時空を超えた逆転 3 成歩堂・王泥喜編‐霊媒師の罪‐
作者: 太郎   2008年10月22日(水) 14時15分57秒公開   ID:JsAhK5blwlg
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ブチっ。
「被害者の王氏の意識が戻りそうとのコトだ。私は病院で聴取を行う。」
鬼野はジャッカン焦っているように見えた。
「はっ!いってらっしゃいませ。刑事殿!」
警官は敬礼をした。
「じゃぁな。成歩堂弁護士さん。御剣検事とあの新人弁護士は私の特製・護送車で拘束しておく。キミもそこに入りたくなければ、気をつけるんだな!」
鬼野は吐くように言って部屋を出た。成歩堂は怒りで震えが止まらなかった。
「…あいつ…!」
「…真宵さまも、あの人に連れてしまったんです。…私は真宵さまを助けたいのに、あの刑事に警告されて…!」
昭子の目から涙がこぼれ落ちた。
「わぁぁぁぁん!真宵さまぁ!みつるぎ検事さぁーんっ!おどろきくーん!」
春美も依然泣き止まない。
「…ここで立ち止まってもしょうがない。捜査を続けよう。」
成歩堂はチカラなく言った。
「弁護士さん…。」
鬼野に敬礼をした警官が成歩堂に話しかけて来た。
「何ですか?」
成歩堂は無愛想に答えた。
「鬼野刑事は、帰ったので今の内に昭子さんから話しを聞いてください。…誰にも聞かれないように!」
警官は周りを気にしながら言った。
「えっ…。」
成歩堂はキョトンとして言った。
「じゃぁ、本官は捜査に戻ります!」
そう言うと、警官は部屋を出た。
「あの人、真宵様がタイホされた時も私に鬼野刑事に逆らわないようにと警告してきた方ですわ…。」
昭子が言った。
「そうなんですか…。」
成歩堂は考えながら言った。
「なるほどくん…。おどろきくんとみつるぎ検事さんはどうなるのでしょうか?」
春美は涙目で成歩堂に聞いて来た。
「ここをまだ出ていないだろう。護送車に拘束してあるって言ってたし…。…鬼野刑事か。彼が御剣とオドロキ君をここから遠ざけたのは“理由”があるんだろうな…。」
成歩堂はボンヤリと呟いた。
「なるほどくん!どーゆーコトですか?」
春美は成歩堂のスーツを掴んできた。
「うん…。ぼくの聞き違いでなければ、鬼野刑事は知ってるハズがないんだ。オドロキ君が新米弁護士だってコトを…。」
成歩堂はその場に座って言った。
「言われてみれば…!なるほどくん!あっ!もしかして!?」
春美が震えながら言った。
「あぁ。鬼野刑事はヤツとグルの可能性がある…!昭子さん!教えてください!あなたが目撃したコトを!」
「分かりました。」
昭子は涙を拭って言った。
「私は、外国からお客様がいらっしゃる言うコトを聞いたので、23日から倉院に東京から戻ってまいりました。あの日は、真宵様とお客様に屋敷案内をしていました。そして、一通り見回った後、修験者の間でお茶を飲むコトにしました。」
昭子が静かに語り出した。
「それで、渡り廊下を経由して修験者の間へ?」
成歩堂は質問した。
「そうです。その時お客様は廊下に飾ってあった花瓶を割ってしまったの。私は花瓶を片付けて真宵様に先にお茶をお出しするように言いました。そして片付け終わって、修験者の間へ行ってみると…お客様が片手に湯飲みを持った状態で倒れたんです!」
昭子は感情的に言った。
「…その時不自然に思ったコトはありませんか?」
成歩堂は再び質問した。
「そうですね…。花瓶を割った時…少し不自然に感じられましたね。」
「本当ですか?!(やっぱり!)」
成歩堂は身を乗り出して言った。
「えぇ。イキナリ手を大きく振り上げたんです…。私にはワザと花瓶を割ったように見えました。あと…」
「あと?!」
成歩堂は反射的に聞いた。
「あと…何かあったんです…。でも思い出せないんです!」
昭子は悔しそうに言った。
「なんとか思い出せませんか?!」
