時空を超えた逆転 3 成歩堂・王泥喜編‐霊媒師の罪‐
作者: 太郎   2008年10月22日(水) 14時15分57秒公開   ID:JsAhK5blwlg
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「(そう言えば仲がいいつってたな。真宵さんとその検事。)」
「御剣はあんな目にあったから、しばらく検事局から休廷命令を受けている。そしてこの事件の“闇”を引きずり出すにはそれなりの検事じゃないとダメなんだよ。」
成歩堂は真剣な表情で弁明した。
「そっか…。そうなるとメイちゃんしかいないワケだね…。ゴドーさんはもういないし…。分かったよ。」
真宵は下を向いていたが、コトを理解したようだ。
「分かってくれてありがとう。真宵ちゃん。アトは当日ナニがあったかぼく達に教えてくれないか…?」
「うん。」
真宵は顔をやっと上げた。
「あの日、中国から来たお客さんに昭子おばさまと案内をしていたの。」
「王劉蚕、だったね。オカルトカメラマンの。」
オドロキがメモを取りながら言った。
「うん。屋敷を一回りして、お茶飲むコトにしたんだ。修験者の間で。」
「なるほど。(ココまでは昭子さんの証言と変わりはない、な。)」
「3人で渡り廊下を歩いたトキ、お客さんが花瓶を割って…。おばさまが花瓶を片付けて、私達は修験者の間にむかったの。」
「被害者と2人で修験者の間に…。(これは最も疑われるシチュエーション、だな。)」
「その時、王さんは1度トイレに行ったよ!そして戻って来たアトに私、フツーにお茶を入れたんだ。」
「トイレに…?」
オドロキは腕を組み、眉間を指で押さえながら聞いた。
「うん。トイレは修験者の間のすぐ近くだよ!庭側にあるんだけど…。」
「その間は何分くらいだったの?」
今度は成歩堂がアゴにユビをあてて、聞いてきた。
「5分くらいかな…。」
「なるほどねぇ。それで?」
「王さんが戻って来たら、私お茶を入れたよ。彼の“マイ・ユノミ”に。」
「“マイ・ユノミ”?」
オドロキは首を傾げた。
「うん。“マイ・ユノミ”!王さんはいつも自分のユノミを持ち歩いてるんだってー!変わってるよねー。」
「(ユノミを持ち歩くなんて不自然だな。)そして、真宵ちゃんが入れたお茶を飲んで苦しみ出したワケか…。」
成歩堂が考えながら言った。
「うん…。」
真宵は下を向いた。
「でも真宵さんが用意したユノミじゃないんだよね?」
「そうなんだけど…身体検査をしたトキに私の装束のたもとから出てきたの…。」
「も、もしかして…。」
「うん…。私の指紋のついた小さなコビン。毒が入っていたんだって…。だから、あの刑事さんにタイホされたんだ。」
「あの刑事ってもしかして…」
「鬼野刑事?」
成歩堂とオドロキが言った。それに対し、真宵は口に手をあてて驚いた。
「そうそう!オニノ刑事!ホントに怖い人…!なんで2人は知ってるの?」
「実はね、真宵ちゃん。さっきぼくと御剣とオドロキ君で倉院に調査に行ってきたんだ。そのトキにあの刑事に刃向かった御剣とオドロキ君が一時、拘束されたんだ。」
「えぇぇぇっ?!御剣検事とオドロキ君が?!」
真宵は非常に驚いている様子だ。
「うん。モチロン、釈放されたから今ココにいるんだけどネ。」
「もしかして、乗せられた?…あの護送車に…。」
「あぁ。あの気が遠くなるようなヤツ。何もしてないけど自白したくなるようなあの護送車…。真宵さんも?」
「うん…。ホントに怖かったよぉ。あの人…ホントに鬼の目を持ってるもん…!」
真宵が涙目になって言った。
「…鬼の目?」
「うん。暗くて冷たい目だった。怖かったなぁ…本当に鬼みたい…。」
「そうなんだ…。(きっと、インショーにの残るホド怖かったんだな…。)」
オドロキが考えながら言った。
「私の知ってるコトはこれで全部だよ。」
「分かったよ。ありがとう、真宵ちゃん!参考になった。」
成歩堂が言った。
「明日、必ず真宵さんの無実を証明するっ!」
オドロキも拳をあげて言った。
「なるほど君…オドロキ君!!明日…お願いね!」
「キミは無実だ。明日は必ずオドロキ君がそれを証明してくれる!そうだろ?」
「大丈夫ですっ!」
「オドロキ君…明日、お願いします!これ依頼状っ!」
オドロキは頷きながら真宵からの依頼状を受け取った。やがて面会時間が終わり、彼らは成歩堂法律事務所に戻った。

同日 午後7時5分 成歩堂法律事務所ー

