時空を超えた逆転 6 王泥喜編‐霊媒師の罪‐
作者: 太郎   2008年11月22日(土) 11時22分08秒公開   ID:NSaAlxEcU.A
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「そうだね。でもいいんじゃない?年下でも。」
「えっ…?」
牙琉は冥の目線に合わせながら、笑顔で言った。そして冥はワケも分からず、赤面した。
「何やってんのよ。検事さん。キモチワルイ。」
控室のドアが開き、カリントウをほおばってる茜と、缶コーヒーを手にした笑顔のイトノコが部屋に入って来た。
「け、刑事クン!その言い方はヒドイんじゃないか?」
「そうですか?狩魔検事、牙琉検事さんに引いてるよーに見えますケド。」
「引いてるわ。牙琉響也。(ちょっとドキっとしたケド…)」
「むっ…。」
茜のヒトコトで牙琉の態度は弱気になった。
「(牙琉検事…茜クンには弱いみたいだな…。)」
「いやぁー!茜クンはいい人ッス!自分に、缶コーヒーをオゴッてくれたッス!もう感激ッス!」

ビシッ!

ズレた発言を大声でするイトノコに冥のムチがヨウシャなく飛んだ。
「ぎゃッス!!」
「…KY。」
「ううっ…すまねッス。」
イトノコはハナの辺りをさすってる。
「…フッ。フフッ。」
突然、今の今まで黙っていた鬼野がハナで笑いだした。全員、一斉に彼の方にふりむいた。
「ナニがおかしいの?刑事さん。」
「いやぁ、“天才検事”と称される人間が3人も集まってるのに…。なんなんですかね?今回の法廷は。」
鬼野が静かにゆっくりと、ヒニクを込めながら言った。
「キサマ、ナニが言いたい…?」
「たかが、あんなコムスメ1人のタメにこんなに時間がかかるとは…。情けないですな。」
鬼野はソファの上でアグラをかき、タバコを吸いながら言った。アキラカに今までとはフインキが違った。
「鬼野刑事クン。アンタ、自分の立場が分かってないみたいだ。ボクが超時石によって今、ココにいるって知っていたからには、“あの男”とのカンケイを認めてるようなモノだよ。」
「…“あの男”?一体、誰のコトでしょうねぇ…」
「なんだと?!」
牙琉の食らいつきとはウラハラに、鬼野はソッポをむきながら、タバコの灰を指でトントンと叩きながら、落とした。
「私がアンタのコトを知ったのは、我々の独自の調査からだ。…他人は関係ない。証拠もないのに、ヘンな言い掛かりはヤメテ頂きたいですね。牙琉検事殿。」
「ぐっ…!(ハラ立つな…コノ男…!)」
「さっさとあのコムスメ…綾里真宵…とか言いましたっけ?有罪にして下さいよ。それに…我々の捜査をナメてもらっちゃぁ、困りますよ。確実にあの女がやったんだっ!」
「そんなの…ココまで新たな事実がアキラカになった以上、断言はできないだろう。」
御剣が静かに言った。
「フン。ヒドイ言い掛かりですね…。御剣検事殿。こんなコトなら、アンタもあの新人弁護士も、もっと早くに留置所にブチ込んどくべきだったな。」
「なんだとっ?!」
衝動的に御剣は、鬼野の元に行こうとしたが、冥が無言で彼を止めた。
「やめなさい、レイジ。」
「メイ…!」
「…検事ってのは、被告人を有罪にするためにいるワケだろう?!ならば、ナゼ、躊躇してる?早く、有罪判決をモギ取ればいいんだ。…私もヒマじゃないのだから。…そうだろう?狩魔検事?」
「えっ…?!ナニよっ。急に…」
「アンタは…この2人と違って有罪判決にこだわってるハズ…。アンタならたやすいコトだろう。今回の裁判でカンペキな勝利をおさめるコトは…!」
「!!」
冥の表情が反射的に少しクモった。
「アナタ、さっきから一体、なんなの?!ナニが言いたいのよっ?!」
茜が冥をかばった。
「おやおや。アナタは…宝月茜…。あの有名な宝月巴の妹サンか。」
「えっ…。」
「(宝月巴…。確か刑事クンのお姉さんで、元・検事局主席検事。でも、彼女は今…!!)」
「お姉さんについては、非常にザンネンだ。服役中とはなっ!」
鬼野は嘲笑うように言った。
「な、なんで…今そんなコトを…!!なんで今っ…!」
「鬼野刑事クン!ツツシメよっ!今は、カンケイのないコトだろうっ!」
牙琉は、茜をスグサマかばった。
「フン。そこの刑事さんが、つっかかってきたモンだからね。」
「いい加減にしないかっ!!キサマ!」
御剣もついにキレて、またも鬼野の元に行こうとしたその時だった。
「そろそろ開廷の時間です!検察、証人供に準備をして下さい!」
タイミング悪く、係官が部屋に入ってきたのだ。
「…だそうだ。検事サマ。」
「むぅぅっ…!(ハラ立たしいっ!)」
鬼野は御剣にむかって、勝ち誇ったような笑みを浮かべた。
「…ボク達は行こう。御剣検事。アトは、狩魔検事がやってくれる。」
牙琉が、御剣の肩をポンっと叩いた。
「…そうだな。頼むぞ。メイ。」
「…トーゼンよ。御剣伶侍。」
「そうか。」
「さぁ、部外者は皆、出てくれませんかね?」
鬼野はタバコをハイザラにグリグリと押し付けながら言い放った。
「行こう。」
牙琉と御剣は、鬼野をニラミつけてから、茜とイトノコを連れて控室を出た。