「ずっと思い出そうとしているんですけど…。」
昭子は眉間シワを寄せて言った。成歩堂は勾玉を取り出した。
「(サイコ・ロックは出ない…か。)わかりました。昭子さん。参考になりました。」
成歩堂は笑顔で言った。
「すみません…。成歩堂さん…。」
昭子は申し訳なさそうな表情をした。
「大丈夫です。ありがとうございます!…じゃぁぼくは調査に戻ります。…行こう、春美ちゃん。」
「はい!じゃぁ、おばさま、また!」
成歩堂と春美は会釈して部屋を出た。
「とにかく、先に護送車があるか確認しよう。少なくとも、オドロキ君は解放して貰わないと…。」
成歩堂が言った。
「おどろきくんがいないと明日の裁判はダメになってしまいます。」
春美は袖を捲くりながら早歩きした。
「そうだね。行こう!」
成歩堂と春美が渡り廊下から、修験者の間へ入る瞬間、目の前に誰かが飛び出した。
『うぉぉぉっ!アンタぁっ!どこにいたッスかぁぁ!』
イトノコ刑事が笑顔で叫んで来た。
「い、イトノコ刑事?!(ビ、ビックリしたぁ…。)」
成歩堂は心臓を押さえながら言った。
「来ちゃったッス!課長殿にムリヤリ出張を申請したッス!」
イトノコはご機嫌だ。
「はぁ…。」
成歩堂はヨウヤク落ちついてきた。
「あれ?あの弁護士と御剣検事はどうしたッスか?!」
イトノコはやっと2人がいないコトに気付いた。
「おどろきくん…みつるぎ検事さぁん…わぁぁぁぁん!」
春美はまた泣き出した。
「ど、ど、どうしたッスか?!」
イトノコはイキナリ泣き出した春美に驚きを隠せない。
「イトノコさん…。実は御剣とオドロキ君がさっき鬼野刑事に拘束されたんです。」
『な、なんスとぉぉぉぉぉぉ?!こ、拘束ッスか?!』
イトノコは叫び出した。
「はい…。その刑事に逆らって、捜査妨害に…。」
成歩堂に再び怒りの感情が蘇った。
「逆らってただけって…許せないッス!すぐに釈放させるッス!」
イトノコは叫んだ。
「釈放出来るんですか?!」
成歩堂が顔を上げて聞き返した。
「もちろんッス!こんなの違法ッスから!今、御剣検事達はどこに?!もう連行されたッスか?!」
イトノコは成歩堂に迫った。
「なんか、特別な護送車に拘束されてるって…。」
『護送車ッスか…?…あぁぁぁぁっ?!屋敷の前にあったデカイ護送車ッスね?!分かったッス!ほら、お嬢ちゃん!泣くのやめるッス!』
イトノコは春美の肩を握った。
「刑事さん…!」
春美はやっと泣き止んだ。
「ほら、アンタも行くッス!うぉぉぉ!御剣検事ぃぃ!今、助けに行くッスぅぅぅぅ!」
イトノコは成歩堂の腕を掴んで走っていった。

同日 午後2時55分 鬼野特別・護送車内ー

「なんだココは…。」
御剣が呟いた。
「カンゼンに人権侵害ですよ…。」
オドロキが言った。
「その前にリッパな監禁罪だ。…これから我々はどうなるのだろうか?」
「さぁ…。」
2人は鬼野刑事の特別護送車の中にいた。護送車の中は外観からは、想像できないくらい狭く、相手が見えないくらい、真っ暗だ。しかもイヤに息苦しい。
「マッタク狭くて身動き取れないが…オドロキ君、明日の法廷、どうするんだ?」
御剣が心配そうに聞いた。
「もう、ココを出るしかないっぽいです…。何がなんでもココを出ないと、真宵さんが…!」
オドロキは力を込めて言った。
「うム…。これは違法捜査だ…。ム!そうだ!携帯から通報すれば…」
「どっちにしろ…ココ圏外です。御剣さん…。」
オドロキは力無く言った。
「…そうなのか。しかもココは外からの音が一切聞こえないようになってるな…。防音になっている。助けを求めることすら出来ないな。」
御剣は辺りを見回して言った。
「あぁ、もうどうすればいいんだ?!気が変になりそうです…!」
オドロキが嘆いたその時だった。
ガチャガチャっ!
「!!…なんだ?!」
御剣は前方に見えるドアが動いているのを見た。
バンッ!
