時空を超えた逆転 4 王泥喜編‐霊媒師の罪‐
作者: 太郎   2008年10月22日(水) 14時16分47秒公開   ID:JsAhK5blwlg
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「な、何を、ですか?」
裁判長は目をパチくりしてナツミに聞いた。
「アンタはガリューウェーブのボーカル、ガリューやないか!まだデビューしてへんけど、ガリューウェーブつったら、ウチが今イチバン注目してるアーティストやでっ!」
「そ、そうなの?オドロキ君?!あの検事さん、あーてぃすとだったの?」
「まぁ、ね。おおむねそんなトコだよ。(真宵さん、とろけるような目で牙琉検事を見てる…。)」
「その通りさ。ボクはガリューだ。お嬢さん。ボクらに目をつけるなんて、キミは芸能リポーターとしての才能はスバラシイね。」
「リポーターちゃうっ!ジャーナリストや!ウチは!」
「でも、今のボクはガリューウェーブのボーカル・ガリューではない。検事の牙琉だ。後でサインあげるから、今はボクの質問に答えてくれない?」
牙琉はパチパチと指を鳴らしながら言った。
「…ま。分かったワ。ええで!大沢木ナツミ。芸能&オカルト・ジャーナリストや!」
「げいのうあんどおかると・じゃーなりすと…。」
裁判長はゆっくりとオウム返しをした。
「…(本トに横文字に弱いな…あの裁判長。)」
「ちなみに、“芸能”はレッキとした日本語だよ!オドロキ君!」
「トニカク、証言をお願いするよ。キミが見たコトを、ね。」
「ほい、来たっ!」
「ナツミさんは、思い込みがハゲシイ…。そこを突ければ、彼女の証言は崩れる…ハズ!」
「オドロキ君の弁護のウデの見せドコロだな。」
「おどろきくん…。がんばってくださいっ!」
〜証言開始〜
「あれは25日の昼前やった。ウチ、心霊写真を撮りに倉院の里にきたんや!」
「とにかくな、良くでそうなトコロ、3ヵ所に自動撮影カメラ設置したんやワ。」
「んでな、ヒマやったから屋敷内をフラフラしてたんや。」
「そして、3時過ぎやったかなぁ。ウチ、トイレ付近に設置したカメラを見に行ったんや。」
「ほしたら、ユノミに何か粉みたいなモノを入れてる女が窓から見えたんや!」「その女は真宵はんやった!間違いあらへん!」
「な、なんと…証人!あなたは被告人がユノミに毒を盛るトコロを、目撃したというコトですか?!」
「メチャロンや!」
「毒を盛るトコロを…目撃?!(ウソだろっ?!)」
オドロキは冷や汗まみれになった。
「あ、あたし、毒なんて盛ってないからね!」
真宵が必死にオドロキに訴えた。
「モチロン、分かってるよ!オレは真宵さんを信じてる!(だけど…目撃となるとヤッカイだ。)」
「会場の盛り上がりグアイもイイ感じだね。尋問に入る前に、お嬢さん。アレを提出して貰えるかな?」
牙琉は笑顔でナツミに言った。
「分かってる、分かってる!この写真、カメラに写っとったんや!」
ナツミは1枚の写真を提出した。
「この写真こそ、そこの被告席のお嬢さんの犯行を立証する、決定的な証拠さ!」
「ふむう。…こ、これはっ?!」
「(う、ウソだろっ?!コレ!?)」
写真を見た裁判長とオドロキは、未だかつてないほど驚いてる。
「ひ、被告人が、ユノミに何かを入れていますっ!」
裁判長の一言で傍聴席はザワメキに包まれた。
「じゅ、受理します!」

●ナツミの写真。
真宵と思われる人物が、ユノミに毒を盛っている。サーモグラフィーに反応し、撮られた1枚。

オドロキはシドロモドロになりながら、写真を法廷記録にはさんだ。
「き、聞きましたか!?成歩堂さん!」
「あぁ…。真宵ちゃんが…ユノミに何かを入れてる写真だと!?」
「これが検察側のキリフダ、か。」
「ま、真宵さまはそんなコトしませんっ!」

カンカンカンッ!!

