ファイナルファンタジーシリーズ:FF物語
登場人物基本設定
名前:登場シリーズ:性別:ゲーム中の設定年齢:本作で設定した年齢:本作設定ジョブ

バッツ・クラウザー:ファイナルファンタジー5:男:20〜21歳:23歳:モンク
ティナ・ブランフォード:ファイナルファンタジー6:女:18〜19歳:20歳:赤魔術師
クラウド・ストライフ:ファイナルファンタジー7:男:21歳:22歳:戦士
ジタン・トライバル:ファイナルファンタジー9:男:16歳:17歳:シーフ

※本作はファイナルファンタジー(FF)シリーズにおける4人の主人公が、初代FFの世界を舞台に冒険をする物話です。
 FF1及び各シリーズのネタバレを含んでおります。



プロローグ1 バッツ・クラウザー

(何でこんなことになったんだ…?)
 青年、バッツの頭の中をさっきからこの問いがぐるぐる回っている。
 かといっての前に立ち塞がる人物がその問いに答えてくれるとはとても思えなかった。
「よお!久しぶりだなバッツ」
 機能性を重視した武闘着スタイルで身を固めた前の人物は、やる気満々で軽く指など鳴らしている。
「ファリス、あのな…」
 万にひとつの望を抱き、バッツは何とか説得に持っていこうと試みる。
だがその努力はファリスが身構えたことによって空しく打ち消された。
「手加減したら承知しねーぞ」
 ファリスはそう言って不敵に哂った。挑発的な表情が何とも妖艶で美しい。
 ファリスが身構えると二人の周りで響く大勢の人間の歓声はますます無籍任にに大きくなった。
 聞きようによってはとても狂気じみていて、煽ることによって全ての負の感情をこちらに投げつけているかのようだ。
 確かにこれ以上ストレスを発散できるイベントはないのだろうが…。
 人の気持ちとは貪欲なものでで荒れた世界を憂いていた頃のことなどとっくに忘れてしまっている。
 世界が平和になればなったで他の刺激を求めようとようとするもの。
 しかし、その対象が、まさか自分になってしまうとは。
(一体なんでこんなことになったんだか…)
 バッツの頭に先ほどの疑問が再び蘇ってくる。

 一週間ほど前になる。相棒であるチョコボのボコと当てのない旅に出、ふらりと故郷の村リックスに帰ってきた時のことだった。
「タイクーン武闘大会…?」
 バッツが何日か分の荷物を下ろし、一息入れようとお湯を沸かしていると、彼女は突然現われた。
「それがどーかしたのか?クルル」
 クルルと呼ばれた金髪の少女はバツが悪そうに顔を起こして言い訳がましく彼に言った。
「だからぁ、レナがどうしてもっていうんだ。バッツが出てくれたらがぜん盛り上がるんだって」
「何だって俺なんだ?結果は見えてるんじゃないのか?仮にもエクスデスの放ったモンスター共と渡り合ってきたんだぜ?俺たちは」
 クルルがかけてきた話というのはこうだった。
 かつてこの世界を支える『クリスタル』を破壊し、凶悪なモンスターを放ち、果ては全てを無に還そうとさえした諸悪の根源エクスデスをバッツたちはクリスタルの光に導かれ討ち果たした。
 世界は平和になり、人々は安息の地にて平穏な日々を送ることになった。
 それから2年と数ヶ月、人々はその平和を退屈と思うようになっていった。
 ぬるま湯のような平凡な日々から抜け出そうとして、あちこちでいさかいが起こった。
 それはごくごく小規模なものだったけれど、やがては全ての不安がまとまって、ちょっとの誤解から“戦争”という形になってしまうことも、そう遠い未来の話ではない。
 そう考えたタイクーン王女レナは、人々のストレス発散の場としてタイクーン城内にて腕に覚えのある者たちを集め、武闘大会なるイベントを思い立った。
「…分からなくもないな、レナの考え。俺もあちこち旅してきて、皆のどうしようもない憤りを肌で感じた。
 何かをやりたいんだけど何をしていいか分からない、そんな様子だったな」
 必死に食い下がるクルルに、最初は乗り気でなかったバッツもちょっと考え込んだ後、呟いた。
「え?!じゃあバッツ…」
 パッと顔を輝かすクルルの頭をくしゃっと撫でて、明るく笑う。
「余興…だろ?どうせ次の旅の予定はまだ考えてないんだ。いいぜ、出ても。レナに伝えといてくれよ。ただし、武器は使わないでおくからな。俺は」
「あ、ありがと!
 レ、レナもバッツに会いたがってたし、喜ぶと思うよ。じゃあっ…」
 バッツの返事を確認すると、クルルはそそくさと身を翻し、戸口に向かって駆け出した。
「一週間後…タイクーン城で!」
 クルルがばたばたと出て行った後、ぽつねんと取り残されたバッツは頭を掻き掻き呆然と呟いた。
「そういや、何でクルルのヤツがンなこと俺に伝えに来なきゃならなかったんだ…?」

 今思えば、あれはやっぱりおかしかった。
 クルルだって今はバル城の王女、というにはまだ幼すぎるが、そういう普通ではない立場の人間である。それがかつての仲間とはいえ、他国の王女の伝達係というのは、本人はいいとしても国家としては大問題のハズだ。
 何のためにクルルが直々に来なければならなかったのか、その疑問に対する答えは、武闘大会の会場に着いた時、はっきりと分かった。

『サリサ王女争奪戦 タイクーン武闘大会!』

 城の上面に掲げられた看板に、でかでかと刻まれたを見た瞬間に。

「どういうことだ?」 
 控え室でそわそわと待っていたいたクルルに詰め寄り、バッツは叫んだ。 
「だからね、レナが…」
 上目遣いに彼を見上げるクルルの瞳は完全に泳いでいる。
「ファリスと賭けをしたんだよ」
「賭けぇ…?」
「なんかさ、レナって最近“王女”やってることに疲れたみたいで、元気ないんだ。
 そうだよね。外交とか国政とかタイクーン王がやってたことを全部レナがやんなきゃならなくなったんだもんね。あたしも分かるんだ。レナの責任の重さ、大変さ…」
 で、そんな時にファリスが海から帰ってきたの。レナの想いがその瞬間に爆発しちゃって。海に出て自由気ままに海賊やってるファリスに突っかかっちゃって、『自分はこんなに大変な思いをしてるのに、姉さんだってタイクーン王女なのに…』って。それで大ゲンカ。ファリスってばあんな性格だから、おとなしく王女に収まるわけないでしょ?」 
 それでもレナは、第一王女であるファリスが王位に就くべきだって言ったんだ。それからは売り言葉に買い言葉で、ファリスってば『だったらオレより強い男を連れて来い!そうすりゃ結婚して王位でも何でも着いてやる!』って啖呵を切っちゃったの」
「……で、この騒ぎか」
クルルが話を終えるとバッツは長い溜め息を吐いて言った。
「でもな、あのファリスだぜ?男で適うと思うか?」
 控え室にはぞくぞくと選手たちが集まって来ていた。
誰もかれもタイクーン王女との結婚と王位を懸けての大勝負ということで、気合をみなぎらせている。
 鍛え上げられた肉体に自慢の武器を携え、最後の調整に掛かっていた。
 が、バッツにはこの中の誰もファリスにサシで勝てるとは思えなかった。
 何しろ彼女は現役バリバリの海賊のおかしらで、バッツと一緒にモンスターと戦い、エクスデスとの壮絶な死闘に勝利し、次元の狭間からこの世界に戻って来た女性である。
 普通のか弱い、まともなお姫様とはほど遠い人生を送って来たのだ。
「だからバッツを呼んだんじゃない」
 クルルの声にバッツの意識は現実に引き戻された。
「ああ、そりゃあまぁ、俺なら……ああ?!」
 見ればクルルの小さな手は、しっかとバッツの袖を掴んでいる。
「ちょちょちょ…ちょっと待てよ!」
バッツは慌ててその手を振り払いながら、
「じゃあ何か?!俺がファリスの…じょ、冗談じゃない!」
「バッツ!」必死ですがるクルル。
「他、当たってくれ!だいたいな、いくら賭けのためだって、レナがそんな条件で俺をここへ呼ぶわけないだろう?」
「レナがそういったんだよ!」
「?!」
 いつの間にかクルルの目にはうっすらと涙が滲んでいた。他の選手の視線に気付き、バッツは彼女の手を引いて、慌てて控え室から出た。
「レナを、助けてよ。バッツ…」嗚咽に混じりにクルルはそう訴えた。
「レナは追い詰められてるんだ。何をしていいか分からないのはきっとレナ自身なんだよ。
ファリスも何考えてんのか、あたし、分かんない!だからお願い、バッツ!レナの目を覚ましてあげてよ!それが出来るのはバッツだけなんだから!
このままじゃ、レナが可哀想だよぉ!」

 そして今、バッツは全ての試合を勝ち抜いて舞台の上に立っている。
 対峙する相手はタイクーン第一王女、ファリスことサリサ・シャーロット・タイクーン。
 試合はすでに、始まっていた。
 
ファリスをけん制しながらちらっと客席に視線を走らせると、ひときわ豪華な王族専用の特別席で、ドレス姿のレナが虚ろな眼差しで舞台上の二人を見ていた。
いや、彼女の瞳には何も写ってないのかもしれない。その横には、不安げなクルルが寄り添っている。
(レナ……)
 バッツは、彼女に意識を向けかけたが、それは叶わななかった。 
 風を切る音で反射的に身ををよじると、鋭い突きが頬をかすめて過ぎていった。
「よそ見するんじゃねぇ!手加減すんなって言ったろ?」
「ファリス!」
 観客の煽る声をブチ破るように、バッツは叫んだ。
今度はファリスを、ファリスだけを見つめて。 
「お前、あのことレナには言ってないのか?」
 一瞬。ファリスの動きが止まったように思えた。しかし…。
「あいにくとオレは今、お前に勝つことしか頭にないんでね!」
 にやり…と口の端を歪め、今度は連続で蹴りを繰り出す。
 バッツは防戦一方だ。あっという間に舞台の端まで追い詰められた。
「オラオラ!後がねーぜ?」ファリスは挑発的に笑っている。
(くっ…!)
 息を呑む、バッツ。次の攻撃を避ける術はなさそうだ。
(俺に何しろってんだよ?!)
 ファリスがトドメとばかりに振りかぶる。カウンターで返そうと思えば返せないことはない。しかし、それで何が解決するというのか?

