時空を超えた逆転 6 王泥喜編‐霊媒師の罪‐
作者: 太郎   2008年11月22日(土) 11時22分08秒公開   ID:NSaAlxEcU.A
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「…ナニかしら、係官。」
「ハッ!先程の検査の結果が出ました!これがそうです。」
「そう、ご苦労様…。」
法廷係官は、資料を冥に手渡すと、一礼をして、退室した。そして、冥はゆっくりと封筒を開け、中の資料を見た。
「メイ、どうなんだ…?」
「……。被害者のクツゾコには、泥などついてないわ。」
「………。」
しばらく、控室はチンモクに包まれた。
「そう、か。…それでは、我々はそろそろ戻ろうか?牙琉検事。」
「それがいいみたいだね。」
御剣は牙琉に一緒に退出しようとうながした。だが、冥は、資料をボーゼンと見ているだけだった。
「…メイ。」
「!!な、ナニよっ。」
「…頑張れ。」
「………。私はカンペキなのよ。言われなくても頑張るわ。」
冥は顔を赤らめながら言った。
「…はっ。」
鬼野は、相変わらず、タバコをふかしている。
「ボク達は、シツレイするよ!じゃあっ!」
「えぇ。」
「…頑張ってね。」
「…っ!クドイっ!」
こうして、御剣と牙琉は、控室を後にした。

同日 午後2時58分 検察側 証人第1控室・廊下前ー

「…すべて、キミの作戦通りだった、ってコトかな?牙琉検事。」
「ハハッ。まあね!どうしてもあの刑事さんからあのコトバが聞きたかったんだ。コレで狩魔検事も、フッきれるといいんだけどね。」
牙琉は相変わらず笑顔で御剣にいった。
「あぁ…。狩魔検事の迷いの原因は、オソラク、キミと彼女が引き継ぎをしたあの時の、刑事のコトバ…だな。」

『アンタは…この2人と違って有罪判決にこだわってるハズ…。アンタならたやすいコトだろう。今回の裁判でカンペキな勝利をおさめるコトは…!』

「ボクもそうだと思ったんだよ。ヤツのあのコトバは、彼女のココロに、法廷で迷いを生んだんだ。…ダカラ、ボクは、真実を見せるコトによって、ね。…まぁ、伝わってるかは、分からないけど。」
牙琉は相変わらずキザに言った。
「そうか。…あとは、メイ、本人次第と言うコトか…。もう、ヤツは、ボロボロだ。」
「そうだね。そして、お騒がせなこの事件のクロマクさんの召喚の用意もしなくちゃだね。」
「…ウム。とにかく、だ。今は見守ろう。」
「そうだね。」
牙琉は、そうフッ切れたように言うと、御剣と2人で、傍聴席にむかった。

同日 午後3時 地方裁判所 第4法廷ー

カンッ!

「それでは、審理を再開します。狩魔検事!検査の結果を報告して下さい!」
「……。報告するわ。弁護側の主張通り、被害者のクツゾコには、ドロなど何一つ…検出されなかったわ。」
「ほ、本トですか?!(やったぜ!コレでスイリをすすめられ……)」

バシッ!

『いてっ!!』

さらに鋭くなった、冥のムチがオドロキを襲った。
「アカラサマに嬉しそうなカオをしないで!王泥喜法介っ!…ハラが立つから。」
「うぅ…。スミマセン(…だからなんでオレはムチで叩かれて、そしてなんで謝ってるんだろう…?)」
「オドロキ君!おデコが真っ赤だよ!」

カンッ!

