時空を超えた逆転 3 成歩堂・王泥喜編‐霊媒師の罪‐
作者: 太郎   2008年10月22日(水) 14時15分57秒公開   ID:JsAhK5blwlg
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春美もとっさに言った。鬼野は真宵の依頼状を読んだ。
「いいだろう。許可する。ただし、あまりウロチョロしないで欲しい。」
「あっハイ!大丈夫です!」
オドロキは声が裏かえった。
「ありがとうございます。」
成歩堂達は鬼野に会釈して、中に入っていった。

同日 午後1時57分 修験者の間ー

「事件概要によると…被害者にここでお茶を真宵ちゃんが入れた…。そして彼はお茶を飲んで、間もなく中毒によって倒れる…か。」
成歩堂が資料を読み上げた。
「そして、お茶には毒が検出されたんですよね!トリカブトの種を粉末にしたモノが…!」
オドロキが言った。
「そして、その時部屋にいたのは、真宵君と被害者のみ…。他の者は事件が起きてから部屋に駆け付けた、か。春美君?」
御剣は春美に問い掛けた。
「なんでしょう?みつるぎ検事さん。」
「何故、他の者達は遅れて現場に着いたか、知ってるか?」
御剣はしゃがんで春美の目線に合わせた。
「確かに…モロ真宵さんと被害者を二人きりにさせた感がありますね…。」
オドロキは指で眉間を指しながら言った。
「あの時、わたくしお庭から拝見していたんですけれども、真宵さまとお客様、それに親戚のおばさまと3人で、修験者の間にむかわれてました。」
春美は思い出しながら言った。
「3人で…。それから?」
成歩堂が春美に聞いた。
「それから、お客様が飾ってあった花瓶を割ってしまったんです。」
「庭から見た…つまり、渡り廊下に飾ってあったんだね?その花瓶。」
成歩堂が春美に聞いた。
「はい。そうです。それから、おばさまは花瓶の始末を始めて、真宵さまに“先に行ってて下さい”って言ってました。わたくしもおばさまの片付けを手伝いました!」
「なるほど…。春美ちゃん、おばさんって今どこにいるか分かる?」
オドロキが春美に聞いた。
「おばさまなら、控えの間にいるのではないでしょうか?いつもお掃除してるので!」
「なるほど、ね。控えの間に行こう!ついでに渡り廊下も調査しよう。」
成歩堂が提案した。
「そうだな。ここはまだ警官が多くて捜査しにくいからな。」
御剣も賛同した。
「しかも、捜査してる警官も…御剣さんに気付き始めましたネ。」
オドロキは周りを気にしながら言った。
「無理ないよな。オマエ、誘拐されてたんだから。つい昨日まで。」
成歩堂も周りを見た。
「む…。キミ達、先に行っててくれ。私は警官に一応挨拶をしてから行く。」
「はい!早く来て下さいネ!」
春美が言った。
「あぁ。じゃぁ、また後で会おう。」
御剣はそう言うと警官の元へ行った。
「じゃぁ、成歩堂さん。行きましょう。」
「あぁ!オドロキ君。春美ちゃん、案内お願い!」
「はい!」