『ひ…か……り……』

(何だ?今の――)
 
 その異変は突然、起こった。気が付くと、今しも顔面に届きそうだったファリスの鉄拳は、バッツの目前で寸止めされていた。
 さっきまであんなに騒ぎ立てていた観客の声が聞こえない。色とりどりのバルーンもその色を失い、宙で石のように固まっている。
 光も音も何もかもが停止っていた。そう、時間さえもが。
 
『光の…せん…し……』

(俺だけなのか…?)
 喋ろうとした声は、凍ってしまったかのように、喉の奥に張り付いて発することが出来ない。

『集いなさい!クリスタルに導かれし…光の戦士よ!!!』

(な…に…?!)

 刹那、モノトーンの世界に光が溢れる。抵抗することさえ出来ないまま、バッツの身体は光の波動に飲み込まれ、一瞬後、消滅した。

プロローグ2 ティナ・ブランフォード

「じゃあ、行ってくるね。夕方までには帰るから…」
 ティナは遠慮がちにそう言うと、まだ若い夫婦に向かってぺこっとと頭を垂れた。
「そんな…ゆっくりしてきていいのよ。ティナ。せっかくエドガー様からお誘いを受けたんじゃない」
「そうだよ。ここは僕達に任せていいから」
 新婚の夫婦、ディーンとカタリーナは顔を見合わせ、頷いた。カタリーナの腕には、今年で一歳になる二人の子どもが優しく抱かれている。赤ん坊は一番信頼する人の胸にその身を委ね、安らかな寝息を立てていた。
 決して立派とはいえない木造の建物にはこの夫婦と赤ん坊を始め、他にもたくさんの幼い子どもたちが住んでいた。
 もちろんその子どもたちはディーンとカタリーナの子どもではない。しかし二人は彼等を実の子どものように可愛がっていた。
 彼等に親はいない。年齢もまちまちでここに来た時期にも微妙にずれがある。
 ティナたちの生きるこの世界は、二年前、一度崩壊していた。
 狂気に囚われ自らを神とし、世界の、そしてそこに住む全ての生きとし生けるものの運命を破滅に導いた男。
 彼はかつて、まだ自我というものに目覚めていなかったティナの精神を操り、破壊と殺戮の兵器として使ったことがある。
 しかしティナはその呪縛から逃れ、彼を倒した。その時に出逢った多くの仲間たちや、彼女自身に流れる幻獣の血――父マディン、母、マルガリータの想いと共に。
 あれから一年。崩壊した大地はまた命の息吹を取り戻しつつある。
 狂気の男・ケフカが滅び、魔法の源である魔石が消滅した時、ティナの身体から“魔力”という恐るべき力が抜け、彼女は普通の女性として生きることになった。
 世界が崩壊した直後、仲間ともはぐれ、何も考えられなくなった彼女が行き着いた場所がここだった。一組の若い男女と親を亡くした子どもたち。 
 人生のほとんどを感情を持たない殺戮マシーンとして利用されて来たティナにとって、自分の意志で運命を切り開いてゆこうとする人間は全く別の生き物に見えた。
 それが、今まで自分で考え行動することを知らなかった少女の、心の瞳が開いた瞬間だった。彼女は戦いが終わった後、この地で子どもたちと生きることを、自分自身で選択したのである。

「それにしても、ティナ。今日はオペラを観にいくんでしょ?もうちょっとオシャレな格好をしてもいいんじゃない?」
 カタリーナに指摘されて、ティナははっと顔を起こす。確かに今は、いつもの動きやすいビスチェ姿。とてもよそ行きには見えない格好である。
「うん、これでいいの。今日は行きがけにセリスがちゃんとしてくれるって。わたしはいいって言ったんだけど、なんか、張り切っちゃってるみたいで…」
 ティナの頬が、微かに薄紅色に染まる。カタリーナはくすっと微笑んで、まるでわが子に接するように、優しく彼女の頭を撫でてやった。
「何言ってるの!あなたはこんなに美人なんだから、たまにはちゃんとオシャレして、エドガー様をびっくりさせちゃいなさいよ!」
「そんな…わたし、別に普通でいいわ」
 カタリーナの言葉に、ティナは明かに困惑した表情で俯いてしまう。カタリーナはふっと溜め息を吐いて、苦笑した。
「ティナ、あなたがもっと自分の感情を表に出せるようになったらいいのにね」
 カタリーナはティナが今までどう言う人生を送ってきたのか知っている。彼女はこの二年、ずっとティナを見てきた。
 ティナは身体こそ20歳の女性のものだが、その精神はまだ未発達のままだった。
 殺戮マシーンとして操られるまま、感情のない人形のように生きてきた少女。時おり見せる虚ろな眼差し。
 彼女はまだ、人間としての“自我”を完全に確立出来ないでいる。
 ティナには今までの分もうんと幸せになって欲しい、そう願わずにはいられなかった。        
 誰か、ティナにとってもっとも大切な人が現れたその時、彼女はそれを受け入れることができるだろうか?
 夫のディーンはいつの間にか家の中に引っ込んでいた。
 二人の間に沈黙が落ちてしばらく経った時、暖かい太陽の光を遮るものが頭上を覆った。
「あ…」
 頭上を仰ぐティナ。二人を覆った巨大な影は、みるみるうちに大きくなって、村の近くに着陸した。
「来たみたい。じゃあ、わたし、行ってくるね…」
 ティナは挨拶もそこそこに、駆け出す。カタリーナは彼女の華奢な背中が、着陸した飛空艇『ファルコン』の向こうに気得るまで、黙って見送り続けていた。

「フィガロ国王、エドガー・フィガロ氏の命により、お迎えに参上しました。プリンセス・ティナ」
 ティナがファルコンに乗り込むと、銀髪の男がうやうやしくそれを迎えた。
「セッツァー。わざわざこんな所にまで来てくれてありがとう。でも、いいの…?わたし、一人でもちゃんと行けたのに…」
「おっと!そこから先は言いっこなしだ。
 これはフィガロ王じきじきの正式な依頼なんだからな」
 世界に一台しか存在しない飛空艇、ファルコン。その持ち主であり、さすらいのギャンブラーたる男、セッツァーはそう言うと、立てた人さし指を振った。
「今日は俺が責任を持って貴女をオペラ劇場のエドガーの元までお送りする。そうそう、セリスが客間で待っている。ティナに似合いのドレスを用意してな」
 セッツァーはそう言い残すと、黒いロングコートを翻し、二階に消えた。
 一方的に膜仕立てられたティナが唖然として佇んでいると、少しして軽い振動があった。
 どうやらファルコンは、早々に地上を離れたらしい。
(どうしよう…)
 エドガーはこうして時々、強引とも思える方法でティナを誘い出すことがある。彼女もそれが嫌なわけではなかった。むしろ、かつての仲間でフィガロ王でもあるエドガーはいつも優しくしてくれたし、いろいろなところに彼女を連れていっては元気づけ、励ましてくれる。その優しさに、彼女は時々すがってしまいそうになる。
 けれど、彼女は迷っていた。果たしてそれが、彼女の存在意義を確かなものにするために今までずっと探し求め続けてきた“愛”というものなのか…。
 自分はまだ、真実の愛を知らない。それが誰かに与えられるものなのか、それとも自分でつかみ取るものなのかさえも解らない。だから、彼女は自分に対するエドガーの優しさを、時として重荷に感じることがある。
「ティナ!」
 自分の名前を呼ばれたと気付くまでに、数秒かかった。
 ティナがのろっと顔を上げると、上へ続く階段の上に金髪の女性が立っていた。
「セリス?」
 彼女もまた。ティナと共に戦った仲間の一人である。彼女はその昔、ティナと同じに帝国で独裁者のガストロ皇帝の部下として仕えていた女将軍だった。しかし、彼女は自分の意志で帝国のやり方に反対し、裏切った。
 同じ年齢、同じ女性でありながら、セリスは自分とは何もかもが違っている。そう思うと、ティナは自分がとても異質な存在に感じた。
「どうしたの?ぼおっとして」
 セリスは明るく笑いながら階段を下りてくると、ティナの前でひらひらと手を振った。
「あ…ううん。何でも、ないの……」
 ティナは乾いた笑いを返し、セリスを見た。
「上で待ってたのになかなか来ないんだもの。こっちから迎えに来たわよ」
 セリスはティナの様子に小首を傾げながらも、彼女の手を引いて上につれて行こうとする。
「私ね、おとといからずっとあなたに合うドレスを探し回ってたんだから。さ、早く来て!」
「セリスまで、何でわたしを…?」
 何やら浮かれ気味のセリスに、ティナはますます戸惑って訪ねた。
「ま、たまにはいいんじゃない?こういうことはきっちり体験しておくべきだわ」
 セリスは答え、ウィンクする。
「わたし、ちょっと風に当たってきたいな。久しぶりに空からの眺めも見てみたい。着替えるのはそれからでもいいかな?」
 セリスご用達のドレスが置いてあるという部屋の前まで来た時、ティナは不意にそう言った。無意識に出た言葉だった。
 セリスは少し考えると、彼女の手を離した。
「…そうね、時間もあるし、行っておいでよ」

