聴罪だけだからすぐに出してもらったの。
そして今日、あなたを殺しにきたの。」
「な、なんだと!」
「わたしじゃないのよ。小中大・・・」
「コナカ・・・だって?」
「あいつは言ったわ。かならず成歩堂龍一に復讐する、と。計画は小中大が考えたのよ。
でも、小中大は無期懲役。だからあなたを殺せないの。だからわたしが代わりに殺すの」
「そんな、卑怯な・・・」
「あなたには死んでもらう・・・グッナイ、弁護士サン。」
ドンッ!
「・・・う・・・松竹梅世・・・僕は・・・死ぬわけには・・・いかない・・・!」
僕は頭に痛みを感じた。でも、必死にこらえた。
どうやら、頭を何かで殴られたらしい。
「あら、まだ死なないの?仕方ないわね。トドメをさしてあげるわぁ・・・」
そして僕は、変な匂いをかがされ、眠った。
そして松竹梅世に毒を飲まされ、僕は倒れた。
梅世は現場に細工をし、去っていった。
「さよなら、弁護士サン・・・」
同日 成歩堂法律事務所
「たっだいまぁ♪ なるほどくーん!・・・あれ?いないの?」
あたしは明日のクリスマスイブ用のケーキをがんばって買ってきた。
なるほど君はなんとか家賃を払い終えたのでケーキの許可を頂いた。
っと。冷蔵庫に入れておかないと・・・
「なるほど君?おーい!あれ、寝てるの?おーきーろ!なーるほーどくん!
・・・き、きゃあああああ!!!」
なるほど君は血を吐いて倒れていた。
「な、なるほどくんっ!ひ、ひゃくとーばん!」
あたしはケータイを急いで取り出し110番した。
そして10分後、警察が到着した。
しかし、あたしは警察の任意で連行されてしまった。
そしてあたしはキツイ取調べを受けた上、逮捕されてしまう。
同日 留置所・面会室
ここは孤独の部屋。
だれもあたしを信じてくれる人がいなくて、それが悲しくて。
取り調べも辛い思いして、そしてあたしは悪くないのに
逮捕されてしまった。(免罪)という意味だ。
あたしがここに入るのも何回目だろうか。何度この独房で涙を流したんだろう。
あたしは免罪を許せなかった。そして罪を犯す人も。
そしてあたしは初めて留置所に入れられた日を思い出していた。
それは3年前の出来事だった。
・・・3年前・・・
「お姉ちゃん!遊びに来たよ。・・・あれ?誰もいないのかな。
・・・!これは、血のにおい・・・?」
そして目に、嫌な光景が入った。
それは血を流す女性の死体だった。
「い、いやあああ!お姉ちゃん!」
その人はすでに亡くなっていた。
そして証拠も揃っていたせいかあたしは逮捕されてしまった。
3年前、あたしは大切な人を失った。
綾里千尋・・・あたしの10歳年上のお姉さんだった。
事件現場は綾里法律事務所。
弁護士をやっていて凄腕で、その日は事務所の後輩の初法廷のお祝いとして
ご飯を食べにいく予定だった。
そんなあたしを助けてくれたのは・・・成歩堂龍一。
お姉ちゃんの後輩の弁護士さん。
あたしを助けてくれて、綾里法律事務所から成歩堂法律事務所の所長。
そして今回は、その通称なるほど君が被害者となってしまった。
なんだか少しお姉ちゃんの事件と似ているような気がする。
なるほど君、大丈夫かな。
なるほど君、までいなくなったら、あたしは・・・
「・・・真宵くん」
「あ・・・御剣検事!今回の事件・・・」
「ああ。少しだが調べさせてもらった。」
「なるほど君死んでないですよね!?」
「・・・ああ。無事だ。重傷だが。」
・・・・・よかったあ・・・・・!
