時空を超えた逆転 6 王泥喜編‐霊媒師の罪‐
作者: 太郎   2008年11月22日(土) 11時22分08秒公開   ID:NSaAlxEcU.A
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『オドロキ君っ!どーゆーコト!?なるほど君は、7年後…弁護士じゃないの?!牙琉検事って悪いヤツなの?!』

「ウソ…!なるほどくんの弁護士バッチがっ?!」
7年後、成歩堂が弁護士じゃなくなっているコトを初めて知った千尋と真宵はそれぞれいる席の上で崩れた。
「成歩堂の弁護士バッチをハクダツしたのは…牙琉検事っ!!なんてコトだっ!」
御剣もショックを隠しきれない様子だ。そして、当の本人・成歩堂はすでに放心状態だった。
「ち、違うんですっ!聞いてくださいっ!牙琉検事も成歩堂さんも、牙琉霧人にハメられたのよ!」
「どーゆーコトだ?茜君…?!」
「このコトは黙っておくツモリだったんですけど…カンタンにお話しします。成歩堂さんは牙琉霧人のサクリャクによってある裁判のニセの証拠品をつかまされました。そして、彼は弟の牙琉検事にそのニセの証拠品の情報を流したんですよ。」
「つまり、なるほど君は…」
「そのニセの証拠品を法廷で提出してしまったというのか!」
「そう。すべては、仕組まれたコトだったんです…!」
「なんてコトだ…!」
「…えぇっ?!なるほど君はネツゾーされた証拠品を?!」
「うん。それを提出しちまって、牙琉検事に暴かれたんだ。」

カンカンカンっ!

『静粛に!静粛にぃぃぃぃっ!』

裁判長は、汗だくになりながら木槌を鳴らし続けた。
「牙琉検事!これが最後の忠告です!アナタが先にスミヤカに退廷しなさいっ!」
「狩魔検事の到着まで頼むよ!裁判長さんっ!審理を続けさせてくれっ!」
「裁判長っ!オレからもお願いしますっ!今は、牙琉検事と審理を続けさせてくださいっ!」
牙琉とオドロキが必死に裁判長に掛け合った。

『裁判長っ!何をモタモタしてるんですかっ!』

「あっ…イヤ…その…」
鬼野のキハクに裁判長は少し怖じけづいたようだ。

『係官っ!牙琉検事をツマミ出せっ!』

鬼野は裁判長に代わって係官に指示を出した。
「は、ハイっ!」
「えっ…それ…私のシゴトです…」
係官は、強引に牙琉を引きずりはじめた。

『ちょっと待ってくださいっ!鬼野刑事っ!』

オドロキは弁護席から飛び出し、係官を止めに入ろうとしたそのトキだった。

ビシッ!

『異議ありっ!』

法廷のトビラがムチを叩く音とともに、イキオイよく開き、イトノコ刑事とムチを持ち、ヒラヒラな服を着た10代後半くらいの女の子入ってきた。
「い、イトノコ刑事っ!(…と誰だ?)」
「遅れてすまないッス!!狩魔検事を連れてきたッス!」
「えっ?!(じゃぁ、この女の子が…狩魔検事っ!)」
「やっと来た、か…。メイ。」
傍聴席の御剣がホッと肩を下ろした。
「うん…。間に合ったね。」
成歩堂も額のアセをヌグッた。
「あの人が狩魔検事…ハジメテ見るわ…!」
「わーい!かるま検事さんが来ました!」
いつの間にか、千尋から春美に戻っていた。
「これからが大変だな…オドロキ君。」
「うム…!」
「マッタク、このヒゲの携帯の電池がなくなったせいで連絡が取れなかったコトは、オワビするわ。」
「す、すまねッス。」
イトノコは小さくアタマを下げた。

ビシッ!

「ぎゃぁッス!」
「(な、なんだよ…コノ人…!)」
「裁判長っ!!私が来たからにはもう大丈夫よ!そこの検事に代わってこの狩魔冥が被告の有罪をカンペキに立証してみせるわっ!」
「おぉ!頼もしい!」
「ぐっ…ナゼだ…っ!こんなハズは…!」
鬼野は1人、クヤシそうな表情だった。
「なんか…想像以上に怖い女の子だな。(でも、検事来たし、これで少しアンシンだな…)」
オドロキは少し安心し、メイに軽く会釈したが、メイからはムチが返ってきた。

ビシッ!

『ぎゃっ!(な、何だっ?!)』

「やっと会えたわね!王泥喜法介っ!!」
「はっ?(てかなんで、フルネームなんだよ…)」
オドロキがトッサに返事をしたが、またムチが飛んできた。

ビシッ!

『いてっ!』

「この私に対して、そんな返事のシカタは100年早いっ!」
「だからって、ムチはないだろ!」

『あっ!バカ!』

冥に口答えしたオドロキを見て、傍聴席にいる成歩堂が思わず叫んだ。

ビシッバシッ!