 応接室のソファに、見慣れた長い銀髪の後ろ姿があった。
 セリスは黙って近付き、その横に座った。
「…何?」
 彼女の視線は、彼の前のテーブルに並べられたカードに注がれている。
「占いを少々」カードから目を離さず、セッツァーが答えた。
「何て…?」彼とカードを見比べるセリス。興味深げに尋ねる。
「聖盃のA。愛の探求を示すカード。
 たぶん、ティナ次第でその意味は良くも悪くもなる。
 彼女自身が変わることだな。全てはそこから始まるさ」
「セッツァー、あなた…」
 セリスは大きく目を見開いて、まじまじと彼を見つめた。 
「…ま、俺たちは彼女が選ぶ道の先々に立って行き来を決める道しるべじゃないしな。
 そんなことをしたって、何にもならないだろう?ただ、もしも彼女が一人で行き先を決められなかったら、その時は案内人が必要になるかもしれないか、残念ながらそれも俺たちの役目じゃない」
「それって、エドガー?」
 セリスの問いにセッツァーは答えず、指でカードを弾いて立ち上がった。それが二人の会話の終止符になる。
「…さて、俺はそろそろ操縦に戻るとするよ。ついでにティナにも声をかけておくから、後のことは任せたぜ」

 大地が引き裂かれた破滅の日から丸二年。ここにきてようやく、世界はまた元の緑溢れる地に戻りつつある。一度は絶望しかけた人々も、そんな自然の生命力に勇気付けられるように、崩壊した町や村の復興に力を入れていた。
 しかしこうして飛空艇の甲板から地上を眺めてみると、崩壊した時の爪痕が、まだあちこちに痛々しく残っているのが分かる。
 人々の心に刻み付けられた傷跡はじょじょに薄らいでいくとしても、決して元には戻ることはない。ティナは時々そう思う。
 普段は明るい孤児院の子どもたちも、時々寂しそうな顔をする。
 それは例えば、町で仲むつまじい親子が手をつないで楽しげに散歩しているのを見たりした時に。
 自分ではそれと同じ愛情を彼等に与えることは出来ないのかもしれない。
 そう考えた時、堪え難い孤独と不安を覚える。
 ここにいる自分は、まだ操りの輪で操られている戦闘マシーンの自分なのかもしれないと錯覚する。今にも消えてしまいそうな心細さ。それは多分、自分がまだ、本当の“愛”を知らないから…。 
 急いでも焦っても、それは得られるものではない。何だか周りの景色が急速に変わって、いつしか自分だけが知らない世界に放りだされてしまいそうだ。
「寒い…」
 高度が少し上がった。肌寒い風に、ティナはぎゅっと自分の肩を抱いた。
 そうしたのは、寒さのせいだけではないかもしれないけれど。
「わたし、どうすればいいのかな…」
 いつもの自分への問い掛け。決して返ってくることのない答え。
 十分分かっていた。しかし、今日だけは何かが違っていた。

『……の、せんし…』

(え…?)
 慌てて周りを見回すティナ。が、誰もいない。
 ただ、声が決して空耳でなかったことは、すぐに確信となった。

『集え…!クリスタルに選ばれし、光の戦士!』
 
 次の瞬間、ティナの身体は眩い光に包まれ、その場からこつ然と消え失せていた。

「ティナ…?ティナ!」
 入れ違いに甲板に上がってきたセッツァー。後部の舵に向かって歩きながら辺りを見回し、訝しげな顔つきになって呟いた。
「入れ違いになったか…?」

プロローグ3 クラウド・ストライフ

「ふざけるのもいい加減にしろおっ!!!!」
 がっしゃん!
 青年の絶叫と共に派手にひっくり返るテーブル。
 周りの客は何事かとその青年の方に注目した。
 しかし彼はそんな視線をものともせず、正面にずでんと居座るデブモーグリの人形とその上にちょこんと乗ったネコ型ロボットに向かって怒声を浴びせる。
「その新作アトラクションの試乗とやらで、いったい俺が何回変な世界にぶっ飛んだと思ってるんだ?!」
「まあまあ、クラウドはん。ここは仮にも公共のカフェでっせ。お客さんも居はるさかい、ここはひとつ穏便によろしゅう頼みますわ」
 驚くべきことにそのネコ型ロボットは人間のように流暢にしゃべり、マジギレ状態の青年、クラウドを必死になだめていた。
「知るかっ!大体っ!ケット・シー!いや、リーブ!!!お前のアトラクションのせいで、俺は顔は同じだけど性格が無気味な俺たちの分身と会っちまったり、中世風の世界ではどこぞの貴族のお家騒動に巻き込まれたり、はたまたチョコボのしゃべる世界では額に傷のある男やモンスターと共にレースをしなきゃならなかったり、挙げ句の果てにはティファやヴィンセントまで巻き込んでみたこともない奴らと一対一で格闘しなきゃならなかったり、これまで全く全然ちっっっっ…ともまともな思いをしたことはなかったんだぞ!!!
 ぜーぜーはーはー…」
 ケット・シーはしばらく肩で息を吐くクラウドを無根で眺めていたが、やがて感嘆の吐息を漏らして言った。
「クラウドはん、やればちゃんと3行以上しゃべれるんですなあ。ボク、ちょっと見直しましたわ」
「おいっ!突っ込むのはそこじゃないだろうっ!」
 ばしっ!
 ネコ型ロボットを狙ったクラウドの平手は、素早く身を躱した彼には当たらず、デブモーグリにヒットする。
「乱暴でんな。今日はアトラクションの試乗とは違いますって、少し前に言いましたがな」
 ケットはしゃあしゃあと返す。
「『試して欲しいものがおますのや』って、にこやかに言ったじゃないか!」
「だから、試すのはアトラクションやおまへん」
「じゃあ何だって言うんだ?」
 アトラクションの試乗ではないと分かると、彼は少し落ち着いたのか、疲れきったようにどっかといすに腰を下ろした。
「なんだなんだ?ゴールドソーサーの支配人自ら出演の漫才ショーか?」
「いいぞ〜!ツンツン頭の兄ちゃん、もっとやれ〜!」
 気が付けば、二人の回りには大勢のやじ馬ギャラリーが詰め掛けていた。中にはおひねりのつもりか、ギルを投げて来る者までいる。
 クラウドは自分のドリンクにコインが投げ込まれるのに眉をしかめながら、少しばかり声のトーンを落として訊く。
「――何にしても、お前の作るものだ。どーせロクなもんじゃないだろ?」
「まあ、そういわんと…」
 ケットは回りに愛想を振り巻きつつ人払いした後、そそくさとカフェのカウンターに向かい、グラス片手に戻って来た。
「これですわ」
 それを、元にも度したテーブルの上にコトッと置く。
「ゴールドソーサー食品開発課が総力を上げて開発した新しい飲み物や。
 その名も、“ルレラパ・ドリンク”!」
「なんだそりゃ…」
 力なく答えるクラウド。もうどうでもよくなったのか、投げやりな態度である。
「まあまあ、そう意固地にならんと」
 ケットは手際よくクラウドが手にしたドリンクと自分が持ってきたグラスと取り替えて、
「一口だけでも試してみてな」
「ふーん…」
 クラウドはさして興味も示すことなく、グラスをくゆらして唸った。
 グラスの中で揺れるオーシャングリーンの液体は、確かに爽やかな印象を与える。しかし、彼は全く口に運ぼうとしなかった。
「まさかこれ、飲んだら幽体離脱するってんじゃないだろうな?」
「それやったら犯罪でっせ。心配は要りまへん。ボクはロボットやさかい毒味は出来しまへんけど、今日ここに来たお客さんには無料で配ってますねん。ホラ、見てみなはれや」
 言われると、確かに多くの客の手に、クラウドと同じ色の飲み物がある。
「成程」
 確かに喉も乾いていたし、飲み物でどうこうなるなんてことはないだろう。
(ちょっと警戒し過ぎたかもしれないな…)
 クラウドは自嘲気味に苦笑し、ドリンクをしばらく眺めていたが、やがて一気にあおった。
 オーシャングリーンの液体は、その色同様爽やかな後味を残しつつ、すうっと喉を抜けていく。
(なかなか美味…?!)
 クラウドがケットの眼の鋭い光に気づいた時、全ては手遅れだった。
 よく考えてみると、飲食物のモニター員なら自分よりユフィやティファの方がふさわしいハズではないか。
「毒は確かに入れてまへん。でもな、“睡眠薬”を入れてないとはひとっことも言うてまへんで?……なあ、クラウドは〜ん!」
「リ…ブ……!」
 がしゃん!
 テーブルが二度目にひっくり返った時、クラウドはすでに正体を失っていた。
「さっすが、キングべヒーモスも一発で落とす、超強力即効性睡眠薬・スリプルZ――その効き目、確かに見させてもらいましたで。…宝条はん」
 ケット・シーは一人呟くと、デブモーグリにクラウドを担がせ、カフェを後にした。

