奪われた名声と自由
作者: hunya   2013年01月16日(水) 06時56分54秒公開   ID:ya0yA9mObps
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「ごゆっくりご覧ください。」
私に丁寧いにお辞儀をし、ショーケースのガラスを拭き始める。
私は今店員さんが陳列した剣のラベルに書かれた詳細を読み、横でガラスを拭いている、店員さんを呼びつける。
「御用でしょうか。」
ガラス拭きを中断し私のほうを向きネクタイをととのえる店員さん。
「このラベルの詳細は本当ですか。」
と私の問いに店員さんは、
「はい、確認済みでございます。」
その言葉を聞き私は、すかさず、
「落とします。相場教えてください。」
店員さんは脇に抱えていた相場表を開き
「一万五千ギルが今の相場ですね。」
にっこり微笑み答える。
「じゃあ二万でお願いします。」
これでたぶん落とせるはずだと思うけどなぁ……
店員さんは相場表を閉じにっこり微笑み、
「おめでとうございます。落札でございます。」
よっし落とせた。これで一式そろったな。
「はい、これ」
店員さんに一万ギル紙幣を二枚とリンクシェルを渡す。
「おかえりですか?では落札物はポストに送りましょうか?」
領収書を受け取り、
「ここで着ちゃいますから、送ってもらわなくていいですよ。」
落とした装備と魔法書を店員さんに持ってきて貰い、試着室で全て着替えてお古の装備を店員にわたす。
「これ相場の三分の一で出品してください。」
出品表にサインをして店員にわたす。
しかしラッキーだった。あんな滅多にお目にかかれない魔法剣が手に入るなんて、もうウッキウキである。
「またのご来店お待ちしております」
店員さんに見送られ、競売場の外に出ることにする。
シューテルとロッドは、まだ来ていないようだ。
「八時半か。まだ早かったかな?」
懐中時計に目をやる私。
「ほう、なかなか立派になったね。」
出品場の親父さんに声をかけられる。
「そうかな。でもちょっとまだ慣れてないから動きづらいや。」
そういいながら私は軽く数回飛び跳ねて見せた。
「そう言えば、あんたを探してる人がいたよ。」
親父さんはパイプをふかしながら私に話しかける。
私は、身なりと名前を聞きどこへ行ったのか問いかける。
「たぶん街の外なんじゃないかな。モンスター狩りでもして、暇つぶししてくるとか言ってたからな。」
そういうとパイプをぷかりとふかす親父さん。
「ありがとう親父さん。」
そう一言礼を言い、私は慌てて外へ向かうことにした。

七.(金髪の剣士現るのこと)

私は噴水前の階段を駆け下り、商店街を走り抜けていく。
商店街を抜け、商業区の門に到着し足を止め、息を整え深呼吸する。
競売場の親父さんから聞いた男のことで頭が一杯になってくる。
長い金髪のヒュームの青年・全身白ずくめの防具で身を固めている騎士。
身長百七十前後でスリムな体型。そして名前が……
セイバー・バルック……
「あ〜なんか頭痛くなってきた。」
これは偶然か?
誰かに騙されてたりして?
とりあえず悩んでいてもしょうがない。
念のため門のガードさんに聞き込みをする。
「確かに外に出られましたね。確か六時ごろでしたかね。」
へっ?六時?……そんなに朝早くからこっちに来てたの?
