奪われた名声と自由
作者: hunya   2013年01月16日(水) 06時56分54秒公開   ID:ya0yA9mObps
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私はショーテルに一言、羨ましくないそれって話を持ちかけた。
「そうですね、死ぬまで若いままなんていいですよねぇ〜」
私とショーテルはロッドをみつめながら激しく羨ましがった。
こっちは必死こいてケアしてるっつうーのにまったく持って不公平だよ神様!……
「そういうネーちゃんは幾つなのさ?」
こんどはロッドが私に問いかけくる。
「ん?私は十八だよ」
そう答えると今度はロッドが麦芽酒を噴出した。それも私の顔めがけて
「うわっきったな〜い」
そう答えながらハンカチで顔を拭く私……ちょっと飲んじゃた……
「それってもしかして?うそでしょ?本当なんですか」
ショーテルも驚いてるようなんだけど?
「冒険者許可証取得可能年齢って確か」
ロッドがショーテルに何か確認を取るような感じで話しているけど?
「十八ですねたしか」
ショーテルは驚いた表情で私の顔をまじまじと見つめる。
「なによぅ。なんかまずかったの?」
何かいけないことをしたのかな?少し焦る私……
「ネーちゃんワーパーなんだろ?」
ロッドは確認を取るように聞き返す。
「そうだよ許可証も持ってるよほら」
ロッドに私がワーパーである証明許可証を見せた。
「本当ですね……ワーパーには冒険者に認定されてある程度名声が無いと取るのは難しいって聞きましたけど」
ショーテルが私の許可証をまじまじ見ながら首をかしげている。
「あっそれね私試験受けてないんだシードでパスしたんだけど?」
「シード?特別認定ですって?いったいどういうことなんですか?」
目を丸くするショーテル。
「私の親父も冒険者やっててさ、もうあっちの世界に逝っちゃったけどね」
「親父の娘だって事が分かったらすぐに認定されちゃった」
私はペロッと舌をだす。
「ねえネーちゃんのフルネームはなんていうの」
ロッドは自分の麦芽酒を横にどけテーブルに乗り出す
「レイピア・チェイルメイン」
そう一言いったら二人とも口をそろえて
「まさかセイバー・チェイルメイン??」
あれっ、なんで親父の名前を……
「そうだけど?親父の名前何で知ってるの?」
そういうと二人とも椅子から立ち上がり
「それほんとうなのぉ〜」
酒場に割れんばかりの大声が響き渡った。
「それ人違いなんじゃない?」
麦芽酒に飽きた私は、果実酒に舌鼓を打ちつつ否定していた。
『セイバーチェイルメイン』今からさかのぼる事八年前
ジュノを約百体のクゥダフの大群が襲ってきたことがある。
その大群をたった一人で撃退した戦士がいた。
彼の振るう剣は一太刀で四体を仕留めることが出来たとい英雄。
そしてジュノを救い自らも朽ち果ててしまったという伝説の人物。
だが人違いだろう。同姓同名はよくある話。うちの親父とは比べようもない。
実際私の親父は只のワーパーだった。幼いときに母をなくし親父とその妹、いわゆる叔母さんと生活していた。
親父は暇さえあればいつも私に剣術を教えてくれていた。
いつも筋がいいと褒めてくれるのが嬉しくて私は剣術に励んできた。
だが私が十歳の時信じられない出来事が起こってしまった。
一通の緊急報告書が我が家に届いた。
親父が罪も無い一般の人を殺めてしまった。法により処刑されたという内容だったのだ。
当時の私には信じられなかった……
あんなに優しくて強かった親父が殺人を犯すなんて。
村のみんなも信じてはいなかった。
村の為に一生懸命だった親父。
親父が持って帰る財産で村が成り立っていたのだ。
このままでは村が無くなってしまう。
私がワーパーに……父さんの代わりに……
十三の時に決心し、独学で魔法学や剣術を磨いた。
私が冒険者になるきっかけだった。
酒場を後にし、競売場入り口で三人で話を聞くことになった。
「じゃなぜシードで通ったんですか?」
ショーテルが不思議そうに首を傾げている。
ふと疑問点が浮かんできた。処刑された年と伝説の人物の死が一致していること。
親父の名前でシードに選ばれたこと。ジュノにいければすぐに分かるのだが……
今の私はそんな金も暇も無い。村の仕送りを止めることも出来ない。
ロッドがショーテルに何やら耳打している。
「あら、いい考えじゃないですか。ロッド」
「でしょ?おいらあったまいい」
なにかいい考えでも浮かんだのか?……
「私たちの団体でジュノに居る方がいますのでその方に頼んでみます」
ショーテルは耳をピコピコさせながらロッドを前にだす。
「でさその伝説のセイバー・チェイルメインの自画像持ってきてもらうのさ」
ロッドはパチンと指を鳴らす。
「いいの?そんなにしてもらって?」
私はすまなさそうな顔ををしていると、ロッドはウインクしつつ、
「お互い様でしょ?」
「それじゃ明日この場所に来てくださいね」
ショーテルはそういい残しロッドとモーグリハウスに帰っていく。
サヨナラの挨拶をすませた私は、今日収穫したアイテム類を全て競売場に出品し、帰宅することにした。

