「逆転の豪華客船」 第一探偵パート その3
作者: skyblue   2008年03月25日(火) 17時41分06秒公開   ID:BEgAk88pjyo
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同日 午後5時46分 スタッフ控え室前廊下

「いやぁ。
無駄に広い廊下だねぇ、なるほどくん。」

しみじみしながら真宵ちゃんが言った。
確かに、こんなに長くてさらに、横長い廊下を見ると、しみじみするしかない。

「そうだね。」

ぼくがしみじみしていると、真宵ちゃんがなにか考え込んでいることにきずいた。
・・・・ぼく、なにか変なこと言ったっけ・・・・?
そう、思っていたら、

「ねぇ、なるほどくん。
そういえば結局、ショーなかったよね?」

・・・・そのことを考えていたのか。
でも、確かに朝、ニボシさんがショーの準備があると言って、行ったっきり今までなにもなかったよな・・・・。

「あ!もしかして、パーティーのイチバン最後にバァーッとあるとか!」

両腕を、バァーッと広げて言う、真宵ちゃん。
まぁ、その可能性も確かにあると思うけど・・・・。
ぼくは、なにかイヤな予感を感じた。

「もし、パーティーの最後に予定されていたなら、なにもパーティーが始まってすぐ、行くことはないんじゃないかな・・・・。」

そして、どうやら、ぼくのイヤな予感はあたったようだ。

「ミッちゃぁぁぁぁぁぁん!
ミッちゃんはどこにいるのサ!
誰か、このオバチャンを差し置いて、
このオバチャンから、ミッちゃんを隠そうってんじゃないだろうねェ!
このオバチャンから!」

なにやら、少し遠くの方で、きみどりのイモムシみたいな怪人がうごめいている。
・・・・ここにいない方がよさそうだな。
ぼくは、とっさにそう思った。

「行こうか、真宵ちゃん。
もう、十分見てまわっただろ?」

「ちょっと、アンタたち!
逃げるんじゃないヨ!
このオバチャンから逃げようったって、
ムダだヨ!」

今はパーティー中だけど、おそらくトイレに来たであろう人たちも何人かいた。
だけど、運悪く目をつけられたみたいだ・・・・。

「ってアンタ、よく見たら
何某の何某ノ介じゃないの!」

手を縦にふりながら、オバチャンが言った。
・・・・何某ノ介って、なんだよ・・・・。

「なるほどくん!
今回もオバチャン、スゴいよ!」

真宵ちゃんが、興奮して言った。
確かに、スゴい・・・・。
三つの団子の一番上にカオがつき、黄緑のペンキをぶちまけた。みたいな感じの着ぐるみをかぶっている。
そして、胸のいちあたりのところに、《ムシッシ大王(トノサマン・伯丙!の悪役だヨーン。)》と、書いてある。

ぼくたちがじろじろ見ていると、オバチャンが尋ねてきた。

「アンタたち、ミッちゃん見なかったかい?」

・・・・これ言ったらスゴいことになりそうだな。
ぼくが言うか言うまいか考えていると、

「あの、オバチャン・・・・
みつるぎ検事、パーティーに来てないみたいですよ。」

真宵ちゃん・・・・
言っちゃったよ・・・・。

しばらくの沈黙の後、

「・・・・来てない?」

「はい。そうみたいえす。」

「・・・・・・・・・・。」

オバチャンが黙った。
・・・・危険だな。

「まったく、なんだってんだヨ!
最近の若いヤツらはっ!
今日だって、せっかくオバチャンが
こんなカッコしてまで会ってやろーってのにっ!
昔っからそうだヨ!
オバチャンが誰かと約束したって、誰も来やしない!その理由聞いたら、なんとなくってんだヨ!ナマイキったらしかたがない!
アンタらオバチャンのことなんだと思ってんだヨ!まったく。
だいたい今日は、オバチャンとの約束じゃなかったとしても、パーティーに招待されたら、来るのがフツーでしょ!オバチャン、待ってたのに。あぁ、そうか。オバチャンに会うのが恥ずかしくて来れなかったんだネ。
まったく、ミッちゃんはかわいいんだから。だいたいアンタらなんなんだヨ!
そんなトゲトゲ頭とあやしいチョンマゲのぶんざいで!オバチャンから逃げようなんざ、1億光年以上も早いってんだヨ!
もう、これでもくらいな!」

ビョビョーーーーーン!!

「あいてっ!
な、なんなんですか!?
その、頭のショッカク!?」

ショッカクにパンチされたぞ・・・・。

「知らないヨ!
警備員はこれを着ろって言われたんだヨ!
冗談じゃないヨ!まったく!」

ビョビョーーーーーン!!

