時空を超えた逆転 5 王泥喜編‐霊媒師の罪‐
作者: 太郎   2008年10月22日(水) 14時17分06秒公開   ID:JsAhK5blwlg
【PAGE 4/6】 [1] [2] [3] [4] [5] [6]


「その通りです。」
「お、王泥喜君!アナタ、本気でそう主張するツモリですか?!刑事が、証拠を捏造して被告に罪を着せたなどと!」
「ハイ。」
「バカなっ!私がどうやって綾里真宵の指紋をビンに付着させたと言うんだ!!コゾウ!」
鬼野は今度はアカラサマにオドロキを睨み、叫んだ。
「カンタンです。綾里真宵さんは過去2回、冤罪で警察に誤認逮捕されています!モチロン、指紋もその時、警察にとられているハズです!」
「つまり、キミはこの刑事がその指紋を使って証拠品を捏造し、身体検査の際にあたかも綾里真宵が所持していたように工作した…こう主張するんだね?」
「ハイ。だから、彼は“コビンにベッタリ付着した指紋”で動揺したのです!自分で作ったニセの証拠品ですからね!」
「…ぐっ!」
鬼野はココで初めて表情を変えた。
「(鬼野が反応した…!どうやら、オレのスイリは間違っていなかったみたいだ!)」
「コゾウ…言わせておけば、テキトーなコトを言いやがって!」
「テキトーかどうかは、アナタの動揺っぷりが物語っているんじゃないんですか?」
「き、キサマ!いい加減にしろっ!私は事件が起きるまで署にいた!事件に関わるコトは不可能だ!」
鬼野は真顔で言った。
「確かにそうですな…この証人には、リッパなアリバイがありますぞ!」
「(ヤツには、事件発生までのアリバイがバッチリある。モンダイはその後。彼はどうやって、王氏を殺害したのか…だ。)」
オドロキは法廷記録をパラパラと読み始め、あるページので止めた。
「(…コビンの毒…毒…毒…)」
「どーしたんだい?おデコ君。イヤにおとなしーじゃないか。…エンギかもしれないけどね。」
「演技…あっ!!」
オドロキは急いで法廷記録の中の資料を取り出して、見始めた。
「べ、弁護人…?」
「大丈夫ですっ!」
そして、オドロキは机をチカラ一杯叩いた。
「弁護側はあなたを告発します!鬼野刑事っ!王劉蚕氏の殺人容疑で!」
「なにっ?!わ、私をだと?!」
「な、な、なんだですって…!?気は確かですか?!弁護人ッ!」
「モチロンです。」
「オドロキ君っ!?」
真宵は反射的に叫んだ。
「…真宵さん!オレ、この事件をリカイできた気がするよ!」
「えっ…?!」
「…どうやら、弁護側は、考えがあるみたいだね。おジイさん、聞いてみようよ。」
牙琉はサワヤカな笑顔を浮かべながら言った。
「そ、そうですな。弁護人。アナタの考えを聞きましょう!説明して下さい!」
「分かりました。それでは、弁護側の考えを言いましょう。…この事件は、計画的に行われました。綾里真宵さんに罪を着せるために、です。」
「…」
鬼野は黙ったまま下をむいていた。
「王氏は鬼野刑事と協力関係にありました。彼は来日し、綾里家を観光するフリをした。」
「被害者が…協力関係ですか!?」
「おもしろそうだね。サイゴまで聞こうよ。」
「ふ、ふむう…」
裁判長はトマドイを隠せないようだ。
「ココで先程も弁護側が主張した、王氏の女装説に結び付きます。彼は屋敷案内中ワザと花瓶を割り、昭子さんに片付けさせるコトで、真宵さんと2人キリになるコトに成功しました。それから、王氏はトイレに一度行ってます。カレはそこで真宵さんに変装し、ワザとナツミさんが仕掛けたカメラに写ったのです。」
「ちょっと待ってくれ、弁護士クン。」
「何でしょう?」
「あのカメラの存在を被害者が知るわけないだろうっ!」
「あっ…(そうか!ナツミさんがカメラを仕掛けたのは、事件当日だ…!計画的ならナツミさんも関わったコトになってしまう!)」
「異議あり!」
突然、牙琉が鬼野に異議を唱えた。
「あのね、先程の休憩時間に調べたんだけど、その“お!カルト”って雑誌の出版社に問い合わせたら、そんな心霊キカクはない、と言うコトだよ。ココに出版社からのFAXもある。」
「なっ、なんだって?!」
オドロキは思わず叫んだ。
「そのキカクが存在しないものだったなら…この事件においての新しい事実ですぞ!」
「…ぐっ。」
「ヒツヨウないかもしれないけど、一応、提出しよう!」
「分かりました。受理します。」

