時空を超えた逆転 1 成歩堂編‐捕らわれの検事‐
作者: 太郎   2008年10月22日(水) 14時16分24秒公開   ID:JsAhK5blwlg
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〜成歩堂龍一と王泥喜法介。この2人の弁護士が、時を越えて、たった1つしかない、この複雑に絡み合った“真相”に今、光をあてようとしている。彼らの声が、法廷に響き渡る。彼らの戦いが…今、幕をけようとしている。〜

―弁護士時代のなるほど君と、オドロキ君。出会うはずのない2人。しかし、1つの“石”が、それを実現した…。―


2月23日 午前11時59分 地方裁判所 第5法廷-

カンカンっ!

「本法廷ではこれ以上の審理は不要だと考えますー。よって被告人に判決を言い渡します。」

無罪ー。

「本日はこれにて、閉廷!」

同日 某時刻 被告人第1控室-

裁判長の木槌の音が、法廷に鳴り響き、決着がついたようだ。弁護側、は控え室で勝利の喜びを味わっていた。そこには、無罪判決をうけた笑顔の被告人と、角の生えたような髪型の男にシルクハットをかぶった少女、そしてニット帽をかぶった男が話してる。
「やっりましたね♪オドロキさん♪んでカナさん、おめでとうございます!」
「ありがとう…!オドロキさん、みぬきさん!」
「オドロキ君にしてはましな弁護だったんじゃないかな?」
「…。ありがとうございます。」
赤いスーツを着た若い弁護士は黙り込んだ。彼の名は王泥喜法介。新米弁護士。そしてこのニット帽の男は成歩堂龍一。元弁護士で、現在はピアノの弾けないピアニストとして活躍している。オドロキの事実上の“センセイ”にあたる。そして、このシルクハットの少女はみぬき。魔術師のタマゴで成歩堂の養女だ。
「みぬき、今日は超〜ガンバリましたよ♪」
「あ、オレも頑張りましたよ!!!」
「みぬきさん、本当にありがとう!」
「オレも…」
「みぬきはすごいな!」
カンゼンに弁護した当の本人はカヤの外だ。
「(オレも頑張ったんだが…)」
アピールするもマッタク相手にされない。セツナくなったその時、携帯が鳴った。

♪チャラララチャラララ〜


「あ、電話です!」
「一体、誰の着信音だい?このセンスのないのは。」
「オレのですよ!(シツレイな…)」
「せめて、ナニサマンのテーマくらいにしないと、今の世の中、友達できませんよ!オドロキさん!」
「…そうなのか。(傷ついた…。)」
成歩堂も、みぬきも、オドロキの着信音に対して、言いたい放題言った。
「とりあえず早くでなよ、オドロキ君。」
「あっ、はい!(言いたい放題言ってたクセに!!)」
ピッ。
「ハイ、お待たせしました。オドロキです。」
オドロキは急いで、携帯をポケットからとりだし、通話ボタンを押した。
『あ、イキナリすみません。王泥喜センセイですか?』
「ハイ!!そうですよ!」
『そうですか…。ちょっとお手数なんですが、ロビーにいくつかお渡ししないといけない証拠品があるんですが、取りにきていただけますか?』
電話の相手は、中年の男の声だった。
「あっハイ!大丈夫です!」
『それはよかった…。お待ちしていますよ。』
「分かりました!いま行きます!」
…ピっ。
オドロキはあっけなく、電話を切った。
「どうしたんだい?オキマリ君?」
「オドロキです。」
「あーそうそう。オドロキ君。んで?」
「なんか、ロビーに取りに行かなきゃいけないもんがあるらしくて、今からちょっと行ってきます。」
「スグ戻って来いよ!今日は、勝訴祝いにやたぶき屋に行くんだから!(ま。キミのオゴリで…。)」
「ハイ!大丈夫です!!モチロン、やたぶき屋には間に合わせますよ!(成歩堂さんのオゴリだし。)じゃ、行ってきます!」
オドロキはそう言うと、軽く会釈し、ドアを開け、控室を後にした。

同日 某時刻 地方裁判所 ロビー-

「……誰もいないじゃん。」
数分後、オドロキは1人、ポツンとロビーにいた。呼び出されて急いできたワリには、人一人もいなかった。
「(本当にロビーであってるよな…?)」
そう思いながらプラプラしていた。
「ん!?」
オドロキは、イキナリ背中になにかの気配を感じた。後ろを振り返ると、何故かそこだけ違う“空間”ができていた。
「はっ?!?!(ウソ、だろ?)」
オドロキは、何度も目を擦ったが、そのクーカンは実際にあるらしい。恐る恐る指先で触ってみようとした次の瞬間、彼はそのクーカンに吸い込まれたのだ。
「うぉぉぉぉっ!?」
クーカンは彼を吸いこむと、消えた。そう、跡形もなく。

7年前 2月23日 午後12時13分 地方裁判所 第7法廷-

カンカンっ!

