時空を超えた逆転 3 成歩堂・王泥喜編‐霊媒師の罪‐
作者: 太郎   2008年10月22日(水) 14時15分57秒公開   ID:JsAhK5blwlg
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「ハイハイ!分かりましたわ!ちょっと待ってください。」
昭子はそう言うと保留ボタンを押し、受話器を置いた。
「おばさま?今のお電話なるほどくんからですか?」
春美が昭子を見上げて言った。
「そうよ。春美ちゃん。ちょっと御剣検事を呼んできて貰えるかしら…?修験者の間にいるハズだから!」
「分かりました!」
春美は急いで修験者の間にむかった。渡り廊下に出た時、御剣とハチ合わせになった。
「あっいました!みつるぎ検事さん!」
「春美君。どうしたんだ?」
「とにかく来て下さい!なるほどくんからお電話です!」
「成歩堂から!分かった。案内してくれるか?」
「はい!」
春美は御剣を連れて昭子の元へ戻ってきた。
「御剣さん。成歩堂さんからです。」
「うム。ありがとうございます。」
御剣は受話器を受け取り、保留ボタンを押した。
「成歩堂か?私だが。」
『あっ、御剣!実は見てほしい指紋があるんだ。もしかしたら被害者の“死者からのメッセージ”ってやつかも知れない!』
「“死者からのメッセージ”、だと?分かった。データをそちらへ送ろう。」
『いや、どうやらコレ、足の指紋なんだ。しかも文字が書かれていて、ぼくら素人には照合ができない。』
「なるほど。こちらで調べておこう。指紋の採取はできたのか?」
『あぁ!バッチリだ。』
「分かった。では、データを捜査本部に送ってくれ。番号は123-456、だ。」
『了解!ありがとな!御剣!』
「うム。では、後で会おう。」
そう言うと御剣は受話器を置いた。
「どうなされたんですか?」
春美が御剣のスーツをツンツンと引っ張りながら聞いてきた。
「うム。どうやら、オドロキ君と成歩堂が重要な手掛かりを得たようだ。」
「まぁ。手掛かりを…!」
昭子が嬉しそうな表情をした。
「昭子さん。電話の前にいて貰えますか?また成歩堂から電話を受けたら私に知らせていただきたい。」
「心得ましたわ。」
「カンシャします。」
御剣は会釈をした。
「それでは、私は本部に戻ります。」
「いってらっしゃいませ!みつるぎ検事さん!」
春美が手を振って御剣を送った。御剣も春美に軽く手を挙げて答えると、本部に戻っていった。
同日 午後4時38分 堀田クリニック 受け付けロビーー

