時空を超えた逆転 4 王泥喜編‐霊媒師の罪‐ | |
作者:
太郎
2008年10月22日(水) 14時16分47秒公開
ID:JsAhK5blwlg
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真宵が不安そうな表情をした。 「うム。心配ない。メイは軽傷だ。もうそろそろトンネルを抜け出せそう、とのコトだ。」 「かるま検事さん、おケガなさったなら、お休みすればいいのに…。わたくし、少しシンパイです。」 春美が親指を噛みながら言った。 「いや、メイは今日、必ず検事席に立つ。何と言っても、オドロキ君は、成歩堂龍一の“後継者”の様なモノだからな。」 御剣はニヤっと笑った。 「うわっ…。(オドロキ君、かわいそうに…。)」 「えっ、何ですか?!“うわっ”って…。」 「弁護人!そろそろ時間ですよ!」 係官の言葉にオドロキはピタっと止まった。 「と、とにかく、行ってきますっ!真宵さんっ、行こう!」 「うんっ!」 「頼んだぞ…!」 オドロキと真宵は部屋を出た。 「ボクらも戻ろうか。」 「うム。」 しばらくして、成歩堂、御剣、春美も傍聴席へ戻って行った。 同日 午前10時37分 地方裁判所第4法廷ー カンッ! 裁判長の木槌の音が鳴り響き、ざわめきが止んだ。 「それでは、今度こそ、綾里真宵の法廷を開廷します。」 「弁護側、準備完了しています。」 「検察側、オーケイだ。」 「弁護人、王泥喜君。」 「はい!」 「私はどうもあなたを見たことあるような気がするのですが…。」 「…。気のせいだと思います…。(一昨日の法廷で会ったバカリだろ。)」 オドロキはイキナリの質問にうろたえた。 「そうですか…。トシは取りたくはないものです。それでは、牙琉検事。冒頭弁論をお願いします。」 「オーケイ!このステージ、ボクが熱く、そして最高にスリリングに盛り上げるよ!」 「…オドロキ君はワリと落ち着いているみたいだね。良かった。」 「気になるのは、牙琉検事だ。彼はどんな検事なんだ…?」 「あの検事、ムカツクけど結構やり手なのは間違いありませんよ、御剣検事さん!」 成歩堂と御剣の後ろから女の声がして、2人は振り返った。 「…あかねさんっ!」 茜は御剣のトナリの春美の席に座り、自分の膝に春美を座らせた。 「あの検事は、“検事局始まって以来のサラブレッド”と呼ばれているみたい。」 「…毎年そんなのが出てくるよね。検事局って。」 「そんなのとはなんだ!成歩堂!」 “検事局始まって以来の天才”と呼ばれる男が成歩堂に反論した。 「牙琉検事は、御剣検事以来の“天才”とも称される検事です。審議を見てれば分かります。彼の“実力”が。…ムカツク人ですケド。」 「分かった。とにかく、見守ろう。(天才、か…。)」 「それじゃ、カンタンに事件の説明をさせて貰うよ。」 牙琉はいつものように指を鳴らしながら、冒頭弁論が始めた。 「事件は25日の午後3時30分頃、倉院の里・綾里の家の屋敷で発生した。被告人・綾里真宵は客人として来ていた、中国人オカルトカメラマン、王劉蚕の毒殺計ったが失敗し、王氏は一命を取り留め、緊急入院した。しかし、綾里真宵の逮捕後、病状悪化により病院内で天に召された…。そんなトコロだ。ザンネンながら、ね。」 「ふむう…。おかるとかめらまんをねぇ…。」 「検察側は、そこのお嬢さんの犯行を必ず、立証してみせるよ。裁判長さん。」 「頼もしい限りですな。」 裁判長は牙琉の冒頭弁論を聴き入っていた。 「(なんか、牙琉検事ペースだなぁ。)」 「オドロキ君…。」 「はい?」 真宵が被告席からオドロキに話しかけてきた。 「あの検事さん、やっぱりステキだね!私のコト、“お嬢さん”だってさ!」 「…ノンキだな。今からやってもいない殺人罪がリッショーされようってのに…。」 オドロキは腕を組みながら言った。 「私、オドロキ君を信じてるからし!」 「…頑張ります。(やれやれ。)」 「それじゃ、最初の証人を入廷させていただくよ!えっと、なんだこの名前…。イトノコギリ刑事って読むんだっけ?その彼を証言台へ!!」 「(イトノコさんか。とにかく、彼の証言からテイネイに崩していくしかないな…。)」 牙琉の指示でイトノコ刑事が入廷し、証言台に立った。 「それじゃ、証人。名前と職業をお願いするよ。」 「自分は糸鋸圭介ッス。所轄署の刑事やってるッス。」 「イトノコギリ刑事君だっけ?