同日 午前2時8分 渡り廊下ー

「ここに置いてあった花瓶をお客様は割ったんです!」
「ここは…綾里供子のツボが前に飾ってあった場所じゃないか!」
成歩堂は腕を組んだ。
「なんですか?アヤサトキョーコのツボって?」
オドロキが尋ねた。
「綾里供子様です!おどろきくん!」
「あっハイ…(ワケも分からず怒られた…)」
「綾里供子は倉院流霊媒道の創始者で…たしかそのツボの中にその人の魂が封じ込まれてるらしいよ。」
成歩堂が説明した。
「あ!前に記録を読んだコトが!前にココで事件があった時、そのツボが事件解決の鍵となったとかて言う…!」
オドロキはひらめいたように言った。
「良く知ってるね!」
成歩堂は関心した。
「えへへ…。」
オドロキは照れ笑いしてる。
「そう言えば、ドコにあるの?倉院のツボは?」
「ツボは今、控えの間に飾ってあるんです!あそこの方が割れにくいので…。」
春美は最後の方ボソっと言った。
「なるほどね…。(そっか…春美ちゃん一度割ってるもんな…ツボを。)」
「成歩堂さん!ここに花瓶があったとしたら、カナリ無理ありません?落とすのに。」
オドロキは花瓶の置いてあった台に手を当てながら言った。
「確かに。カナリ無理があるな…花瓶を落とすのは…。春美ちゃん、花瓶の落ちる瞬間見てた?」
成歩堂が春美に聞いた。
「わたくし、見てないんです。ガチャンって音で顔をあげたもので…。」
「そっか…。」
成歩堂は台を見つめながら言った。
「あれ?あんなトコに焼却炉が!」
オドロキは庭の奥にある焼却炉を見つけた。
「あぁ。ここの人は自分達でゴミを処理するみたいだよ。」
成歩堂が言った。庭は一面雪景色なのに、焼却炉の周りだけ雪がなくなってる。
「焼却炉…使ったみたいですね。」
オドロキは焼却炉を見ながら言った。
「昨日も、おばさまが使ってました!」
春美は笑顔だ。
「とにかく調べてみよう。何か出てくるかもしれないしね。」
「そうですね。」
3人は焼却炉の元まで移動した。焼却炉の周りの雪がかかっていない部分には、一箇所だけ、足跡が残っていた。
「足跡か…。茜さんがいたら調べられるのに…。」
オドロキは呟いた。
「とにかく、データを取って、後でイトノコ刑事に調べてもらおう!」
成歩堂はそう言うと、足跡のデータを法廷記録に挟んだ。
「この中にも何かありそうですね!」
春美は焼却炉のフタを開けた。
「じゃぁ、調べてみますね。」
オドロキは中に手を突っ込むと、何やら布を見つけた。
「こ、これは…真宵ちゃんの装束!?…のカケラ?」成歩堂はそれを見るや否や叫んだ。
「真宵さんは、服を脱ぐ機会なんてなかったし、必要なかったハズ…。これは手掛かりになりますね。」
オドロキは装束の端切れを法廷記録に挟んだ。
「その雪も…気にならないか?」
後ろを振り向くと御剣が立っていた。
「みつるぎ検事さん!」
春美は嬉しそうに言った。
「何が気になるんだ?御剣。」
成歩堂が聞いた。
「とりあえず、そこを見てみるのだ。」
御剣の指の先を見てみると、1番土に近いトコに積もってる雪の上が不自然に盛られていて、そこから少し離れたトコに雪を手ですくったような跡が残っていた。
「これは?!」
オドロキは食いつくように跡を見つめた。
「恐らく、何者かが焼却炉を使用した時に足跡がついたので、雪で隠した…といったトコだろう。」
御剣は腕を組んで言った。
「雪で隠した…と言うコトは、ココにいたコトが知られてはマズイ人物が焼却炉を使った可能性があるな!」
成歩堂が言った。
「そうだ。ちなみにココの人に聞いた所、昨日雪が止んだのは午後3時前だそうだ。」
御剣はポケットからメモを取り出して言った。
「つまり、雪で足跡を消した人物はそれ以降の時間にここを訪れた…と言うコトですね!」
オドロキはその場を撮影し、法廷記録に挟んだ。
「あら、春美ちゃんじゃないの!」
渡り廊下の方から、女性の声が聞こえた。
「あっ!昭子おばさま!」
春美は嬉しそうにその女性に手を振った。綺麗な黒髪を横に流した背の高い女性が春美に手を振り返した。
『(キレイな人だ…。)』
成歩堂、御剣、オドロキ、3人同時に思った。
「あの方が昭子おばさまです!」
春美が嬉しそうに紹介した。
「あなた方は…?」
昭子は3人を見て言った。
「あっ、ぼくは成歩堂龍一、弁護士です!」
「私は、御剣伶侍と申します。今回の事件担当ではありませんが、検事やってます。」
「王泥喜法介です!真宵さんの弁護士です!」
「あら、あなた方がなるほどくんと御剣検事さんなのですね…。真宵様からお話し伺ってますわ。」
昭子はニコッと笑った。
「あなたは…初めてお名前を聞きましたわ。真宵様の担当弁護士でいらっしゃるんですね?」
「ハイ!オレ、大丈夫です!今回、真宵さんの弁護士をやらせて頂きます!」
オドロキは威勢良く言った。
「まぁ、大丈夫さん!今回は真宵様をよろしくお願いしますね!」
「あっ…スミマセン。オレ、オドロキと申します。(しまった…またやってしまった。)」
オドロキは照れ笑いしながら言った。
「あら、失礼しましたわ…。オドロキさん。申し遅れました。私、綾里昭子と申します。舞子様とキミ子様とはイトコ関係にございます。普段は東京で、エッセーを書いてますの。」
昭子はニッコリと上品に微笑んだ。
「おばさまはいつもココにいるワケではないので、寂しいです…。」
春美は下を向いた。
「今回は、なるほど君が真宵様の弁護をやられないのですか?それに御剣さん。そのおケガは?」
昭子は成歩堂と御剣を見て心配そうに言った。
「私は、昨日ちょっと事件に巻き込まれまして…。(ココにはテレビはないのか…?)」
「ぼくも、法廷でちょっとしたトラブルがありまして、謹慎を受けちゃったんです…。」
御剣と成歩堂はそれぞれの事情を釈明した。
「まぁ、そうだったのですか…。大変でしたわね。」
昭子は気の毒そうに言った。
「あぁ、もうそりゃマッタク。」
御剣と成歩堂は同時に言った。
「昭子さん、昨日のコト、聞かせてもらえませんか?」
オドロキは昭子に言った。
「分かりました。とりあえず、ここでは何なので控えの間へ参りましょう。皆様、案内しますわ。」
昭子はニッコリ笑って言った。しかしその笑顔には何かぎこちないモノも感じられた。
「はい!おばさま!」
春美は笑顔で昭子に飛びつき、一行は、彼女を先頭に控えの間へむかった。

