●レビュー
MOTHER2発売から9年。64で開発していた3も陽の目を見ることなくまま開発中止となり、MOTHERシリーズはもう終わってしまったんだなとすっかり諦めていた私の元に、突然GBAでの1+2の発売と3の開発再開というニュースが飛び込んできた。このニュースに心の中で狂喜乱舞したファンは私だけではあるまい。MOTHERシリーズは掴んだ人の心を離さない、他のRPGにはない不思議な魅力を持ったゲームだからだ。
このシリーズでは最初に自分や仲間の名前を入れる。これは他のRPGでも見られる光景だが、MOTHERシリーズ独特なのは、この後自分の好きな食べ物を入れるというところ。ゲーム本編で主人公(=プレイヤーの分身)が自分の自宅に戻ると、ママが最初に入れた好物を用意して待っていてくれる。ゲームの中の主人公とプレイヤーを同化させる心にくい演出だ。(2ではこれに加えてペットの犬の名前もつけられる。)さらに1,2ともに共通しているのはどちらも現代(1は1980年代、2は1990年代)のアメリカが舞台となっているところだ。グラフィックもポップだが、どこかへんてこりんで独特な世界観を築いている。ほのぼのとした雰囲気の中にちょっとブラックで毒気がそれとなくブレンドされているのが絶妙だ。町の人たちの会話もコピーライターの糸井氏らしくコミカルなものからシニカルなものまで一人一人のセリフに味があり、実に多彩に富んでいる。戦う敵も1の最初の戦いが「電気スタンド」だったり普通のおばさんやおにいさんから動物たちが襲いかかってきたりするのだが、主人公一行は決して彼らを殺したりはしない。戦闘に勝利すると彼らは「われにかえった」り「おとなしくなる」のである。お金も敵から奪うのではなくパパが振り込んでくれる。(戦闘勝利回数に比例はしますが…)どこか殺伐したところが出てきてしまうのはほとんどのRPGの宿命とも言えるが、このシリーズに限ってはそういうものとは無縁である。「日常の中の非日常」的な作品が好きな私にとってはすごく好みに合ったシリーズと言えるのである。
また、1,2とも「音」を集めるのがゲームの目的となることでも分かるように、音楽はこのシリーズにとっては重要な位置を占めている。元ムーンライダーズの鈴木慶一氏により実に聞き心地の良い音楽が奏でられている。それ故にGBA版では本体性能の問題で原版より音楽が劣っているのは実に残念な所だ。
そしてこのシリーズ個人的に最大の醍醐味なのはラストバトルだ。1,2とも普通に戦っていては永久に倒せない。戦うのではなく別に何かをする必要があるのだが・・・。感動を十分味わうために出来れば自分で試行錯誤してその方法を見つけて欲しい。特に2のラストバトルは自分の中で一生記憶に残るだろうというほどの傑作ものだ。好みはあるだろうが、このためだけにでもこのゲームをやってほしいくらいだ。(2の後に1をやったらやや最後があっさりかなという気はしました^^;)
1は今からやるとグラフィックや、(今から見れば)やや突き放した感のあるゲームバランス(その分2より自由度は高い)、少ない情報量は辛い面もありますが、それを差し引いても十分良作と呼べる作品に仕上がっています。個人的にはリメイクをして欲しかったですが。2の前にファミコン版をやっていればきっともっと高い評価をあげられたでしょう。2はSFC版の所でも言っている通り言わずもがなの傑作。弱い敵と接触すると一瞬で倒してくれたりとプレイヤーにストレスを感じさせない親切設計が組み込まれているところもさすが。名作2本をまとめて遊べて2,800円という価格になったのですからお買い得という他ないでしょう。3で初めてMOTHERに触れた人にも是非遊んで欲しい作品です。
レビュアー/今師@管理人 オススメ度…★★★★★
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