キミはこの事件、昨日から担当になったね?」 牙琉が指を鳴らしながら質問をした。 「そッス!前任の刑事が、違法捜査したんで、自分が担当になったッス!」 「違法捜査ですって?!」 裁判長が目をパチくりさせながら聞いた。 「そッス!ありえねッス!例えば…」 「異議ありっ!」 イトノコが最後まで言い終える前に牙琉が異議を唱えた。 「刑事君。ここは、前任の刑事の罪を裁く場じゃないよ。あくまでもそこのお嬢さんを裁く場だ。キミはボクの質問だけに答えてくれればいい。」 「…すまねッス。」 イトノコはシュンとした表情をした。 「それじゃ、被告人をタイホするまでの過程を証言してくれるかな?」 「リョーカイッス!」 「それでは、イトノコギリ刑事。証言をお願いします。」 「いよいよだな…。オドロキ君はどんな弁護をするのか。」 「うム。そして牙琉検事のウデも明らかになるぞ。」 「参考までに言っておきますと、あの弁護士は4月のデビュー以来、ムハイです。」 茜が言った。 「なんか成歩堂。おまえに似てるな…。」 「ボクも同じニオイを感じるよ。」 〜証言開始〜 「事件は倉院の里にある綾里家の修験者の間で起きたッス。」 「事件が起きるまで、被告は叔母と一緒に被害者を屋敷内案内してたッス。」 「そして、一段落してから修験者の間で被告と被害者は、2人でお茶したッス。」 「しかし、被告が入れたお茶を飲んで、被害者は倒れたッス。」 「被告を身体検査したら彼女の装束のタモトから、毒の入った小ビンを発見したッス。」 「小ビンには彼女の指紋だけが、ベットリと付着してたッス。」 「以上のコトから、彼女をタイホしたッス!」 「ふむう…。なんともカナシイ事件ですな。」 「ちなみに、被害者のイノチを奪ったのは“トリカブト毒”。トリカブトから採取された、猛毒だ。ここに解剖記録がある。提出しよう。」 「受理しましょう。」 王劉蚕の解剖記録が牙琉から提出された。オドロキは解剖記録を法廷記録に挟んだ。 ●王劉蚕の解剖記録 死因はトリカブト毒による中毒。トリカブト毒は体内に入って約5分後に症状の出る猛毒。 「それでは、弁護人。尋問をお願いします。」 「はい!(トニカク、慣れないブタイだ!テイネイに行くぞ!ホースケ!)」 〜尋問開始〜 「事件は倉院の里にある綾里家の修験者の間で起きたッス。」 「待ったっ!」 「なんスか?アンタ、無駄に声がデカいッス!」 「…スミマセン。(発声練習の成果なんだからほっといてくれよ…。)修験者の間は、玄関に直結してる大きい部屋のコトですね?」 「おデコ君。キミ、昨日現場を見てきたんだろ?その部屋で間違いないんじゃないかなぁ?」 「…スミマセン。次、お願いします。(ウォーミングアップなんだから、ほっといてくれよ…。)」 「了解ッス!」 「事件が起きるまで、被告は叔母と一緒に被害者を屋敷内案内してたッス。」 「待った!」 「なんスか?アンタ。」 「それは何時頃からですか?」 「大体、2時45分くらいから屋敷案内がはじまったみたいッス。」 「なるほど。次、お願いします。(大した情報じゃなかったな…。)」 「そして、一段落してから修験者の間で被告と被害者は、2人でお茶したッス。」 「待った!」 「今度はなんスか?」 「被告人と被害者だけでお茶を飲んだのは…」 「モチロン、被害者が花瓶を割ったからだよ。おデコ君。」 「花瓶をですか?」 「そうなんだ。裁判長さん。被害者は渡り廊下で花瓶を割ってしまった。それを片付けたのが、被告の叔母だ。だから、被害者と被告人は2人きりになったワケ。」 「ふむう…。なるほど。分かりました。証人、次を!」 「しかし、被告が入れたお茶を飲んで、被害者は倒れたッス。」 「待った!」 「なんスか?」 「つまり、被告が入れたお茶に毒が混入していたと?」 「正確には、お茶に入っていたんではなくて、あらかじめユノミに毒を盛ったッス!」 「ユノミ、ですか?」 「ちなみにコレが、その毒を盛られたユノミだ。提出しよう!」 牙琉はユノミを証拠品として提出した。 「受理します。」 ●被害者のユノミ 被害者・王氏のマイ・ユノミ。このユノミの底にトリカブト毒の粉が微量、沈澱していた。分析の結果、お茶ではなく、ユノミの方にあらかじめ毒が盛られていたことが判明。 「つまり、被告がこのユノミに毒を入れた、と?」 「そッス。あらかじめ、毒を盛れたのは、被告しかいないッス…。」 