「御剣、まだかなぁ…。」
「そろそろじゃないですかねー…。タブン。」
成歩堂とオドロキは事務所のソファーの上で資料を広げて、御剣の帰りを待っていた。
「(アイツの疲労もピークだ…。昨日まで拉致監禁され、今日は朝から取り調べ。そして鬼野による拘束…、捜査指揮。大丈夫かな…。)」
成歩堂の心配をヨソに、事務所のドアをノックする音がした。
「入るぞ。」
「あっ!御剣さん!」
「御剣!」
御剣が事務所に帰ってきた。手には多くの証拠品を持っている。
「待たせたな。…真宵クンから何か聞き出せたか?」
御剣は資料をテーブルの上に並べながら聞いてきた。
「まあね。ターゲットを絞るコトができそうだよ。」
「鬼野刑事…か。」
御剣は凄く疲れてる様子だった。無意識に目頭をユビで何度も押さえていた。
「御剣さん…大丈夫ですか?凄く疲れてそうです。」
オドロキが心配そうな表情で言った。
「ん、あぁ。大丈夫だ。モンダイない。」
「御剣…。」
その時、事務所の中にイキナリ、例の“空間”ができた。
「オドロキさーん!!」
「みぬきちゃん!」
空間からはみぬきが出てきた。成歩堂と御剣は驚いた表情でみぬきを見た。
「あっ!ミツルギさんに、パパ!」
みぬきは満面の笑みで2人に手を振った。
「成歩堂のムスメさん…!」
「確か…みぬきちゃんだっけ?ナマエ。(てか、“パパ”ってまだ呼ばれる為のココロの準備できてないぞ!)」
「うん!なんかフシギな感じがするよ!」
みぬきは成歩堂と御剣に近づいた。
「みぬきちゃん…1人で?」
「うん!みぬき、差し入れ持ってきたんだ!“ナニサマン栄養ドリンケ”!」
みぬきは“ナニサマン栄養ドリンケ”1ケースを取り出した。
「ナニサマン栄養ドリンケ…。(英都の最新作か。)」
「パパがね、ミツルギさんのコト心配してたの!だからみぬき、差し入れしよーと思って!」
「成歩堂…さんが?」
御剣がじんわりと呟いた。
「なんで“さん”付けなんだよ!」
成歩堂がすかさずツッこんだ。
「やった!サンキュー!みぬきちゃん!」
「ありがとう、な!」
「礼を言うぞ。」
3人はみぬきにお礼をすると栄養ドリンクを飲んだ。
「でも、みぬきちゃん、1人でどうやって…?」
「フツーにコレで来たよ!」
みぬきは無造作に超時石を取り出した。
「な、なんでみぬきちゃんが?!」
成歩堂も驚いてる。
「ガリュー検事に差し入れしたいから貸してください♪って言ったら、“そんな言い方されたら断れないな〜。”…ってカンジで!」
みぬきは牙琉響也のマネをしながら言った。
「…。(あの検事は…)」
「みぬきのマジック・ストーン♪あらフシギ!超時石が消えちゃいました♪」
みぬきが手を一振りすると、超時石が消えた。
「ち、ちょっと!その石、無くしちゃヤバイって!」
成歩堂が叫んだ。
「みぬきのマジック・ストーンですからね!あらフシギ♪ミツルギさん!スボンのポケットを確認して下さい!」
みぬきは相変わらず笑顔だ。
「ポケット…?…むっ?!」
御剣がスボンのポケットに手を突っ込むと、なんと、中に超時石が入っていたのだ。成歩堂も御剣も口をあんぐりしている。
「どうです?みぬきの超魔術は?」
「ま。まぁ、無くさぬようにするコトだ。心くばりは嬉しいよ。」
御剣は当たり障りのない言葉で返した。
「きゃぁ!喜ばれちゃった!」
みぬきは嬉しそうに言った。
「手品はいいとして…コレ高いよね…きっと。真宵ちゃんがヨク飲んでる“トノサマン☆ドリンク”でもケッコー高いし…。」
成歩堂が申し訳なさそうにみぬきに聞いた。
「そう言えば…みぬきちゃん月500円だよね?オコヅカイ…。」
「500円…。(未来の家計も苦しいと見た…。)」
「あっ!オドロキさん、コレっ!」
みぬきはどこからともなく紙を取り出した。そして、その紙をオドロキに手渡した。
「…領収書じゃないかっっ!!」
「みぬき、今、お金ないから!オドロキさん、お願いします!」
「(マンメンの笑みで言われた…)…ご、5000円って高すぎだろっ!」
オドロキは領収書をみぬきに突き付けた。
「ご…」
「5000円?!」
成歩堂と御剣が叫んだ。
「みぬきの今月のキューショクヒも含まれてます!」
「きゅ、給食費?!そんなのお父さんに払ってもらえよ!」
「だってパパ最近シゴトしてないし、みぬきもテスト期間だったからステージお休みしてたし…。オドロキさん、儲けてるでしょ?だってホラ、“弁護士さん”だし!」