「ありがとうございました。」
丁寧にお礼を言い、門を出る私。
外ではちらほら人がいる、取りあえず白い装備をしている、人を片っ端から探すことにする。
それっぽい人が、座り込んでバザーをしている。
取りあえず、バザーをしている人に近づく。
私に気がついたのかこちらを振り向いた。
「やぁ、いらっしゃい。なんか買ってくかい。」
私は手をひらひらと振り振り、
「私、ワーパーだから。」
ワーパーは金を稼ぐのが仕事。
バザーにはほとんど興味ないしね。
彼は私の顔をじぃーと見つめ、
「そっか、じゃ買わないわな。」
彼はそういうと、オープンヘルメットを外し、手に持っている水筒を口に持っていく。
さらりと風に流される長い金髪……
「あなたひょっとして、セイバー・バルックさん?」
と私はたずねる。
「そうですけど?なんで俺の名前知ってる?」
セイバーは口を水筒から離し、首を傾げる。
「探してる人到着。」
私は自分の顔をちょいちょいと指差した。
「おおぅ、あんたがレイピアさんかい。」
立ち上がり、パンパンと砂を払いながら、
「ショーテルに聞いてたのと、身なりが違ってたからわからなかったよ。」
へ?あっそうか……
「さっき装備一式買いかえたんだった。」
すると、セイバーは私の装備を見始める。
「ふむふむ、ほほぅなるほどねぇ。いい買い物してるねぇ。」
そして、水筒を口に当て一口。
「急所、間接部分に重点を置き、露出した箇所はチェーンメイルでカバー。」
ずばりと言い当てる。
「確かにそれなら動きやすいな。」
そして、私の剣をつんつん指差し、
「これ、買っちゃったのかぁ。」
と一言。
「そーなんだ、出品されたてだったからつい買っちゃった。」
鞘から剣を抜き一振りする私。
「あれぇ?」
また一振り……
ブン・ブン・ブン……
何度振っても……
「炎が出ない。」
『フレイムソード』
剣に炎の精霊が宿った魔法剣……のはずなのに……
ガックリうなだれて。
「店員さん、確認済みっていてたぁ。」
目をウルウルさせセイバーを見つめる。
「ちょっと貸してみな。」
私はそのまま彼に剣を渡す……目をウルウルさせながら……
剣を手に取り構えるセイバー。
「こいつは俺も前に使っててね。ちょっとコツがいるんだ。」
剣を一振り……
剣が真っ赤に染まり炎をまとう。
剣を振るたび炎が踊る。ちょっとカッコいいかも……
「ほいよ、本物だぜ。剣先に集中して振ってみな。」
私に剣を返すセイバー。
私はまた剣を構え……深呼吸して、剣先に集中させる。
「てりゃっ」
気合一発、太刀をかますが……
「でっでにゃい……」
うそぉーこれって難しいよぉ。
「ひょっとして、魔法剣術覚える間の穴埋めにしようとか思ってた?」
セイバーの一言が、胸にぐさりと突き刺さる。
「むっ」
ぷぅと、ほっぺを膨らませむくれる私。
「図星っってところだな。いくらで買ったの?」
私はセイバーの問いに、競売場で落としたいきさつを話す。
するとくすくす笑い出すセイバー。
「笑うこと無いじゃないのさ」
むくれている私のほっぺはさらに風船のごとくパンパンになる。
「実はな、最近落札率の低い出品物はね。品切れしているように見せかけてるんだわ。」
私の肩をパンパンたたき、
「見事に引っかかりましたな、お嬢さん。」
あ……そう言えばあんとき相場しか聞いてなかった。
「あぁー在庫確認してなかったぁ〜」
迂闊だった……あれほど金には慎重だったのに……
大金手にすると、判断が鈍る……私は『金の欲望』に惑わされたのだ。
「五千ギル損したってか。我ながら情けない。」
するとセイバーはさらに肩をパンパン叩き
「その分村に回せたのにな、残念でしたな。」
全くそのとおり私としたことが……?
「ってショーテルってそんなことまで話したの?」
「あいつ口軽いんだよねぇ、これが。」
むう後でとっちめてやろ。
「それより持ってきた?自画像?」
「宿に保管してるよ。」
それじゃあ。
「宿のレストランで食事でもどう?おごるよ?」
まだ一万残してるし、これも礼儀であるしね。
「ほいじゃあ」
セイバーはバザーに並べていたアイテムをかき集めて
「こいつを、道具屋で換金してくれる?飯の足しになるしね。」
意外と気が利くじゃん。これが騎士道というやつかな?