「(…この証言、おかしくないか?)裁判長、今の証人の発言を証言に加えてください!弁護側は…その、非常に重要だと考えます!」 「?そうですか?…わかりました。証人、今の発言を証言に加えてください。」 「了解ッス!」 「被告はあらかじめ、ユノミに毒を盛っておいたッス!」 「異議ありっ!」 オドロキは人差し指を高々とイトノコに突き付けた。 「な、な、なんスかっ!アンタっ!」 「“被告があらかじめ、ユノミに毒を盛っておいた”…。それは、不可能です!」 「な、な、な、なんスて?!」 「なぜ、“不可能”なんですか?弁護人!」 「シンプルです。このユノミは被害者が持参したモノなんです!」 「じ、持参ですか?」 「はい。被害者はユノミをいつも持ち歩いてるそうですよ。“マイ・ユノミ”と称して!」 「まい・ゆのみ…。」 「つまりっ!」 オドロキは机を叩いた。 「被告があらかじめ、毒を盛っておくなんて、できなかったんです!」 「ま、参ったッスぅぅぅぅぅ!」 「異議あり!」 牙琉は壁を叩いた。 「なぜ、“不可能”と断言できるんだい?おデコ君。そんなの王氏が屋敷案内の前に被告人にユノミを預けたかもしれないじゃないか!」 「異議ありっ!」 オドロキは叫んだ。 「被告人・綾里真宵さんはこう証言していますっ!“王氏は、修験者の間でお茶を飲む時にユノミを渡してきた”と!」 「…。」 「この事実は検察側の主張を崩すコトになりますっ!」 「異議あり!」 牙琉はまた壁を叩いた。 「キミの主張は、被告人の証言が正しいという前提から成り立っている。確かにそこのお嬢さんは取り調べでそう証言したとは聞いているが、被害者がそのユノミをお茶する時に本当に出してきたか…?そんな証拠はないっ!」 「異議ありっ!」 オドロキも机を叩いた。 「それなら、こちらも同じですっ!真宵さんがあらかじめユノミを受け取っていた証拠はあるんですか?!」 「フッ…ハッハッハッ…。」 牙琉は静かに笑いだした。 「(わ、笑ってるよ!牙琉検事…。)」 「どうやら、検察側には証拠があるみたいだね…。御剣。」 「牙琉検事にはキリフダがあると聞いている。」 「真宵さま、悲しそうです…。」 「きっとあの検事さん、あのコがこう来るコトを想定してたみたいね。ハラ立つくらい笑顔よ。」 「彼のキモチ、分からないでもない。」 「(つまり、今の所は牙琉検事のシナリオ通り、ってワケか。)」 「イトノコギリ刑事って言ったっけ?キミ。もういいよ。」 「えっ?もう終わりッスか!?」 「うん。次の証人に移りたいんだ。決定的な証人にね!」 「むぎゅぅぅ。」 「裁判長さん。会場もイイ具合に盛り上がってきたコトだし、検察側は次の証人を召喚させてもらうよ!」 「いいでしょう。」 裁判長が首を縦にふった。 「オドロキ君…。誰なの?決定的な証人って…?」 「多分あの人だ…。あのアフロの。名前忘れたけど…。(成歩堂さんと御剣さんが要注意って言ってたっけ。)」 「ナツミさん、か。気をつけてねオドロキ君!ナツミさんは思い込みハゲシイから!」 「大丈夫っ!オレ、頑張るからっ!(イヤな予感もするけど…。)」 「それじゃぁ、事件当時現場にいたカメラマンをここにっ!」 牙琉の指示でイトノコは退廷し、代わりに大沢木ナツミが入廷してきた。 「(すげぇアフロだな…。)」 「おっ!アンタ!」 ナツミはスゴイ目つきで、オドロキを見つめた。 「お、オレですか?」 「アンタは、ナルホドーのお弟子さんやないかっ!」 「はぁ…。」 「いやぁ、さすがにキャラ濃そうやな!ナルホドー並に!」 「どーも…。」 「そっけないなぁ!ソコもナルホドーにそっくりや!」 「はい…。(ナルホドー、ナルホドーって連呼するとちょっとオモシロイな。)」 「なんやっ!もっとリアクションせぇっ!」 ナツミはオドロキにむかって怒鳴りはじめた。 「おデコ君のリアクションがヨクないのは、ボクが詫びよう!お嬢さん、トニカク今は名前と職業をお願いするよ。」 「…あ、アンタぁっ!」 ナツミはスゴイ目つきで、今度は牙琉を見つめてる。 「なんだい?女の子に見つめられるなんて馴れっこだけど?」 「ウチの目は騙されへんで!控室で会ったトキからずっと引っ掛かってたんや。でも今思い出したで!」 ⇒To Be Continued... |
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