時空を超えた逆転 6 王泥喜編‐霊媒師の罪‐
作者: 太郎   2008年11月22日(土) 11時22分08秒公開   ID:NSaAlxEcU.A
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「うぅっ!」
冥の表情がイッシュンにして曇った。
「綾里真宵さんが右手、そして写真の中の人物と被害者は左手にバンソコーを貼っている…。つまり、これはやっぱり…?!」
「もう、カンタンなコトでしょう。この写真に写った人物は、左手にバンソコーを貼ていなければいけなかった人物!王氏だったと弁護側は主張しますっ!」
「ぐっ…!」
冥は悔しそうな表情をし、落ち着きなく、ソワソワしている。そしてついに黙ってしまった。
「(あの検事を黙らせてやったぞ!なんだか、サイコーに気分いいなっ!!地球に生まれてよかったーっっ!)」
オドロキは、嬉しさのあまり、軽くガッツポーズを決めたが、対する冥はワナワナと怒りで震えながら彼を睨みつけた。
「(うわっ!こぇぇっ!!)」
オドロキはその視線を察知し、すぐに立て直した。
「コホン。…では、写真の人物が王劉蚕だったのを前提に、先に、弁護側のスイリを進めましょう。」
「お願いします!」
裁判長がゆっくりと頷いた。
「…王氏は、大沢木ナツミさんの仕掛けたカメラで、写真に写った後、装束を脱ぎ、それをどこかに隠しました。そして何食わぬ顔をして、真宵さんの元に戻ってきます。」
「異議あり!」
冥はすかさず異議を唱えた。
「ザンネンね!検察側の調査では、装束なんて発見されてないわよっ!王泥喜法介っ!」
「では、コレを見てください。」
オドロキは成歩堂・直伝のふてぶてしく笑いを浮かべながら、装束のハギレを冥に突き付けた。
「ふむう。コレは…ズイブン汚い布ですねぇ。ぞうきんですか?」
「ち、違いますよっ!!ショーコヒンです!(さっきも、話題になっただろっ!このハギレっ!大丈夫か?あのじーさん…。)」
裁判長は、派手にボケたが、冥は焦りを抑えられない。
「そ、それは…!なぜキサマが…!?」
「どうやら、見落としに気付いたみたいですね、狩魔検事っ!…そう、コレはもちろん、ゾーキンではなく、先程も話題に出ました、倉院流の霊媒師の装束のハギレです!しかも、微量のトリカブト毒がフチャクしています!」
「ト、トリカブト毒がですかっ?!……あっ!思い出しましたっ!ソレっ!」
裁判長は大声でかつ嬉しそうに言った。
「(遅いよ…。)そうです!すなわち、そのハギレこそ、王氏が変装するのに着ていた装束なのです!」
「異議あり!」
冥はムチでツクエをまたもハゲシク叩きつけた。
「王泥喜法介。アナタは、大きなミオトシをしてるわ!」
「…何を、ですか?」
「フフフ…。モチロン、その装束が“いつ”焼却炉に入れられたのか?よ!王泥喜法介っっ!例え、被害者が綾里真宵にヘンソーしていたとしても、彼には時間がなかったのと、外にサーモグラフィー内臓のカメラが仕掛けられてあった故、あの場所から消却炉に行くのは、不可能よっ!」
「ふむう…。確かにそうですな。“さーもぐらふぃー”は、温度の変化に反応しますしね。………。むっ!」
「ど、どーしました?裁判長。(イッシュン、マジでいっちまったのかと思った…。)」
オドロキが裁判長にたずねた。
「いや、たいしたコトではないんですが、ドラマ、“峠の弥太郎”を録画してくるのを忘れてしまいました…。」
「……………とーげのやたろー…?(それは今のオレのスイリと、いかなるカンケイがあるんだ…?)」
オドロキはおそろおそろ聞き返した。
「そうです!“お昼の時代劇シリーズ”で、伊賀忍者の弥太郎が、“忍の里”を…」
バシッ!
「ぶはっ!」
すかさず冥の鋭いムチが、裁判長めがけて飛んできた。
「裁判長、今は、カンケイのないコトでしょ?」
「いや、し、しかし…弁護人が聞いてきましたから…」
「オレかよっ!」
思わず、オドロキは声をあげた。

バシッ!

『いってぇっ!(ナゼ、オレが…?!)』

「弁護人のせいなら、なおさらウネるわ…私のこのムチがっ!!」
冥はまたまた弁護士をイカクするような、お得意のポーズを決めた。
「はぁ…。(だからなんなんだよ…。)」
「メイちゃんゼッコーチョーだね!ムチ裁き。」
「カンシンするなよ…。叩かれてるのオレなんだから…。」
「もー!そんなコト言ったら、なるほど君なんて、オドロキ君の100倍、ムチで叩かれてるよ!メイちゃんに。」
真宵は、オドロキを自分なりに、励ました。
「ひゃ、100倍かぁ…。あの成歩堂さんが…。(成歩堂さんも現役時代、カナリ、苦労してるんだなぁ……)」

バシッ!