「本法廷ではこれ以上の審理は必要ないと思いますー。被告人に判決を言い渡します。」

ー有罪。

「本日はこれにて閉廷!」

同日 午後12時24分 地方裁判所 ロビー-

「いやぁ〜最高っス!さすが御剣検事!見事なシンギだったっス!」
薄汚いコートを着た刑事が、赤いスーツの検事に嬉しそうに話しかけた。
「あぁ。…ありがとう。イトノコギリ刑事。」
彼の名は御剣怜侍。言わずと知れた天才検事だ。どうやら裁判で勝訴したらしい。少し嬉しそうだ。対して、この頼りなさそうな刑事は糸鋸圭介。最強のウッカリ刑事だ。
「アレ、御剣検事、ニモツをまとめてるってコトは…もうお帰りッスか!?」
「あぁ。私は今から検事局に戻る。仕事が残ってるからな。…また会おう。」
御剣は、カバンに資料などを、丁寧に詰めながら言った。
「…そーッスか!了解ッス!検事、お疲れッス!」
「うム。」
そう言うと、御剣は、カバンとコートを手にとった。イトノコギリ刑事は、彼がエレベーターに乗るまで、頭を下げた。
「じゃぁ、また会おう。」
御剣はそう言うと、エレベーターのドアが閉まり、地下の駐車場へ向かった。

同日 午後12時26分 地方裁判所・地下駐車場 トイレ前-

ドス!!

「…いってぇ…。」
凄い音とともに、どこからかオドロキがおちてきた。
「…。駐車場?」
目の前に広がってるのは見慣れた裁判所の駐車場だった。
「(何だ。いつもの駐車場じゃん。)オレ、夢遊病だっけな…。でもオカシーなぁ…確かにロビーにいったんだけど…」
オドロキは首を傾げながら、疑問を抱きつつも、とりあえず、重々しく立ち上がり、エレベーターに向かってお尻を摩りながら歩き出した。

同日 同時刻 地方裁判所・地下駐車場 Cブロック-

エレベーターから降りてきた御剣は、裁判所の駐車場で自分の車のトランクに荷物を入れていた。
「(!!何だ…!?強いシセンを感じるぞ…!)」
その時、御剣はふと背中に誰かヒトのケハイを感じた。
「…ウゴクな。」
御剣は、ユックリと後ろを振り返った。すると数人の男達が、彼に銃を突き付けていた。御剣は冷静に、不自然にあるバンを見た後、防犯カメラを見た。
『何っ!!!?(作動…してない!)』
その時、御剣は初めて焦りだした。
「言っておくが、アンタに助けは来ないぞ。カンネンしろ。トニカク、両手をあげるんだ。検事サマ。」
「!!!」
御剣は観念したようにゆっくり両手をあげた。
「よし、来るんだっ!」
一人の男が御剣の肩を荒々しく掴み、背中に銃を突き付けながら連れていこうとした。ちょうどその頃、オドロキが駐車場の角を曲がってきて男達と目があった。
「…!?!?」
オドロキの目に飛び込んできたのは、背中に銃を突き付けられたスーツの男が両手をあげていて不自然にとめてあるバンに乗せられそうな現場だった。
「ちょっ、これって…ユーカイじゃないか…!まてっ!」
オドロキからはユーカイされそうな男の顔は見えなかたったが、ムチュウで走って止めにはいった。
「あいつだな…王泥喜法介…。」
「だな。よし。」
男達は走ってくるオドロキを見て、口々に言った。そして、オドロキに、男が懐から先だけタオルに包まれた銃を取り出し、引き金の部分を突き付けた。オドロキは思わず、握ってしまった。
「ん?銃?」
オドロキが銃を持ち、少し戸惑ってると御剣が隙を見て後ろを振り向き、オドロキを見た。
『(…!!だ、誰だ!?この青年は…?!?)』
「キサマは前をむけ。」
男が御剣の背中に突き付けてる銃を御剣の首筋にたたき付けた。
「ぐっ!」
御剣はムリヤリ前をむかされた。

「まてっ!お前達っ!!」

その時だった。警察が駆け付けてきたのだ。
「お。サツだ、みんないくぞ!さぁ来るんだ!」
「ぐっ!」
「大人しくするんだ!!」
男は抵抗する御剣をバンの中に押し込んだ。そして勢いよくドアをしめ、バンは走り去った。とり残された上、銃を持たされたオドロキは呆然と立っていた。
「そこの赤い男、ユーカイ犯っ!確保ッス!」
その声にオドロキはハッとした。
「(お、オレのコトか!!?)しまった!ハメられた!」

ガッチャ!

