第23話 壊れはじめた世界
作者: 邪神   2012年07月07日(土) 20時12分16秒公開   ID:ruLD3r9Qyus
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9月30日 午前0時7分
暴君の追跡者登場。
アルバート・ウェスカー登場。



留置所でT+Gウイルスを投与しクリーチャー化したウィリアム・バーキンを何とか撃退し、ベン・ベルトリッチを救出した正志達は、ウィリアムの妻・アネットの案内でT+Gバーキンを倒すための武器・荷電粒子砲を手に入れるため、アンブレラ地下研究所に向かっていた。

しかし、研究所に向かうには下水道を通らなければならないため、正志達は暗闇の中悪臭が漂う冷たい水が溜まった地下二階のトンネルを彷徨っていた。

「臭うな。足も冷たいぜ」

正志が呟くとクレア達が頷いた。

「ライトは俺・レオン・光平の3人が持っている物しかないから離れるなよ」

正志の言葉に女性陣が頷いた。

「悪臭の原因はあそこに散らばっている部品(パーツ)だな」

ベンがライトが照らされている遠くを指差した。

正志達は絶句した。ベンが指差した先には、死体の一部やちぎれた人間の死体が散乱していた。手足や頭部、それに手足や頭部がもがれた胴体がコンクリートの通路にばらまかれ、床から数センチある水の中で静かに揺れていた。

「全部ウィリアムのせい。あの人がウイルスのカプセルを破壊したから、ウイルスそのものが流出して、感染したネズミが生活用水を媒介にTウイルスを街に蔓延させ、感染者を急増させたのよ」

アネットが悲しそうに呟いた。彼女の言葉に正志は静かな怒りを覚えた。

「ウィリアムだけのせいにするな。ウイルスを作ったあんたも同罪だろ」

正志の言葉にアネットはゆっくりと頷いた。ちなみに、正志は協力してくれるアネットに自分の正体を話している。

正志達はあらためて目の前の恐ろしい景色に衝撃を受けた。彼らの頭はバラバラの部分を足して1つの数字にしようと働いている。

(一体何人の人間がここで殺(や)られたんだ?)

正志は心の中でそう毒づいた。しかし、その数があまりにも多すぎて数えられそうにない。目に見えるのは頭やうようよとまわりに広がる髪の毛だ。美人で細い女性の胴体では、仄暗い水に浮かぶ乳房が見える。無残に切り刻まれたラクーン警察署の警官の制服には切断された一本の腕が入っている。ズボンからむき出しの両足はまだ靴を履いている。

正志は舌打ちをしてこの場所で一体何人の人間が犠牲になったのか、考えるのをやめた。気が狂いそうになりそうだったからだ。しかもこの光景は、正志が試練のため訪れた『サイレントヒル』の並行世界のアルケミラ病院の屋上で見たものを思い出させるからだ。