裁判長が木槌を振り下ろした。
「ココで、弁護人の主張通り、被害者が庭に出なかったコトが証明されました!もう、証人の言い訳はムヨウでしょう!」
「そして、証人自身が庭にいたコトを認めてます!」
「異議あり!」
冥は力強く、ツクエをむちでたたき付けた。
「でも、それは彼が刑事として庭にいたのを認めたんでしょう?」
「そうだ。私は刑事として、庭にいた。焼却炉にハギレを捨てたコトは、認めてない!」
鬼野は、堂々とした態度で言った。
「でも、焼却炉の前に唯一あった、アシアトはアナタのモノですよね!?」
「うっ…それは…。」
鬼野は、また口ごもった。
「(ヤレヤレ。見抜かなくてもバレバレだな、この人。)」
「…ココでとやかく言ってもショーガナイわ。王泥喜良介!早くキサマのクダラナイ推理の続きを進めなさい。…聞いてあげるわ!」
「あ、ハイ!(なんか…さっきより…イキイキしてるぞ?!カルマ検事…。)」
「メイちゃん、かっこいいなぁ!」真宵は嬉しそうに言った。
「……あの検事がかっこいい、か…。(相変わらず、このコはノーテンキだしなぁ。)」
「それでは、弁護人!アナタのスイリを先に進めて下さい!」
「あ、ハイっ!大丈夫ですっ!えー…先程は、焼却炉前にあったアシアトまで説明したしましたね?」
「そうね。」
今度は、冥はそっけなく答えた。
「そうですか。…ならば、我々はそこから、先に進みましょう!」
「ハイ。では、そこから…。」
オドロキは、資料を取り出した。
「焼却炉に装束を捨てた鬼野刑事は、そのまま何事もなかったかのように、捜査の指揮をとりました。すべては、順調にコトを運べたように見えましたが、邪魔が2つ、入りました。」
「“邪魔”が2つ、ですか…?それは一体…?!」
裁判長がくらいついてきた。
「もちろん1つ目は、オレ達のソンザイです!オレと成歩堂さんと御剣さんが調査に来たコトが邪魔だった!本来なら、オレは御剣さんの誘拐容疑で留置所入り、御剣さんは監禁され、成歩堂さんは、謹慎で調査に来れるハズがなかったのです!」
「…。」
「た、確かにそうです!アナタ方には、ワナがはられていたハズ…!!」
裁判長が目をパチクリさせながら言ったが、鬼野はやはり、ひたすら黙っていた。
「だから、鬼野刑事は強引に理由をつけて、オレと御剣検事を拘束したんですっ!きっと、その後にも、理由をつけて成歩堂さんも拘束するハズだったんでしょう。その行為が違法だと分かっていてもですっ!彼にとってジャマだったワケですからねぇ!!」

『な…なんですとぉぉぉぉぉぉっ?!』

オドロキがそう言い放ったシュンカン、裁判長の叫びとともに、またしても法廷内はザワメキに包まれた。

『おい!聞いたか?!違法に拘束だってよっ!!』
『信じられないわっ!刑事なのに…!』
『警察が信じられなくなるなっ…!』
『ママー!あのトゲなに〜?』
「…(ボウヤ…トゲってまさか、オレの…?)」

カンッカンッカンッ!

「静粛に!静粛に!静粛にぃぃぃぃぃっ!」

裁判長の木槌が、またまた法廷内をしずめた。
「お、鬼野刑事っ!アナタ、まさか…」
「異議あり!」
冥が叫んだ。
「そのコトについては、証人、本人の口から言わせるわっ!…証人、アナタは、ナゼ。ここまでゴーインな捜査を進めたのかしら…?」
「…それはだ。ムロン、彼らが捜査妨害をしてきたからだ!決して、ゴーインではない。これは、フツーのコトだ。私のやり方なのだ。」
鬼野は噛みしめるように、オドロキを睨みつけながら言った。
「異議ありっ!それは答えになっていな…」
「異議ありっ!」
オドロキが最後まで言い終える前に、冥が口をはさんだ。
「何度も言わせないでっ!王泥喜法介っ!彼にとってそのやり方はフツーだった…。そして違法捜査だとはミジンにも思っていなかった。…それで十分でしょ?」
「狩魔検事の言うとおりだ。ナットクしてもらいたいね。弁護士クン。」
鬼野は、マガオでオドロキに言った。
「なんだとっ…?!(フツーって…それはないだろ!!)」
「弁護人、あっけなく黙ってしまいましたねぇ…。」
裁判長がボソっと言い放った。
「もし、弁護人が証人の捜査理念にまだケチをつけてくるよーなら、このムチが黙っちゃいないわよ…!!」
冥は、ムチをいじりながら、鋭いメツキでオドロキに忠告をした。
「ぐっ…!(ムチがこわいんじゃないっ…!だけど、“ソーサリネン”ってコトで逃げられてしまうっ…!)」
「ハンロンは…モチロンできないよなぁ!弁護士さん。私の捜査理念は誰にも変えるコトはできないんだっ!」
鬼野は誇らしげに言った。
「今度こそ…ハンロンはないようね。」
「…っ!(クソっ…!どうすればいいっ?!何か言わなきゃ…!でも…っ)」
オドロキは思わず下をむき、弁護席を眺めた。その時だった。