「うわっ!
だから、ショッカク伸ばさないでください!」

ぼくが、反射神経よかったら、こんなこと言わなくてもいいんだろうな・・・・。

「うるさいヨッ!
オバチャンがやりたいからやるんだヨッ!
この、トンガリ頭!」

ビョビョーーーーーン!!

「いてっ!」

なんか、オバチャンに言われると妙にキズつくな・・・・。
生まれつきなんだけどな。これ。

「もういいヨ!
どうせいないとかいっといて、実はいるんだろ?
オバチャン、イジでも見つけ出してやんだからねッ!」

だから、いないのに・・・・。
なにやらブツブツ言いながら、ロビーのほうに歩いていくオバチャン。
・・・・もういいヨッ!
そこまで言うんなら、勝手に探しゃあいいだろッ!

「ねぇ、なるほどくん。
なにか、ショーでもあってるのかな?」

ぼくは聞いた瞬間なんのことやら分からなかったけど、真宵ちゃんが見ているほうをみてみると・・・・
・・・・確かに。なにやら控え室あたりにちょっとした人だかりができている。

「酢を使ったマジックでもやってるのかな?」

「なんでそこで酢が出てくるんだよ!?」

酢を使ったマジックって、どんなマジックだ?

「だって、なんか、すっす聞こえるよ。」

ぼくは、人だかりのほうに耳を澄まして聞いてみた。

「・・・・確かに。
すっす、聞こえるな。」

ぼくがなにをやっているのかと、見に行こうとしたとき、おそらく、すっすの原因らしい人物が、スゴい勢いで走ってきた。

「あっ、アンタたち!
これより先は立ち入り禁止ッスよ!」

立ち入り禁止といわれても・・・・
ぼくたちはまだ、あの人だかりにすら近づいてないぞ。
ていうか、イトノコ刑事いつのまにこっちに来てたんだろう・・・・。

ぼくはとりあえず、あの人だかりについて、なにか知ってそうだったので、きいてみることにした。

「イトノコ刑事、なにかあったんですか?」

「事件ッスよ、殺人事件!」

「さ、殺人・・・・ですって?
・・・・いったい、誰が殺されたんですか?」

ぼくは、心配でしょうがなかった。
まさか、ニボシさんじゃないだろうな・・・・

「哀乙砕 凄(あいおくだ さい)という、女性スタッフッス。」

ニボシさんじゃないみたいだな・・・・。
よかった。

「犯人は誰か分かっているんですか?」

「多分・・・・。
でも、まだ断定はできないッス。
まだ、あまり調査はしてないッスから。」

イトノコ刑事が、顔をしかめていった。

「断定はできないってことは、
だいたい目星はついてるんですか?」

さっきとはウラハラに、ニヤッと笑うイトノコ刑事。
・・・・なにか、イヤな予感がする・・・・。

「まぁ、そうッスよ。
発見したときの状況から言うと、ほぼ被疑者は、荷星 三朗で決まりッス。
調査して、さらに新しい証拠が見つかれば、絶対今回の事件の裁判の被告人になるッス。」

ぼくはつくずく思う。
ぼくのイヤな予感って、結構当たるもんだな・・・・。

「イトノコ刑事、発見したとき、いったいなにがどうなってたんですか!」

ぼくの、必死の問いもむなしく、

「・・・・おっと。
部外者にはこれ以上の情報は教えられないッスゥ。」

やっぱり、そうだよな・・・・。

「イトノコ刑事、そこをなんとか!」

「ダメッスゥ。
アンタたちは、まったくの部外者ッス。
部外者に情報をタレ流すわけにはいかないッスからね。」

「イトノコ刑事のケチッ!」

真宵ちゃんの強烈なイチゲキ。

「うっ!
そんなこと言わないでほしいッス。
これも一応、仕事ッスから・・・・。
教えられないものは教えられないッス・・・・。」

いじめられた野良犬のように言う、イトノコ刑事。
真宵ちゃんのイチゲキがそうとうきいたみたいだ。

「・・・・船が港に着くまで、もう少し時間があるッス。
アンタらは、パーティー会場にでもいるッス。」

くそぉ・・・・

「なるほどくん。
こりゃ、引く気はないみたいだよ。イトノコ刑事。
・・・・いつもとちがって。」

「・・・・そうみたいだね。いつもとちがって。」

「いつもとちがってとは、なんスかぁ!」

お。
どうやら、いつものイトノコ刑事に戻ったみたいだな。


―あれから豪華丸は、予定通りの
午後7時に港に到着した。
現場の状況から、犯人は荷星 三朗しかいないと考えたらしく、
その日のうちに逮捕されたみたいだ。―


3月21日 午前8時30分 成歩堂法律事務所

「なるほどくん!
ニュースであってたけど、
ニボサブさん起訴されたみたいだよ!」

真宵ちゃんが、テレビのニュースを見ながら言った。
やっぱり、イトノコ刑事が言っていた通りになったのか。
きのうのイトノコ刑事、スゴい自信ありそうだったもんな・・・・。