「さってと、ほな、始めましょか!」
 ここはゴールドソーサーでもめったに人が来ない区域。
 ケット・シーこと操縦者リーブはここでゴールドソーサーの新作アトラクションの開発に燃えていた。
 そして、その試乗第一号はクラウドと決めている。体よく言えば『試乗』ということになるが、まあ早い話が“人体実験”だ。
 機械にあまり詳しいとは言えない彼が造ったアトラクションは今までまともに作動した試しがなかった。だが彼の新アトラクション開発、ひいてはこの一大娯楽施設『ゴールドソーサー』の発展に懸ける彼の情熱は異常ともいえた。
 だからこそ、完成品を世に送り出すための尊い犠牲、もといモニターは絶対必要なのだった。
「改良に改良を重ねた『パラレルワールド・とらべるぼっくす零式・オメガ☆マグナム』!
 始動ッ…!!!!」
 興奮を抑えきれない掛け声と共に、禁断の赤いレバーがオンにされる。
 ケットの目の前にある一見電話ボックスのような箱全体に、眩いばかりのライトが色とりどりに輝き出した。まるでこの機械も、いつもの客を迎え入れ,歓喜の叫びを上げているかのようである。
「ほな、クラウドはん。今日も張り切って行ってらっさ〜い!!!」

 軽い振動で何度か意識は戻った。しかし、指一本動かすこともままならない現状。 
(油断した…)
 今さら後悔しても、もう手遅れだ。複雑な機械むき出しの内部の鼓動を訊いただけで、クラウドはこれから自分の身に降り掛かるであろう運命に、絶望的不安を覚えずにはいられなかった。…その時である。

『ひか…の…せんし…』

(…なんだ?今度はアナウンス付きか?)
 いよいよ激しくなってくる周りの閃光。クラウドの意識はまた、薄らいでゆきつつある。
 
『集うのだ、クリスタルに選ばれし光の戦士よ!』

 光が弾けた。身体が引っ張られるような感覚が襲う。

(もお、どうにでもしてくれえぇぇぇっ…!!!)
 絶叫は言葉にはならず、次の瞬間、ボックスの中から彼の姿はなくなっていた。

プロローグ4 ジタン・トライバル

「…それでさ、シナのヤツ『そしたら僕、このとんかちと心中してやるずら〜!』なんつって泣き出すんだぜ?
 まったく、ケッサクだよな、ダガー。笑えるだろ、この話」
 豪華かつ上品で繊細な彫刻が施された大理石のテラス。
 そこは、いつも色とりどりの花々が咲き乱れ、美しい蝶や小鳥が羽を休める場所を求めて集う、安らぎの場所。そしてこの若い男女が、二人っきりになれる唯一の空間でもあった。
「…ん?どうかしたのか、ダガー。面白くないかい?」
 手すりに腰掛けていた金髪の少年はひらりと降り立ち、首を傾げながら向かいに佇む黒髪の少女の顔を覗き込んだ。
「ううん。とっても楽しかったわ、ジタン…」
 ダガーと呼ばれた少女は、しかしその言葉とは裏腹に重く沈んだ表情を隠せないでいる。
「なんか、疲れたって顔してるな」
 いくら陽気なジタンでも、さすがに見逃すことの出来ない変化だった。
「王女様ってのは、そんなに大変なものなのかい?」
 ジタンの問いは、空しく風に名がされる。沈黙が二人を支配した。
 ダガーこと“ガーネット・テイル・アレクサンドロス17世”これが彼女の実名である。
 彼女はここ、アレクサンドロス城で、たった一人の王族だった。彼女の父、つまりアレクサンドリア王は彼女がまだ幼い頃に死亡し、母であるブラネ王女もある戦いで命を落とした。そして今や二十歳にも満たないこのガーネットこそが、アレクサンドリア城の正式な城主なのだ。
 一方、ジタンはある劇団の団員で、盗賊まがいのことも少々やりながら、その日暮らしの気ままな毎日を送っていた。しかし、彼女と出逢ったことでその運命は大きく変わった。
 世界を駆け巡り、自分の出生の秘密を知り、ずっと探し続けてきた故郷の地にも行った。
 もっともそこは、“ガイア”と呼ばれるこの世界ではなかったのだけれども。
 だが彼は、自分の瞳でその事実を真っ直ぐ見据え、宿命を受け入れた。
 ガーネットはがんじがらめに縛られた王女の運命から逃げるために、ジタンに自分を盗んでくれるよう依頼し、しばらく一緒に行動するうちにだんだんと彼の生き方に惹かれていった。
 それは、若い男女にとってみれば当然の成り行きかもしれなかった。
 自由を求める王女の憧れ。そしてジタンも、彼女を彼女の身分ごと受け入れた、そう思っていた。彼は…少なくとも。
 ダガーというのはジタンがガーネットと行動を共にしていた時に付けた偽名だった。ジタンは未だに、彼女を呼び慣れたその名前で呼んでいる。
「私ね、時々考えるんだ…」
 気まずい沈黙はガーネットによって破られた。俯いたまま、ぽつりぽつりと語り始める。
「ガーネットは王女としての私。ダガーはあなたと一緒に居る時の私。…でもね、ホントはどっちも私じゃないんじゃないかって」
「?」
「何だか最近、どっちの私も自分の意志で動いてるようには思えなくて。演じてるような気がするの。何もかもを…。王女って立場が嫌なわけじゃない。未熟な私をみんな支えてくれるし。けど、あなたと初めてお城を抜け出した時のようなどきどきは、もう…ないんだなって」
「そんなことないさ!」
 ジタンの叫び声にいつの間にかテラスに集まってきていた鳥たちが一斉に飛び立つ。が、彼は構わずガーネットの手を取ってぶんぶん振りながら、
「城の暮らしが窮屈になったら、オレはいつだって君を連れて、何処へだって行ってみせるさ!」
 しかし彼女は首を振り、そっとジタンの手を外すと、寂しそうに笑った。
「…ごめんね。そうして欲しい気持ちは一杯。だけど、そう言うわけにはいかないの。だって私はアレクサンドリアの王女『ガーネット』に戻っちゃったから。
 もう、『ダガー』じゃなくなっちゃったから。だから、ゴメン。ゴメンね…ジタン」
「…」
 ジタンは。彼女の背中をおうことが出来ず、その姿が城の中に消えるまでずっと、その場から動けないでいた。

 シド大公が収める国『リンドブルム』は、アレクサンドリアに次ぐ大国である。とりわけ工業と飛空艇技術に関しては、他に並ぶ国はないといえた。
 城下に広がる街は、ジタンが育った場所である。幼少時代を彼はここで過ごしてきた。
 彼に何かあった時、行き着く場所はいつも、この街の場末の酒場と決まっていた。
「今は昼間で、周りに人影はない。ジタンはカウンターに座り、黙々と飲んでいた。
「あっれー?ジタンじゃん!どしたの?こんなトコで」
 そこへ、不意に響いてきた素っ頓狂な声は、酒場に不釣り合いな子どものもの。
「エーコ…?」
 のろっと上げた視線の先には紫色の髪の少女がちょこんと立っていて、大きな瞳でじいっと彼を見上げていた。
「どうして…」ここに?と言いかけて、思い直す。
(そういえば、こいつ…シドの子どもになったんだっけな)
「何かあったの?ジタン、暗いよ?」
 ジタンの心境を知ってかしらずか、エーコは気さくに話し掛けてきた。彼女もまた、ジタンやガーネットと共に旅立ち、全てを見てきた仲間だった。 
 ガーネットにとっては妹のような存在であり、ジタンにとっても大切な仲間で妹である。
 けれども今は、彼女と楽しく世間話をする気にはとてもなれなかった。
「…ガキの来るトコじゃないぜ」
 ジタンが軽く流そうとすると、案の定、エーコはむくれた。
「まーたそうやって子ども扱いするう!エーコだってもう9歳よ!りっぱな“れでぃ”なんだから!」
(ドーコが…)思ったが、口には出さなかった。またうるさく返されるに決まってる。 
「それよりジタン、今日はセーラに会いに行ったんじゃなかったの?」
 ジタンが何も言わないでいると、エーコはちょこちょこと近付いてきて、隣に座った。
「おじちゃん!エーコ、ミルクね!」そしてちゃっかり注文を出す。
「セーラ?」無視するのは簡単だったが、聞き慣れない名前に思わず口を挟んでしまった。
 エーコは一瞬きょとんとした顔をしたが、やがて何かに気付き、ポンと手を打った。
「ああ、ゴメン!ガーネットのことだよ。つい、クセが出ちゃって…」
「ガーネットが、セーラ?」ジタン、興味を覚えて問い返す。
「マダイン・サリの召喚壁ね」エーコがすぐさま答える。やっとジタンが相手してくれたことが、嬉しかったらしい。
「あたし、やっぱりあそこが大好きなんだ。だから今でもよく行くの。それで気付いたんだけど、あの壁にね、ガーネットのお父さんが刻んだらしい文字があったの。
 だいぶ古くて壁画に混じって、最初は模様かと思って見過ごしてたんだけどね。よく見ると、『我が娘、愛するセーラ』って。多分アレって、ガーネットのことだと思うんだけど」
 がたん!
 エーコがすべてを語り終える前に、ジタンは勢いよく椅子を倒して立ち上がる。そして呆然とするエーコを残し、あっという間に出口へ消えて行った。
 我に返ったエーコが置き去りにされたと気付くまでに数秒を要し、そして。
「…なっ、何よもうっ!ジタンのぶわ〜かあ〜っ!!!」
 その絶叫が彼に届くはずもなく。彼女の悪態は閉じた向こうのドアに空しく跳ね返されていた。

