時空を超えた逆転 5 王泥喜編‐霊媒師の罪‐ | |
作者:
太郎
2008年10月22日(水) 14時17分06秒公開
ID:JsAhK5blwlg
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「しかし、ハンニンとしては、昭子さんが目撃したコトを法廷でぶちまけられたら都合が悪い。だから彼女の殺害をモクロンだのです!」 「サツガイ…!」 「そう。昭子さんは、イガイにも喫煙者です。彼女は愛用のタバコに毒を盛られたんです。遅効性の猛毒を!」 「た、タバコですと?!昭子さんがっ?!」 裁判長は目をパチクリさせながら言った。 「(裁判長…ジャッカン、ショックを受けているぞ…)」 「…確かに。彼女のタバコに毒が塗られていたのは事実だ。」 牙琉が指を鳴らしながらそう言うと、また傍聴席がイッキにサワガシクなった。 『もう、ナニがなんだか分からないよ!』 『あの証人が毒を盛られたのは事件にカンレンが本当にあるのかしら?!』 『被告人には毒は盛れなかったハズだぜ?!』 『ママー!あの弁護士のカミガタ、ヘンだねー!』 「(…悪かったね、ボウヤ。ヘンな髪型で…)」 カンカンカンッ! 『静粛に!静粛にっ!静まりなさいっ!』 今日、何度目だろうか。裁判長がまた木槌でザワメキをしずめた。 「弁護人、セツメイの続きをお願いします!」 「…コレらを考えると、ヤハリ犯人はアナタです!鬼野刑事っ!アナタは、昭子さんの取り調べで、彼女が何かを“目撃”してしまったコトを知った!そして彼女が、タバコ吸うのも知っていたハズです!だからアナタは彼女のタバコに毒を盛ったのですっ!」 「キサマっ…言わせておけば…!」 鬼野はシボリ出すようにオドロキをニラミつけながら言った。 「…(コブシに血管が浮き出てる。どうやら、ズボシのようだ…!)」 「フッ。」 鬼野は軽く、ハナで笑った。 「(ナゼそこで笑うんだよ?!ハンロンする気か?!このオッサン…)」 「ボウヤにしては、ヨク考えたようだ。だけどね、私がもし、綾里昭子を口封じのタメに殺そうとしたなら、ナゼ遅効性の毒を使う?フツーなら、もっと効果が早く出る毒を盛ると思うが…?」 「あっ…!(た、確かに…)」 オドロキは冷や汗まみれになった。 「ははっ。もう黙っちまったじゃないか!弁護士クン。ヤハリ、経験不足がウラメに出たようだね!」 「う゛ぅ…(コトバが出てこない!)」 「お、オドロキ君!」 弁護席のトナリの被告席に座る真宵がショックそうな表情をした。 「どうやら、この弁護士は“立証”にシッパイしたようだ。…私は忙しいので、帰ってもいいかな?」 「ふむう…そうですねぇ…どう…」 『異議あり!』 裁判長が最後まで言い終える前に牙琉が異議を唱えた。 「が、牙琉検事!?」 「鬼野刑事クン、だっけ?キミ。…帰るのはまだ早いと思うよ。」 「…なんだと?」 鬼野はまたまた牙琉をニランだ。 「なんで、ミンナ、自分で考えようとしないのかなぁ。ワリとカンタンに答えは出ると思うんだけど。」 「えっ…?(牙琉検事…?)」 「もし、犯人があのレディーに喋らせたいコトがあったら…?彼女は唯一の事件の目撃者だからね。」 「………………(唯一の目撃者…唯一の…目撃者…!)あっ!」 オドロキはイキオイ良く、カオをあげた。 「どうしましたかな?王泥喜君?」 「犯人の基本的な目的は真宵さんに罪を着せるコトです!しかし…ヨケイなモノを見てしまった昭子さんを生かしておけば、アトアト、犯人にとって面倒なコトになります!」 「そりゃそうですが…しかし!昭子さんが証言中にいつ、目撃したコトを思い出すか、犯人にはヨソク不可能のハズですっ!」 「そうだ!仮に私が犯人なら、綾里昭子がいつどのタイミングでそんな証言をするか…知るのは不可能だ!」 鬼野は必死で訴えた。 「もし…知っていたら?」 「な、なんだとっっ?!」 「アナタは刑事です。法廷で何度か証言したコトはあるでしょう?」 「そりゃ、あるぞ。」 「なら、ダイタイ分かるハズです。どんな順序で証言するか、どのクライの時間を使うのか、ね!」 オドロキはふてぶてしく笑いながら鬼野に言った。 「き…キサマっ!」 『裁判長っ!』 その時だった。法廷のトビラがイキナリ開き、資料を抱えた係官が入ってきた。 「係官っ!ツツシミなさいっ!審理中ですぞっ!」 「す、スミマセン!綾里昭子氏が盛られた毒が判明したもんですから…!」 