『あぎゃっ!』

またもや、冥のムチはオドロキのクモリのないおデコに命中した。
「王泥喜法介っ!アナタが変なムチャブリをしたから、ココまでシュシがズレたのよ!いい加減にしなさいっ!」
「えぇっ?!(またもや、オレ?!)」
「そうですぞっ!王泥喜君っ!アナタが変なシツモンをするからです!私も答えてしまったじゃないですかっ!…ムチもあびましたし。」
「…す、スミマセン…。(オレ、そんな悪いコトしたか?)」
オドロキはワケも分からず、謝った。
「ヨロシイ。では、審理を進めましょう!……はて…ドコまでいきましたっけ?」
裁判長は、ごく普通に言った。
「そこのバカな弁護士が、自分のバカなスイリを展開してて、被害者が綾里真宵に変装してたって主張してた。しかし、被害者には、変装に使った、装束を処分する時間はなかったとこの私が立証したトコロよ。」
冥は、腕を組み、二の腕を掴みながら言った。
「(バカな弁護士…)」
「ふむう。そうでしたな!では、弁護人!ハンロンがあるのであれば、お願いしますぞ!」
「ハイ!」
オドロキは法廷記録から、いくつかの資料を取り出し、読み返しながら返事をした。
「先程は、検察側から、被害者が被告人の装束を焼却炉に運ぶのは、不可能だというハンロンがありましたね。…では、弁護側は、これから、それが可能だったというコトを立証していきましょう!」
「おもしろい!やってみなさいっ!…聞いてあげるわ!」
冥は検事席にヒジをつき、指を左右に振り、余裕の表情を見せた。
「…。(大丈夫!オレには、まだ提示してないキリフダと、千尋さんと成歩堂さんに教えてもらったモノがある!)…では、いいですか?コレを見てください!」
オドロキは、綾里家の屋敷の庭で見つかった、王劉蚕のアシアトを提出した。
「そ、それは…?!」
「アシアト…!………ま、まさかっ!」
「そう。このアシアトは、被害者、王劉蚕氏の履いてたクツと同じカタのモノです。…綾里家の焼却炉の前では、このアシガダのみが発見されました!」
「えっ?!」
「!!」

「な、なんですとぉぉぉぉぉっ?!」

ずっとチンモクを守ってきた鬼野の顔が急に険しくなり、また冥の余裕の表情が、イッシュンで焦りに変わり、さらに裁判長の叫びで、傍聴席がまた騒がしくなった。
「いよいよ、“アシアト”のお出ましか。」
「さっきの審理じゃ、出てこなかったからな。」
傍聴席の成歩堂と御剣が言った。
「なんでさっきの審理じゃ、ワダイにならなかったんスか?!」
「さぁね。忘れたんじゃないですか?提示するのを。あの子のコトだから…。サクサクサクサクサクサク…。」
「確かにね。おデコ君なら、それが有り得るね。だけど、彼ならうまくこのショーコを使えるハズさ!」
茜と牙琉は、余裕の表情だ。
「かるま検事さん…なんだか、困ってますね。」
「そーッスねぇ…。なんか、アトが怖いッス…。」
イトノコは春美に、甘納豆をあげながら言った。

カンカンカンッ!