 召喚士発祥の地、『マダイン・サリ』。今では人っ子ひとりいない廃墟である。旅をしている時に判ったことだが、ガーネットはアレクサンドリア王とブラネ女王の実の子どもではなかった。
 本物のガーネットはとっくに病気か事故だかで他界しているという。
 もっともこの事実は、一部の関係者だけが知り得ることなのだが。
 ともかくガーネット=ダガーはこの地で生まれ、物心付く前に母親と共に小舟で海に乗り出し嵐にもまれ、アレクサンドリアの地に辿り着いた。
 そして幼くして死んだガーネット姫の変わりに、新たなガーネットとして迎え入れられたのである。
 本人もそのことを知ってショックを隠せないでいたが、今はアレクサンドリアの王女としてその役目を全うしようとしている。
 例え事実がどうであれ、彼女は間違いなくアレクサンドリアで育ち、アレクサンドリアの姫として人生を歩んできたのだから。
(だけどもし……)
 マダイン・サリの一番奥まった場所。一番神聖な空間とされる場所にそれはあった。
 円形の高い壁の内側に刻まれた召喚獣の壁画。ジタンはそれらを指で辿りながら、ゆっくりと歩いて行った。
(もし、ダガーがここを出ずに、王女にもならずに、普通の女の子としてオレと出会っていたら、どうなってただろう…?)
 不意に、ジタンの足が止まった。

『我が愛する娘、セーラ』
 
 風化した文字は、辛うじてそう読み取ることが出来た。
「セーラか…」
 初めて聞くその名前を、口の中で反すうしてみる。
「セーラ…」
 不思議と心が穏やかになってゆくのが分かった。
「セーラ!」
 
『ひかりの…せんし…』

 ジタンの叫びとその微かな声が響いたのは、ほぼ同時だった。
「ん…?」
 声が壁の向こうから聞こえてきたような気がして、ジタンは思わず召喚壁に耳をくっつけた。その、途端。

『クリスタルに選ばれし光の戦士よ、あなたはこの呪われた世界の最後の希望。この地に集い、世界を、時の鎖の呪縛から解き放って下さい!!!』

「――な、何ィ…?!」
 叫んだ時、壁一面が光り輝き、ジタンはまるで壁の中に吸い込まれるかのように、閃光の中へ溶け込んで行った。

第〇話 伝説の光の戦士現る!!
 
この世界は暗黒につつまれている
風は止み、海は荒れ、大地は腐っていく

しかし人々はひとつの予言を信じ
それを待っていた

この世暗黒に染まりしとき
4人の光の戦士現れん

「うん…」
 微かな頭痛と重い身体に、形のいい眉をしかめつつ、ようやくティナは身を起こした。
(……わたし、何してたんだっけ?)
 ずきずきする頭で記憶の糸を手繰る。大地に出来た二年前の爪痕がふと脳裏をかすめた。
(そうだ…!わたし、ファルコンに乗ってて…)
 しかし、彼女が倒れていた場所の感触は。改めて辺りを見回そうと頭を上げ、彼女はそこで凍り付いた。通りでさっきから全身に異様な重さを感じたはずである。
 彼女の膝の上には見知らぬ金髪の男がべったりと抱きついていたのだから。
「きゃああああっ…!!!!」
 その絶叫は、彼女が発するちょうど一年分くらいの声量に匹敵するかもしれなかった。
「な、な、な何だ何だぁ…?!」
「う、ううっ…!」
「あれ…?」
 しかも、慌てて押しのけた男の他にあと二人、見たこともない男が彼女の横でむっくりと起き上がったのだ。
 ティナはショックで口をぱくぱくさせと動かしてはみたものの、言葉にはならなかった。
「ここ…一体、タイクーンじゃないのか…?」
 男のうち最初にそう呟いたのは飴色の短髪をさらりと後ろに流した、背の高い青年だった。
「…ったく、またかよ」
 そして、ティナを挟んで向かいにいた青年は何だか諦めとも取れる、なげやりな口調で一人ごちている。
 ティナが弾き飛ばした男同様に金髪だが、その色は若干昏めで、ツンと尖った特徴的な髪型をしていた。
「あいたたた、オレ、何やってたんだっけ…?」
 最後に起き上がったのは、彼女が力任せに突き飛ばした男。
 よく見ると、その顔つきは若干幼さが残っていて、三人の中では一番年下に見える。
 そこで四人は初めてお互いの顔を確認した。
「えっと…」
「…」
「あ、あの…」
「オレ…!」
 四人そろって、しばし絶句。が、やや間があって。
「オレ、ジタン・トライバル!初めまして、美しいお嬢さん!この偶然の出逢いをこれから一緒に必然に変えてみませんかっ?!」
「きゃっ…!」
 めしっ!どがっ!ばちこーん!
 ジタン以外、三人の放った蹴りと拳と平手は、ものの見事に彼にクリテカルヒットした。
「…な、ないすチームワークっ…!」
 直後。親指をおっ立てながら、ジタンが撃沈したのは言うまでもない。
「…あ、何処の誰だか知らないけど、つい反射的に突っ込んじまった」
 ちゃっかり回し蹴りを繰り出しておきながらも、飴色の紙の青年は、何だか妙にすがすがしい笑顔だった。

「自己紹介が遅れちまったな。俺はバッツ。何が何だかさっぱり分かんねーけど、とにかくよろしくな!」
ようやく四人の気分が落ち着いたところで辺りを見回すと、ここはだだっ広い草原らしいことが分かった。
 ともあれ、こんな場所に四人が四人とも倒れていたというのははなはだ不可解だということで、とりあえずお互いが何者なのかを明かしてから状況を考えるということで、意見はまとまったのである。
「俺はクラウド。何となく嫌な予感はしていたが、まさかこんなことになるとはな…」
 ツンツン頭の青年は、そう言ったっきり黙り込んでしまった。どうやら無口なのは生まれつきらしい。
「さっきはゴメンな、ティナちゃん」
 男二人の話をまじめに聞いているのかいないのか、ジタンはしきりにアイスグリーンの髪をポニーテールにまとめた少女のご機嫌を取っていた。
 こちらはクラウドとは全く逆の軽い性格なのか、この場の状況うんぬんよりも、目の前の美女にモーションを掛けることに全身全霊を注いでいる。
「全員の名前が分かったところで、ここはどこだろうな?」
 我が道を行くジタンはほっといて、バッツが話を本題に戻す。クラウドとティナはすぐに彼に向き治り、ジタンもしぶしぶ話に加わった。
 しかし、バッツの問いに答えられる者は誰一人いなかった。しばらくは、お互い無言で相手の様子を探っていたが、
「考えたって始まらねえよなっ!」叫んで、ジタンが立ち上がる。
「同感だ」
 バッツも頷き、すっくと立つと、クラウドとティナもそれに続いた。
「街があるぞ!それに、城も!」
 誰からともなく歩き出し、少し経ったところでジタンが叫んだ。
「ティナちゃん、早く行こうぜ!」
 どさくさ紛れに戸惑うティナの手を引いて、走り出す。
「…ったく、騒がしい奴だ」
 終止ご機嫌斜めのクラウドは、そんな彼等を冷めた眼で眺めつつ後に続き、バッツは一番後ろから、ゆっくりと歩いて行った。

 その街は、比較的大きく美しい街だった。
 街に入ると正面には遠くからでもよく見えた、古風な造りの城がそびえているのが分かる。古風だが、石造りの外壁はきっちり隙間なく組み合わされており、その堅固な要塞ぶりを物語る。
(タイクーン城に似てるな…)
 バッツは漠然とそう思いながら、ゆるりと街道を歩いていた。他のメンバーも思うところがあるのか、あちこちをうろうろしている。
(言葉、通じるんだろーか…?)
 ふとそう思ったのは、髪の長い女性とすれ違った時だった。
「ちょっと…!」
 が、彼の呼び掛けはすぐ横を駆け抜けて行った一陣の風に掻き消されてしまう。
「そこの美しいお姉様!もし貴女のお時間をこのオレに分けてくれると言うのなら、そこで少しお話などしませんか?」
「あら、キミ。そのシッポって本物なのかしら?」
「もちろん!オレは普段はただのしがないノラ猫ですが、貴女に逢うために月の光を浴び、人間の姿になったのです!」
「ふふ、なかなかお上手ね」
 目の前で繰り広げられる会話を、バッツは唖然と見守ることしか出来ないでいた。
「あれも一種の特殊能力か…?」
「見たことあります。こういうの…」
 いつの間にかクラウドとティナも彼の横に来ていて、ことの成り行きを眺めている。
「ここの街並がひときわ美しく見えるのは、貴女が歩いているからだろうか?!」
 ジタンはギャラリーに構わず続けた。 
「ありがと、キミ。でも見かけない顔だね?この街は初めてなの?」
「貴女のような美しい人を見るのも初めてです!」
 ジタンと女性はすっかり打ち解けているようだった。女が再び口を開く。
「ここは夢の都『コーネリア』っていうのよ」
「え…?」
 それまで流暢に口説き文句を並べ立てていたジタンの口の動きが、ぴたりと止まった。
「街の名前…今、なんて?」
「コーネリアだけど?どうしたの?」
 ジタンの豹変ぶりに首を傾げつつ、女が答える。
「い、いや、ちょっと聞いたことがあって…」
 偶然の一致か、ジタンは自分が演じていた芝居に出て来る城の名前を思いだしながら、しどろもどろに呟いた。
「ああ、そうなの?ここは有名なとこだからね。じゃあ、私…そろそろ失礼するわよ。
 ありがとね。シッポのキミ!ちょっと楽しかったわ」   
「…どういうことだ?」
 女が去ったのを見計らい、バッツたちは彼に詰め寄った。
「お前、この街に来たことがあるのか?」
「いや…」
 ジタンはまだショックから立ち直れない様子で、きょろきょろと辺りを見回しながら、
「間違いなく初めて来る街さ。…だけど、コーネリアって名前はよく知ってる。芝居に、出てくるんだ。コーネリアっていう城が!」
「お芝居…?」
 ティナは少し気が抜けたように彼を見、その視線の先にある城に目をやった。 
「城…行ってみるか?」
 バッツの口を付いて出た言葉はジタンに向けられた質問ではあるけれど、間接的に他の二人にも意見を認めていることは明らかだった。
 少しして、二人は黙って頷いた。