「な、なんですと?!」 オドロキと裁判長が交互に叫んだ。 「…報告を頼むよ。」 「ハッ!綾里昭子が盛られた毒は…ヤハリ、アトロキニーネでした!」 「なんだと?!アトロキニーネっ!」 「あとろきにーね…ですか?はて…」 「アトロキニーネ、か。オーケイ!係官クン。ありがとう!下がっていいよ。」 「ハッ!」 係官は一礼をすると、法廷を後にした。 「アトロキニーネ…確か、体内センプク時間は約15分くらいだっけ?」 「その通りです。一種、“カケ”とも取れますが、実際昭子さんはその証言をする前に倒れたんですから、アナタの計画は成功したワケですよね?」 「…」 鬼野はオドロキの主張を黙って聞いていた。 「証人!どーなんですか?!(コレでキマリだ!)」 「フッフッフッ…」 「(う…ウソだろ?!笑ってる…)」 オドロキはまた冷や汗まみれになった。 「弁護士。キサマのネタには大きなミオトシがある!」 「ね、ねた?(シツレイな…)」 「…キサマのネタを裏付ける決定的な証拠はどこにあるんだ?」 「そ、それは…」 「フッフッ…状況証拠に頼っててもナニも解決できないんだよっ!覚えておくがいいっ!」 鬼野は、不敵な笑みをこぼした。 「うっ…!(追い詰めたハズなのにっ!いつの間にか、逆転されそうだ!)」 「さて、今度こそ、私の出番は終わりだな。裁判長!」 「なんでしょう?」 「まだ私の尋問をこの新人にやらせるおつもりか?」 鬼野は誇らしげに言った。 「ふむう…弁護側はまたも立証にシッパイしたワケですからねぇ…」 裁判長は考えながら答えた。 「どうやら…弁護側からは、異議がないみたいだが…」 「(クソっ!質問が思いつかない!このままアイツを逃がすのかっ?!)」 『異議ありっ!』 その時、またも牙琉が異議を唱えた。 「帰りのシタクをするには…ヤッパ、まだ早いみたいだよ。鬼野刑事さん。」 「牙琉検事…!」 オドロキはイキオイ良く、カオをあげた。 「また私達に助けブネを出してくれるのかな?ガリュー検事…!カッコイイなぁ…。」 「そう…なのかなぁ?ヤッパリ。(カッコイイかぁ…?)」 「いい人だね!あんなに優しい検事、初めてだよ!」 「ヤサシイか…?(相変わらずノンキだな…このコは…)」 真宵はとろけそうな目で牙琉を見つめている。 「またアンタか…。牙琉検事さん。今度は何だ?!」 「鬼野刑事クンさぁ。キミも喫煙者だよね?」 「…そうだが、それがナンだ?」 「イヤ。先程、検察側の控え室でスモーカーなキミが、タバコを吸わなかったのがフシギだったんだ…。なんでだい?」 牙琉は指を鳴らしながら、クールに言った。それに対して鬼野はカクシンをつかれたのかイッシュン、表情をくもらせた。 「ナゼと言われても…タバコは…もう、やめたんだ。」 「異議あり!」 牙琉は壁を叩いた。 「今のウソはよくないなぁ。刑事クン。」 「な、なんだとっ?!」 「禁煙した人間のムネのポケットにバッチリ入ってるじゃないか!タバコが!」 牙琉はまっすぐ鬼野刑事の胸ポケットのフクラミを指差した。アキラカに何かの小箱だ。 「…っ!こ…コレは、違うっ!タバコではない!」 「異議あり!」 今度はオドロキが異議を唱えた。 「タバコかタバコじゃないかは、アナタがそれをポケットから出せば済むモンダイですよ?」 「ぐっ…私は…キョヒするっ!コレは断じて事件にカンケーないっ!」 「異議あり!」 オドロキは机を叩いた。 「証人!“カンケーない”なら…今すぐココで提出してくださいっ!!」 「ぐっ…!断るっ!」 鬼野はダラダラになっていた。 「証人。提出しなさい。」 裁判長が静かにそう告げると、鬼野はカンネンしたようにムネのポケットからその“物体”を取り出した。それはマギレれもなくタバコで、しかもピンクのパッケージの女性用のタバコだった。 「こ…コレは…!」 『タバコじゃないですかっ!証人!どーゆーコトか説明しなさいっ!』 「…」 鬼野は黙りこくっていた。 「鬼野さん。オカシーですねぇ…。アナタ程の人が、こんな淡いメンソールを含んだ女性用のタバコを持っているなんて!」 「だ、だから、出したくなかったんだ!メンソールが吸いたくて…買っただけだ!」 鬼野は弁解するように言った。 「刑事クン。それ、ちょっと通らないカモしれないよ…!」 「なっ?!」 「そのタバコの銘柄は昭子さんが愛用してるのと同じだよ!」 『えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ?(ナゼ、それをオニノが?!……まっまさか!?)』 「コレを見てほしい。綾里昭子のイノチを狙った、猛毒の塗られたタバコさ!」 牙琉は昭子のタバコを提出した。 「じゅ、受理します…!」 ●綾里昭子のタバコ 猛毒・アトロキニーネが塗られている。鬼野刑事が所有しているのとマッタク同じ銘柄。女性用のパッケージでメンソール入り。 「…このタバコ、マッタクもって証人が今、持っているのと同じじゃないですかっ?!」 「…っ!」 鬼野は証言台を強く握った。 「…おデコ君。証人…鬼野刑事が綾里昭子と同じ銘柄のタバコを持っていた…。キミは、どーゆーコトだと思う?」 「(本来吸うハズのないタバコを持っていたオニノ…。そしてそれと同じタバコを愛用し、猛毒を盛られた綾里昭子…。コレらは…ある事実を示してるっ!)」 オドロキは少しだけ、人指し指を額に指しながら考えて、カオをあげた。 「…鬼野刑事は、綾里昭子さんの取り調べの際、彼女が喫煙者であるコトと、愛用のタバコの銘柄を知った。…だから彼は同じタバコを購入し、アトロキニーネを盛り、彼女のタバコとすりかえたのですっ!」 「な、なんですとぉぉっ?!」 裁判長の叫びを合図にまたも法廷内はサワガシクなった。 『この事件…どーなってんだ?!』 『ココまで来たら、犯人はあの刑事しかありえねーじゃんっ!』 『ちょっと!あの検事、本当にカッコイイわぁっ!』 『ママー!ぼくあの検事さんになりたいっ!』 「(ボウヤ…オレと牙琉検事の扱いの差…ヒドクないかっ?!)」 カンカンカンっ! 『静粛に!静粛に!静粛にぃぃぃっ!退廷させますぞっ!』 裁判長はゼーゼー言ってる。 「いかがですかっ?!鬼野刑事っ!」 オドロキはピンっと人指し指を鬼野にむけた。 「…っ。」 「ナニか言いたそうだねぇ。だけど、キミの持っているタバコのハコを調べれば、出てくるカモよ?あのレディーの指紋がね!」 「…!」 「タバコのハコから、昭子さんの指紋が検出されたら…言い逃れはできませんよ。鬼野刑事…!」 「そ、そうなれば…証人の犯行を示す証拠になりますなっ!」 オドロキに続いて裁判長が言った。 「…っ…ぐっ!」 「証人、オニノ刑事クンさ。弁解するなら、その動揺の理由も教えてよ。」 牙琉がヨユウたっぷりの表情をして言った。 「…検事が弁護士とグルとはな。」 鬼野は少しの間、沈黙した後、絞り出すように言った。 「トニカク、私は、ナニも認めるツモリはない。」 「な、なんだと?!(ココまで来て…!)」 「私がその中国人を殺した?バカバカしい!そこの新人・アクトク弁護士とチャラい検事がでっち上げたウソだ!」 「あ、あくとく…」 「刑事クン…。キミはイマイチ立場が分かっていないみたいだね。この法廷内にキミが潔白だと思うニンゲンはいないし、このハコを調べれば…」 「それは、キサマも同じだ。牙琉検事!」 「?!」 牙琉が最後まで言い終える前に鬼野が言った。彼の表情はフシギなコトに微笑みを浮かべていた。 『裁判長っ!この法廷には今、いてはならない人物がいるっ!』 「なっ?!」 「まさかっ?!」 牙琉とオドロキはイヤな予感を感じた。 「ど、どーゆーコトですかなっ?!証人っ!」 「あえて言わなかったが…そこの検事席に立っている男は、法をやぶってそこに立っているのだっ!!今、そこにいてはならないのだ!」 『な、なんですとぉぉぉぉっ?!』 裁判長が叫んだ次のシュンカン、法廷内に最大のセンリツが走った。 『まさか…バクロするツモリかっ?!鬼野刑事はっ!』 『バカなっ!それは、牙琉霧人との関係を認めるコトと同じだぞっ!』 傍聴席の成歩堂と御剣が落ち着きをなくしている。 「でも…ヤなヨカンがしてならないわっ!あの刑事っ!」 「…御剣検事さん!」 チヒロの呼びかけに御剣はスバヤク反応した。 「な、なんだろうか!?」 「狩魔検事の到着は?」 「むぅ…。それが、分からないんです。…メイとは、さっきからマッタク、連絡がつかないっ!」 「だとしたら…まずいわね。検事がいなくなっちゃうわ…!」 「じゃらじゃらの検事さんが、退廷させられたら…」 「モチロン、審理は中断ね…!」 「なんてこった…!」 成歩堂は頭を抱えた。 ⇒To Be Continued... |
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