「静粛に!静粛にぃぃぃっ!王泥喜君、そのアシアトは……!」
「そうですね。綾里家の庭の、雪の部分は、操作隊のアシアトだらけでぐちゃぐちゃになっていましたが、焼却炉の前は、熱で雪が溶けて、土が剥き出しになってますよね?コレはまさにソコにクッキリと残っていたんですよ!」
「異議あり!」
冥は、反射的に異議を唱えた。
「で、でも!被害者には、装束を捨てる時間なんて、なかったハズよっ!それに、あの時間、中庭のすぐ近くの渡り廊下では、綾里昭子と綾里春美が割れた花ビンの処理をしていたハズっ!!よって、被害者が焼却炉まで行くコト自体が不可能よ!」
「マッタクその通りなんですよ。狩魔検事!」
「えっ…!?」
オドロキはニヤリと笑った。そして、冥よりも、ずっとチンモクを守ってきた証人・鬼野の方が焦ってるように見えた。
「ど、どーゆーコトですかな?!弁護人!」
「カンタンなコトです!王サンは、厠の外に出れなかった。彼はとりあえず装束を脱ぎ、その場で隠したのでしょう!」
「異議あり!」
冥が叫んだ。
「何を言っているの?!王泥喜法介っ!アナタが王劉蚕が、倉院流の霊媒師の装束を焼却炉に捨てたと主張したんじゃない!!彼が綾里真宵のいる部屋に戻ったら、彼にはもう装束を捨てる時間は残されてないわっ!」
「そうですぞ、弁護人っ!アナタ、どう説明するツモリですか?!」
裁判長も冥に続いた。
「オレは、王サンと同じカタのアシアトが焼却炉の前で見つかったと言っただけで、彼が装束を焼却炉に捨てたとはヒトコトも言ってませんよ!」
「な、ナニよそれっ!この私をおちょくってるのっっ?!」
冥の怒りは、頂点に達し、検事席をコブシでガンガンと叩いた。
「(うわ、怒っちゃった…。こぇぇ…。)」
「弁護人、アナタの考えを続けて下さい。」
「ハイっ!大丈夫です!(さっき、控室でチヒロさんに言われたコトをつなげていけば、このカラクリは解けるハズだ!必ず鬼野にジハクさせるんだ!ホースケっ!)」
冥はオドロキは鋭く睨みつけ、鬼野は、落ち着きなく、ネクタイをいじっていた。
「では、弁護人、続きをどうぞ。」
「ハイ。…(よし!いくぞっ!)検察側の主張通り、王さんには、着ていた装束を焼却炉に捨てる時間もなかったし、足を運ぶのも不可能だった!つまり、これらのコトを別の人間がやったと考えられるのです!…そう。例えば、鬼野刑事。アナタです!」
オドロキはマッスグ、人差し指で、証言台に立っている鬼野を指した。
「なっ、なんだとっキサマっ!まだそんなコトいってるのか?!」
鬼野の表情がみるみる、さらに、険しくなった。
「そうです。アナタには、疑わしき点がまだ拭いされきれてないですからねっ!」
「なんだとっ?!」
鬼野はカオを真っ赤にしながら、オドロキを睨みつけた。
「……トコロで。鬼野刑事、アナタのその靴、結構、ドロで汚れてるみたいですね…。」
「…そ、それがどうした?」
「きっとヌカルんだ土の上でも、歩いたんでしょうねぇ?」
オドロキは、マッスグと鬼野を睨みつけながら言った。その表情はマガオだ。
「そりゃぁ…土の上くらい、歩いたコトは、少なからずある。」
「では、鬼野刑事。アナタのはいてるその靴のクツゾコを見せてくださいよ。」
「なっ…?!」
「異議あり!」
冥が叫んだ。
「黙って聞いていればっ…!王泥喜法介っ!いいカゲンにしなさいっ!アナタのスイリはメチャクチャだわっ!どうしてもこの刑事を殺人犯にしたてあげたいみたいねっ!アナタは、さっきこの証人の犯行を立証しきれなかったハズよ!その時点でアナタは、シッパイしてるのよっ!」
「異議あり!」
オドロキも、負けじと叫んだ。
「この焼却炉の前で見つかったこのアシガタと、鬼野刑事のアシガタが一致したら、彼が焼却炉の前に行ったコトが証明されます!アソコには、このアシガタしか見つかってないワケですからねっ!そしたら、無関係では、通らなくなるっ!狩魔検事っ!オレの主張のどこがメチャクチャなのか?教えてくださいっ!(さっき、ドサクサに紛れて、ヤツに逃げられたケド、今度はこっち側から立証してやるっ!)」
「ナニよっ!?この…王泥喜法介がっっ!」
冥は、くやしさのあまり、固まってしまった。
裁判長はポカンと口を開け、鬼野はズルズルになっていた。
「…!(間違いない…やはり、ヤツの表情が、犯人が誰かを物語っている!今がチャンスかもしれない…!)さぁ、証人!聞いていましたよね?見せてもらえますか…?」
オドロキはニヤリと笑いながら鬼野に言った。
「なっ、ぐぅっ…!」
「異議あり!」
冥は叫んだ。
「ムダよ。王泥喜法介!この証人は、刑事として、事件の初動捜査を行ったのよ?!少なからずも、靴の底に綾里家の庭のと同じドロがついていても、不思議ではないわっ!それにもし、アシガタが、被害者と一致したとしても決定的な証拠にはならないわっ!この世の中、同じ靴なんて、腐るホドあるもの。」
「モチロンです。靴の底のドロだけでは、ショーコになりません。」
オドロキは、またもふてぶてしく笑った。
「な、ナニよ!今度はっ…!」
「…では、狩魔検事。被害者の靴の底を調べましたか…?」
「っっ!!」
オドロキがそう言い放ったその瞬間、鬼野はビクっとした。
「被害者のクツゾコ、ですって…?」
「そう。被害者の靴底です!綾里家の屋敷に入るとき、靴を脱ぎますよね?だから、王さんの靴は本来、綾里家の玄関にずっとあったハズなんです。彼は、そこでは、屋敷案内しか、してませんからね!よって、本来なら、彼の靴が綾里家で汚れる理由なんて生まれないんです。」

⇒To Be Continued...

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