「逆転の豪華客船」 第一探偵パート その4
作者: skyblue→霄彩   2008年03月25日(火) 17時40分01秒公開   ID:BEgAk88pjyo
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「おぉう。間違いねぇと思うぞ。人影っぽいものを見たからな。」
ということは、本当に見た。と考えていいのかな?

「誰かって、スタッフの人とかですか?」
「いや。それは違うと思うぜぇ。兄ちゃん。あんときは打ち合わせ中だったんだぞ。そんとき抜けた奴ぁ、オレ意外はいねぇよ。」
そうか。そう言われると、そうなのかもな。ということは、一般人ってことか?
ぼくが考えていると、破貞さんが頭を掻きながら言った。
「んあぁ。もうしかしたら、警備員かもしんねぇぞ。一般人は、7時からしか入れねぇようになってたハズだしなぁ。」

警備員、か。ぼくは、ある人物の顔を思い浮かべていた。どうやら、またあの人に会わなきゃいけなくなったみたいだ。とほほ……。

そういえば、事件があったときのことを聞いておかないとな。
「破貞さんはあの日の午後5時から午後5時半の間は、何をしていたかとか覚えていますか?」
「おぉう!覚えてるぜぇっ!
その時間帯は、ずっとパーティー会場にいたぞ。んあぁ、そのことは警備員のオバチャンが証明してくれると思うぞ。」
え、オバチャンが……?
「何でですか?」
ぼくがそう聞くと、苦い顔をして破貞さんが言った。
「まぁ。それは、本人に直接聞いてくれっ。」
……今言ってくれればいいのに。
でも、オバチャンはどっちみち後で会わなきゃいけないんだし、いいか。

「そういえば、ハツラさんって、字、キレイですよね!ね、なるほどくん。」
何でそこでぼくにふるのかは、少し気になったけど、確かに1回見たら、2回目以降は、この字は破貞さんの字。と分かるぐらいキレイだ。
「…………。」
あ、あれ。今の話、聞こえてなかったのかな?破貞さん、黙っちゃったぞ。
「……そうかぁ?」
あれ。なぜか、テンションが下がったぞ。
真宵ちゃんも不思議な顔をしている。
「あたし、何か悪いこと言った?」
「いや、言ってないと思うよ。」

真宵ちゃんとぼくが、そんなことを話していると、破貞さんが、何やら語り出した。
「オレってなんかよー……そういう?字がキレイとか?
っていうのって、結構好きじゃない?みたいな?うん。
何かこう、燃えないじゃん?そういうのよぉ。だろ?
オレはさぁ、男なら男っぽく、燃えたい?っていう?
んでさぁ、燃える字にしようと思って練習してんだけどさぁ。
全然、書けないっていう?なぜか。いや……待てよ。
今のオレがこんなこと言ってていいのか?もう、年だって……」

こぶしを弱々しく握りながら、何か言ってる破貞さん。な、何だこれは。中年のぼやき?何か、周りの空気が3度下がった気がするぞ……。
「なるほどくん。ハツラさんに字の話しは禁句だね。こりゃ。」
「そうみたいだね。真宵ちゃん。」

さて、破貞さんに聞くことは、これくらいでいいかな。破貞さんと話していて、警備員のオバチャンとも会う必要が出てきたみたいだしな。
「破貞さん。忙しいときに、話しを聞かせてもらって、ありがとうございました。」
ぼくがそう言ったときには、破貞さんはもう机の上の残飯の片付けに戻っていた。
「おぉう!いいってことよぉ。なんかあったら、また来るんだぞ!」
そう言ったときには、すでにいつものテンションに戻っていた。どうやら、いつまでもくよくよしない性格らしい。
「見習わなきゃね、なるほどくん。」
「うるさいな。」

ぼくがその場から立ち去ろうとしたとき、真宵ちゃんが動こうとしなかったから、どうしたんだろうと思って見てみると、破貞さんが作業しているのを見ていた。なにか、イヤな予感が。
「なるほどくん。……アレ食べたい。」
アレ、を指差して言う真宵ちゃん。
ついに言い出したか。もう少し早く立ち去っておくべきだったな……。
「アレは、昨日の残飯だぞ。お腹、痛くなってもぼくは知らないからな。」
「うん、分かった。」
と言って、アレののっているテーブルに行く真宵ちゃん。
「だから、食べるなよ!」
「……なるほどくんのケチ。」
「そういう問題じゃないだろう!」