四.(モーグリは働き者のこと)

「レイピア、起きるクポ〜」
う〜ん五月蝿いもう少し寝かせて……頭痛いし……
「今日はジュノからお客さん来るんだクポ?」
あ〜そういやそうだった。昨日ショーテルとロッドから競売場に来いって……
がばっと、あわててベッドから起き上がる。
そうだ、親父の真相が分かるかもしれない。
「うぅ、頭割れそ……」
昨日は流石に飲みすぎた、完璧に二日酔いである。
「ごめんモーグリお水頂戴」
パタパタと羽をはばたかせ宙をとびキッチンへ向かう奇妙な動物。子豚を直立させ羽が生えた姿をしたモーグリ、一応モンスターの類になる。
人語を理解し、冒険者の面倒を見てくれるお手伝いさんといったところか……
冒険者は、モーグリハウスと呼ばれる部屋で寝泊りをする。
部屋がアイテムの倉庫にもなっており、その番人もしてくれている。
「お待たせクポ〜」
モーグリからコップ一杯の水を受け取り、一気に飲み干しテーブルへ置いた。
「そうだポストどうなってるかな」
モーグリにポストの中身を確認してもらう事にする。
「了解だクポ」
モーグリはびしっと、私に敬礼しポストの中身を調べ始める。
私は空になったコップを片付ける為キッチンへ向かう。
「昨日は大活躍だったクポね」
リビングからモーグリの声がする。
「あ〜そう言えば謝礼もらったっけ?」
コップを洗いながら受け答えする私。
いくら入ってるんだろうか二ー三万ギル位が妥当だろう。
「レイピア〜大変だクポ〜」
モーグリはキッチンへすっ飛んできた。
「なによ?どうしたのよぉ?」
血相を変えている何が起こったのか……
「かっかっか」
モーグリはあわててるせいか舌がまわってない……
「完売だクポ〜」
何?完売だぁひょっとして……
「昨日と一昨日出品したやつが?」
コクコク頷くモーグリ。
私は慌ててポストへ向かう。
ポストのリストを確認するが確かに出品した物が全てリスト上から消えている。
『魔法のポスト』
一般家庭にもある私たちが俗に言う倉庫である。
中に物を入れるとある空間に物体を保管してくれる便利な物。
さらに競売場で得たお金や品物も届くのだ。
「モーグリお願い」
私はモーグリに金額を調べさせる。
冒険者用ポストはモーグリの魔力にしか反応しないように設定されている、いわゆる鍵なのだ。
「で?どう、いくら来てるの?」
少し興奮気味にモーグリをそそのかす。
出品物が即効で売れることはしばしばある、が完売は稀にしかないのだ。
競売場のシステムは一番安い値段で出品した物から先に落とされる。
簡単に言うと一ギルで出品すれば真っ先に落とされるということ。
私の読みががあたった。最近落とされずに返品が続いて困っていたので、全て相場の三分の一で出品したのだ。
「五万ギルクポ」
モーグリの言葉に私は小さくガッツポーズをとる。ほぼ相場で全て売れている。
「おろすクポ〜」
モーグリはそう言うと、ポストから紙幣をとりだした。
普通に暮らしていると一日辺り千ギルで暮らせてしまう。
ワーパーはオイシイ職業なのだ。
「じゃ四万は村に送っていいクポね〜」
送金準備を始めたモーグリを私は止める。
「まだ謝礼が有るじゃない」
「そうだったクポ」
モーグリはそういうとテーブルにおいていた謝礼金の入った封筒を持ってきた。
さてといくら入っているのやら。ちょっと楽しみだね。

五.(謝礼にビックリのこと)