「うん、たすかるわ。じゃあ行きましょうか」
そういうと二人は宿屋に向かう為門を入り宿屋に向かう事にした。
そしてそこで、意外な真実を知ることとなった。

八.(私のお肉……のこと)
 
料亭にのテーブルにステーキが置かれている
それも三人前……
「いやぁ〜悪いね。いい物ご馳走になって。」
二人だけのはずだったんだが……
私の知らない間に二人を先に呼びつけてたみたい……リンクシェルで。
「ほんと、おいしいですね。このお肉。」
ショーテルはほっぺをおさえながら嬉しそうに口をモゴモゴさせている。
「いい肉使ってるね。うんうん。旨いよこれ。」
おいおいロッド?タルタルのくせに、並みの量を食べる気か?……少し残せ。
「レイピア?君は食べないのかい?」
セイバーが私に語りかける。
「私はもう朝食食べたからいらない。」 
 というのは嘘である。
私の財布の中身では精一杯だった。残り1万ギル&小銭にセイバーが換金したアイテムでも足らなかった。
だってこの宿でいっちばん高い肉なんだもん……しくしく
「それより自画像持ってきたけど、見る?」
セイバーが、自分のサックの中をゴソゴソとあさり始める。
それを私は、食事の後で良いと一旦断った。怖かったのだ。
別人ならそれで良し。だが、ジュノを救った本人が親父だったら……
あ〜考えたくも無い。今はやめとこう。
私はもやもやしている頭を軽くこずき、さっき競売場で落とした、
数冊の魔法書に目を通す。
そしてテーブルにおいている、アルミケースから一本タバコのような物を、
取り出しマッチに火をつけ一服する。
「おいおい、いい子うめなくなるぜ?」
セイバーのひと言にロッドもショーテルも賛同している。
「ああ、これのこと?タバコじゃないよ。」
そう言って、一本取り出しセイバーに火をつけ吸ってみろと渡す。
セイバーは私が渡したそれを、吹かし目を丸くする。
「これ、エーテルか?」
その言葉に二人も驚く。
葉っぱにエーテルをしみ込ませ乾燥させた物を紙に巻いた、私のオリジナルアイテムである。
原液程の効果は無いが、ある程度魔法で消費した精神力を、正常まで戻すことは出来る。
エーテルは小さなガラスの小瓶に入っているのだが、冒険中のアクシデントで割れてしまうことが良くある。
おまけにこれがなかなかの高額な代物なのだ。
おそらくエーテル3個で今彼らが食べているステーキに、追加で一人前頼んでもでお釣りがくる位高い。
てなわけで携帯用として常に持ち歩いている。
「これ、俺にも作ってくんない?」
くわえた物をちょいちょい指差しながら。
「良いわよ、エーテル持ってくるなら、作ってあげるよ。」
私は吸い終えたそれを灰皿でもみ消す。
彼は魔法も使うのかな首を傾げていた私に気づいてか、
「おれ、白魔法をちょいとかじっててね。」
なるほど納得……
「サポートジョブね。」
『サポートジョブ』
冒険者の中には複数のジョブ(職業)を学びそれをサポート
にしている人がいる。
「そういうこと。」
そういうと彼も、くわえていた物をもみ消す
「いや〜こりゃいいわ。頭がすっきりしたよ。」
そして彼はこれで、商売が成り立つのではないか?というようなことを言ってきた。
当然この私が、気づかないはずがない。一度バザーで叩き売りをやったことがあるが……結果、道具屋さんに止めてくれと泣いて頼まれてしまった。
エーテルその物の売れ行きが落ちたのだ。かわいそうだから売るの止めたけど。
「ごちそうさまでしたぁ。」
ショーテルはハンカチで口を拭き拭きにっこりと。
さぞかしおいしかった事だろう……
「うぅっ苦しい〜もうおなか一杯。」
げっロッドのやつみんな平らげてるよ……ちょっと残してほしかったな。
「じゃあ本題に入りますかね。」
そう言うと一枚の自画像をサックから取り出す。
ごくっ果たして親父なんだろうか?
それとも別人か?
セイバー・チェイルメイン……
罪人か英雄か今はっきりする。
私は、セイバーから自画像を受け取り、確認する事にする。
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