「正志?」

クレアが心配そうな口調で言った。

「ああ、ごめん。大丈夫だ」

正志はクレアに心配をかけさせないため、声を引きつらせないように苦労して答えた。

すると、正志は目の前に何かの気配を感じた。

正志に近づく“それ”は、ジャバジャバと激しい水しぶきを跳ね散らかした。

「皆、気をつけろ!何かいるぞ」

正志は“それ”にライトをゆっくりと照らした。クレア達も身構える。

それはワニだった。しかし、普通のワニとは何かが違っていた。

1.5m程の大きさを持つ緑色と橙色が入り混じった体、背中に無数に生えている鋭い棘、鋭い刃状に変化した腕爪。普通のワニとは違い、人間と同じ二足歩行だった。

ワニは正志に飛び掛ってきた。

「ちっ!何だこいつ!?」

正志はサムライエッジをワニに向けて撃った。しかし、素早い動きで銃弾は全てかわされてしまう。

「正志!」

クレアがブローニングHPで銃撃するが、こちらもジャンプして避けられてしまった。

「ちっ!」

正志はショットガンに持ち替えて近距離で撃ち放った。

命中したがまだ倒れない。倒すためにはまだダメージを与える必要がありそうだ。

再び立ち上がったワニが大きな爪で正志の体に攻撃する。

「ぐあ!」

爪の直撃を受けた正志はうずくまった。

「正志!」

クレアがワニに回し蹴りを加え、怯んだところをグレネードランチャーでトドメを刺した。

攻撃を受けたワニは、燃えながら倒れて絶命した。

「ぐっ、あぐ……!」

正志は右手で腹を押さえながら、口から吐血した。痛みが治まらない。

「正志、しっかりしろ!」

光平が駆け寄りながら言った。正志は腹を手で押さえ出血を抑えた。

「がはっ…げほ!」

「大丈夫!?」

再び吐血する。ワニの攻撃を受けたことで腹に裂傷を受け、出血が止まらないのだ。アネットが包帯を取り出しながら、言った。

すると再び激しい水しぶきが起きた。水が激しく跳ね飛ぶ。

「ちっ、また来やがったぜ。亜麻色の坊主、西山を頼む」

「わかった。任せておけ」

ベンが笑いながら光平に告げて、水しぶきが起きた場所にH&K MP5を向けた。

「正志を死なせない」

「ああ、そうだな。こいつは俺達の大切な仲間だ。死なれちゃ困るぜ」

「一緒にこの街脱出するまでは死なせねえよ」

クレア・レオン・ベンがそれぞれ武器を向ける。

再び水しぶきが巻き起こり、正志を襲ったワニの別個体3匹が現れた。

クレアはグレネードランチャーを、レオンは須田恭也から託されたライフルを、ベンは正志から譲り受けたH&K MP5を撃ち放った。

攻撃が見事命中し、3匹は全て倒された。

「じっとしていて」

アネットが着ていた白衣を引きちぎり、出血している正志の腹の傷口に当てた。

「げほっ!」

しかし、出血は止まらない。そのせいで正志の目は霞んできており、見えづらくなっていた。

「正志、しっかりして!」

「正志、死なないでくれ」

「生きてこの街脱出するんだろ!?死ぬな、西山!」

クレア・レオン・ベンがそれぞれ声を掛けるが、正志の意識は失われつつあった。

(ちくしょう!この金髪女の前じゃ、力は使いたくないんだが……。仕方ないな、正志を助けるためだ!)

自身の秘密を何も知らないアネットの前で治癒能力を使うことを心の中でためらっていた光平が、正志の体に向けて手を伸ばし力を込めた。

金色の光が正志を包み、傷を完全に治癒した。

「えっ!?どうやって……」

回復した正志を見たアネットが驚愕する。

「気にするな、よくあることだ」

光平はぶっきらぼうに答えた。

「よくあることなの?」

アネットが不思議そうな表情を浮かべながらクレアに尋ねた。クレアは何事もなかったかのように頷いた。

「また助けられたな、光平。ありがとう」

起き上がった正志が笑いながら言った。

「気にするな」

光平も笑顔を見せながら答えた。

「だけど、服が血で汚れちまったな。捨てよう」

光平が血まみれのジャケットを脱ぎ捨てながら言った。

「……寒いな」

「じゃあ正志、これを着ておけ」

長袖のシャツとTシャツだけになって寒さで身震いした正志に光平が何かを渡した。

「これは?」

「俺が作った防弾防刃ジャケットだ。といっても、普通のジャケットみたいになってるから、そのシャツの上から着ても目立たないしおかしくないぞ」

光平は自慢げに答えた。よくドラマなどで見る防弾・防刃ジャケットとは違い、正志が先ほどまで着ていたジャケットとさほど変わらない物だった。

「皆の分もある。良かったら着てくれ」

「「えっ!?」」

正志・レオン・ベン以外の女性メンバー・クレアとアネットが顔を引きつらせながら驚く。

「じゃあお言葉に甘えさせてもらうぜ」

正志は光平にお礼を言いながら、迷わず彼のお手製ジャケットを身に付けた。それにつられるようにレオンとベンもジャケットを着込んだ。

「大丈夫ですよ、女性用のちゃんとしたものも作っておきましたから」

光平がそう言いながら取り出したのは、紺色の小型のジャケットだった。サイズも女性のそれに合わせて丁寧に作られている。

「そう……?なら頂くわ」

クレアもためらいがちに光平からジャケットを受け取り、身に付けた。

「あんたも着ておいたほうがいいぜ。何が起きるかわからないからな」

正志が言うとアネットも頷いてジャケットを受け取った。

正志は先程倒したワニにライトを向けながら黙って立っていた。

「正志、何してるんだ?」

「いや、ちょっとな……」

レオンが尋ねると、正志は一言呟いてワニの死骸を調べ始めた。

(何だこのクリーチャー…!『バイオハザード』では見たことないぞ、こんな敵。だが俺が忘れてしまっている可能性もある、一応調べてみるか……)

iPhoneを取り出してアプリ・『バイオハザードアーカイブ』を開くと、クリーチャー欄を調べ始めた。しかし、どんなに調べてもこのワニのクリーチャーと合致するものは出てこない。

(ワニのクリーチャーなら、『バイオハザード2』のアリゲーターがいるが、このワニとはサイズが違いすぎる。しかも、アリゲーターは腕爪が刃物みたいに変化しない。どういうことだ、これは……?)