同日 午後1時17分 地方裁判所 検察側 証人第1控室前 廊下ー

茜は黙って牙琉と御剣の後ろに、トボトボとついてきた。
「茜クン、大丈夫か?」
「…。」
「茜クン、どうしたッスか?!顔をあげるッス!!」
「…。」
「刑事クン…。鬼野の言うコトなんて気にするなよ。さぁ、顔をあげてよ!」
御剣、イトノコ、牙琉の3人は全力で茜を慰めた。しかし、その時だった。
「あぁーっもー!超〜ハラ立つっ!」
「け、刑事クン?!」
「あーゆーイヤミなオトコ、大っっ嫌いっ!ああっ!もーっ!ムカツクっ!」
茜はポケットからカリントウを取り出したが、あまり入っていなかった。
「もー、サイアクっっ!カリントウ入ってないじゃないっ!!こんなトキにっ!」
「…刑事クン、ホラ。」
「ん?……あっ!!」
牙琉は茜に1000円渡した。
「カリントウ、ボクがオゴるよ。コレで好きなだけ買っておいで。売店に売ってるハズだからさ。」
「……ありがとうございます。」
茜は牙琉に軽くエシャクし、1000円札を握りしめ、売店にむかった。
「あっ!茜クン!待ちたまえっ!」
「御剣検事さん…?」
「イトノコギリ刑事も連れてってやってくれ。」
「え?」
「じ、自分ッスか?」
「うム。刑事、キミも何か買ってきたまえ。メイを法廷に連れてきたテガラがあるからな。」
御剣も1000円札をイトノコに手渡した。イトノコは涙ぐみながら、受け取った。
「み…御剣検事ぃぃ!自分は…自分は…もう、感激ッス!自分は…誘拐されそうになった御剣検事を救出するコトもできず…」

『いいからっ!早く売店に行きたまえっ!』

イトノコが最後まで言い終える前に御剣が怒鳴った。
「は、はっ!」
「さ、行くわよ。イトノコ刑事。…じゃぁ、あたし達はまたアトで合流しますからっ!ゴチソーサマです!」
「うム。待ってるぞ、茜クン。」
「オツリはいらないよ!」
「言われなくても、そのツモリですっ!」
茜は、イトノコを引きずりながら、売店へむかった。
「…ふぅ。鬼野刑事、か。」
「ヤツの本性が見えたな。」
「そうだね。それとアニキがこの件に噛んでる可能性も濃くなったしね。」
「うム。普通の刑事に、極秘物体のシラセなど到底来ないモノだしな。」
「だけど、証拠や関わりが証明されないと、彼を召喚するのはコンナンだよ。」
「…すべては、メイの姿勢シダイか…。」
「でも、おデコ君と狩魔検事なら…なんとかなる気がするよ!少なくともボクは、ね。」
「ならば、私もそうしよう。」
「そー来なくちゃ!さ、行きましょ、センパイ。」
「うム。」
御剣と牙琉はそのまま傍聴席にむかった。

同日 午後1時22分 地方裁判所 第4法廷ー

カンカンっ!

「それでは、審理を再開します。狩魔検事、準備はよろしいですかな?」
「トーゼンよ。検察側の準備はムロン、完了しているわ。」
冥はそう言うとムチでツクエをバシッと叩き、オキマリのポーズをとった。
「さぁ、どこからでもかかってきなさいっ!王泥喜法介っ!」
「は、はい…(すんげぇーやりにくいな…。この検事…。)」
「それで…さっきは鬼野刑事が所有していたタバコがモンダイになりましたな。」
「ハイっ!もしそのタバコのケースに、鬼野刑事の指紋がフチャクしていたら、昭子さんのタバコであるコトが証明されますっ!弁護側は至急、タバコケースの検査を要求しますっ!」
オドロキは、人差し指を証言台の鬼野に突き付けた。
「確かに…弁護人の言う通りですっ!タバコのケースに証人の指紋がフチャクしていたら、リッパな証拠になりますっ!!」
「異議ありっ!」

ビシッ!