「これでヨシ、と!」
成歩堂とオドロキはちょうどFAXを送り終えた。
「でも、もう手掛かりはありませんね。あの部屋。」
「そうだなぁ…。」
その時、聞き覚えのある声がした。
「ホッホッ…。」
『!!(このコエは…!)』
2人は同時に振り返った。
「院長の堀田ですわ。ホッホッ。」
モモシキをはき、白衣を着た、変なオジサンが2人の後ろに立っていた。全身は激しく掻いている。
「(自称)堀田院長!!」
「(自称)引田院長!!」
成歩堂とオドロキが同時に叫んだ。
「えっ?引田?この人、(自称)堀田院長だよ。」
「いや、7年後には(自称)引田院長になってマスよ…成歩堂さん。(7年前から“院長”やってんのかよ!このオジサン…。)」
「な、なんだってっ?!(…ナニモノなんだ?この人…)」
「と、とりあえずハナシを聞いてみましょう!」
オドロキが立て直した。
「院長サン、203病室に入院してた患者について知りたいんですケド…。」
「203、203…。んっ。男性患者はヨク知らんよ。ホッホッ。」
「うげっ!」
(自称)堀田院長のストレートな答えが成歩堂を刺した。
「(印象には残らないよな…。昨日、意識不明で運ばれてきて今日ポックリ逝っちゃったもんな…。)」
オドロキは冷静に考察してる。
「ダメじゃない。おじいちゃん、院長先生の白衣を着ちゃぁ!」
後ろを振り返ると、色白で、背が高く、ほっそりした美人看護婦が立っていた。
「お!ワカナちゃん!今日もカワイイねー!」
堀田はイヤラシイ顔をして看護婦を見つめた。
「おじいちゃん、点滴の時間ですよ!病室に戻りなさい!」
「お。いいねぇー!ワカナちゃんの怒った顔!ん。」
「今日は川村看護婦がおじいちゃんの点滴を担当するわ。」
「お!サナエちゃんか!ホッホッ〜♪」
(自称)堀田院長はスキップしながら病室へ戻って行った。そして、看護婦と堀田院長のやりとりをアングリと口を開けて見ていた、成歩堂とオドロキはやっと正気に戻った。
「失礼ですが、どちら様ですか?」
看護婦が優しく2人に微笑みかけた。
「オレ達、弁護士です!」
「今日ここで亡くなった中国人男性の件を調べているんです。」
成歩堂は弁護士バッチを看護婦に突き付けた。
「弁護士さんですか。分かりました。私、その患者さんを担当していました、若林です。」
若林看護婦はテイネイに自己紹介した。
「あの患者さんを見てたんですか!お話し聞かせてくださいっ!」
オドロキが食らいついて言った。
「そうですね…。例えばどのようなコトを?」
「例えば…その患者の印象ですとか、不可解な点とか。なんでもいいです!」
成歩堂が言った。
「う〜ん…。そう言えばあの患者さん、キレイな方だったわ。最初は女の人かと思いました。」
「女の人、ですか?」
「あっ、ちょっと待ってて下さい。あの患者さんのカルテ持ってきますね!」
若林はサッと受け付けに入り、資料を持って戻ってきた。
「この人です。キレイですよね!」
若林はカルテに挟んである王の顔写真を2人に見せ付けた。写真の王劉蚕は黒髪で長髪ので、かなりのイケメンだった。
「たしかにキレイですね。女性みたいだ。」
オドロキはボーっと写真を見た。
「よろしかったら、このカルテ差し上げます。もう亡くなった方のは処分するコトになっているので。」
「ありがとーございます!」
「どういたしまして!」
若林はニコっと微笑んだ。
「若林さん、他に何か気になったコトとかありますか?」
成歩堂が尋ねた。
「他にか…他に他に…。あっそうだ!ちょっとこっちに来て下さい!」
若林は成歩堂とオドロキを裏口に案内した。3人はそのまま外に出た。
「こんなトコでスミマセン。病室内は電源を入れてはイケナイので…。」
「全然大丈夫です!」
「(さっき、かけちゃったよ…。)」
「ありがとうございます。…弁護士さん、これを見てください!」
若林は携帯を開き、ある画像を見せてきた。それは、亡くなった直後の王氏が写っていた。
「こ、これは…!!」
「私、一応この患者さん殺人の被害者になったワケだから、写メを撮っておいたんです。でも刑事さんに見せたら凄く怒られて、消せって言われたんです。なんか腹立ったから消去するフリをして残しておいたんです。」
「看護婦さん!これ、送ってもらえますか?!」
オドロキが頼んだ。
「えぇ!こう言うトキのタメに残しておいたんですもの!赤外線でいいかしら?」
「はい!大丈夫です!」
「(オドロキ君も最新のケータイ持ってるのか…。)」
オドロキは携帯を取り出し、若林の画像を赤外線受信した。
「ありがとうございます!」
「いいえ!お役に立てて嬉しいわ!じゃぁ、私、点滴の時間なので失礼します。」
若林はそう言うと2人に手を振りながらその塲を去った。
「…写メ、見せてくれないか?オドロキ君。」
「ハイ!」
成歩堂とオドロキは携帯画像を見だした。そこには、死亡直後の王氏が生々しく写っていた。王はベッドの上でアオムケになって倒れ、彼の左腕からは点滴が外れていた。そしてその時は気にならなかったが、王は左手の小指に絆創膏を貼っていた。
「ん〜…。トクに手掛かりはないかなぁ…。」
「でも成歩堂さん!点滴が外れています!不自然じゃないですか?」
「点滴…。でもトリカブトって死の直前、モーレツに苦しくなるって言うよ。」
「う〜ん…。(しかし点滴が外れるまで暴れるだろうか…。)」
オドロキは考え出した。
「ナットクいかないかい?」
「いえ…。でも可能性のハナシです。」
「そうだね…。とりあえずこんなカンジかな。ココで集めた情報は!」
成歩堂が言った。
「そうですね!…それと、そろそろ閉まるんじゃないんですか?留置所。」
「あぁっ!後、10分…!(しまった!間に合わない…!)」
♪チャラッチャララチャラララ〜
「あっ、成歩堂さん!ケータイが!」
「あっ本当だ。トニカク、ココを出よう。(たく、誰だよ…)」
成歩堂はそう言いながら通話ボタンを押した。
「はい?」
『私だ。成歩堂。』
「御剣!」
『留置所の面会時間をのばしてもらった。キミとオドロキ君は真宵君と話してくるんだ。』
「おっ!ありがとう!…でも御剣は…?」
『私はまだ時間がかかりそうだ。後で、キミの事務所へ行く。調査結果を渡さなきゃならんからな。』
「分かったよ。…ありがとな。御剣!」
『ナニ、キミには助けられっぱなしだからな。じゃぁ、オドロキ君と真宵君によろしく伝えてくれ。』
「あぁ。じゃぁな。」
ピッ。
「御剣さんですか?」
オドロキが聞いた。
「あぁ。あいつ、面会時間をのばしてくれたんだ。」
「本当ですか?!じゃぁ、行きましょうよ!」
「あぁ!行こう!」