ドアがイキオイ良く開き、車内に光りが入ってきた。
『うぉぉぉっ!御剣検事ぃぃぃ!王泥喜弁護士ぃぃぃ!』
聞き覚えのある声がした。
「イトノコギリ刑事だ!!オドロキ君、どうやら助かったみたいだ!」
「そうみたいですね!」
御剣とオドロキに笑顔が戻った。
「御剣っ!オドロキ君!」
「みつるぎ検事さんっ!おどろきくーんっ!」
イトノコ刑事に続き、成歩堂と春美も車内に乗り込んできた。
「成歩堂さん!春美ちゃんも!」
オドロキが叫んだ。
「礼を言うぞ!!」
御剣は冷静に言った。
「こりゃ、ヒドイッスね…!」
「マックラです…こわいです…」
イトノコと春美はあまりにもヒドイ護送車の中を見て言った。
「こりゃ、監禁罪に相当するな…。」
成歩堂は呟きながら2人を外に誘導した。
「礼を言わせてもらうぞ。」
「ありがとうございます!」
2人は御礼を言った。
「とにかく、無事で良かったよ!」
成歩堂がそう言うと、全員護送車を出た。5人が護送車を出ると、先程、成歩堂に忠告してきた警官を筆頭に鬼野の部下達が並んでいた。怯えている様子だ。その後ろにイトノコの部下達が並んでいた。
「アンタ達、今のは違法捜査ッス!上に報告を入れておくから、覚悟するッス!」
イトノコは勝ち誇った様に叫んだ。
「とにかく、我々は引こう。新しい捜査チームがここに入る。」
先程の警官が他の部下達に指示した。
「諸君、来月の給与査定…楽しみにしておくコトだ。」
御剣は静かに腕を組んで言った。
「(御剣さんすげぇ…!)」
このセリフを初めて聞くオドロキは、1人関心してる。
「他人が言われてるのを見ると、少し愉快ッス。」
イトノコは笑顔で言った。
「さぁ、行こう。」
あの警官は、成歩堂達に会釈すると部下達を連れて帰って行った。
「おどろきくーん!みつるぎ検事さぁ〜ん!」
春美は2人に抱き着いてきた。
「これで、真宵ちゃんの弁護が出来るね!オドロキ君!」
「はい!大丈夫です!ありがとうございます!」
オドロキは春美の頭を撫でながら会釈した。
「本当にイトノコ刑事がココに来てなかったら、どうなってたコトか…。」
成歩堂は、イトノコの肩に手をポンっと乗せた。
「感謝するぞ。刑事。今回は助かった!」
「イトノコさんありがとうございますっ!」
「いやぁ〜アハハハ。」
イトノコは照れ笑いをした。
「これで、また捜査ができます!」
春美はピョンピョン跳ねた。
「そうッス!ソーサッス!」
イトノコはそう言うと捜査チームを配置につかせた。
「まだやるコトたくさんありますね!」
オドロキはネクタイを締め直した。
「あっそうそう。“おデコ君”ってのはアンタのコトッスか?」
イトノコがオドロキに聞いた。
「はい。牙琉検事がオレのコトをそう呼んできます。」
オドロキはポケットに手を突っ込んだ。
「じゃ、これきっとアンタのッスね。ここに来る前、携帯が繋がらなかったから一度、成歩堂法律事務所に寄ったッス。そしたら、テーブルにこれが置いてあったッス!」
イトノコは“おデコ君へ”と書かれた手紙をオドロキに渡した。
「牙琉検事からの手紙か。きっと重要なコトが書いてあるに違いない!」
成歩堂が言った。
「そうだな。」
御剣も手紙に視線を送った。オドロキはゆっくりと響也からの手紙を開いた。
[おデコ君。重要な手掛かりを掴んだので、手紙にさせてもらうよ。先程から成歩堂龍一と刑事クンがアニキの取り調べをしてる。その中でアニキと被害者の中国人との間に関係がある可能性が出てきたそうだ。調べてみる価値はあると思うよ。]
「…被害者と牙琉先生が?!」
オドロキは静かに言った。
「なるほど。事件の輪郭が掴めてきたな。」
成歩堂が呟いた。
「どうゆうコトだ?成歩堂!」
御剣が聞いてきた。
「さっき、昭子さんの話しを聞いた時…被害者は渡し廊下で花瓶を割った時、ワザと花瓶に触れたように見えたと言っていたんだ。」
「何?!ワザと、だと?!」
御剣が聞き返した。
「ワザとか…。つまり、被害者と真宵さんが2人っきりになるためにやった…とも考えられますね。」
オドロキは腕を組みながら言った。
「それともう一つ。鬼野刑事が、御剣とオドロキ君を部下に連行させた後、オドロキ君のコトを“新米弁護士”と表現したんだ!」
成歩堂が言った。
「でも新米弁護士なんスよね?アンタ?」
イトノコはオドロキを見た。
「まだ気付かぬか!刑事。あの鬼野刑事がオドロキ君のコトを知ってるハズがないのだ!」
御剣が言った。
「つまり、彼も牙琉霧人と関係を持っている可能性がある…と考えていいと思う。あまりにもあからさまに御剣とオドロキ君を事件から遠ざけようとしてたしな。」
成歩堂が説明した。
「な、なるほどッス!」
イトノコもヨウヤク理解できたようだ。
「そうか…。被害者に鬼野刑事。2人が組めば1番たやすく真宵さんに罪を着せられる…!(あとは法廷でどう証明していくか…だな。)」
オドロキが眉間にシワを寄せて言った。
「いとのこ刑事さん…?」
春美がイトノコのコートの裾を引っ張って言った。
「なんスか?お嬢ちゃん。」
「あの、おにの刑事さんって、どんな方なのでしょう?」
春美は親指の爪を噛みながら言った。
「鬼野刑事ッスか…。鬼野刑事は…自分も噂でしか聞いたコトがないッスが…この辺を仕切るかなりやり手の刑事らしいッス。」

⇒To Be Continued...

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