「…カオをあげなさい。オドロキ君。」

「…!!(このコエ・・・どこかで・・・!?)」
オドロキはゆっくりとカオをあげ、声の主を探した。
「!!!!!!ちょっ…!!!!!!あなたは…!!?(成歩堂さんのお師匠サンの…!!千尋サンっ!)」
「フフフっ。やっぱり驚いたかしら?」
オドロキの前にいたのは、成歩堂の師匠の千尋だった。オドロキは驚きのあまり、コトバを失った。
「やっと真宵が私を呼んでくれたみたいね。私の弟子のお弟子さんのピンチなら、もっと早く呼んでくれたら良かったのに。」
「は、はぁ。(“呼ぶ”って…)」
霊媒に不慣れなオドロキは、タドタドしく返事をした。(と言うより、コンランした。)
「もう!しっかりしなさいっ!オドロキ君!弁護士はねぇ、ピンチな時程、ふてぶてしく笑うものよっ!」
「そ、そーなんですか…。あは…あひゃ…(もう笑う余裕がないくらいピンチだぞ。)」
オドロキはガチゴチに笑ってみた。
「…。いいかしら?アナタは、あの証人の作戦にもうハマってしまっているの。彼は“捜査理念”をタテにロンテンをすり替えようとしているのよ。」
「えっ…?」
オドロキはすぐサマ聞き返した。
「この審理の目的はなに?真宵の無罪を立証するために、当日の鬼野の行動を検証しているのよね?…ならば、先を急ぐまで!証人の捜査理念は今は大きなモンダイではないでしょう…?オドロキ君。」
「あっ…(そのとーりだ…。)」
千尋はオドロキにニコっと微笑んだ。
「分かってくれたみたいね。ならば次よ!鬼野さんの疑わしき点をここでみなさんに知ってもらわないとね!」
「う、ウタガワシキ点…?(そんなの、さっきからずっーと言ってるぞっ!?)」
「…そう。確かにアナタは、いくつか疑わしき“可能性”をシテキしたわ!だけど可能性にしかすぎない…!だけどコノ点は、彼にとって致命的なハズよ!」
「“コノ点”…?」
オドロキは静かに千尋に聞き返した。
「えぇ。なるほど君が言うには彼はアナタを“新米弁護士”といってきたそうよ…!」
「えっ…確かにオレは新米…………あっ!!」
「もう分かったでしょ?オドロキ君!これは、彼が知ってるハズのない情報なの!真実を暴いてやりましょう!」
「は、ハイっ!(よし!ココがポイントだっ!行くしかないっ!)」

カンカンカンっ!

「時間ですよ。弁護人、アナタのカンガエを言いなさい!」
裁判長が重々しく言った。
「…鬼野刑事!」
「なんだ?」
鬼野はレイセイに返した。
「アナタの捜査理念はよーく分かりましたよ。カンゼンに理解しました!」
「なんですって…?」
冥は目を光らせた。
「やっと分かってくれたかね。弁護士クン!」
「べ、弁護人!アナタは、この証人のジンモンを終了するのですか?」
裁判長はイッペンしたオドロキのタイドに驚いてる様子だ。
「いいえ…。ならば次を攻めるノミです!ココで鬼野さんの疑わしき点をここでみなさんに知ってもらわないとね!」
「…それ、私のセリフじゃない。(マッタク…なるほどくんにソックリね…。このコ…。)」
千尋が苦笑いしながらツッこんだ。
「う、ウタガワシキ点、ですか!?」
「そんなものあったら、ゼヒとも聞いてみたいモノね!」
冥がムチを撫でながら言った。
「……。」
「いいでしょう。ゼヒ、ゴ静聴願いますよ!(特にムチの、ね。)」
オドロキはニンマリと笑った。
「…鬼野刑事、あなたに聞いておきたいコトがあります…。」
「じっれったい。早く言いたまえ!」
鬼野はイライラしているように見えた。
「いいでしょう。…あなたはナゼ、オレが新米弁護士だってコトを知っていたんですか?」
「…!!!」
オドロキがそう言い放ったシュンカン、冥の表情もケワしくなった。
「ど、どーゆーコトなんですか?弁護人!あなた…新人なのですか?」
「…シンマイ、ですけど…。まだ弁護士はじめて1年足らずで。(まず、そこじゃないし。)」
「ふむぅ。知りませんでしたな。」
裁判長は目をつむりながら言った。
「…それで?シンマイ君。ナニが言いたいのかな?キミは新人。それは動かぬ事実。それ以上何が言いたい?」
「…。オニノ刑事。あなた、本当に分かっていないようですね!あなたが今、どんだけタイヘンな発言をしたのかを!!」
「ナニっ!?」
オドロキはふてぶてしく笑うと同時に鬼野の表情がまたまたくもった。
「そうよ!オドロキ君。それでいいの!」
「どーゆーコトなのかしら?王泥喜法介…」
「いいですか?オレは先日の審議でも証明されましたが、“7年後”から来たんです。つまり、証人は知っているハズがないんですよ…オレがどんな弁護士であるのかね!」
「っっ!!!!!」
オドロキがそう言うと、傍聴席はイッシュン、静まり返ったあと、今日、何度目だろうか。コンランに陥り、騒がしくなった。
「ここからが正念場だな。オドロキ君のウデ次第、だが…」
「そうだね。…それにしてもバクダン発言だよね、ある種。」
成歩堂が、コンランしてる周りの傍聴人を見渡しながら言った。
「おデコ君は会場をヒートアップさせるコトはトクイだからね。これからミモノだよ!」

⇒To Be Continued...

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