冥はムチでツクエを激しく叩きつけた。
「“リッパな証拠”になる…?笑わせないで欲しいわね。王泥喜法介っ!」
「えっ…(なんだ…?あのフテキな笑みは…。)」
「どーゆーコトですかな?狩魔検事?」
裁判長は目をパチクリさせながら尋ねた。
「いい?タバコのケースにこの証人の指紋がフチャクしてても、綾里昭子のタバコだとは、完全には断定できないのよ。」
「な、なんだと?!(どーゆーコトだ…?)」
「アナタは、可能性を指摘しただけなのよ。王泥喜法介。…この場でハッキリと言わせてもらうわ。検察側による検査の結果、このタバコケースには、この証人の指紋がハッキリとフチャクしてるわ。」
冥は人差し指を左右に振りながら、不敵なエミを浮かべ、得意げに言った。
「えっ…」

『な、なんですとぉぉぉぉっ?!』

冥の一言で、法廷ないがまたまたざわめいた。
「狩魔冥、いったいどんなハンゲキをするつもりなんだ?!指紋がフチャクしてたなんて…明らかに検察側には不利な事実だぞ?!」
成歩堂が乗り出しながら言った。
「さぁね。でも、きっとおデコ君なら、持ちこたえるんじゃないかな?あの検事サンの攻撃に。」
新たに傍聴席に加わった、牙琉が成歩堂の後ろで髪をキザにいじりながら言った。
「だといいんだけどね。サクサクサクサクサクサクサクサクサク…」
「…。(茜ちゃんって、こんなコだったっけ…?)」
「あっ!うまそうッス!自分もかりんとうにすれば良かったッス!茜クン、自分の甘納豆と交換して欲しいッス!」
イトノコが目をキラめかせながら茜のカリントウを見つめた。
「サクサクサクサクサク…ダメです。サクサクサクサクサクサクサクサクサク…」
「むぎゅう…。カリントウ、うまそうッス…。」
「…。(コレでいいのか…?この刑事サン達は…。)」
「冥…(忘れるな…大切なのは、“真実”だぞ!!)」
御剣は、冷静に腕を組み、冥の姿勢をじっと見つめていた。
「かるま検事さん…おどろきくん…!!真宵さまを助けて…!」

カンカンカン!

「静粛にっ!静粛にっ!静まりなさいっ!」
裁判長はまたも木槌をハゲシク連打し、傍聴席を鎮めた。さすがに疲れている様子だ。
「(タバコケースには、鬼野の指紋がフチャクしてた…だけど、狩魔検事はナゼそれを笑顔で言えるんだ?!)」
「それじゃぁ、証人。このマヌケな顔をした哀れな弁護士のタメにも証言してちょうだい。本当の事を!」
冥は、両手を組みながら、余裕の表情で要った。。
「…分かりました。」
鬼野はゆっくりと、首を縦に振った。
「マヌケな顔した…哀れな弁護士…」
「大丈夫っ!なるほど君なんて、メイちゃんにバカ呼ばわりされてたよ!」
真宵は被告席から、落ち込んでるオドロキを励ました。
「バカ…か。あの成歩堂さんが…。(言い返したいけど、ムチが怖いからな…)」
「オドロキ君!いっちょあの刑事を、崩しちゃってよ!」
「お、おう!大丈夫っ!(必ず崩してやるさ!ゼッタイにな…!)」
「それじゃぁ、証人、ナゼ、綾里昭子さんのタバコケースにあなたの指紋がフチャクしていたか…証言をお願いします!」
「…はい。」
〜証言開始〜
「私があのタバコを吸っていたのには理由がある。」
「実は…最近、色々とあり、自殺を計ろうとしていた。」
「いつでも死ねるように、あのタバコにアトロキニーネを仕込んでおいた。」
「あのタバコは、先日亡くなった私の妻が好んで吸ってた銘柄なんだ。だから、私はあのタバコを買ったのだ。」
「それが、先程の証人…綾里昭子とタマタマ種類がカブッただけだ。…彼女にはもうしワケないコトをした。」
鬼野が証言を言い終えると、法廷内は凍り付いた。
『じ、じ、じ…(ウソだろっ?!)』
『自殺ですとぉぉぉ〜?!』
「…はい。」
鬼野は下をむきながら答えた。
『一体、何があったのかしら…?』
『きっと給料だよ!キューリョー!!労働以上に安月給だったんだぜっ!』
『なんだか、カワイソウになってきたわ…。あの刑事さん。』
『でも、結果的にさっきの女の人が被害にあったわけだろ!?許されることではないだろ!!』
『ママー!あそこに宇宙人がいるよ!!』
「…。(ボウヤ…ナゼ、人差し指をオレにむけてるのかな…?)」

カンカンカンっ!

『せ、静粛に!静粛に!静粛にぃぃぃっ!従えない者は、退廷を命じますぞ!!』
裁判長は、イキをゼーゼーと切らしながら言った。

⇒To Be Continued...

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