テーブルに向かい合い正座し、唖然としている私とモーグリ。
そして、テーブルに置かれた大金の山……
さっき送金されて来た、金額とあわせて。
「五十万ギル……」
テーブルに左膝をつき顎を乗せぼそっと小声で……
封筒の中に同封された一通の書類に目を通し、モーグリに視線を送る。
どうやら束縛されたアイダーが第一級指名手配されていたらしい。
謝礼どころか賞金までかかっていたのだ。
こいつはひょっとして久々に……
「休暇とれるわこりゃ。」
私のその一言にモーグリが反応する。
「のんびり出来るクポね。」
村に四十万送金したとして手元に十万も残る。
単純計算で半年も休むことが出来るのだ。
なにしようかなぁー、美味い物たらふく食べて〜うふふ!
しばらくあれこれ妄想してる時に……
「装備買いかえたら良いクポ。」
モーグリは、パタパタこっちにと近寄る。
そうだな、壊れたショルダー直すよりもっと良い装備に買いかえた方がいいか。
これなら一式買いかえて、新たな魔法も覚える時間もある。
『魔法』
この『ヴァナ・ディール』には魔法が何種類かあるが、基本は大きく分けて、
攻撃系の黒、回復補助系の白、そして私のジョブ万能系の赤が、存在する。
赤魔法は特殊で一部の黒と白の魔法が扱え、更に赤独自の精霊魔法を武器に宿らせる、エン系魔法が存在する。
魔法書は魔法屋か、競売場で手に入れることが出来るが、取得には時間がかかる。
魔法書に書かれている術式を、完全に把握しなければ取得できない。
おそらく一月はかかるかも知れない。今が丁度うってつけなのだ。
休暇を利用し少し腕を磨くか……
「じゃあ競売場にいってくるよ、留守番と送金よろしくね。」
私は大金の中から、一万ギル紙幣を十枚程財布に込めて部屋を出ることにした。
「行ってらっしゃいクポ〜。」
モーグリに見送られ競売場に向かう私。
「おや、レイピアちゃんまた出品かい?」
競売場の出品口から親父さんが顔を出す。
「ちがうよ〜今日は入品に来たんだよ親父さん、大金が手に入ったのよ。」
私は嬉しそうに親父さんを見つめる。
「ほぅ、そりゃ良かったな。」
親父さんもにっこり微笑んでくれる。
「んじゃいってきますね。」
親父さんに手を振り、入品場の扉を開け中に入る。

六.(競売場でウッキウキのこと)

「いらっしゃいませ、こちらをお付けください。」
女性店員からひとつのイヤリングを付けて貰う。
『リンクシェル』
離れた場所でも会話が出来るアイテム。
これを付けてやり取りをする事になっている。
入品場の中はかなり広く、そしてショーケースにはずらりと、アイテムが陳列されている。
私は小走りで魔法書の置かれているコーナーへと向かった。
魔法書コーナーに着いた私は、早速品定めをする。
『エンサンダー』
雷の精霊を、武器に宿らせる魔法剣術。
これがあれば、戦闘の勝率も格段に上がるはず……しっしかし……
「えぇ〜無いよ一個も。」
ガックリ肩を落としてリンクシェルで、店員に詳細を聞き更にショックを受ける。
エン系魔法の類は、出品率が非常に低く入手しにくいらしい。
現に三ヶ月も前から出品されて無い……
仕方が無いので手ごろな値段で、短期間で習得できそうな物を落とす事にした。
そして今度は装備品の展示されているコーナーへ移動する私。
ほとんどのワーパーは単独で行動する。
ゆえに回復など多彩さが求められる。
私が赤魔道師をジョブに選んだのは村に仕送りする為に、単独で回復でき無駄な出費を抑えたい為だった。
試着室でいろいろな装備を試着し動きやすさを確かめていく。
女の私には重装備は出来ない、軽くて丈夫な物。
そして重要な箇所を防御できる物を選んでいく。
兜系は周りが見渡しにくく音が聞き取りづらい為、魔力を増幅させる髪飾りを選ぶ。
その他の装備は、金額と見合わせ適当に選んでいった。
とりあえず装備を落とし、武器を買い換えるか否か悩んでいた。
今私が使っているのはショートソード。
そろそろ少し刃渡りが長いロングソードあたりに買いかえて、接近戦から、中距離戦に切り替えたいところだ。
私は武器のコーナーで、ショーケースに両手をあててにらめっこ……どうしようか……まだ三万ギル程度残している。
「失礼いたします。」
悩んでる私の後ろから男の声がする。
振り向くと、一人の店員さんが一本の剣を抱えていた。
おそらく出品物の陳列に来たのだろう。
「あっどうぞどうぞ。」
私は邪魔にならないように、ショーケースから離れる。
店員さんは、剣と詳細が書かれたラベルをそっと、ショーケース内に収めて

⇒To Be Continued...

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