「あの。つかぬことをお聞きしますが、やっぱりあたしは裁判にかけられるんですよね・・・?」
「・・・もちろんそうだ。弁護士も決まった。」
「え?早いですね。すごく。」
「その弁護士の名は神崎正義(かんざきせいぎ)。君のお姉さんと同じで
星影法律事務所出身の弁護士だ。そして君のお姉さんと同期。」
「え!そうなんですか!じゃ、綾里千尋の妹だから引き受けて・・・」
「ああ、おそらく。ちなみに検事は私だ。」
「・・・そうですか。」
「ちなみにこの後神崎弁護士が聞き込みに来るだろう。」
「あ、はい。分かりました。」
神崎正義さん・・・どんな人だろう・・・
お姉ちゃんと同期。そして星影法律事務所出身の弁護士。
そしてあたしがお姉ちゃんの妹だから弁護してくれる。
そういえばあたし、なるほど君以外に弁護されるの初めてだっけ。
「あなたが、綾里真宵さんですか?」
「あ、はい。あなたは・・・」
「僕はあなたの弁護を引き受ける神崎正義と申します。」
「よろしくお願いします。」
「やっぱりどこか、千尋に似てますね。」
「え・・・?」
「僕と彼女は事務所が同じ星影法律事務所出身なんです。」
「あ、それは知ってます。」
「じゃあ、早速目撃したことをお話ください。」
「あたしが事務所に帰ってきたら、なるほど君が血を吐いて倒れていました。
事務所は荒らされていませんでした。」
「・・・そうですか。でも、あなたは彼を殺していませんね。」
「はい!絶対です。」
「そうですよね。あなたが彼を殺すはずがないです。」
「・・・なるほど君のこと知ってるんですか?」
「あなたが留置所に入るのは初めてではないのでしょう。」
「・・・!な、何で知ってるんですか!」
「千尋が殺された事件、3年前に調べました。被告は綾里真宵。そして弁護士は成歩堂龍一。
でも、犯人は小中大(こなかまさる)だった。」
「よく知ってるんですね。」
「ええ。それに僕があなたを弁護するにはもうひとつ理由があるんです。」
「そうなんですか。」
「僕の父も小中に(殺された)。正確に言えば自殺ですが。」
「小中に脅迫されて自殺したとか・・・」
「お察しの通りです。コナカルチャーに入った情報で脅迫されたんです。
千尋も小中に殺された。」
「・・・コナカ・・・」
「千尋に妹がいるのは知っていました。だから僕はあなたを守るため弁護します。」
「ありがとうございます。」
「僕はこれから調査に行こうと思います。あなたは僕を信じていてください。」
「・・・はい!なんか元気が出ました。神崎さんありがとうございます。」
「正義でいいですよ。」
「え?・・・じゃあ、正義さんで。」
「そうですね。では、僕は調査に行ってきます。」
正義さん、結構いい人だったな。
優しくてこの人なら信頼できる、って思った。
正義さんはきっとあたしを守ってくれる。
正義さんもあたしを信じてくれるならあたしも神崎さんを信じる。
そして正義さんと話してると、なんだか安心した。
同日 成歩堂法律事務所
事件が起きたせいか、警官が色々と調査しているようだ。
事件といえば現場にやはりこの刑事がいる。
「イトノコギリ刑事。」
「あっ!御剣検事!もう、証拠ザクザクッス!これで有罪確定ッス!御剣検事の勝利ッス!」
「それで証拠は?」
「事務所の床に血文字ッス!明らかに「マヨイ」と書いてあるッス!それと、現場写真を撮っておいたッス。
あと、成歩堂龍一は後頭を鈍器で打たれた後に、毒を盛られたッス。」
「毒の種類はなんだろうか。」
「青酸カリッスよ。」
「な、成歩堂よく死ななかったな・・・」
「堀田クリニックに運ばれたッスが院長も奇跡だと言っているッス。」
この事件と少し似た事件が3年前にもあったような・・・
後で警察の資料室を調べなければ。
「刑事。凶器はなんなのだ。」
「それが・・・まだ、見つかっていないッス。」
「な、なんだと!」
「凶器について捜査をしているッス。」
「ムぅ・・・。他に証拠は?」
「特にないッス。」
「・・・・・」
「でも、目撃者はいるッス!」
「な、何!誰だ、刑事。」
「覚えているッスかねー・・・松竹梅世。」
「松竹梅世・・・」
どこかで聞き覚えのある名前だ。
資料室を調べさせてもらおう。
同日 警察署・資料室
私は頭を回転させ3年前のあの事件を思い出した。