『うぉっ!ぎゃっ!(何だコノ人?!ナゼみんな注意しないんだっ?!)』

「私に口ゴタエするなんて…いい度胸ね!王泥喜法介っ!さすがは、あの成歩堂龍一のマナ弟子っ!」
「えっ!?マナ弟子?成歩堂さんの?違いますよっ!」

『言い訳なんて見苦しいわよっ!王泥喜法介っ!』

ビシッっ!

『んぎゃっ!(だから早く注意しろよっ!裁判長っ!)』

「御剣…お前、オドロキ君をボクのマナ弟子って説明したのか?」
「いや、私は、オドロキ君はキミの弟子のようなモノだとセツメイしたハズなんだが…」
「どっちにしろ、狩魔冥の扱い方はオドロキ君にセツメイしなきゃだな…」
成歩堂はヨワヨワしく言った。

カンカンっ!

「トニカク、狩魔検事も来たワケですし…一旦ココで20分の休廷を…」

ビシッ!

裁判長が言い終える前にメイのムチがとんだ。

『はふっ!』

「お黙りなさいな、裁判長!」
「はっ。」
「(すげぇな…コノ人…。もはや何でもアリだぞ…)」
「覚悟なさいっ!王泥喜法介っ!」
メイはオドロキにむかって、オキマリのムチを構えた、あの闘争心ムキダシのポーズをした。
「な、望むトコロだっ!」

ビシッ!

『うげっ!』

「成歩堂龍一と違って、イセイがいいわね…王泥喜法介!…まぁ、いいわ。裁判長、早く木槌をならしなさいな。」
「はっ。ハイ!それでは、牙琉検事は狩魔検事に引き継ぎをキチンとしておくるコト!」
「オーケイだよ。裁判長さん。」
「それでは、一旦休廷っ!」

カンっ!