「待て。お前たちは何者だ?」
 城門を潜ったところで、大方の予想通り門番に引きとめられた。
「…ったく、誰だよ。正面から堂々と入ってみようなんて無責任なことを言ったのは」
 目の前で交差した槍の先端を睨み付けながら、ジタンが一人ごちる。その後ろで、ティナはすっかり恐縮しきってうなだれていた。
「ご、ごめんなさい。こそこそして見付かったら、よけいに怪しまれると思って…」
「ああっ?!ティナちゃん?!…ち、違うって!君のせいじゃないよ!ゴメンな、そういうつもりじゃあ」
 慌てて取りすがるジタン。
 そんな二人のやり取りを番兵たちは半ば呆れて眺めていたが、やがて気を取り直すと、さっきより強めの口調で同じ質問を繰り返す。
「お前たち、何処から来た?見慣れぬ顔だが、この地の者ではないのか?」
「あ、ああ。そうだと思うぜ。気が付いたら俺たち四人、いきなりこんなところへ来てたんだ。
 信じてもらえるか分からないけど…」
 皆を代表し、バッツが答えた。なるべく刺激しないように真実だけを述べたかったが、何しろ分からないことだらけで、これ以上の説明はしようがない。 番兵二人はギョッとした顔になり、何事か相談し始めた。
「ああ、どうやら間違いない…」
「早速…王に、このことを…」
 耳に入ってくる言葉の断片は、お世辞にも穏便に終わりそうな雰囲気にはとれなかった。
「…おい、何か言ってるぞ」
 クラウドがやれやれとでも言いたげにバッツを睨んだ時。
「お前たちを王の元に案内する」番兵の重々しい決断が下された。

「そなたたちか。異国の服を見に纏い、突如このコーネリアに現れたという四人の若者は」
 真紅の絨毯に覆われた厳かな雰囲気の広間。どうやらここがこの城の最上階かつ最も重要な場所らしい。四人が有無を言わさず連れて来られた場所は、意外にもいきなり王の居る部屋だった。
「おいおい、いきなり王様のご登場かよ」
 ぼそっと愚痴るジタンを、バッツは軽く肘でつつく。
「この地は初めてだと申したな?」
 玉座に控えた王は四人をまじまじと眺め、問い掛けた。責め立てるような口調ではない。
 バッツは少しほっとして答えた。
「はい、そうです。しかし我らは決して怪しい者ではありませんし、この城を訪れ他のには訳があって…」
「伝説の通りじゃ!」 
 叫ぶ声は四人の後ろで響いた。
 振り返ると、法衣に身を包み、白いひげを長く延ばした老人が、これでもかと言わんばかりに大きく目を見開いて経っていた。
「おお!司祭よ!よく来てくれた。見よ、この者たちだ!」
 王はいきなりの訪問者をとがめるでもなく、むしろ歓喜した様子でオーバーに手を広げ、迎え入れる。
「おお!これは間違いないですぞ!まさに今、預言は真実のものとなったのです!」
「なんだなんだ?」
 妙にテンションの高くなった王様に面食らうジタン。バッツたちも訳が分からないといった表情で顔を見合わせていた。
「よくぞ参られた!光の戦士たちよ!!!」
 ついに王は玉座から立ち、芝居がかった口調で語り始めた。
「『この世暗黒に染まし時、クリスタルに導かれし四人の光の戦士現れん』
 今まさにこの世は混沌とし、大地は腐り、海は荒れ、凶悪なモンスター共が人々を恐怖のどん底に陥れている。しかし、その世界を救うべく、異国の身なりをした四人の若者が現れると、偉大なる預言者ルカーンは言った。
 お主たちこそまさにその預言された若者たちに違いない。どうかお願いだ!闇に包まれつつあるこの世界に、希望の光を取り戻してはもらえぬか?!」

「――じゃあ何か?!預言だか何だか知らねーが、オレたち四人がたまたま偶然この城に来たからって、その光の戦士とやらになって、世の中救えってのか?!」
 ここは城の客室。訳も分からず王の言う『光の戦士』とやらに断定されてしまった四人は、又しても有無を言わさずここにつれて来られてしまったという訳だ。
 逃げ出そうとも思ったが、四人はようやくそこで自分が丸腰だと気付き、諦めた。
 今さっき言われたことを混乱した頭で整理し、四人はようやく事の重大さを認識する。
「冗談じゃないぜ!ここが何処だか分からないっていうのに!」
 ジタンはさっきからところ構わず当たっていたが、他のメンバーは沈黙を守っている。
「…クラウド、何を考えているんだ?」
 しばらく怒鳴って気が収まったのか、ジタンが静かになったところでおもむろに口を開くバッツ。
「あんた、初めて自己紹介した時に、『嫌な予感はしていたが、まさかこんなことになるとはな』って言ってたよな?あれは一体どう言うことなんだ?」
「そーいや…」
 ジタンがはっとした顔で彼を見、ティナも視線を向けた。
「ああ…」目を閉じて何事か思いに浸っていたクラウドは、皆の視線を受けてゆっくりと頭を起こす。
「俺は前にもこういう経験をしたことがあってな。ちょっとした『事故』なんだが。変な世界に飛ばされるんだ。
 今までは幸い、元の世界に還ることが出来たが」
「どうやって?」と、詰め寄るジタン。
「きっかけが…例えば精神的、物理的ショックがあって、知らないうちに戻ってたりしたな」
「頭を殴りゃ、いいってことか?」 
「あのな。記憶喪失を治すんじゃないんだからさ」
 納得したように頷くジタンに、バッツが突っ込む。
「しっかしあ…『クリスタルに導かれた』って言ってたな、あの王様」
「クリスタル…か」バッツの呟きに今度はジタンが相づちを打った、その時。
「――あの、これって何なのかな?」
 今まで黙っていたティナが、おずおずと握った右手を差し出した。男三人、その手をまじまじと覗き込む。
「ポケットの中に入ってたの…」
 そう言って、彼女はぱっと手を開く。そこには小さなガラスのかけらがポツンと乗っかっていた。
 それには色というものがなく、まるで抜け殻のようである。
「何だい?」
 ジタンは優しく問い掛けたが、ティナはまるで覚えがないというように首を振った。
「ポケットの中に、ねえ……?!」
 呟きながら何気なく自分のポケットに手を突っ込んだバッツの表情が固まる。直後、おそるおそる抜き出した彼の手の中には、ティナと同じくガラスのかけらがあった。
「まさか…!」
 ほぼ同時に、クラウドとジタンもポケットを探り、同じものを取り出した。
「こんなもの…オレ、入れた覚えなんてないぞ?」
「わたしも…」
 ガラスのかけらは四人とも全く同じ大きさ、形をしていた。しかし、やっぱりどれにも色はない。ガラスだから透明でも問題ないはずだが、彼らにはどうしてもこの状態がガラスのかけら本来の色ではないように思えた。
「クリスタルの…かけら?」不意にバッツが呟いた時。
 ばん!
 勢いよく開いた扉の向こうに、王と司祭が立っていた。
「これぞまさしく光の戦士の証!この世を支えている四つのクリスタルのかけらです!
 やはりあなたがたは真の光の戦士なのですな?!」
 司祭は部屋に入って来ると、四人の手の中のクリスタルを見て叫んだ。
「おい、司祭さん。この世を支えるクリスタルってのは…」
 バッツの表情が硬くなる。ジタンもぴくりと眉を釣り上げた。
「は…。この世界には土、火、水、風の四つのクリスタルが存在します。
 その恵みによって世界は護られ、支えられているのですが、近年何者かがその光を遮ったらしく、このところ特に自然が荒れているのです。
 それによって人々の心も荒み、あちこちで悪にその身を堕とす輩も少なくありません。
 実は、このコーネリア城の王女も、心変わりした騎士に誘拐されてしまったのです」
『誘拐?!』思わず、四人は顔を見合わせて叫んだ。
「そうじゃ。裏切り者の将軍の手によって我が娘は連れ去られてしまった。頼む!どうか救い出しては下さらぬか?」
 初めて会った時、王の顔に差していた影は気のせいではなかったようだ。クラウドはふとそう思ったが、
「興味ないね。言っておくが、俺たちは光の戦士とやらでも何でもな…」
「そうかっ!そういうことならオレに任せてくれ!麗しの王女様は必ずオレが救い出してみせる!」
「あのな…」
 押しのけられた首を元に戻しつつ、クラウドはじとっとジタンを睨み付けた。
「悪いが俺たちは今、武器も何も持ってない状態なんだぞ?
 凶悪なモンスターとやらがうろうろしてる外を、丸腰で歩けってのか?!」
「それならば、城下には武器屋も防具屋も魔法屋もありますゆえ。
 必要な装備の資金はこちらでご用意させて頂きます」
「そういう問題じゃ…」
「まあまあ…」
 なおも食って掛かるクラウドを、バッツが穏やかになだめる。ぽんぽんと軽く肩など叩きつつ、
「話を聞いた以上、ほっとくわけにもいかないよな?男としては、さ」
「王女様、可哀相…」
 おまけにティナにまですがるような視線で見つめられ、ぐっと言葉に詰まるクラウド。そこへすかさずジタンが割って入り、
「分かりましたっ!王女のことはオレに任せて下さい!」
「俺“たち”だ。俺“たち”!」
「で、その王女様のお名前と彼女をさらったにっくきヤローの名前は?」
 突っ込むバッツに舞わず、ジタンが勢い込んで尋ねると、王と司祭は顔を見合わせ、溜め息混じりに呟いた。
「王女の名前は『セーラ』。そして、彼女を誘拐した男は、元・セーラ王女新衛隊隊長『ガーランド』将軍です」