同日 午後5時28分 留置所ー

「今度こそ真宵ちゃんと初対面だね。オドロキ君。」
「ハイ…。(真宵さんがオレを受け入れてくれるかがシンパイだ…。)」
オドロキは少し弱気に答えた。
「オドロキ君…?」
「真宵さんは果たしてオレを受け入れてくれるでしょうか…?」
「ナニ、イキナリ弱気になってんの?オドロキ君!」
成歩堂は笑いながらオドロキの背中をポンポンと叩いた。
「真宵ちゃんはそんなコじゃないよ!それに千尋さんからも説明を受けてるだろうし!」
「そうですか…?」
オドロキは顔を上げた。
「当たり前じゃん!おっ!ホラ、出てきた!(以外とナイーブなんだなぁ…オドロキ君。)」
成歩堂が指差した先に真宵がアクリル板越しに現れた。
「なるほどぐ〜ん!!私やってないよ〜!」
真宵は泣きながらこちらに迫ってきた。
「真宵ちゃん…!」
「(この人が綾里真宵さん…!)」
真宵は顔をあげてオドロキを見た。
「真宵ちゃん、紹介するよ!彼が今回、キミを弁護する王泥喜弁護士だよ。」
成歩堂がオドロキを真宵に紹介した。真宵はオドロキを見るなり、泣き止んだ。
「お、王泥喜法介です。その…7年後から来ました。(てゆーか来させられた。)」
オドロキは真宵に自己紹介した。
「あ…綾里真宵です。よろしくお願いします!オドロキさん!」
オドロキの予想に反して真宵は満面の笑顔で返した。
「あと、堅苦しいのナシにしましょう!…オドロキ君って読んでいい?」
オドロキも緊張がほぐれた。
「みんな彼をそう呼んでるよ!」
成歩堂が言った。
「大丈夫です!よろしくお願いします!」
「うん!お願いします!…てかさっきお姉ちゃんから聞いたんだけど、今回、御剣検事も協力してくれてるんだよね?あたしの裁判に。」
「あぁ。御剣は今、倉院で調査してくれているよ。面会をのばしてくれたのもアイツだ!」
「へぇ…!でも御剣検事…誘拐されてたんだよね?その…昨日まで。」
真宵は考えながら言った。
「そして、昨日までオレは御剣検事誘拐事件の容疑者だった。」
オドロキが言った。
「御剣の誘拐、そして真宵ちゃんが着せられた殺人罪…。すべてある人物が仕組んだ可能性があるんだ。」
「ガリューって人だよね?」
真宵は千尋のメモを読みながら言った。
「そう。牙琉霧人。超一流の弁護士…。オレの師匠だ。」
オドロキは暗い表情で言った。
「そ、そうなの?!オドロキ君!お姉ちゃんそんなコト書き残してくれなかったよ!」
真宵は大口を開けて驚いた。
「彼は7年後、刑務所に収容されてるんだけど、オレと成歩堂さんに復讐するために御剣さんを人質にとったり、真宵さんに罪を着せたりしたと考えられるんだ。」
「ヒドイ…。カワイイお弟子さんにフクシューなんて…狩魔検事(父)みたいだね。…でもちょっと待って!」
「?(カルマ…?)」
「その人、刑務所にいるんだよね?どうやってこんな犯行を?お姉ちゃんのメモによると時空を操れる“石”を使ったってあるケド…。」
「ガリューはね。完璧なロジックでコトを運ぶらしいんだ。今回の事件もカナリ前から計画されてたらしい。」
成歩堂が言った。
「ろじっく…。」
「明日は必ず…牙琉霧人を法廷に引きずり出すよ。」
オドロキは拳に力を入れた。
「オドロキ君…。」
真宵が呟いた。
「モチロン、牙琉霧人を引きずり出すのは容易なコトではない。だから今回、僕たちの他に多くの人が協力してくれてる。」
「多くの人…?」
「まず、御剣。そしてイトノコ刑事に春美ちゃん。7年後からはぼく、宝月茜刑事、牙琉霧人の弟。」
「な、なななねんごのなるほど君?それにガリューって人の弟さん?!」
真宵は驚いてる様子だ。
「“な”が1つ多いよ、真宵ちゃん。牙琉の弟、響也は検事なんだよ。」
「ガリュー検事…。ちなみに明日の裁判の検事サンも…?」
「明日は狩魔冥が担当検事だよ。」
『えっ!?メイちゃんが?!』
真宵はガックリと肩を落とした。

⇒To Be Continued...

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