すると、iPhoneから突然音楽が流れ始めた。

(これは俺が電話の着信音にしているポルノグラフィティの「2012Spark」だ。一体誰が…?)

画面には「非通知」の文字が浮かんでいる。正志の妻・樹里ではありえない。

「正志、出てみろよ」

光平が真剣な表情を浮かべながら言った。正志は怪訝そうな表情を浮かべながらも頷いた。

「もしもし……?」

「通話」ボタンを押してiPhoneを耳に当てた。

『フッフッフッ……お前が西山正志か?』

受話器の向こうから、人をバカにしたような男の笑い声が聞こえてきた。

「アルバート・ウェスカー!」

正志は冷静を保ちつつ、問いかけた。正志の言葉を聞いた光平がなぜか怒りの表情を浮かべた。

『よくわかったな。さすがは結晶の巫女が見込んだだけのことはある、『バイオハザード』の並行世界を救いし戦士だ。だが、それもいずれ無意味になるぞ』

ウェスカーは笑い声をさらに増幅させた。

「どういう意味だ?」

正志は再び問いかけたが、周りから何かの気配を感じた。得体の知れない何かに見られているような、感じだ。

『今わかるさ。気をつけろ、もうすぐ現れるぞ、暴君の名を持つ最強のクリーチャーが……』

ウェスカーは笑いながら言った。正志は皆に武器を構えておくように指示した。

『下水道の先にかなりの広さのホールがある。もし、お前達が辿りつけることができたら、オレはお前達に会いに行ってやる。じゃあな』

そう言い残し、ウェスカーは通話を切った。

「切られた。敵が現れるぞ」

そう呟くと、光平は怒りの表情を浮かべたまま正志達に背を向けた。

「正志達は先に行け。ここは俺に任せろ」

光平はワルサーP99をレッグバッグに入れて言った。

「だけど!」

「行くんだ、正志!」

本気だ。彼の声を聞いた正志はそう直感した。

「皆、行くぞ」

正志はメンバーにそう告げた。クレア達も何かを感じたのだろう。言葉は出さずとも、頷いた。

「光平、死ぬなよ」

「言っただろう?俺は不死身だ、死なねえよ。さあ、行くんだ!」

光平は笑いながら正志に促した。正志は頷いて先に進みだした。



「お前がいるのはもうわかっている。出てこい!」

光平がそう言うと天井が崩れて、その怪物が姿を現した。

「ヒカリノセンシ……ハッケン!」

その怪物は光平の倍以上の背丈を誇り、紫色のコートを着用し黒の電子用サングラスを装着していた。

「こいつ、“闇星事件”で戦った奴に似ている。“ウェスカー”が開発したな」

『SIREN』の世界の人間には全くわからないはずのウェスカーの名前を口に出した光平は、怪物を見てフッと笑いながら武術の構えをとった。

「マスター、メイレイヲ……」

怪物が一言呟いた。

―適当に相手をしておけ。オレと闇の巫女の目的は、あくまで西山正志だけだ。隙を見て、西山正志を拘束しろ。

怪物の電子サングラスにウェスカーからの命令が届く。

「リョウカイ」

怪物は一言返事をすると、構えをとった。

「さて、楽しませてもらうとするか」

光平はそう言いながら、怪物に向かって行った。

光平はジャンプしてキックをくらわせた。しかし、超スピードで避けられてしまった。

(なんだ、今のスピード…。速いなんてものじゃない!高速…いや、瞬間移動だ)

光平はワルサーP99を取り出し、怪物に向かって連射して撃った。

「ムダダ…!」

怪物は瞬間移動で次々に弾丸をかわしていき、強烈なパンチとキックを光平に喰らわせた。

「ぐはっ…!」

あまりの威力に光平は蹲った。

(こんなに痛いって感じるほどのダメージを与えた敵は久しぶりだ。普通の状態じゃ敵いそうにない。戦士に変身しないとだめだな)

光平は体に力を込めた。彼の体に流れる光の創造神の血が覚醒し、彼を光の戦士へと変身させる。

「はあああああーっ!」

体が黒いオーラに包まれ、両目の色が赤に変色する。

「さあ、はじめようぜ」

光平は背中に黒い翼を出現させ、空中に飛んだ。

両腕に光の力を集中させ、急降下して怪物に素早く何発ものパンチを喰らわせた。

怪物は攻撃を受けて倒れた。しかし、すぐに起き上がった。

「何!?」

光平は驚く。戦士に変身すると、パンチやキックを与えるだけでほとんどの敵は倒せるからだ。

それだけではなかった。

⇒To Be Continued...

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