同日 午後12時58分 被告人第2控室−

「オドロキ君!真宵ちゃんっ!」
成歩堂と春美が控室のトビラを開けて、入ってきた。
「真宵さまぁぁぁ!」
「ハミちゃん!」
春美は真宵の元にエガオで駆け寄った。
「成歩堂さんっ!なんなんですかっ!あの検事はっ!!なんでみんなチューイしないんですかっ!」
「オ…オドロキ君!(そりゃ、キョーレツだろうな…狩魔冥の第一印象は。)」
「メイちゃんはアレがフツーなんだ!だから、みんなチューイしないんだよ!それに、メイちゃんがムチを振り回さなくなったら…ビョーキだよ!」
「あれでふつー…!?(そんなバカな…)」
オドロキは、首をカシゲながら言った。
「トニカク、裁判長も誰も狩魔冥にはアタマが上がらないから、あんまシゲキさせないよーにね。それが彼女との法廷を渡り歩く唯一の方法だよ。」
「そうなんですか…唯一の、ですか。(なんてこった…)」
オドロキはイッキに落ち込んだ。
「ところで、なるほど君。御剣検事は?」
「あぁ。御剣は、検察側の控室にいるよ。狩魔冥と牙琉検事と話してる。」
「そうなんだ…」
真宵は少し、表情をクモらせた。
「(真宵さん…きっと、未来で成歩堂さんが弁護士じゃなくなっているコトがショックなんだろうな…。)」
「トニカク、時間がないわ。顔をあげなさい、オドロキ君。」
どこからか、大人の女性の声がし、オドロキは顔をあげた。そこには、春美が霊媒してる千尋が立っていた。
「チヒロさんっ!」
「お姉ちゃん!!」
成歩堂と真宵が同時に叫んだ。
「ハミちゃんの霊力が続かないから、コマメ霊媒してもらってるの。」
「はぁ…(れいりょく…ねぇ…。)」
「私、さっきまで傍聴席から見ていたんだけど、オドロキ君、よく頑張ってたわね。とても良かったわよ。モチロン、牙琉検事も!2人は、非常にいいコンビね。まるでなるほど君と御剣検事を見ているようだったわ!」
「あ…ありがとうございます!」
オドロキは照れ笑いをしながら、答えた。
「ただ、1つ見落としをしているの。」
「見落とし…?」
「ええ。アナタは、王氏が真宵に変装してナツミさんの前に現れたと主張したわね?」
「はい。」
「もし、彼が真宵に変装したのなら、装束は一体ドコにいったの?」
千尋は微笑みながら、オドロキに聞いてきた。
「それは、モチロン。焼却炉の中に捨てたんです。ココに証拠があります。」
オドロキは法廷記録から、トカブト毒の成分が微量、フチャクした装束のハギレを千尋に見せた。
「それは、そうね。でも一体、誰がやったのかしら?」
「え?被害者…ですよね?(“誰が?”って…そりゃ、王劉蚕しかいないだろ?!)」
「そうね。確かに、王さんがもし、装束をあの時捨てに行ったのなら…あんな短時間でアタシのトコに戻っては来れないよ!」
真宵はイスの上で考えながら、言った。
「それに、あそこから中庭に出たら、サーモグラフィーがカクジツに反応する。本当にあの時に捨てたなら、写真がもう1枚撮られていても、オカシクない。」
成歩堂も口を揃えた。
「あっ…!!(た、確かにそうだ!)」
「さらに、渡り廊下には、昭子おばさまとハミちゃんが作業をしていた…。これらのコトを考えると王さんがやったとは、あまり考えられないんじゃない?」
千尋は優しく言った。
「うぅ…(さすが成歩堂さんのお師匠さんだ…)」
「そうなると…一体誰が…?」
真宵は難しい表情をした。
「ココまでくれば、“ある可能性”が見えてくるんじゃないかしら?」
「可能性、ですか…?」
「そうよ。分かる?オドロキ君。」
「(王劉蚕が捨てたのでないのなら…)…あっ!」
オドロキはイキオイ良くカオをあげた。
「言ってごらんなさい。」
「もしかして…王さんではなく、鬼野刑事が…?」
「えぇっ?!」
真宵は思わず立ち上がった。
「でも、焼却炉のまわりには、王さんの足跡しかなかったハズじゃないか?」
「なるほど君。考えてもごらんなさい。もし、オドロキ君が主張するように、鬼野刑事と王さんが共犯関係にあったら、モチロン、同じ靴くらいはくコトが出来たハズよ。…イザとなった時、刑事さんにギワクの矛先が行かないようにね。」
「で、でも、ショーコはないですよね?(スジは通ってるけど…)」
「ふふ。そーゆー時はどーするか、なるほど君に聞いてごらんなさい!オドロキ君!」
千尋は満面の笑みを浮かべながら、成歩堂の肩をポンと叩いた。
「え、ぼくですか?…あっ!なるほど。」
「あ、じゃぁ成歩堂さん、教えて下さい…!(チヒロさんのホホエミが気になる…)」
「ハッタリだよ。ハッタリ!」
「え。」
「オドロキ君、未来のなるほど君の“マナ弟子”なんでしょ?ならタタキ込まれてるんじゃないの?」
真宵がニヤけながら言った。
「いやいや!マナ弟子じゃないってば!…ハッタリは…成歩堂さんに“やったもん勝ち!”って言われてるけど…。」
「ハッタリ噛まして、相手が“動揺”したらコッチのモンよね!あなたの“見抜く”チカラで!それを利用しながらあなたの“見落とし”を埋めるのよ!」
「(あっ。なるほど…!)分かりました。やってみます…!」
オドロキは大きく頷いた。
「お願いだよ!オドロキ君!あたし、信じてるからね!無罪にしてよっ!」
「う、うん!大丈夫さ!(そう、大丈夫だ!たとえムチを振り回す怖い検事だとしても…)」
「オドロキ君。狩魔冥は、相当手強い。さっきまでのキモチじゃ、叩かれる!(色んなイミで。)今まで以上に気を引きしめて、強気でいくんだ!」
成歩堂はチカラ強くオドロキの肩を叩いた。
「は、はい。分かりました…!(どうやら、気合いだけじゃ、あの検事とはやり合えないみたいだ…)」
「…もう少し時間があるわね…。十分ペースを整えて、備えときましょう!」
「ハイっ!大丈夫です!」
「(オドロキ君…。それ、コタエになってないような…。)」

同日 午後1時9分 検察側 証人第1控室ー

「コレで全部かなー。後は頼んだよ、お嬢さん。」
牙琉検事と狩魔検事が控室で引き継ぎをしている。その真横に御剣検事がいて、彼等の向かい側のソファーに距離を置くように、鬼野刑事が座っている。
「ご苦労だったわね。牙琉響也。いい感じに審理を繋げてくれて。」
「なぁに。ボクは検事として、ト-ゼンのコトをしたまでさ。」
牙琉は髪をイジリながらキザに言った。
「トニカク、ココからが本番だ。メイ、カンペキな勝利ではなく“真実”を追求するんだぞ。それが我々のしめ…」
御剣がサイゴまで言い終える前に、冥のムチが彼を叩いた。

バシッ!

「ぐぁっ!」
「まんまと敵に誘拐された、ヒンジャクな男に、私を指図する権利なんてないわ!御剣怜侍っ!」
「ぐっ…!(返すコトバが…ない…。)」
「はははっ。楽しそうだね。お二人さん。」
争ってる冥と御剣を見ながら、牙琉が言った。
「何を言う!ムチで叩かれてるんだぞ!楽しいワケないだろっ!」

バシッ!

「がはっ!」
冥のムチは、御剣のヒタイに命中した。
「…バカな男にはムチを…。」
「はは。一応、御剣検事はケガ人だよ。うやまってあげなよ、お嬢さん。」
「なによ!アナタ、ジッシツ、私より年下のクセにナマイキねっ!」
冥は牙琉の元に歩み寄りながら言った。御剣はハジの方でヒタイを痛そうにおさえてる。

⇒To Be Continued...

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