「うん。そうみたいだね。
それじゃあ行こうか、留置所へ。」

ぼくは、デスクの上に置いてあった、弁護士バッジを付けた。

「なるほどくん、やっぱり?」

真宵ちゃんが、ぼくの顔をのぞきこむように聞いてきた。

「もちろんだよ。
ニボシさんが殺人なんて、するわけないだろ?」

この言葉だけは、誰に対しても
胸を張って言える。

「うん!そりゃ、そうだよね!
やっぱり、なるほどくんは昔から
なるほどくんだね!」

スゴくうれしそうに
笑顔で言われたけど・・・・

「ぼくは、昔からぼく?
・・・・そんなの、あたりまえじゃないか。」

・・・・もうしかして、真宵ちゃん。前までぼくのこと、ぼくと思ってなかったのか?

ぼくが、首をかしげていると、
真宵ちゃんに背中を押された。

「いいから、いいから。
行くよ!なるほどくん。」


同日 某時刻 留置所 面会室

うーん・・・・。
いつ来ても、さびしい所だな・・・・

「あ、成歩堂さんたち!
来てくれたんですね!
僕、来てくれなかったらどうしようかと思いましたよ!」

ニボシさんが、白いハンカチをにぎりしめながら言った。
・・・・来なかったら、どうするつもりだったんだろう・・・・。

「あの、成歩堂さん・・・・。
僕の弁護、是非お願いします!」

うーん。
ニボシさんからそう言ってもらうと、助かるな。
弁護したくても、なかなかさせてくれない人たちもいたし・・・・。

「もちろん、引き受けますよ。
ぼくも、今日はそのつもりで来ましたから。」

「あ、ありがとうございます!」

ニボシさんが殺人をするわけがない・・・・。
今回の裁判、負けるわけにはいかないな。

「さぁ、なんでも聞いてください!
ぼくが答えられることなら、
なんでも答えさしていただきます!」

仕切りに頭をぶつけそうな勢いで、ニボシさんが言った。

うーん・・・・
なんでもと、言われても・・・・。
聞きたいことがありすぎて、なにから聞けばいいのか・・・・。

ぼくが聞くことを頭の中で整理していると、ぼくの聞きたいことのひとつだったことを真宵ちゃんが言った。

「そういえば、ニボサブさん。
裁判はいつあるんですか?」

「あ、そういえば言ってませんでしたね。
・・・・スミマセン。
明日です。裁判。」

恐縮して言うニボシさん。
そんな、恐縮されても・・・・

「えぇっ!
あ、明日ですか・・・・?
裁判!」

もう、十分な時間がないじゃないか!
今日で、できるだけ多くのニボシさんが犯人ではないということを示しそうな証拠を探さないとな。

そうだな。まずはやっぱり。

「ニボシさん。
じゃあ、あの日のことを聞かせてもらえますか?」

「はい。分かりました!」

「あの日、僕があの船に入ったのが、朝の5時ぐらいでした。」

朝の5時か・・・・。

「ずいぶん早いんですね。」

「まぁ、ショーの打ち合わせがありましたからね。」

ニボシさんが、腕を組みながら言った。
ショー・・・・か。
そのこともあとで聞かないとな。

「で、朝の打ち合わせの前に、荷物を置きに控え室Bにいきました。」

あのとき、人だかりができていた部屋か・・・・。

「で、その打ち合わせが終わった後、控え室に戻ったら、《パーティーが始まったら、朝の打ち合わせをした場所に来てください。》って、書かれた紙が、机の上に置いてあったんです!
あ、その紙がこれです。
一応、渡しておきますね。」

《ニボシさんへのメモ》を法廷記録にはさんだ。

このメモ・・・・
なんか、気になるな・・・・。
なにも言わないってことは、誰が書いたのかはわからないみたいだな。

「打ち合わせはどこであっていたんですか?」

「控え室Bの向かいの、控え室Aです。」

「ね。ね。なるほどくん。
さっきのメモ、なんでわざわざ朝の打ち合わせをした場所って書いたのかな?
控え室Aって書いたほうが、てっとり早いのに。」

「うーん。
そういえば、そうだよな。」

確かに、真宵ちゃんの言うことも一理あるな・・・・。
でも、このメモ、他にも問題があるような・・・・。
とりあえず、それは後で考えるか。

「その打ち合わせは、どれぐらいあったんですか?」

腕を組むニボシさん。

⇒To Be Continued...

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