●“お!カルト”編集部からのFAX。
ナツミが参加した、心霊写真企画の募集や、特殊カメラの貸し出しと言ったようなコトは実施していない。と言うような内容が記されている。

「鬼野刑事!どーゆーコトなんですか?!」
「…っ!」
鬼野は落ち着きを失っていた。
「つまり、この事件の首謀者が先程の証人に情報を捏造し、流したコトになるね。おデコ君?」
「その通りです。」
オドロキは首をゆっくりと縦に振った。
「それでは、元に戻って、先程の続きから説明しましょう。…カメラに写った王さんは、装束を脱ぎ、隠した。そして真宵さんの元に再び現れ、あらかじめ毒を入れておいた自分のユノミにお茶を注がせたのです!」
「キサマは被害者が自ら入れた毒を飲んだと…?バカバカしい!」
鬼野は嘲るようにオドロキの主張をヒテイした。
「おデコ君。それじゃぁ、先程と同じ疑問を検察側は投げなきゃいけなくなるよ。被害者は綾里真宵に罪を着せるタメにナゼそこまでキケンなコトをしたのか?…と言うね。」
「では、もし、自ら盛った毒を飲んでも、助かる見込みがあったらどうでしょう?」
オドロキはふてぶてしく笑いながら言った。
「えっ…」
「ど、どーゆーコトですかな?!」
「例えば…王さんがアラカジメ、解毒剤を持っていたら…?」
「な…」
「ナニっ?!」
オドロキの発言に思わず、傍聴席の成歩堂と御剣も乗り出した。
「ゲドクザイ、だと…?」
鬼野は静かに言い放ち、コブシにチカラが入り、血管がまた浮き出た。
「鬼野さん。アナタ、またキンチョーしたみたいですね。無意識にコブシにチカラが入ってますよ。」
「な、なにを?!」
「(あの反応…マチガイない!彼は“ゲドクザイ”と言うコトバに反応しているんだ!)」
「オモシロイ。説明の続きをお願いするよ!」
「先程の昭子さんの証言を思い出して下さい。彼女は王氏がお茶を一口飲んだシュンカンに倒れたと証言しました。」
「だけど、その証言は、ムジュンしていた。キミがそう証明しただろう?おデコ君。」
「その通りです。ムジュンしていました。それがもし…王氏が本当に中毒で苦しんで倒れたら、のハナシですけどね!」
そのシュンカン、法廷内がジンワリとどよめいたが、裁判長が木槌でしずめた。
「静粛に!静粛に!静粛にぃぃっ!ど、…どーゆーコトですかな?!弁護人っ!」
「(ココは成歩堂さんに教わった、“発想の逆転”をするんだ!“ナゼ倒れたのか?”ではなく、“倒れる必要があったか?”…)」
オドロキはマッスグ鬼野を見た。
「王氏はワザと倒れたんです!オソラク…トリカブト毒のトクセイをあまり理解してないまま!昭子さんが目撃したのは、彼のエンギだったのです!」
オドロキの破天荒な発言にまた傍聴席が激しくゆれた。
『被害者がワザと倒れただと?!』
『しかも毒の特性をリカイしないで倒れたなんて、ツゴウが良すぎるわっ!』
『やっぱオカシーよ!あの弁護士!』
『ママー、あのお兄ちゃんハンニンなのー?』
「(なんか、良からぬ発言も飛んでるぞ…)」
「こればかりは…ちょっと違うんじゃないか…オドロキ君…」
「確かに…キミ以上にエライ発言をしてるぞ。」
「…そうかしら…?」
茜は冷静にカリントウを食べながら、成歩堂と御剣にハンロンした。
「茜クン。どーゆーコトだ?」
「御剣検事さん、鬼野刑事のカオを見てください!」
「鬼野のカオだと?」
御剣はゆっくり視線を証言代の鬼野にむけた。鬼野はカナリ、焦っているように見えた。
「むぅ…!どうやら、オドロキ君の破天荒なスイリは、マトをえてるみたいだね…」
「確かに…(元祖・ハッタリ弁護士がナニを言う!?)」
「今が攻め時ね。カンゼンに。」
「(…?この声は…?!)」
成歩堂はイキオイよく、横を見た。
「ち、チヒロさんっ!!」
茜のトナリに座っていたハズの春美がいつの間に千尋を霊媒していたのだ。
「あ、綾里弁護士…!!」
「あら、御剣検事さん。またお会いしましたね。」
「む、ご無沙汰してます?」
「お前、昨日会ったバカリだろっ!」
御剣のボケに成歩堂がすばやくツッこんだ。
「この人がアヤサトチヒロさん!なんだか…カガク的じゃないわね…」
茜も平静を保とうとしていた。
「あら、宝月先輩の妹さんね?先輩にソックリだわ…!」
「あ、ありがとうございます!生前は姉がどーもお世話になりましたっ!」
