「逆転の豪華客船」 第一探偵パート その4 | |
作者:
skyblue→霄彩
2008年03月25日(火) 17時40分01秒公開
ID:BEgAk88pjyo
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そこは、持たないでほしかった……。 それに、見たことがあるって、どういうことだろう。 「すみません。なんか、言い辛くって……。」 と、恐縮して言うニボシさん。でも、その気持ちも分からなくはないかな。 ぼくが、物思いに耽っていると、 「あぁぁぁぁっ!思い出しましたよ、成歩堂さんっ!」 しきりに頭をぶつけそうな勢いで、いきなりニボシさんが叫んだ。 「ど、どうしたんですか?ニボサブさん。」 真宵ちゃんも、少しビックリしたみたいだ。ぼくも、いっしょに叫びそうになったぞ。 「カギですよ、カギ!さっきのロープの話しをしていたら、思い出したんです!」 ニボシさんが、興奮して言った。 「ほ、ホントですか!」 ぼくも、興奮して言った。 よし。これで状況も変わってくるはずだ。 「確か、朝の打ち合わせのときは、カギをかけていました。そして朝の打ち合わせが終わった後は、確かテーブルの上に置いていて……。 そして、なくなってたんです!カギが!」 ということは、朝の打ち合わせ以降は、誰でも入れたのか! 「あの、ちなみにそのカギがなくなっていることはいつ気付いたんですか?」 「……今です。」 「い、いま?」 「はい。」 でも、そうなるとあきらかにおかしいぞ。 朝の打ち合わせのとき、カギをかけていたのなら、中に入ってメモを置くことができたのは、破貞さんだけじゃないか! でも、破貞さん自身、確かに途中抜けたことについてサイコ・ロックはあったけど、メモのことは知らなかったみたいだし……。 事件のときもそうだ。 朝の打ち合わせ以降カギがなかったということは、もちろん事件のときはかけていなかったはずだ。でも、発見されたときはかかっていた。ということは、カギをかけたのは真犯人? でも、そうだとすると何でカギをかけたんだろう。そんなことをしていたら、誰かに見られるかもしれないのに。 ダメだ。 まだ、分からないことだらけだな。 ぼくがごちゃごちゃ考えていると、真宵ちゃんが、言った。 「じゃあ、事件のときカギはアイオクダさんが閉めたのかな?」 真宵ちゃん……。 とんでもないことを言っているぞ。それが、本当のことだったとしたら、大変なことになるじゃないか! 「真宵ちゃん。そうなると、犯人はニボシさんということになっちゃうぞ。」 「え、何で?」 「だって、カギをかけたってことは、そのときはまだ、哀乙砕さんは生きていたんだろ? ってことは、カギをかけたじてんで、その部屋は2人っきりになるんだから、哀乙砕さんを殺害できたのは、ニボシさんしかいなくなるじゃないか!」 ぼくは、思わず人差し指を突きつけてしまった。……もう、くせなんだろうな。これ。 そのとき、ぼくの聞きなれた言葉が聞こえてきた。 「異議あり! ふっふっふっふ。もっと本質を見ようよ。なるほどくん。」 「……どういうことかな?真宵ちゃん。」 「だから、えーと。 その、アイオクダさんが控え室に入ったときに、誰かと……そうだ!ハツラさんといっしょに入ったとしたら、犯人はニボサブさんではありえないよねっ!」 うーん。真宵ちゃんにしてはなかなか筋のある発言だと思うけど……。 「それは無理があるとおもうよ。真宵ちゃん。なぜなら、破貞さんのアリバイはオバチャンの証言によって、すでに立証されているからね!」 ぼくはまたもや、人差し指を突きつけて言ってしまった。そして、言った後によく考えてみると、これってニボシさんに不利なことなんじゃ……。 ぼくが自分で自分を追い込んでしまったことにうんざりしていると、真宵ちゃんが言った。 「うひゃあ。そうだね。やっぱり、さっきの発言はなしだよ!」 なし、ね。法廷でも使えたらいいよな。それ。 って、ニボシさんに聞かなければならないことは、まだたくさんあるんだ。あのサイコ・ロック、解除するときがきたみたいだ。もう、解除するカギは、法廷記録の中にあるはずだからな。 「ニボシさん。今度こそ、聞かせてもらいますよ。」 「な、何ですか?成歩堂さん。……そんなに髪をとがらせて。」 ぼくは、法廷記録から《ニボシさんへのメモ》を取り出した。 「ニボシさんはこのメモを書いた人について、心当たりはないと言っていたけど、本当はあるんですよね?心当たり。」 「な、ないですよ!」 ジャラジャラジャラ…… ガシャン! 「ニボシさん。ニボシさんは、結構シャイな性格ですよね。」 「ぼ、僕がシャイな性格なのと、何の関係があるんですかっ? だいたい、そんなの僕が聞きたいですよっ!」 ニボシさんが、白いハンカチを両手で握り締めながら言った。 何やらニボシさんに、すごい焦りを感じるぞ。メモを書いた人物は誰か、か。 ニボシさんの性格や、あの証拠品で、だいたい分かる気がするな。 「ニボシさんが考えている、このメモを書いた人物。それは、哀乙砕 凄さんですね!」 「え……。あ、哀乙砕さん……?」 「ニボシさんと、哀乙砕さんには、ある関係があったんです。シャイなニボシさんはその関係を、知られるのが恥ずかしかった。だから、隠していたんですね?」 