『静粛に!静粛に!静粛にぃぃぃっ!』
裁判長は木槌を鳴らしまくり、やっと傍聴席がおさまった。
「イキナリ、決定的のようです!こうも写真を撮られていると…。もう十分でしょう。判決にうつります。」
「異議ありっ!まだ、弁護側の尋問が残ってます!」
「しかし、これ以上のギモンのヨチはないと思われますが…」
「尋問は弁護側のケンリですっ!!」
オドロキは必死に裁判長にアピールを続けた。
「おジイさん、やらせてあげようよ。弁護人のおデコ、テカテカだし。」
牙琉はエアギターをしながら言った。
「むぅ…。そうですね。おデコがテカテカですもんね。分かりました。」
「(なんだよ、それっ!)」
「分かりました。それでは、弁護人。尋問をお願いします。」
「はい。」
〜尋問開始〜
「あれは25日の昼前やった。ウチ、心霊写真を撮りに倉院の里にきたんや!」
「待った!」
「なんや?」
「確か…心霊写真の買手がいたとかいないとか…。」
「せやっ!ジツはな、ウチのパソにある出版社の編集部からメールが入ってたんや!」
「出版社…?」
「“お!カルト”の編集部や!」
「“お!かると”…。最近、どこかで聞いた気がします…。」
「そのメールは、スゴイ心霊写真を撮ってくれば、賞金が貰えるって内容やった。」
「賞金ですか…。ちなみにいくらぐらいですか?」
「50万やっ!!」
「ごじゅうまん…。また多額な賞金ですな!」
「だから、ウチ。絶対に写真を撮らなアカンと思ったワケや!」
「とにかくな、良くでそうなトコロ、3ヵ所に自動撮影カメラ設置したんやワ。」
「待った!」
「ん?」
「カメラについて、教えてもらえますか?」
「モチロン、ええで!このカメラにはな、サーモグラフィーが内蔵されてるんや!」
「さーもぐらふぃー?」
「せや!霊が現れると、その場所の気温が変わる。この自動撮影カメラは気温の変化を察知して、自動撮影をするんや!」
「なんと言うか…すごいカメラですね。」
「そうやろっ!?編集部に参加するってメールを送ったら、ウチに届いたんや!“コレ使って下さい!”ってな。」
「はぁ。(なるほどね…。)」
「ちなみにカメラを設置した場所は、厠の出窓、“対面の間”の床の間、そして奥庭の池付近で間違いないね?」
「間違いあらへん!」
「ふむう…。分かりました。証人。次、お願いします。」
「んでな、ヒマやったから屋敷内をフラフラしてたんや。」
「待った!」
「なんや。」
「えっと…(しまった!イキオイで言ってしまった…。)」
「もしかして、おデコ君。質問が思い付かなかった。とかかな?」
「う゛っ。」
「マッタク、最近のワカモノはいけません!」
「特にそこの赤くておデコのひろいヒトはカクベツにイケナイよね。」
「うぅ…。(このまま引くのはカッコ悪いな…。)その…何か印象に残ったコトはありました?」
「印象に残ったコトぉ?そやなぁ…。」
「…。(うわ、シンケンに思い出そうとしてるよ…。)」
「そーいやぁ、屋敷のヒト、ウチに英語で話しかけてきたなぁ。」
「えいごで…。…分かる気もしないでもないですな。」
「ま。結果的には大した質問じゃなかったね。おデコ君。」
「スミマセン。」
「じゃぁ、おデコ君が大きくスベったトコロで、証人。次をお願いするよ!」
「(結局スベってしまった…。)」
「そして、3時過ぎやったかなぁ。ウチ、トイレ付近に設置したカメラを見に行ったんや。」
「待った!」
「マトモな質問してくれよ。おデコ君。」
「わ、分かってますよっ!…そのトイレ付近、つまり厠の出窓に設置したカメラを見に行ったんですよね?」
「当たり前やん。」
「それは、他のカメラも点検した後だったんですか?」
「せや。他のカメラには写ってなくて、ソコが最後のノゾミやったんや。」
「…分かりました。証言を続けてください。」
「ほしたら、ユノミに何か粉みたいなモノを入れてる女が窓から見えたんや!」
「待った!」
「なに?」
「あなたは、その“ユノミに何か粉みたいなモノを入れてる女”を実際に見たんですか?」
「アタリマエやん!間違いあらへん!ウチの眼球に今でも焼き付いとるでっ!」
「そして、この写真にも写っていた、ってワケだね。」
「せや!サーモグラフィーがミゴトに反応したんや!」
「ふむう…。さーもぐらふぃーがねぇ…。」
「(ウソついてる様子はない。しかし、ハッキリしないトコロもある。そこから崩していこう!)」
「その女は真宵はんやった!間違いあらへん!」
「異議ありっ!」
オドロキは人差し指をピンっと、ナツミに突き刺した。
「オドロキ君が異議を唱えたぞ。」
「まともな異議だといいんだけどね…。」
「マッタク、人差し指を突き刺すポーズまで、キミそっくりだぞ。成歩堂。」