みぬきはワザとらしくオドロキをおだてた。
「成歩堂…キミは弁護士だが、毎月家賃に悩まされてるな?」
「あぁ。弁護士は金持ちというステレオタイプは捨ててほしいね。」
「キューショクヒ、また払えなかったら、みぬき転校しなくちゃいけないかも…。セッカク友達も出来たのに…。悲しいな…。」
みぬきは目でオドロキに訴えた。
「(う゛っ…成歩堂さんの入れ知恵か?!)分かった、分かったよ!ハイっ!」
オドロキは財布を出し、5000円みぬきに渡した。
「ごちそーさま!オドロキ君。」
「悪いなワザワザ。」
「(この人達まで…)」
「ありがとーございます!オドロキさん♪では、トクベツに…」
みぬきがレバーを引くとイキオイ良く“ぼうしクン”が飛び出てきた。
『っっ!!??』
まだ見慣れない成歩堂と御剣はぼうしクンの出現に驚きを隠せない。
「ぼうしクンです♪」
『どーも、ヨロシクお願いします。パパさん、ミツルギ検事さん。』
みぬきは笑顔だ。
「オレはパンツ芸が見たいな。」
「パンツって言うなっ!」
みぬきはほっぺをプゥーっと膨らませて怒った。
「まぁまぁ、トニカクみぬきちゃんにオドロキ君、ありがとう!差し入れ!」
「なんと言うか…カンシャしてるぞ。」
成歩堂と御剣が丸くおさめた。
「喜んで貰えてウレシーです!じゃぁ、オドロキさん。明日頑張って下さいね!みぬき、今からビビルバーでお仕事ありますから!」
みぬきは石を取り出し、空間を作った。
「あぁ。ありがとう。」
「じゃぁ、パパ!ミツルギさんにオドロキさん!バイバイ♪」
みぬきは手を振りながら空間に入り、そして消えた。
「…明るいコだな。成歩堂。」
「そうだね。(“パパ”、か…。)…とりあえず、なんかナゴんだね!キンパクした状態が。」
「金もはらわされましたし。」
オドロキはサイフを眺めながら言った。
「じゃぁ御剣、お願いするよ。」
「うム。」
御剣はカバンから、調査の済んだ証拠品を取り出した。
「まずこれを見てほしい。装束のハギレ、だ。ブンセキの結果、このハギレからはトリカブト毒の成分がわずかながら、付着していた。」
「と、トリカブト毒!!」
「被害者の死因じゃないかっ!」
成歩堂とオドロキが同時に叫んだ。
「そうだ。この証拠品が事件に関わりがあるのは、メイハクだろう。」
「装束に付着…。(つまり、ユノミにお茶が注がれる“前”に付着したってコトか!?)」
「ナゼかは分からないが、必ず“理由”が存在するハズだ。…次に移ろう。」
御剣はファイルされた、カケラを取り出した。
「これは、キミが修験者の間で見つけたカケラだ。ブンセキの結果、トリカブト毒の成分を多く含む固形物だと言うコトが分かった。」
「またしても、トリカブト毒!!」
「これが王劉蚕のイノチを奪った…!(ドッグフードじゃなかったのか…。)」
御剣は大きく頷いた。
「その可能性は高い。
お茶の中からトリカブト毒は検出されたのだから、な。」
「(トリカブト毒か…。)」
御剣さらに資料をもう一つ取り出した。
「コレは焼却炉の前にあった足跡だ。調べた結果、コレも被害者の王氏の靴と一致した。」
「えっ…。」
「ってコトは…。」
「王氏が“何か”を焼却炉に捨てた、とも可能性として考えられるだろう。」
御剣が冷静に言った。
「ま、まさか…装束を捨てたんじゃ…。」
オドロキが静かに呟いた。
「その可能性もある。が、すべては可能性にしかすぎない。焼却炉が使われ始めたのが午後1時。王氏が綾里家に到着したのが正午頃。彼があの前を普通に通った可能性だってある。」
「でもドクがフチャクしてるし…。」
成歩堂が反論する。
「しかし、決定的な証拠ではない。検察側はきっとソコをついてくる。少なくとも、私なら、な。」
御剣は冷静に検事としての意見を述べた。
「うぅ…。」
「忘れないでいただきたい。材料は揃った。あとはその可能性でいかに法廷で真実をあぶり出すか、だ。オドロキ君。」
御剣はまた、最後の資料を取り出した。それは堀田クリニックで成歩堂とオドロキが見つけた、足で書かれたモノだった。
「あっ、忘れてた!それは…!」
「(マッタク、キミ達が調査を依頼したのだぞ!)コレを調べた結果、採取した王氏の足の指紋と完全に一致した。これは彼が残したものだ。」

⇒To Be Continued...

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