「綾里千尋殺害事件」を。
今回の事件と非常に似ていたせいか、気になる事件だ。
資料で思い出したのは被告人が真宵くんであるところや現場は名前が違っても同じ場所であること、
鈍器で被害者が殴られていること・・・そしてあの血文字も。
そして証人は松竹梅世であることも。
この事件は綾里千尋殺害事件と何らかの関係があるのかもしれない・・・
そしてそこから分かるのは(同一犯)の可能性も出てくる。
綾里千尋殺害事件を知り尽くした者・・・つまり関係者だ。
この事件はしっかり調べなければならない。
一応証人にも話を聞いておかねば。
同日 警察署・刑事課
「あっらぁ♪お久しぶりね♪け・ん・じ・サ・ン♪」
「ぬ、ぐぉぉぉぉ!」
なんなのだ、この・・・なんというか、きついオーラは・・・
「んでぇ、お話ってぇ、な・あ・に?」
「む、むぅ・・・そ、その。目撃したことを事前に話して頂きたい。」
「わかったわぁ♪じゃあ、お話しするわねぇ♪」
どうも私の周りの女性というのはまともで普通な人がいないらしい。
「わたしはぁ、ぜぇんぶ目撃しちゃったのよぉ!
だからぁ、明日の法廷で証言するのぉ!」
「むぅ・・・全部か。」
「ま、詳しいことはぁ、明日の法廷で証言するわぁ!」
「ム。了解した。」
強烈だ。こんなに強烈なのはオバチャンとこの証人しかいない。
とにかく、分かったのはひとつ。この証人は全部見ていた、ということだ。
しかし何か引っかかる。なぜだ・・・?
同日 堀田クリニック・ロビー
さて。一応(被害者)本人の証言も聞いておかねばな。
真宵くんは殺人などはしないと思うし真犯人を目撃しているかもしれない。
バシィッ!
「御剣怜侍!久しぶりね。」
「メ・・・メイ!なぜ貴様がここに!」
「ちょうど帰国していたのよ。テレビをつけるなり成歩堂龍一が死んだという
ニュースがあったから、早速来てみたの。」
な、成歩堂は死んではいないぞ・・・
「成歩堂にムチを連打したら死ぬぞ。」
「幸運なことに、死ななかったわ。ぶっ倒れただけよ。」
「な、何!し、証言が聞けなくなるではないか!」
「そう。やっぱりあなたが担当するのね。」
「あ・・・ああ。そうだが。」
「ま、私は明日別の事件だから見にいけないわ。残念で仕方ない。」
「貴様が来るとロクなことがないからな。」
ビシィッ!
「人をすぐムチでたたくな!」
「私はここで失礼するわ。ま、せいぜいがんばることね。」
そう言ってメイは去っていった。
同日 成歩堂龍一の病室
「御剣!真宵ちゃんが捕まったって本当か?」
「・・・ああ。緊急逮捕された。証拠も揃っている。」
「な、なんでまた真宵ちゃんが・・・」
「真宵くんは第一発見者なのだが、血文字や状況などで犯人とされている。」
「・・・御剣。僕は真犯人を知っている」
「だ、誰だ!!」
「君も気づかなかったかい?今回と似た事件があることを・・・」
「君の師匠が殺害された事件だろう。」
「今回も同一犯だ。小中大・・・」
「し、しかし!小中は無期懲役で・・・」
「松竹梅世。殺したのはあいつだ。小中は指示をした。」
「し・・・証人・・・!」
「これだけは間違いない。また真宵ちゃんに3年前と同じ思いを・・・!」
「私も気にはなっていた。あまりにも似すぎだ、と感じたのだが」
「真宵ちゃんは無罪だ。そして真犯人は小中と松竹梅世。」
「ああ・・・分かっている。しかし、私は検事だ。
人を疑うのが仕事だ。もちろん、真宵くんも・・・だ。」
「御剣。今回の弁護士って誰なんだ?」
「知らないのか?神崎正義。君の師匠と同じ星影法律事務所出身、そして同期の弁護士でもある。」
「え、えええ!・・・千尋さんと同期!」
「かなり優秀な弁護士らしいぞ。ヤリテで(完全無敗)と聞いているが。」
「す、すごい・・・」
「明日の法廷は私もまったく先が読めない。」
「と、とりあえず。明日はがんばってくれよ。」
「ああ・・・。」
といっても、どういう風にがんばればいいのか分からない。
でも、真宵くんは無罪。真犯人は・・・松竹梅世。
とにかく。真宵くんに会わなきゃならないな・・・。
同日 留置所・面会室
あたしは絶対なるほど君を殺そう、なんて考えない。
でも、誰がなるほど君を殺そうとした。・・・一体、誰なんだろう?
