時空を超えた逆転 4 王泥喜編‐霊媒師の罪‐
作者: 太郎   2008年10月22日(水) 14時16分47秒公開   ID:JsAhK5blwlg
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2月26日 午前9時40分 地方裁判所 被告人第2控室ー

「(…なんか、久しぶりだな。こんなミョーなキンチョーは。)」
オドロキは控室のイスの上で事件の資料をたどたどしく読み返している。そのヨコで成歩堂がアドバイスをあげていた。
「オドロキ君!」
イキナリ控え室のドアが開き、係官に連れられた真宵が入ってきた。
「あっ、真宵さん!」
「今日はよろしくね!」
真宵は笑顔で言った。
「お、オレ大丈夫ですっ!今日も朝5時に起きて、発声練習してきたし!」
「ハッセイレンシュー?」
「マッタク、そのオカゲでぼくも5時に起こされたよ。」
成歩堂は頭を掻きながらため息をついた。
「す、スミマセン…。」
「真宵さまぁ〜!」
そこへ、またもイキオイ良くドアが開き、今度は春美が入って来た。
「ハミちゃんっ!!」
「真宵さま!真宵さまのタメなら、わたくし、どこまでもっ!!」
春美は装束のソデを捲り上げながら叫んだ。
「春美ちゃん!来てくれたんだ!」
「おはよう!春美ちゃん!」
成歩堂とオドロキも春美にアイサツした。
「おはようございます!なるほどくん!それにオドロキ君!今日は真宵さまをヨロシクお願いします!!」
「う、うん!(見つめられると、プレッシャーだな…。)」
その時だった。またまた控室のドアがイキオイ良く開いて、御剣が入ってきた。そしてドアをおさえ、かなり息切れしている。
「み、御剣!?」
「ぬ。すまん…。ちょっとワケがあって…。」
するとドアが突然、ドンドンと鳴りだした。
『ミッちゃ〜ん!そこにいるんだろぉ〜?!』
「……なるほど。お前もタイヘンだな。ぼくに任せてよ。」
「た、頼む…。」
成歩堂が前に進み、ドアを開けた。
「ミッちゃ……。なんだい?アンタにはオバチャン、キョーミないヨ。ミッちゃんを出しなっ!」
成歩堂の顔を見た途端にオバチャンの表情が曇った。
「オバチャン、御剣はココにいませんよ。」
「フンっ!オバチャンは見たョ!赤いスーツを着たヒトがこの部屋に入ってくのをネ!さァ、ミッちゃんはどこだい?!」
「多分、この部屋に入ったのは、オレですけど…。」
オドロキはオバチャンに会釈した。
「アンタっ!ミッちゃんを誘拐したハンニンじゃないっ!」
「…違いますってば。」
「御剣なら、さっきロビーに行きましたよ!」
成歩堂がロビー方面を指差して言った。
「それを早く言いなっ!」
オバチャンは吐き出すように言うと、ロビーの方へ走っていった。
「…礼を言うぞ。」
「大丈夫か?」
「あぁ。いつもの様に駐車場に車をとめて、エレベーターに乗ろうとしたら…。」
「警備室からあの宇宙人が飛び出てきたつーワケか。」
「うム。」
御剣は深く頷いた。
「御剣検事!」
「真宵君。…その今回もサイナンだな。」
「御剣検事もサイナンでしたね!」
「あぁ。サイナンだった…。」
「狩魔冥はもう、検察側の控室にいるのか?御剣。」
成歩堂が尋ねた。
「…冥はまだ到着していないそうだ。」
「えぇっ?!」
「かるま検事さん、大丈夫なのですか?」
真宵と春美が叫んだ。
「検事がまだ来てない…?」
「うム。飛行機が遅れてるというのは聞いているから、ギリギリ間に合うとは思う。事故などの連絡はきていないからな。」
「そっか…。」
成歩堂もほっと胸をおろした。
「弁護人、被告人。そろそろ時間です。入廷して下さい。」
「あっ、ハイ!じゃぁ、オレ達、行きます。」
「ヨロシク頼んだよ。オドロキ君。ボクらは傍聴席にいる。」
「また休廷時間に会おう。」
「真宵さまをヨロシクお願いします!」
オドロキは成歩堂、御剣、春美とハイタッチをした。
「行こう!真宵さん!」
「うん!」
「(トニカク、集中するんだ!審議に!)」

*法廷記録*

(証拠品ファイル)

●事件概要資料
●装束のハギレ(トリカブト毒の成分が付着。)
●トリカブト毒を多く含む固形物のカケラ(修験者の間で発見。)
●被害者・王が足で書き残したメッセージ(ON;)
●綾里家の焼却炉の前で発見された、被害者・王の足跡
●被害者・王のカルテ(王劉蚕の顔写真。)
●病院での写メ(担当看護婦が撮影。)

(人物ファイル)

