時空を超えた逆転 4 王泥喜編‐霊媒師の罪‐
作者: 太郎   2008年10月22日(水) 14時16分47秒公開   ID:JsAhK5blwlg
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「いえ、違います…。その、スミマセン。」
オドロキは前髪をおさえながら、照れ笑いで返した。
「早く、続きを言いなさいっ!」
「(オレのコエが裁判長の心証を悪くしちまったみたいだ…。)ハイ。えっと、証人は、その女性の左親指にバンソコーを貼っていたと証言してますね?」
「そや。さっき言った通りや!」
「そこにムジュンがあるんです!」
「な、なんやて?!」
「どんなムジュンだい?おデコ君。」
「真宵さんは、右親指にバンソコーを貼っているんです。真宵さん。裁判長に右手を見せてあげて!」
「うん!」
真宵はオドロキの指示通り、裁判長にむけて、バンソコーの貼ってある右手を平手の状態で見せつけた。
「た、たしかに!証人のハナシとはムジュンしています!!じゃぁ…証人が見た人物は…誰なんでしょうか?!」
「そこなんです。」
オドロキは静かに頷いた。
「その人物と真宵さんは、別人だったのです!」
その瞬間、法定内はまたザワメキに包まれた。
「バンソコー、か。こんな小さなコトがここまで大きな問題になるとは…。」
「でも、これで誰かが、真宵さんにヘンソ-していた。というコトになるわ!」
「ま、真宵さまにヘンソーですって?!」
「かなりの計画犯だな。そりゃ…。」
「静粛に!静粛に!静粛にぃっ!」
裁判長は木槌を連打した。
「つまり、キミは被告人になりすました人物がこの写真に写ってる、と言いたいんだね?」
「その通りです。」
「じゃぁ聞くよ。おデコ君。キミは、被告席のお嬢さんになりすました“誰か”がこの写真に写ってる可能性を示した。一体、その人物は誰なのかな?」
「オドロキ君、大丈夫なの?そんなヒトいるの?」
真宵が心配そうな表情でオドロキに聞いた。
「うん。オレのスイリに間違いがなければ、多分あのヒトしかいない!」
「…分かった!いっちょ頼むよ!オドロキ君!」
「あぁ!」
「それでは、弁護人。その写真に写ってる人物は、本当は誰なのかを提示して下さい。」
「はい。…綾里真宵さんになりすまして、写真に写った人物…それはこのヒトです!」
オドロキは力いっぱい一枚の写真を突き付けた。
「こ、このヒトは…。」
「被害者・王劉蚕だね。」
牙琉は微笑みながら言った。そして、傍聴席がまたもザワメキだした。
「ひ、被害者…!」
「中国からのお客さまが…真宵さまにヘンソーを?!」
「その可能性はあると思っていたよ。でも理由が分からない!」
「…分からなくなってきたわね。この法廷…。」
「静粛に!静粛にぃぃ!係官!うるさい人は構わずツマミ出しなさい!」
「(裁判長、ゼーゼー言ってるよ…。)」
「弁護人!王泥喜君!あなたには立証できるのですか?!被害者が被告人・綾里真宵さんに変装していたというコトの…!」
「確証はありませんが、それを示す可能性はあります!」
「ふうん…。オモシロくなってきたね。」
「分かりました。それでは、弁護人。証拠を提示して下さい。」
「はい。まずはこの証拠です!」
オドロキは看護婦の若林から貰った写メを裁判長に突き付けた。
「………。画面が小さくてマッタク見えません。」
「あっ…!」
「ササヤカなイジワルはやめてほしいなぁ!おデコ君。ボクもマッタク見えないよ!」
「す、スミマセン…。」
「係官!至急この証拠品を、プリントしてくれないか?大きめにね!」
牙琉の指示から、数分後。ヨウヤク、係官が写真を持ってきた。
「マッタク!時間をロスしましたぞ!弁護人!」
「せや!慰謝料や!」
「…スミマセン。(なんでこんなにウラマレなきゃいけないんだ…?!)」
「それじゃ、おデコ君。セツメイをお願いするよ!」
「あっ!ハイっ!」
「オドロキ君…お願いね!」真宵は少し心配そうにオドロキを見た。
「大丈夫っ!(…なハズ!)」
オドロキは真宵にむかって親指を立てた。
「それでは、お待たせしました。この写真は、病院で被害者が亡くなった際に、看護婦が携帯で撮影したものです。」
「ふむう…。非常にナマナマしい写真ですな。」
「弁護側は、証人が撮った写真の人物と被害者が同一人物であると証明したいと思います!」
オドロキは机を叩いた。
「オモシロイね…。」
「倒れている王氏の指を見てください!」
「左親指にバンソコーが貼ってありますな!…あっ!」
「そうなんです!先程、証人が撮影した写真にも写っていたハズです!左親指にバンソコーを貼った人物が!」
「証人が提出した写真の被告人が…左親指にバンソコーを貼ってましたな!」
裁判長は目をパチクリさせた。
「異議あり!」
牙琉は人差し指をオドロキに突き付けた。
「何かと思えば、ガッカリだよ。おデコ君。そんなアジのない証拠でお嬢さんが提出した写真の人物と証人が同一人物だなんて証明できたツモリかい?」
「異議あり!」
オドロキは机を叩いた。
「オレは最初にこう言いました。“まずは”、と。」
「どーゆー意味ですかな?弁護人。」
裁判長がまたまた目をパチクリさせた。