「・・・真宵さん。」
「き、きゃわわわわぁ!」
「あ、すみません。驚かせてしまったみたいで。」
「い、いえいえ!あの。正義さん。明日の法廷は大丈夫ですか。」
「あなたを必ず無罪にしてみせます。あなたは僕が守りますから。」
なんでだろう。なんか正義さんと一緒にいるとあたし変だ・・・
「証拠品や情報もある程度集めたので大丈夫です。安心して明日は僕の弁護を見ていてください。」
「はい。ありがとうございます!」
正義さんってどこかの誰かと違って頼れる人だな。
正義さんと一緒にいるとドキドキするし。
それにこの人なら絶対大丈夫だ、ていう気がする。
「・・・あの。犯人の目星とかは・・・?」
「僕は明日で無罪判決を勝ち取りたいと思います。多分、明日の証人が一番怪しいですね。」
「証人かあ・・・。一体、誰が出てくるんでしょう。」
「さっき、イトノコギリ刑事という人に聞いてみたんですけど教えてくれないですね」
「ああ、あの人いつもそうですから気にしないでくださいね。あと、最初の証人は
必ずイトノコ刑事が出てくると思うので。でもムジュンだらけですよ、毎回。」
「そうなんですか。分かりました。」
「・・・あの。」
一番気になってたこと、聞いてみるか。
「なんですか?」
「お姉ちゃんとはどういう関係だったんですか?」
「同期の友人、という感じですよ。そういえば何年か前、真宵さんの写真見せてもらって
話とか聞いたことありますし。」
「え、ええ!お、お姉ちゃん・・・。」
「でも、真宵さんすごいですね。霊媒師の修行をしてるとか。」
「お姉ちゃんめ・・・」
「でも、ずっと会ってみたいと思ってました。今日直接話が出来て、真宵さんはいい人だな、と思いましたよ。」
「そ、そうですか?」
「ええ。じゃあ、僕はこれで。」
「はい。明日はお願いします。」
正義さん、優しくてすごくいい人だな。
あたしの為に尽くしてくれて、あたしは正義さんに守られてる気がした。
「真宵くん。」
「あ!御剣検事。どうしたんですか?」
「真犯人が成歩堂の証言で分かった。小中大、だ。」
「え・・・えええええええええ!」
「君にとっては2度目の悪夢だろう。」
「・・・前にも同じことがあったような・・・」
「3年前だろう。まあ、直接殺したのは松竹梅世だ。指示に従ったらしい。」
「そ・・・そんなあ・・・」
「なるほど君への復讐・・・同じことの繰り返し・・・」
「そういうこと、だ。」
「なんてひどい・・・」
「明日の法廷の証人は松竹梅世。この点も3年前と同じだ。」
「・・・コナカ・・・」
「明日は3年前の事件についての話になるだろう。君も辛いだろうが小中達の再犯を
証明するためだ。3年の時を越え・・・また悲劇が起こったのだ。」
「お姉ちゃん・・・。」
明日の法廷、どうなるんだろう。
まったくあたしには先が読めない。
真実は浮かび上がってきたけれど、3年前のこと、忘れたいと思ってたのに・・・
でも、あたしは辛くてもこらえないといけないんだ・・・
でも、なるほど君とお姉ちゃんのために・・・
あたしは負けない。正義さんと戦い続ける。
・・・法廷で!
あとがき
成歩堂に悪いなぁ・・・と思いつつ書いた作品です。(苦笑
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