「おどろきくん!ステキですっ!」
傍聴席の成歩堂、御剣、茜、春美が心配そうにオドロキを見守っている。
「なんや?アンタっ!今回はウチ、マトモにショーゲンしとるでぇ!」
「(“今回は”って、毎回マトモじゃないのか?!このヒトの証言…。)ナツミさん。あなたは、この写真に写ってる通りに被告人を見たんですか?」
「せや!どー見てもコレは、真宵さんやないか。」
「果たして、そうでしょうか?」
「な、なんや?」
「異議あり!」
牙琉は壁を叩いた。
「まさか、おデコ君。キミは“この写真に写ってる人物が、後ろ姿で写ってるから被告人とは限らない”、とでも主張するつもりじゃぁ、ないだろうね?」
「う゛っ…。(しまった!牙琉検事のヤツ…先にこっちが主張しようとしたコトを…!)」
「もう黙っちゃったみたいだね。おデコ君。」
牙琉は余裕たっぷりに微笑んだ。
「異議あり!」
オドロキも机を叩いた。
「しかし、証人がこの人物の後ろ姿しか見ていなかったら、被告人と同一人物であると断言できません!」
「ふむう…。確かに99%被告人に見えますが…。後ろ姿ですからねぇ。」
「しかし、フツーこの後ろ姿を見たら、被告席に座ってるお嬢さんだと思うんじゃないかなぁ?何と言うか、コセイテキな髪型してるし。」
「ふむう…。確かにそうですな。」
「アンタら!ウチはな、この人物を後ろ姿だけで真宵はんやと判断したワケやないで!ちゃんと、理由があるんや!」
「…どうやら、お嬢さんには、もう一度証言して貰った方が良いみたいだ。」
「そうですね。では、証人。あなたが、その女性を被告人だと思った理由について証言して下さい。」
「まかせとき!」
「(“ナツミさんは思い込みがハゲシイ、か。”この証言を崩さなければ、無罪を勝ち取れないな…。)」
〜証言開始〜
「確かにウチは、その女の後ろ姿しか見てないんや。」
「でも、彼女、指にバンソコーを貼っとったんや!」
「その時、真宵はんも指にバンソコーしとったコトを思い出したんや!」
「だから、ウチはアレを真宵はんやと思ったんねん。」
「ふむう。バンソコーをねぇ…。」
「真宵さん、バンソコーを貼ってる?」
「貼ってるよ。ホラ!」
オドロキはナツミが提出した写真と真宵の指のバンソコーを見比べた。
「なるほど。どうやら、いけそうだよ!」
「本当に?!」
「あぁ!(バンソコーの位置…。コレが意味するコトは、この事件の真相だ!!)」
「それでは、弁護人、尋問をお願いします。」
「はい!」
〜尋問開始〜
「確かにウチは、その女の後ろ姿しか見てないんや。」
「待った!」
「あん?」
「その女性が真宵さんなら、カメラの設置を知っていたハズです!なのに、カメラの前から離れなかったんですか?」
「う゛っ!そ、それは…。」
「確かに!被告なら、カメラの設置場所を知っていたハズです!」
「異議あり!」
牙琉は壁を叩いた。
「設置されたカメラは小型だ。見落とす可能性も十分ある!」
「異議あり!」
オドロキも異議を唱えた。
「そ、そんなのヘリクツだ!」
「ぼくは可能性のハナシをしてるんだ。キミの主張も一理あるけど、実際に、彼女は写真を撮られているだろう?これは動かぬ事実だよ。」
「うごっ!(追いつめたハズだったのに…!)」
「ふむう…。牙琉検事の言う通りですな。証人、続けてください。」
「でも、彼女、指にバンソコーを貼っとったんや!」
「待った!」
「なんや?」
「ナツミさん。その人物は写真の通り、左親指にバンソコーをつけてましたか?」
「ユノミを持っていた方の手やから…。うん!左親指で間違いないわ!」
「なるほど…。分かりました。ありがとうございます。」
「弁護人、今の発言が気になるのですか?」
「そうですね。今の証言は非常に重要だと考えます。」
「分かりました。証人、今の発言を証言に加えてください。」
「はい、はい!」
ナツミは笑顔で裁判長に答えた。
「その女は、左親指にバンソコーを貼っとった!真宵はんもバンソコー貼ってたから、同一人物に間違いないと思ったんねん!」
「異議ありっ!」
「アンタ、ナルホドーよりやかましいわっ!」
「ど、どーも。(発声練習は今日、カラマワリだな…。)」
「で、なんや?」
「あっ、その…弁護側には、異・議・が・あ・り・ま・すっ!!」
オドロキはとっさに大声で叫んだ。被告席の真宵も、傍聴席の成歩堂、御剣、茜、春美もあまりの大音声に耳をおさえた。
「弁護人!それはもう分かってますっ!」
「キミは裁判長の鼓膜をハカイする気かい?おデコ君。」

⇒To Be Continued...

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