「なるほど。まだ証拠があるんだね。」
「はい。」
オドロキは首をゆっくりと縦に振った。
「それでは、弁護人!証拠品を提出してもらいましょう!」
「みなさん、これを見てください。」
オドロキは屋敷内の焼却炉で見つけた装束のハギレを提出した。
「このハギレは綾里家の屋敷内にある、焼却炉から発見されました。」
「これは…装束のハギレ、ですか?」
「はい。この装束からは…トリカブト毒の成分が微量付着しています!」
「と、トリカブト毒ですと?!被害者の死因ではないですかっ?!」
「異議あり!」
牙琉は壁を叩いた。
「おデコ君。まさかキミはこう主張するつもりかい?“被害者は被告人に成り済まして、自らユノミに毒を盛った”と。」
「そうです。王劉蚕氏は、綾里真宵さんに成り済ましてユノミに毒を盛り、写真に写るコトで罪を着せようとしたのです!」
「異議あり!」
牙琉はまた壁を叩いた。
「被害者は男性だ!写真を見る限り写っているのは、カンゼンに女性じゃないか!」
「それを踏まえて、この写真を見てください。」
オドロキはふてぶてしく笑いながら、王劉蚕のカルテを提出した。
「これは…カルテですかな?」
「そうです。裁判長!カルテの内容ではなく、その中に挟んである写真に注目して下さい。」
「写真…。被害者のじゃないか…。あっ…!」
牙琉は初めてここで表情を崩した。
「この写真は被害者・王氏が中国にいた時に撮影したものだそうです。来日したトキは男性らしい装いでしたが…普段の彼は髪が長く、女性らしい姿形をしてるのです!」
「確かに!この写真を見る限り、女性に見えます!」
「そうなんです。王劉蚕氏は女形のようなシナヤカな容姿を持っている!彼は髪を結い、装束を着るだけで綾里真宵さんに、たやすくヘンソー出来るのです!」
オドロキが主張を言い終えると、またまた傍聴席がザワメキだした。
「やるじゃない!」
「おどろきくん!凄いです!」
「なかなかいい調子じゃないか?オドロキ君!」
成歩堂、春美、茜はカナリ盛り上がっていたが、御剣だけはケワシイ表情をしていた。
「御剣…?」
「成歩堂。喜ぶのはまだ早い。オドロキ君は大きな見落としをしている!そして、あの検事が見落とすとは考えられないぞ。」
「えっ?!“見落とし”?!」
「あぁ。オドロキ君はキミと良く似てるよ。非常にシナリオを作りやすい弁護士だ。…。オソラク、勝負はここからだ…!」
「!!(牙琉検事の…シナリオ!!)」
「静粛に!静粛に!静粛ぃぃぃっ!被害者・王劉蚕は被告人にヘンソーをしてた…。牙琉検事!あなたはどう思われますかっ!?」
「(ハギレに毒の成分が見つかった以上…ハンロンはできないハズ…。ん?)」
「クックックッ…。笑っちゃうね。おデコ君。」
牙琉は両手をスーツのポケットにつっこみながら、笑っていた。
「オドロキ君!あの検事さん…笑っているよ!」
「本当だ…。笑ってるよ…。」
オドロキは一瞬で冷や汗まみれになった。
「検察側は意見を変えるツモリはないよ。おジイさん。」
「えっ…。」
「弁護側の主張はこうだ…。“毒の成分を含んだ装束のハギレ、バンソコーの位置、被害者の容姿から、被害者は被害者に成り済まして罪を着せた。”」
「そうですケド…。」
「確かにいいセン行ってるよ。その可能性もゼロではないと言える…。しかし!この証拠は被告人の犯行も立証が可能!“真犯人がやった”と立証するには、パンチが足りなすぎるのさ!」
「で、でも…バンソコーや容姿は?!」
「それはなんとでもなるだろ?」
「異議あり!」
オドロキは叫び、人差し指を牙琉に突き付けた。
「な…なんとでもなりませんっ!(牙琉検事…何を考えているんだ?!)」
「異議あり!」
牙琉は珍しくコブシで机を叩いた。
「それに、キミの主張通りならナゼ、王劉蚕は自分のユノミに毒を盛ったんだい?罪をなすりつけた上で自分は自殺したというのかい?!」
「う゛っ…。で、でも!王氏は最初、生きていました!最初から致死量に達してない量を…」
「異議あり!」
牙琉は壁を叩いた。
「彼は“かろうじて”生きてたんだよ。トリカブト毒はね。キミが想像する以上にキョーレツな毒さ。致死量に達しなくても死に至る可能性もあるんだ!そんな危険をおかしてまでも…罪を着せるタメに自ら猛毒を飲むと思うかい?!」
『うっ…うぉぉぉぉぉぉぉぉっっ!!』
オドロキの叫びとともに、法廷内も再び、ザワメキに包まれた。
「静粛に!静粛に!静粛にぃぃぃっ!」
裁判長がハゲシク木槌を叩く。
「だから言ったやん!ウチの写真にウソはないんやって!」
ナツミが満面の笑みを浮かべて証人席に立っている。
「オドロキ君!負けちゃうよ!助けてよ〜!」
「うぅ…。分かってる!…でも…(いつの間にか逆転されちまったぞ…!!)」
「それじゃ、大沢木サンだっけ?ありがとう。キミの出番は終わりさ!」
「!!(次の証人、か。)」
「ウチ、ナルホドーの弟子を黙らせたでー!」
ナツミは1人で大騒ぎしている。
「ねぇ、オドロキ君!次の証人って…?」
「…オソラク、昭子さんだ。」
■作者からのメッセージ
リニューアルしました。
オドロキ君の法廷パートです。

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