(…ったく、驚く事だらけだぜ)
 王に手渡された軍資金を手に、ジタンは一人、人気のない裏通りを歩いていた。装備を整えたら街の入り口で落ち合うことになっている。
(コーネリア、クリスタル、セーラ、それに…ガーランドだと?)
 それらの単語はジタンがいた世界で全て耳にしてきた言葉である。彼の世界にもガーランドは存在し、世界をその手中に収めようとしていた。セーラがガーネットの本名であることも、ここへ来る直前に知ったばかりである。
(…それにしても、王女誘拐とはね。こっちのガーランドはずいぶんとやることがセコイんだな)
 思わず込み上げてくる笑いを抑えつつ、路地を曲がる。
(ん…?)そこで、見覚えのある人影がとある建物に入っていくのが見えた。
「ありゃあ、愛しのティナちゃんじゃないか?」

「いらっしゃい」
 ティナを迎え入れてくれたのは、青いローブに三角帽子を目深に被った男だった。
「ようこそ黒魔法屋へ。何を覚えますか?お嬢さん」
「黒魔法屋…ですか?」ティナは戸惑いながら彼に問い掛けた。
 薄暗い店内に、他の人は誰も居ない。ただ、男の前の丸いオーブだけが神秘的ともいえる不思議な色を湛え、揺らめいていた。
「はい。ここでは初心者用の黒魔法を扱っています。
 失礼ですが、お嬢さんは黒魔術士の方ですか?」
「え…?えと…あの、わたし――」
 ティナはおろおろとオーブと男を見比べる。
「では、こちらへ。心配いりませんよ。私は貴女に黒魔法をお教えする黒魔道士ですから」
「は、はい…」
 ティナの足は戸惑いながらも男の言葉とオーブの光に引き付けられるように、ふらふらと近付いた。
「さあ、そこに座って。まずは『ファイア』からいきましょうか」
「ファイア…!」
「火系の初歩の術ですよ。大丈夫、すぐに終わりますから」
 そう言って、男がオーブに手を翳すと、中で渦巻いていた靄のようなものが輝き出し、小さな火の球になった。
「ほお、貴女は変わった魔力の持ち主ですね」
 黒魔道士の男の言葉が呪文のように耳に届き、彼女の頭の中をぐるぐるぐるぐる駆け巡る。
「…さあ、意識を集中して。魔法を身に付けるのでなく、受け入れるつもりで。
 魔法を恐れてはいけない。魔法とひとつになるのです」
(魔法を恐れず、魔法とひとつになる…!)
 ティナはゆっくり目を閉じた。
「てンめえっ!ティナちゃんに何怪しげなコト吹き込んでやがるっ!」
 ばんっ!
 背後のドアが勢いよく開け放たれる。が、ティナは全く気付かなかった。
 全身を駆け巡る、とこか懐かしい感じ。そして。
「さあ、今です!その力を解き放ちなさい!」
「…っ!ファイア!!!」
 ばうんっ…!
「ぎゃああああっ!!!」
「……はあ、はあ、はあ。…あ?ジ、ジタンさん?」
 我に返ったティナ、ようやく足下でぴくぴくしている黒コゲの塊を見付ける。
「…や、やは。…ぶ、無事かい?ティナちゃん」
 上から下まで程よいレアに焼き上がりながらも、決して笑顔を崩すことなく、手をひらひらさせるジタン。ティナはおろおろと駆け寄って抱き起こす。
「ふむ。初めてとは思えない威力だね。よし、他の魔法も覚えていくといい。サービスするよ。
 それに、君の体内に宿る魔力はとても純粋で魔法を受け入れやすいようだから、もしかしたら白魔法の方も修得できるんじゃないかな」
 黒魔道士の男は感慨深げに頷いて説明した。
「そう、ですか…」ティナは不安げに答え、俯く。
「隣の店に行ってごらん。白魔法を扱ってるからさ」
 男はにこやかにそう言うと、再びオーブの前に手を翳した。そして、床に転がったジタンを一瞥した後、
「さて、続けようか。店内も静かになったことだしね」と、笑った。

「…本当にごめんなさい。わたし、久しぶりに魔法を使ったの。だからちょっとコントロール利かなくて」
「いいよいいよ!ティナちゃん!そんなに謝らなくても。それに、さっき買ったケアルでほら、この通り!」
 魔法屋を後にしたティナとジタン。ティナはさっき思わずぶっ放したファイアのことをしきりに謝り倒していたが、ジタンはそれも軽く受け流している。そんなやりとりがしばらく続いた後で、話題を返るようにジタンは言った。
「…でも、不思議だな。この世界の魔法、オレの世界にもあるんだ。ファイアとかケアルとか。聞いたことのある地名や名前もあるしさ、金の単位も『ギル』だろ?
 なんかさ、全く知らない世界でもないのかなって思わないか?」
 そこまで一気にしゃべった後、自分を見つめるティナの視線に気付き、慌てて手を振る。
「…あ!ああ、これな、オレの世界の話だから気にしないでくれよな!」
「ううん!そんじゃないの!」
ティナは否定するどころか、逆にその手を取って詰め寄る。
「わたしも同じこと考えてたの!ここにある魔法、わたしが知ってる魔法だった。お金の単位も同じ。なんでかな…?不思議よね?」
 自分を見つめる彼女の瞳のあまりの美しさに引き込まれそうになって、ジタンは思わずぶんぶんっと激しく頭を振った。
「そそそ…それはまあ、後から考えようぜ!それにしても、オマケの二人はどこかな〜っと!…あ、そうだ。武器とかも買った方がいいよな。武器屋行ってみようか?武器屋!」
「そうですね!」ティナもいくぶんか明るく頷き、二人は再び歩き出す。
(ああああっ…!オレの馬鹿馬鹿馬鹿ーーッ!せっかくのチャンスを自分から棒に振るなんて〜!)が、ジタンはというと、心の中では思いっきり自分を責めていたのであった。

「もうちょっとまともな武器はないかなぁ…」
 手にしていた剣をカウンターに戻し、バッツがぼやく。
「すみません、お客さま。近頃海賊どもが海を荒し回っていて、貿易もままならず…」
 店の主人はすっかり恐縮しきっている。バッツはふうと溜め息を吐き、真剣に剣を手に取り眺めている連れの男を見やった。
「いいのはあったかい?」
「…これをくれ」
 クラウドはバッツの問いには答えず、一振りの剣を選んでカウンターに置いた。
「は、はい…!毎度!」会計を済ますと、ようやく彼はバッツに向き直る。
「いいのか、買わなくて。何も無いよりはマシだぞ?」
「まあ何とかなるさ。手に馴染まないものを持つと、調子狂うんだ。それなら素手の方が気楽でいい」
「…好きにしろ」
 クラウドは買ったばかりの剣を鞘に納め、背中に背負って出口へと向かう。だが、彼がノブに手を掛ける一瞬前、ドアは大きく開け放たれた。
「お〜!ここが武器屋みたいだぜ、ティナちゃん!」
 ずかずかと入ってきたのは、妙にテンションの高いジタンだった。彼とぶつかりそうになったクラウドが、むっとして横に避ける。
「…み、皆さん。ここに居たのですね」ジタンの後ろから、ティナが遠慮がちに声を掛ける。  
「ああ。俺たちの用事は終わったけどな。あんたも武器を見に来たのかい?」
 むすっと押し黙ったクラウドの隣から、バッツが気さくに答えた。
「ティナちゃん、これなんかどうかな?」
 ジタンはというと、さっと店内を見回して自分用のナイフを選んだ後、すぐに魔道士用の杖を探し出してティナにすすめる。
「あ、わたしは…」しかし彼女は首を振り、細身の剣を手に取って言った。
「これにするわ…!」
「よし、決まりだな!」
 目を丸くするジタンをしり目に、バッツがにっと微笑んだ。