しかし時すでにおそし。オドロキは警官隊に取り押さえられ手錠をかけられた。
「ちがっ!オレは違うっ!ハメられたんだ!」
「嘘をつくなッス!御剣検事をどこに連れてったッス?!」
『(ミツルギ…?御剣ってどっかで聞いたことあるぞ!?たしか…あの成歩堂さんの友達のか?!オレは会ったことも無いぞ!?どうゆーことだ?!)』
『他は全力であの車を追うッス!検事を必ず助けだすッス!』
『はっ!』
他の警官達は、敬礼をすると、御剣を乗せたバンを追った。
「アンタは、自分と一緒にくるッス!!」
イトノコは、オドロキの前髪をつかんだ。
「いててて…だから違いますってば!!離してください!!」
「大人しくカンネンするッス!」
オドロキは抵抗したが、そのままイトノコに連行されていった。

同日 某時刻 成歩堂法律事務所-

「うぉっ!!」
ジャバーン!
「やばいな〜こぼしちまったよ。キチョーな水を。」
成歩堂龍一が観葉植物のチャーリー君に水をあげている。(ちなみにこぼしたらしい)助手の綾里真宵が、倉院に修業に戻っているため、事務所内はすごく静かだ。成歩堂の水をふく音だけが響いた。そこへ電話が鳴った。
プルルルルプルルルル…
「(最高にキリが悪いのに…)」
成歩堂はイヤイヤ電話をとった。
「…はい。成歩堂法律事務所です。」
『成歩堂弁護士サンですね?』
中年の男の声だ。
「はぁ…。そうですが。」
『トートツに申しますと、我々はあなたの相棒の検事を預かってます。』
「?!」
成歩堂の表情がかわった。
「なんだって?!相棒の検事って…まさか…!」
『そう。御剣検事を預からせていただいてます。』
「なんだとっ?!おい、なんのつもりだっ?!なぜ御剣を…!?解放しろっ!」
成歩堂は声を荒げて言った。
『まぁせっかく捕らえた人質をすぐに解放するワケにはいきませんな。…当然ながら。』
「…要求はなんだ?」
静かに聞いた。
『要求ねぇ…。オレ達のナカマが一人逃げ遅れて、タイホされちまったんだ。多分裁判は明日だから、まぁ弁護してやってくださいよ。』
「よくもそんな事を…!」
成歩堂は怒りで声が震えていた。
『まぁ、気持ちは分かりますがね。弁護していくウチに我々の目的が徐々に明らかになってくるでしょう。…じゃ。』
「ま、まってくれっ!御剣は無事なんだろうな?!」
『あぁ。我々もここまで冷静になってる人質は初めてだ。今声を聞かせよう…。』
『…成歩堂か…?』
「御剣!お前大丈夫か?!」
『あぁ…。すまない。今の所は無事だ。』
「(イヤに冷静だな…)そうか、待ってろ!キミを助け出すからな!」
『あぁ、すまない、頼む。成歩堂、これだけ伝えておく。タイホされた青年はムジっぐっ…!』
「御剣?!大丈夫か?!御剣?!」
『…ここまでだ。』
「…!」
『あとはあなた次第です。センセイ…』
ガチャッ!
「ま、まて!」
プープー
「…切れた…。」
成歩堂は愕然と、崩れた。
「御剣が…誘拐された…!」
その時、ドアが凄い勢いで開いた。
「ウェエオオォッー!アンタ、大変ッス!み、御剣検事がっ!」
凄い勢いで糸鋸刑事が入ってきた。
「…拉致されたそうですね。」
「そーッス!一大事ッス!…あれ?なんで知ってるんスか!?」
「今犯人から電話がありました。」
「本当ッスか!!それで?!ヨーキューとかはあるんスか?!」
「…タイホされたナカマの弁護…。」
成歩堂は悔しそうに言った。すると、イトノコは少し落ち着いて言った。
「むむ。ヤッパリ、そーきたッスか…」
「ど、どーゆー事ですか?」
「検事を誘拐したのは、グループだったッス!我々がタイホしたのは、多分、リーダー格の男ッス!」
「……つまり、そのタイホされた男が、グループのリーダーだから、ぼくに弁護を、と…?」
「いいにくいッスくど…そーゆーコトだと思うッス…。」
『ふざけるなッ!!!なんで、御剣を誘拐した犯人をぼくが弁護しなきゃなんないんだ!!!!』
成歩堂は、怒りで思わず叫んだ。
「アンタ…」
「無罪にしろだなんて…ぼくには絶対できない…!!」
「アンタのキモチは分かるッス!自分だって…犯人なんて、ミンチにして、ブタのエサにしてやるたいッス!」
「(イヤに恐ろしい発想の持ち主だな。)」
「でも…アンタが弁護しないと…検事のイノチが危険にさらされるのも事実ッス。検事は、我々が必ず助け出すッス!…だから、今はアンタに時間を稼いで欲しいッス…」

⇒To Be Continued...

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