●成歩堂龍一(26):オレの尊敬する弁護士。
●御剣伶侍(26):成歩堂さんのライバルにして親友。検事局が誇る天才検事。一昨日まで牙琉霧人の策略により、拉致監禁されていた。
●糸鋸圭介(32):所轄署の刑事。今回の事件は途中から担当になった。
●綾里真宵(19):今回の被告人。成歩堂さんの助手も務める霊媒師。
●綾真春美(9):真宵さんのイトコ。事件当日、庭で雪遊びをしていた。
●綾里昭子(35):今回の事件の目撃者。真宵さんと春美ちゃんのおばさん。普段は東京でエッセ-を書いている。
●綾真千尋(故人):成歩堂さんのお師匠さん。たまに霊媒によって姿をあらわす。
●王劉蚕(故人):今回の事件の被害者。中国人でオカルトカメラマン。
●大沢木ナツミ(24):検察側の証人。決定的な証拠を持ってると思われる。
●鬼野正道(36):事件の初動捜査をした刑事。途中から、現場を離れる。冷酷で残酷な鬼刑事。
●狩魔冥(19):アメリカで生まれ育ち、13歳で検事になったこの事件の担当検事。完璧主義でムチを振り回すらしい…。
●若林ワカナ(27):堀田クリニックの看護婦。被害者・王が死亡した時に写メで現場を撮影した。
●堀田院長(??):自称・堀田クリニックの院長。7年後には自称・引田院長になってる。

(人物ファイル:7年後)

●成歩堂龍一(33):現在はピアニストで、今はオレの上司(?)。
●成歩堂みぬき(15):成歩堂さんの娘でオレの助手。魔術師のタマゴ。
●牙琉響人(32):オレのかつての先生。現在は収監されているが、“超時石”を使い7年前の世界にやってきた。御剣検事拉致監禁事件の首謀者。
●牙琉響也(24):検事局のスター検事で牙琉霧人の弟。“超時石”の管理者だが、兄・霧人に石を盗まれる。
●宝月茜(25):所轄署の刑事。カガクマニアで良く独自のカガク捜査をしてる。成歩堂さんと御剣と面識があり、かつて彼女が事件に巻き込まれた時、助けてもらったらしい。

同日 午前10時 地方裁判所 第4法廷ー

カンカンっ!

「それでは、綾里真宵の法廷を開廷したい…のですが…。検事席がカラですな。」
裁判長がカラの検事席を見つめながら言った。
傍聴席では成歩堂と春美が騒ぎ立ててる。御剣は廊下で、電話をかけてるため席を外していた。
「狩魔冥はどこいったんだ?!」
「かるま検事さん!早く来て下さいっ!」
「(検事がいないなんて。どうしよう…。長引いてしまったら…!)」
弁護席のオドロキも汗まみれだ。
「いかなる理由があっても、検事がいなければ、審議をするコトは出来ません。」
裁判長は首を横に振った。
「そ、そんな…。」
「いたしかたありませんな。本日は閉廷としま…」
裁判長が最後まで言う前に、法廷のドビラがイキオイ良く開き、係官が入ってきた。
「ちょっと!係官っ!最後まで言ってから入って来て下さい!」
「(何をメチャクチャな…。)」
「スミマセン。しかし、今連絡が入りました!…か、狩魔検事を乗せた車が、テロに巻き込まれたそうです!」
「て…」
『テロですとォォォォォっ?!』
その瞬間、法廷中がざわめきに包まれた。
「て、て、テロだとっ?!狩魔冥は無事なのか?!」
「かるま検事さん…。わぁぁぁぁん!」
傍聴席の成歩堂は冷静さを失い、春美は泣き叫んだ。
「大丈夫だ。狩魔検事はかすり傷で済んだそうだ。」
御剣が傍聴席に戻ってきた。片手には携帯を持っている。
「ほ、本当か!?御剣!」
「うム。しかしだな…」
『静粛に!静粛に!静粛にぃ〜っ!』
御剣が最後まで言い終える前に裁判長の怒鳴り声が法廷中に響き、やっと騒ぎが納まった。
「裁判長!狩魔検事は無事だそうです!ただ、トンネル内での事故だったので、なかなか除去作業が進まず、法廷に到着するまでまだ時間がかかります!」
係官が叫んだ。
「ふむう…。しかし、狩魔検事の到着が未定ならば、やはり閉廷するしかないでしょうな。」
「そっ、そんな…!!」
オドロキは頭を抱えた。被告席の真宵もショックを隠し切れない様な表情をしている。
「ちょっ、それは困るよっ!明日に持ち越されたら…オドロキ君がっ!」
「そしたら、誰も真宵さまのベンゴが出来なくなります!」
成歩堂と春美は再び騒ぎ始めた。
「いたしかたあるまい。…私が出廷しよう。」
「御剣っ!?でもお前、検事局から休廷命令が…。」
「この際そんなコトはどうでもよかろう!大切なコトは審理を今繋げるコトだろう!?成歩堂っ!」
「御剣…。」
「それでは、本日はこれで閉廷っ!」
オドロキが異議を申し立てようとしたその時だった。
『待った!』
御剣が傍聴席から叫んだ。
「おぉ…。御剣検事!!…無事でなによりです。」
「ぬっ。迷惑をおかけしました。」
御剣は会釈した。
「話しは、閉廷後にゆっくりとしましょう。今、急いで木槌をならしますぞ。」
「あっ!待っていただきたいっ!裁判長っ!(ならされては困るから言ってるのだぞっ!)」
「なんですかな?御剣検事。」
「狩魔検事は必ず今日中に出廷する。彼女が到着するまで、私が代理検事を務めよう。幸い、私は今回の事件をカンゼンに理解している。…ムロン、被告の犯行を立証するのは実にたやすいコトだ。」
御剣はいつも検事席で見せる不敵な笑みで裁判長にアピールをした。
「御剣さん…!(休廷命令出てるのに!)」
「しかし…アナタは検事局から、休廷命令が出てるハズですよね?」
裁判長は珍しく御剣に反論した。
「ぐっ…。も、モンダイない。」
「しかし、私は許可するワケには行きませんな。」
裁判長は首を横に振った。
「さ、裁判長っ!待っていただきたい!」
「こればかりは、ムリですな。」
「そ、そんなっ!!今日に限って…。(何でサエてるんだよっ!)」
成歩堂が思わず声をあげた。裁判長は気にせず、再び木槌を手にとり、鳴らそうとした時だった。
『待った!!』
またしても傍聴席から待ったがかかった。
「き、キミは…。」
「牙琉…検事!」
「あなたは誰ですか!?話しは閉廷後にしっかり聞きますので!」
「それじゃぁ、困るんだ。裁判長さん。狩魔検事が到着するまで、ボクが代理検事を務めるよ!ボクの名は牙琉響也。…通りスガリの検事だよ。」
牙琉はいつも通り笑顔だ。
「牙琉検事がっ!?」
オドロキも思わず弁護席から叫んだ。
「“がりゅう”…もしかして…あなたが、あの牙琉霧人弁護士の…?!」
「フッ、ボクが牙琉。ただそれだけだよ、裁判長さん。」
「ふむう…。よろしい!イキナリですが、休廷としましょう。20分後に審理を再開します!」
「カンシャしますよ、裁判長さん。」
「牙琉検事。アナタは私の執務室に来るように!」
「オーケイ、だ。」
「それでは、休廷に入ります!」