「お世話になったのは、私の方よ。」
千尋は茜に、ニッコリと微笑んだ。
「ハミちゃんはカナリ、スランプね。あまり持ちそうもないわ。出来る限り、この法廷を見て、オドロキ君にアトでアドバイスしなくちゃね!」
「チヒロさん…!」
「さぁ、一時も目が話せないわね!この法廷…!」
『静粛に!静粛にぃっ!従えない者には退廷を命じますぞっ!』
「な、なんだと!コゾウ!?キサマっ!ナニを言っているのか分かっているのか!?」
「モチロンですよ。」
オドロキは真顔で言った。
「なんだと…?!」
「それじゃぁ、おデコ君。続きをどうぞ。…確か、王琉蚕がワザと倒れたトコまでいったよね?」
激怒している鬼野をヨソに、牙琉はサワヤカに切り返した。
「そうです。王氏は自ら倒れたアト、解毒剤を飲んだのです!」
「げ、解毒剤ですと?!」
「コレを見てください!!」
オドロキは、修験者の間で見つけた、固形物を提出した。
「それはなんだい?おデコ君。ドッグフードにしか見えないけど?」
「違いますよっ!(ナニを言うか!コノ人まで…!)これは、トリカブト毒を多く含む固形物です。王氏はコレを“解毒剤”として飲んだのです!」
「バカなっ!ナゼ、猛毒の固形物が解毒剤になるっ?!」
鬼野は即座にオドロキにハンロンした。
「王氏はコレを解毒剤だと思っていたから飲んだのです。…そう、真犯人によって用意された直接的な“凶器”とは知らずに、ね。」
「う゛っ!」
鬼野はオドロキの予想以上に反応した。平静を装っていたが、力が入り、コブシから血管が浮き出ていた。
「弁護人っ!王泥喜君っ!早く詳しいセツメイをっ!」
「オソラク、真犯人はコレを、“解毒剤”だと言って、王氏に飲むように指示した!しかし、コレは彼の口をフサグための“凶器”だったのです!」
「そうだとも知らずに、被害者はコレを飲んだ…ってコトかな?キミの主張だと。」
「そう。王氏は最初から、口封じのタメに殺される予定だったんです。そして、彼は倒れたフリをしたアトにこの“解毒剤”を飲んだ。しかし、それをある人物に見られてしまったのです!」
「ある人物ですと…?」
裁判長は静かに尋ねてきた。
「モチロン、綾里昭子さんです!」
「…綾里昭子っっ!」
鬼野は感情をコメて、オウム返しをした。「なるほど、ね。分かった気がするよ…おデコ君がナニを言いたいのか。」
「先程の彼女の証言をもう一度、思い出して下さい。彼女は、“王氏が倒れたアト、パッタリと動かなくなった”と証言するトキに動揺していました。それは、昭子さんにとって、自信のない証言だったからなんです。」
「意味が分からないね。ナゼ、綾里昭子はそんな自信のない証言をしたんだよ?」
鬼野は鼻で笑った。
「ナゼなら、彼女は忘れてしまったんですよ。王氏が倒れたのを目撃したショックで!」
「忘れていた…ですと?!」
「ハイ。昭子さん自身も“どうしても思い出せないコトがある”と証言しています。」
「確かに。警察の取り調べでも、あのレディーはそう証言しているね!取り調べをしたのはキミだろ?鬼野刑事クン。」
「っ!!」
牙琉は指をパチパチと鳴らしながら、鬼野に言った。そのシュンカン、鬼野はすごい形相になった。
「そして、彼女がそのコトを思い出したのは、つい先程。中毒症状で倒れる直前のコトです。」
「そうですな。“思い出したわ!”みたいなコトを言ってましたな。」
裁判長がビミョーに昭子さんのモノマネを入れながら言った。
「お、お上手ですね…裁判長。(何だあのモノマネと言えないモノマネは…とりあえず、心証を良くするタメにホメておこう…)」
「ほっほっ!」
「(よ、喜んでる…)」
「裁判長さん、モノマネはヘタみたいだね。」
「しっ!(ヤレヤレ…)」
真宵の発言にオドロキは反射的に反応した。
「それで…?おデコ君。続けてくれよ。」
「あっ!ハイっ!…えっと…そうだ!ハンニンには嬉しいコトに、昭子さんは今日、法廷に立つまで王氏のとった行動を思い出せなかった。そして彼女はオソラク、取り調べのトキにでもトリカブト毒の“特性”を知ったのでしょう。だから、彼女は自ら真宵さんに有利になる発言をした。だから、彼女は証言するトキ、自信がなかったし、動揺もしたのです!」
「おばさま…」
真宵がボソリと呟いた。

⇒To Be Continued...

■一覧に戻る ■感想を見る ■削除・編集