これで、ニボシさんもこりて話してくれるかな。と、思った矢先。 「で、でも、僕と哀乙砕さんの関係なんて、あって当然じゃないですかっ!……スタッフだったんですからね。哀乙砕さんは。 それが、僕と哀乙砕さんの関係です。」 言い返してきたか。 そんなに知られたくないのか?哀乙砕さんとの関係。でも、ニボシさんには残念なことに、あるんだよな。その関係を示している証拠。 「いいえ。ニボシさんと、哀乙砕さんとの関係は、そんなものではなかったはずです。」 「じゃ、じゃあ、今すぐ見せてください!その、証拠を!」 何か、やけになってないか?……ニボシさん。 「もちろん、いいですよ。でも、その前に……。 これは、ニボシさんの物ですか?」 ぼくはニボシさんに、あのショッキングピンクの占いの本を見せた。 「は、はぁ。そうですけど。」 やっぱり、そうだったのか。ということは、どうやらぼくの考えは間違っていないみたいだ。 「哀乙砕さんと、ニボシさんの関係。それを示す証拠は、これです。」 ぼくは、占いの本の折り目がついているページを開いて見せた。 「どうやらこの本は、中身やカバーの色や絵からして、恋愛占いのようです。そして、この折り目がついたページ。これは、相手の苗字の最初の文字で占うんですよね?」 「そ、そうですけど、それが何なんですかっ!」 ニボシさん、声が裏返ってるぞ……。 「このページは《あ》の文字が苗字の最初につく人のページみたいですね。 《あ》といえば、そう。哀乙砕 凄さんです!」 「うぅっ!」 「つまり、ニボシさんと哀乙砕さんは、恋愛関係にあったのです!」 ぼくは、人差し指を突きつけて言った。 そのときぼくは確信した。もうこれは、くせなんだと。おまけに突きつけたとき、指をおもいっきり、しきりにぶつけてしまった。……痛い。 「わ、分かりました。話しますよ。メモのこと。」 そのとき、ニボシさんのサイコ・ロックが割れる音が聞こえた。やっと、こりたみたいだな。ニボシさん。 そして、ニボシさんが、顔を赤くして話し出した。 「そうです。成歩堂さんの言うとおりです。ぼくは、哀乙砕さんと、少しだけ付き合ってました。」 「あの、すみません。こんなこと言って。」 「いえ。別にいいですよ。それに、もう別れたいと思うほど困ったことがあったんですよね。……哀ちゃんには。」 「困っていた?」 「はい。よく言われてたんですよ。お金を貸してくれって。それに、お金のことになると、妙に敏感になってたんですよね。哀ちゃん。」 腕を組んで、困ったような顔をして言うニボシさん。そういえば、イトノコ刑事もそんなこと言ってたな。 「ね、ね。なるほどくん。そんなお金、何に使ってたのかな?……哀乙砕さん。」 真宵ちゃんが考え込むような動作をして言った。確かに。それは、気になるな。 「ニボシさん。そのお金の使い道について、何か知りませんか?」 「うーん。それは、聞いたことないですし、分かりませんねぇ。」 普通、聞きたくなると思うけどな……。そういえば、哀乙砕さんは、お金の話になると、敏感になるとか言ってたもんな。もうしかすると、それで聞きづらかったんだろう。 ぼくがそんなことを考えていると、真宵ちゃんが言った。 「そういえば、ニボサブさん。どうして、メモを書いた人が、哀乙砕さんだと思ったんですか?」 「あぁ、それはですね。ほら、ちょっとくせ字っぽいじゃないですか。これ。 最近の女の子がかくような感じの……。だから、哀ちゃんじゃないのかなぁって思ったんです。」 ぼくはメモを見た。確かに、今よく見てみると、最近の女の子が書きそうなくせ字ってやつだろう。 ……読みづらいな。読めないことはないけど。 ん?待てよ。 ニボシさん、今何か気になることを言ったような。 「あの、ニボシさん。哀乙砕さんの字は、見たことあるんですか?」 「いや、ないですよ。僕たち、付き合い始めたばっかりでしたし。」 ……そうだったのか。 「でも、ということはこれを書いたのは哀乙砕さんとは限らないということですよね?」 ぼくがそう聞くと、にこやかに答えるニボシさん。 「いやぁ。かわいい字だったから、哀ちゃんかな。と思って。」 ……結局、進歩はあったのか?この話しは。 「そういえばニボシさんは、あの日の朝、ぼくたちと会った後このメモの通り行ったんですよね? 控え室Aに。」 「はい、そうです!控え室Aに行きました!」 この話は、今回の事件にとても重要……な、はずだ。 明日の裁判では、朝のことと事件のことを結びつけることは不可能だろうけど、 最終的には必ず、結び付けなければならないときがくるはずだ。……ほとんどぼくの勘だけど。 そのとき、信じられないことが起こった。 「……そろそろ、今日の面会時間は終了です。」 ……迂闊だった。面会中、しっかり時間を確認していなかったぼくが、バカだった。 その後、ぼくたちは容赦なく面会室から締め出された。 外に出てみると、いつの間にか真っ暗になっていて、ビックリした。 もう今日は、明日に備えて寝たほうがいいと判断したぼくたちは、 調査を切り上げて、事務所に帰ることにした。結局、事件のこともあまり分からないまま終わってしまったし…… 明日の裁判、いったいどうなるのだろうか……。 |
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