カンっ!

裁判長の木槌の音が法廷中に響き渡った。
「いやぁ、おデコ君が心配になってネ。一応、法廷を見に来ておいてよかったよ。」
「しかし、牙琉検事…超時石によってたどり着いた時代での出廷は禁止されてるハズだが、大丈夫だろうか?」
御剣が牙琉を呼び止めた。
「(確かに極秘資料にはそんなコトが書かれていた気がする…。)」
「ハハハっ!そうだよ!でもどっちにしろボクは処罰を受ける。超時石の盗難に気付かなかったのだからね。」
「そ、そんな…!」
春美は両手でカオをおさえた。
「それに、御剣検事。あなたが出廷しても結局はどっちかが罰を喰らうだろ?」
「それもそうなのだが…。」
「なら、おデコ君の相手はボクの方がいい。イキナリあなたが相手になったら、おデコ君、頭がマッシロになるよ。」
牙琉検事はニコっと笑った。
「…そうか。ならばキミにお任せる。牙琉検事、ヨロシクお願いする。」
「オーケイ!」
牙琉と御剣は握手を交わした。
「ヨロシクな。牙琉検事!」
「がりゅう検事さん!お願いいたします!」
「あぁ。頑張るさ。…それじゃ、ボクは裁判長の執務室に行ってくるよ!じゃぁね。」
そう言うと、牙琉はキザに傍聴席を去った。
「ボク達も控室に行こう!」
「うム。」
成歩堂、御剣、春美も被告人控室へむかった。

同日 午前10時19分 地方裁判所 被告人第2控室ー

「あぁ、もー怖かったよぉ!裁判、始まる前から死ぬかと思った…。」
「オレも、限りなく死刑に近い感じだったよ。本当にいいタイミングで来てくれたよ…牙琉検事。」
「アノ人がガリュー検事…。なんかステキな人だよね!イケメンだし!」
「まあ、ね。(みぬきちゃんと同じコト言ってるよ。ちょっとクヤシイ…。)」
「真宵ちゃん!オドロキ君っ!」
成歩堂、御剣と春美が控室に入ってきた。
「牙琉検事とは何回か法廷で?」
「ハイ。オレが受け持った4法廷中、3回彼が担当検事でした。」
「なるほど。狩魔冥が到着するまでの、いいウォーミングアップになるな。」
「冥ちゃんは大丈夫なの…?」

⇒To Be Continued...

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