 同日 4時22分 豪華丸 控え室前廊下

控え室付近は、相変わらず警察関係の人たちが、忙しそうに動き回っていた。それでも、前来たときよりは少し減っているような気がする。……気のせいかな?
控え室Bに、イトノコ刑事の姿はなかった。でも、あの様子だと調査は終わってなさそうだし、入るのは無理そうだな。
ぼくは、控え室Bに向かい合っている、控え室Aを見た。
「なるほどくん、でかいイモムシがいるよ!」
目を丸くして言う真宵ちゃん。
やっぱり、何回見てもあれには慣れないよな……。でも、探す手間が省けたみたいだ。

ぼくたちが控え室Aのドアの前まで行くと、やっぱりそこにいたのはあの黄緑の変なイモムシを被った、警備員のオバチャンだった。
オバチャンも、こっちに気付いたみたいだ。ぼくたちのほうに、近づいてきた。
「なんだい、アンタたち。何でここにいるんだい?」
そういうオバチャンも、何でここにいるんだ?

とにかく、せっかくオバチャンに会えたんだし、今のうちに聞くべきことを聞いておくか。
「オバチャン。昨日のことについて、聞きたいことがあるんですけど、いいですか?」
「なんだい?用があるんなら、サッサと済ませるんだョ!オバチャンは、アンタと違って暇じゃないんだからネ。」
すごく皮肉っぽく言われたぞ……。

まずは何から話そうかな。
やっぱりここは、事件に関係ある話しから話してもらうか。
そういえば、破貞さんの話では事件があった時間帯、会場の中にいたってことをオバチャンが証明してくれる。とか、言ってたな。
そのことから話してもらうか。
「あの、オバチャンは、5時から5時半の間はどこにいたんですか?」
「その時間帯は、パーティー会場の警備をしていたョ。パーティーが始まったら、パーティー会場からは離れずにいろ。って言われてたからネ。」
なのに、5時半前にぼくたちが控え室前廊下に行ったとき、いたのか。
「やっぱりさぼってたね。オバチャン。」
心なしか、小声で言う真宵ちゃん。まぁ、これが聞こえてたら、オバチャンのマシンガントークが炸裂するんだろうな。

「その、パーティー会場の警備をしているとき、破貞 元気という人に会いませんでしたか?」
「会ったもなにも、その時間帯ずーっと話してたョ。」
「は、話し……?30分もですか?」
「もうしかして、マシンガントーク、30分バージョンとか。」
真宵ちゃんが楽しそうに言った。
それは、聞いてるほうもきついと思うけど……
「そんなことしたら、酸欠で倒れると思うぞ。」

ぼくと真宵ちゃんが、そんなことを話していると、オバチャンが片手を縦に振りながらうれしそうに言った。
「あんなに話がはずんだのは、ハッちゃんくらいだョ。今までの経験上。」
「は、ハッちゃん……?」
目を丸くして言った真宵ちゃん。このときばかりは、ぼくもそうだったかもしれない。破貞さんが、あのとき話したがらなかった理由が、何となく分かった気がするな。

「なんだい、アンタたち。ハッちゃんとオバチャンの友情に、キズをつけようってんじゃないだろうネ。そうはいかないョッ!
だいたい、なんなんだい?アンタたちはさっきからハッちゃんとオバチャンのことを
馬鹿にするような言動ばっかりはっしてふざけんじゃないョだいたいアン
タらはまえからっずとそうなんだよあぁそうかアンタらは人を馬鹿にしな
いと生きていけない生き物なんだネいいかいそんな生き方してると長生き
できないョあぁこれはオバチャンの経験上ねまぁ実際オバチャンは年なんか
数えてないから今が何歳で今が長生きかどうかなんて分からないんだけど
ネていうかアンタら大体なんなんだいオバチャンのマシンガントークって
馬鹿にしてんじゃないよオバチャンこれでも誇りを持って日本のいや世界
のいや宇宙の代表としてやってんだからねそれ以前にマシンガントークな
んて失礼なこと言ってんじゃないョいいかいこれはオバチャンの愛情のこ
もったトークなんだョマシンガンなんてゴッツイもん勝手につけんじゃな
いョそれにね実はオバチャンには……もう、これでもくらいな!」
ビョビョーーーーン!
「あいてっ!」
だから、何で毎回ぼくに飛んでくるんだ?あのショッカク!