同日 午後2時22分 控えの間ー

「それでは、昭子さんお話しを聞かせもらえますか?事件当日のコトを。」
オドロキが尋ねると、昭子は少し困った表情をした。
「私…明日の裁判で、証言するコトになってしまったのです。刑事さんから口止めされているんですけど…。」
昭子は下を向いて言った。
「え゛っ、証人…ですか?(一体何を見たんだ?!)」
オドロキは固まった。
「検察側の証人か。またしても。」
御剣はため息をついた。
「御剣、お前、何も聞いてないのか?」
成歩堂が聞いてきた。
「うム。担当検事ではないからな。事件概要しか知らされていない。…どうやら検察側には決定的な証拠があるみたいだが…。」
御剣は困ったような表情で言った。
「決定的なショーコですか?!(ウソだろ?!)」
オドロキは叫んだ。
「そんな…真宵さまが…。」
春美の目に涙を浮かべた。
「しょうがないな。」
成歩堂はポケットから勾玉を取り出そうとしたその時だった。
「ウロチョロされては困ると言ったハズだが…?」
フスマが凄いイキオイで開き、鬼野刑事が部屋に入って来た。
「あっ…刑事さん…。」
昭子は怯えたような顔をして言った。
「御剣検事。あなたが弁護士に情報を漏らすのであれば、あなたを拘束しなければなりませんね。」
鬼野は鋭く御剣を睨みつけた。
「私は、検事局長が弁護人用に用意した資料を渡しただけだ。キサマに私を拘束する権限はないはずだが?」
御剣も鬼野を睨みつけた。
「だめです!みつるぎ検事さん!あの刑事さんに逆らっては!」
春美が急いで御剣を止めに入った。
「どうしたのだ、春美君?」
「あの人に逆らったら、検事さんまで連れていかれてしまいます!」
春美は涙目で訴えた。
「お嬢ちゃん、良く分かってるね。そう言うコトです。検事殿。」
鬼野は御剣を見て不敵に笑った。
「何だと?!」
御剣はここで始めて感情的になった。
「おい!お前達!御剣検事を拘束しろ!」
「な、なんだって?!」
「御剣さんを拘束?!」
成歩堂とオドロキは思わず叫んだ。鬼野が合図をすると5人程警官が出て来て、御剣を取り押さえた。
「キサマ!何をするっ?!」
御剣は必死に抵抗したが、3人の体格のいい警官にがんじからめにされた。昭子は両手で顔を覆い、春美は泣き叫んでいた。
「御剣っ!」
成歩堂は叫んだが、警官達は彼を無視した。オドロキは怒りで震えていた。
「私に逆らうと言う行為は捜査妨害になるので、気をつけるコトです。御剣検事…。」
鬼野は御剣の胸元をわしづかみにして言った。
「キサマ…!」
御剣は鬼野を睨みつけるしか出来なかった。
「そんなコト許されるワケがないっ!今すぐ御剣さんを離してくださいっ!」
オドロキは耐え切れず、叫んだ。
「オドロキ君!」
成歩堂はオドロキを止めに入った。
「…キミも恐い物知らずだな…。お前達、こいつも連れていけ!捜査妨害だっ!」
鬼野が合図するとオドロキも取り押さられた。
「離せっ!」
オドロキは激しく抵抗したが彼もがんじがらめにされた。
「おどろきくーんっ!みつるぎ検事さーんっ!わぁぁぁぁぁんっ!」
泣き叫けぶ春美を昭子は優しく抱きしめた。
「御剣っ!オドロキ君!」
成歩堂も怒りの限界を越え、鬼野を止めに入ろうとした。
「成歩堂っ!…よせ!君まで捕まったら真宵君はどうなる?」
御剣は成歩堂に冷静に警告してきた。成歩堂は我に返り、握った拳を解いた。
「御剣っ…!」
成歩堂は絞り出すように言った。
「さすがです。御剣検事。良く分かってらっしゃる。よし!2人を連れていけっ!」
警官達は御剣とオドロキを連れて部屋を出た。その時、鬼野の携帯が鳴った。
ピピピ…ピピピ
「失礼。」
鬼野は携帯で通話し始めた。
「はい、鬼野です。……なんだとっ?!今すぐ行く!」

⇒To Be Continued...

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