 ガーランドがセーラ王女と共に立て籠っているという神殿は、コーネリア城の北西、森を抜けたところの、海に突き出た半島に建っていた。
『カオスの神殿』――街の人の話では、ここはそう呼ばれているらしい。しかし、近くまで来てみると、神殿という神聖な場所とは思えないほど、おどろおどろしい雰囲気に包まれていて、訪れた四人を圧倒させた。
 ここに来るまでに襲ってきたモンスターは、数は多くとも彼らの相手ではなかった。
 武器の質は悪くても、一応この四人、それぞれの世界で数々の修羅場をくぐり抜けてきた経験がある。その腕を持ってすれば楽勝だった。
「さってと!ここだな?ガーランドさんのお住まいは…」
 ナイフに付いた獣の血を振払いつつ、おどけた調子でジタンが言う。
 神殿の外観はとても人が住んでいるとは思えないほど朽ち果てていたが、悪党はこういうところを好むのだろうか。
 一歩中に踏み込むと、そこは外以上におどろおどろしい空気が満ちていた。
「いかにもって感じだな」歩きながら、バッツは錆びた剣を振り翳し、襲い掛かってくる骸骨剣士の頭に拳をぶち込んだ。
「アンデッドみたいね…」
 ティナは剣と魔法を器用に使い分けながら、迫り来るゾンビや亡霊を片付けていく。
「しかし、このコウモリはなんとかならないか…」
 死霊を中心に確かにモンスターは多かった。そして、それとは別にこの神殿にはコウモリがたくさん住んでいた。クラウドはまとわりついてくるコウモリを剣でけん制している。
 斬ろうとするとすっと逃げ、収めるとまた近付いて来て激しく鳴く。
「まあ、そうぼやくな。こいつらもガーランドに住処を怯かやされた被害者なんだ」
 バッツは軽快に笑って、コウモリの群の中をためらうことなく進んでいた。
「でも、何かを訴えてるみたい…」
ティナもコウモリには魔法を使わないでいた。
「考え過ぎだって!」
 ジタンはというと、はっきりいってコウモリのことなどどーでもよく、目線は勇ましく剣を振るうティナを追うので精いっぱいの様子。
 彼らがさして広くない神殿をぐるっと巡ると、程なく目的地らしい部屋の前に辿り着く。
「ここだな?」言うが早いか、バッツは目の前の扉を思いっきり蹴り付けた。
 風化した扉はあっけなく崩れ、中の様子が丸見えになる。
「あっ…!」ティナが小さく声を上げた。
 他のメンバーも彼女の視線の先にあるものに気付き、はっと息を飲む。
 夜の闇を思わせる真っ黒な床の上。倒れている薄いブルーの髪の女性。
「何者だ…?」
 声は女性の向こうから聞こえた。そして――
 がちゃっ。
 鉄の鎧が擦れる音。“彼”はゆっくりと振り返った。
「てめえがガーランドだな?!」ジタンが怒りを露にして叫ぶ。
「だったらどうしたというのだ…?」
 顔の全てを覆った鉄仮面の下から響く声は、低く曇っている。
 全身も甲冑と紫のマントで覆われていて、年齢と素顔は分かりかねた。
「セーラ王女を返してもらいに来た」
 興奮して怒鳴るジタンを押し退け、クラウドが静かに歩み寄る。
「それは困るな。セーラは生け贄なのだ。
 この私が世界の覇者になるためのな」
 ガーランドの手には、いつの間に鈍く輝く鋼の剣が握られていた。
「…ったく、ガーランドって名前のヤツが考えることは、ロクなモンじゃねえっ!」
 ナイフを手に、ジタンはガーランドとの間合いを詰める。
 クラウドも剣を抜き、身構えた。
「いくぜ!覚悟しろよ、悪党!」バッツが地を蹴り、跳んだ。
 ティナはその隙にセーラの身柄を安全な場所まで引きずってゆく。
 ぎんっ!
 鉄の刃と刃がぶつかり合い、暗闇の空間にオレンジ色の火花が散った。
 がっ…!
 ジタンは渾身の力を込めて、ガーランドの鎧を斬り付けたが空しく弾き返された。
「ちっ…!やっぱこれじゃダメか!」じんっと痺れる手を振り、毒づく。
 代わってバッツが体当たりをぶちかました。ガーランドは鎧の重みで少しよろけたが、すぐに持ち直して剣を振るう。
「おっと…!」
 間一髪、身を翻したバッツの頭上を銀の刃がかすめてゆき、飴色の髪の毛がはらはらと舞う。
 今度はクラウドが攻撃を仕掛けたが、やはり彼の剣も鋼鉄の鎧には歯が立たなかった。
「どうした?それが光の戦士とやらの実力か?!」
「なっ…?!」
 体勢を崩したクラウドに、鋼鉄の刃が迫る。刹那。
「サンダー!」

 ばっちいいいん!!!

 何処からともなく飛んで来た稲妻が、ガーランドの鋼鉄の鎧を上から下まで駆け抜けた。
「ティナちゃん!」ジタンが目を輝かす。
「クラウド!鎧の継ぎ目を狙え!」
 バッツの叫びにハッと顔を上げたクラウド、剣を逆手に構え、柄頭に左手を添えると、全体重を乗せてガーランドを突いた。
「ぐはっ…!」
 剣の切っ先がガーランドの鎧の継ぎ目から胴体を貫き、マントをも切り裂いて背中から突き出る。
「…お、おのれ!」
 鉄仮面の下から呻き声と一緒に、真っ赤な血の飛沫が散った。
「私は滅びぬ、決して…滅ぶものかァァァーーーー!!!!」

 カッ…!

 閃光が奔った。そのあまりの眩しさに、四人は思わず顔を伏せた。
 そして、おそるおそるまぶたを開いた彼らの前には、中身を失った甲冑の残骸と、折れた剣とが転がっていた。
「……おい、どーしちまったんだよ?」しばらくして、ジタンが呻いた。
「勝ったんじゃないのか…?」
 トドメを刺したクラウドも、信じられないと言うようにガーランドがいた空間を眺めている。
「…多分、そうだろう。ん?」
 バッツは人気がなくなった部屋の奥をぼんやりと眺めていたが、何かに気付いて視線を止めた。
(鏡…?いや――)
 胸騒ぎがした。誘われるように、一歩、踏み出す。その時だった。
「皆さん!セーラ王女が目を覚ましたみたい!」
 ティナの明るい声に、彼は足を止め振り返った。
「…よし、後は王女を城に無事送り届ければ、俺たちの役目は終わりだな!」
 不穏な空気を振払うつもりで必要以上に大声を張り上げる。全員がそれに同意して深く頷いた。しかし――
 ガーランドの部屋を後にする時、バッツはもう一度、振り向かずにはいられなかった。
(本当にこれで、終わったのか…?)
 心の何処かでもう一人の自分が、必死にそう警告しているような気がして。

                          to be continued

紫阿
2004年05月15日(土) 21時49分29秒 公開
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■作者からのメッセージ
何かを始めようとする時の情熱は最初の一回に全部注ぎ込まれているような気がします。これがコケたら後はない。そういう一球入魂の想いが凝縮しているものはやっぱり第一作目だけのものだと思います。
 ファイナルファンタジーの場合もそうで、私は総合的には3が一番好きなんですが、話としては1が一番斬新で面白かったと思っています。
 確かに説明不足の部分もありますが、最初から最後までキャラがしゃべりまくり、表情のひとつひとつが手に取るように分かるまで進化した今のゲームって、プレイヤーはお客さん状態だと思います。だから私は少々説明不足だろうが、その方がいろいろ想像できて楽しいと思っています。
 さて、この話は私が前にワンダースワンでリメイクされた1をやりながら同時進行で書いていた話です。実際にキャラの名前とジョブを同じにしていました。(1は力押しの方が楽です。←トリビア)
 特に、プレステから入った方々に、ファミコン版のも捨てたもんじゃないよっていうことをちょっとだけ主張したくて、引っ張り出してきました。 
 そう言えばアドバンスでリメイクされるんですよね。ちょうどタイムリーになりました。続き物になりますが、「興味ないね」なんて言わないで少しでもファミコン時代のスタッフがゲームに賭けた情熱が伝わればいいなと、おこがましいと思いながらスタートさせて頂きます。それでは、また。

この作品に寄せられた感想です。
もっと読みたい!と思えました。読んでいて感情移入ができるくらいの描写力に感心しています。特に戦闘シーンは書くのが難しいはずなのに、物語の流れを止めることなくよく描けていると思います。続きが楽しみ☆ 50 ごとー ■2004-05-08 22:32:04 221.188.44.105
夢の共演っスねーっ。細かいところまで、いろいろ行き届いていて、最後まで楽しめたっス。 50 うらら ■2004-05-08 13:55:20 210.198.101.85
 はじめまして、ナイツと申します。以後、よろしくお願いします。
 ふむ、FFですか。懐かしいですね。……とか言いながら、私もプレステ世代の人間ですが。アドバンスも買うぞ、と意気込んだりしています。
 さて、1は……難しいですね、やっぱり。4、5、6に慣れちゃった自分としては難しく感じます。というわけで、1のストーリーは殆ど知りません。もう1度やろうと感じる時もありますが、折角だしアドバンスでプレイしたいな、と思ってるので、暫くプレイすることはないでしょう。
 けど、そろそろストーリーでも知りたいところなので(まぁ、大まかなところは知っていますが)、がんばってくださいな!
 
 で、小説の方はと言うと、パラレルとしても、ストーリーとしても、文章力も申し分なく発揮されてると思われます。なにより、ストーリーに沿っているだけでなく、オリジナルも入ってるところもすごいと思われます。ただ、脱字があるのが玉に瑕、と言ったところでしょうか。それだけ気をつけたら、大丈夫だと思います。
 ということで、かげながら見守っていますので、がんばってください。

 最後に注意。『…』は、普通は『……』のように、2つ、4つ、6つと偶数分つなげるのが規則なんですよ。……蛇足かもしれませんが。

50 ナイツ ■2004-05-07 23:26:32 211.124.255.133
合計 150