「ね、ね。なるほどくん!すごいよ!オバチャン、30分間マシンガントークやってたよ!」
控え室Aの近くの壁に飾ってある、時計を見ながら真宵ちゃんが言った。
……もはや、人間の域を超えているんじゃないか?この人は。実は人間じゃないとか。前なんか宇宙人の服着て、手にカタカタ銃持って、頭には金魚蜂かぶってたし。
ぼくは思った。
オバチャンはさっき、30分間破貞さんと話が弾んだと言っていたけど、ただ単に1人で弾んでいただけなんだろう……と。
ぼくは、あのとき破貞さんが話したがらなかった理由が、完璧に分かった気がした。

オバチャン、興奮しまくってるな。
ここは、話題を変えたほうがよさそうだ。
「昨日は、何時にこの船に来たんですか?」
「昨日?
昨日は確か、7時になる少し前……。6時56分くらいには船に着いてたと思うョ。前日の打ち合わせのときに、7時5分前には必ず来ておけって、うるさかったからネ。」
……6時56分、だって?
確か、打ち合わせがあっていた時間が5時から6時半……。
そして、その間に抜けた破貞さんが人の気配を感じたと言っていたんだよな。それが、オバチャンかもしれないということも。
だけど、オバチャンがこの船に来たのは、6時56分。ってことは、あのとき破貞さんが感じた人の気配って、オバチャンではありえないじゃないか!

「オバチャン、嘘でもついてるのかな?」
真宵ちゃんが、考えるような素振りをして言った。
「いや、それはないだろ。ここで嘘をついても、オバチャンには何のメリットもないと思うし。」

破貞さんが感じた人の気配……。それは、オバチャンではなかった。だとすると、いったい誰だったって言うんだ?
もう、何か頭痛くなってくるな。話を変えよう。

「……朝来たとき、なにか変わったことありませんでしたか?」
別に言ってもたいして情報は掴めないだろうと思ったけど、もうしかすると破貞さんが言っていた人を、オバチャンが見ているかも知れないと思って聞いてみた。
しばらく考え込むオバチャン。いや、考えてくれているであろう、オバチャン。
やっぱりないよな、変わったことなんて。
ぼくがそう思ったとき、
「変わったこと。とまではないけど、あるョ。ひとつだけ。」
と、オバチャンが言った。
「まぁ、変わったことというか、少しビックリしたことなんだけどサ。
オバチャン意外にも1人いたんだョ!警備員。他にいるなんて聞いてなかったから、オバチャン、ビックリしちゃったョ。」
片手を縦に振りながら言うオバチャン。

……何か、たいしたことじゃなかったな。こんなに広い船なんだし、そりゃあ警備員が1人じゃないのは当たり前だろう。

「アンタたちがしゃべらせるから、オバチャン、トイレ行きたくなっちゃったョ!」
と、早口で言ってトイレに行ってしまった。
ぼくは、ふと思った。
あんな格好で、どうやってトイレをするんだろう……。

そういえば、情報も結構集まったな。分からないことだらけだけど。
ぼくは、何気なく壁に飾ってある時計を見上げた。
うわっ、いつのまに時間がこんなに進んでたんだろう。早く戻らないと、留置所の面会時間が終わってしまうじゃないか!
「行こう、真宵ちゃん!ニボシさんのところへ。」


 同日 6時41分 留置所 面会室

「ねぇ、なるほどくん。何か、薄暗い感じがするね。」
ニボシさんが面会室に来るまでの間、暇だったのかどうか知らないけど、真宵ちゃんが話しかけてきた。
「窓が小さいから、外の光が入ってきずらいんじゃないのかな。それにもう、夜だし。」
ぼくは、しきりの向こうに見える小さな部屋を見た。薄暗いといっても、天井にはちゃんと明かりが点いている。
そして、天井の端のほうには、黒い防犯カメラ。ドアの前には、面会の様子を監視する、看守が立っている。
「看守さん、あんなとこに立ってて、外からドアを開けられたりしたら当たらないのかな?」
「……あれは見た感じ外開きのドアだから、当たらないと思うぞ。一応。」

ぼくと真宵ちゃんがそんなことを話しているうちに、ニボシさんが面会室に入ってきた。
「あ、成歩堂さんたち!なにか分かりましたか?」
「はい。そこそこ……。
それと、ニボシさんに聞きたいことがあって来ました。」
「何ですか?」
「発見されたとき、ニボシさんは手にロープを持っていたそうじゃないですか!何でですか?」
ぼくがそう聞くと、少しためらうような素振りを見せた、ニボシさん。
「あ、そのことですか……。
哀乙砕さんが手にロープを持っていたので、何かな。と思って。気になって、つい手に取ってしまいました。それと、なんかどこかで見たことあるロープだな。と思ったので。」

⇒To Be Continued...

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