「逆転の豪華客船」 第一探偵パート その4 | |
作者:
skyblue→霄彩
2008年03月25日(火) 17時40分01秒公開
ID:BEgAk88pjyo
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その手に持っている本は何なんですかっ?」 うお。真宵ちゃん、勇気あるな。 「あぁ、この占いの本のことッスか。 控え室Bの机の上においてあったッス。……別に自分はこんなの興味ないッスよっ!」 あの怪しげな本、占いの本だったのか。 今更、何か言ってるぞ。イトノコ刑事。 ぼくたちの冷めた目線に気付いていなかったのか……。 「事件に関係あると思って持ってたッスが、なんか関係なさそうッスね。アンタにあげるッス。よく当たるッスよ!」 投げるようにしてぼくにその怪しげな占いの本をわたす、イトノコ刑事。 まぁ、控え室Bってことはニボシさんの持ち物かもしれないし、一応預かっておくか。 ……ん? この占いの本、よく見ると折り目がついてるぞ。ぼくはそのページを開いてみた。 どうやら、占いたい人物の苗字の最初の文字で占うみたいだ。 そのページは、《あ》のページだった。 それにしても、誰が付けたんだろうな。この折り目。イトノコ刑事かな? 「なるほどくん、その本持ち歩かないほうがいいと思うよ……。」 今手に持っているだけでも恥ずかしいのに、そんなこと言うと、持ち歩けなくなるじゃないか! ぼくはいやいや《占いの本》を、法廷記録にファイルした。 「あ、自分はそろそろ調査に戻るッス。 後、まだ現場には入っちゃだめッスよ!」 早口でそう言って、逃げるように立ち去ったイトノコ刑事。 ……そんなに嫌だったなら、ずっと手に持ってないでもっと早く置いてあった場所に戻しておけばよかったのに……。 ここには今の時点では、いても意味がないみたいだし他の場所に移動するか。 「行こうか、真宵ちゃん。あの人を探しに。」 「うん、そうだね。なるほどくん。」 同日 某時刻 豪華丸 パーティー会場 やっぱり、この場所がメインなだけはあるな。ここは、ロビーと分厚い扉でつながっているんだけど、入ってきた瞬間中を見ると、一瞬、止まらずにはいられない。といった感じだ。 そして、昨日片付けられなかったんだろう。昨日の料理の残りが、会場の所々にある豪華なテーブルの上に置いてある。 真宵ちゃんが食べたいと言い出さないことを祈る。 「なるほどくん……。」 それにしてもニボシさん、カギのことだけでも思い出してくれれば、状況は違ってくるんだけどなぁ。 それが、いいほうに転ぶか、悪いほうに転ぶかは分からないけど。 もうしかしてニボシさん、カギのことも故意に隠しているのだろうか。 「ねぇ、なるほどくん。」 さすがにそれはないよな。 カギのことを隠しても、ニボシさんにとって、それこそ何の利益もないことだし。 それは、あのメモも同じように考えられるけど……。今は、なんとなく分かる気がするな。ニボシさんのサイコ・ロック。 「なるほどくん!あたしのこと、無視しないっ!」 我に返ったとき、真宵ちゃんが膨れてぼくを見ていた。 「え。あぁ、ごめん。真宵ちゃん。それで、どうしたの?」 「あれ、ホントに気付かないの?なるほどくん。」 気付かない?何のことだろう。 確かにさっきは真宵ちゃんが話しかけていたとき気付いてなかったけど……。 ぼくが考えていると、真宵ちゃんが勢いよく、会場の所々においてあるテーブルのひとつを指さした。 まさか、食べたいとか言い出すんじゃないだろうな……。 昨日の料理の残り。 ぼくが呆れていると、 「違うよ!そっちのテーブルじゃなくて、こっち。」 と、また膨れて言った。 ぼくは、さらに膨れた真宵ちゃんに言われてそっちを見た。1人の男がいた。 そんなに体は大きいほうではないけど、がっしりした筋肉質の体。 顔は、太い眉に、パッチリとした目、キレイに2つに分かれたがっしりとしたあご。そして、頬の左には、大きな絆創膏を貼っている。 頭には、オレンジのニットぼうを被っていて、そのニットぼうの隙間からは暑っ苦しいほどのこげ茶の髪が覗いている。 首からは、《スタッフ》と書いてあるカードをぶら下げている。 あまりにも、もくもくと片付けをしているから、気付かなかったぞ。 「きっと、あの人だよ!ハツラって人!」 真宵ちゃんが、おそらく見つけることができたことに興奮して、スゴくうれしそうに指をさしている。 ……ぼくは、人に指をさすのはどうかと思うぞ。 「なによ!なるほどくんだって、よくやってるくせにっ!」 う。 確かにそうだけど、それは法廷……。 「言い分けしない!」 まぁ、とりあえずせっかく見つけたんだし、話しかけてみるか。 「すみません。 破貞さんですか?昨日のことについて、話しを聞かせてもらいたいんですけど……。」 「…………。」 あれ。無反応?聞こえてなかったのかな。もう1度、話しかけてみるか。 そして、ぼくがもう1度話しかけようとした時、 「ダメだなぁ。なるほどくんは。これくらい大きな声で言わなきゃ……」 と、真宵ちゃんが思いっきり周りの空気を吸い込んだのが、ぼくにも分かった。 次の瞬間。 「すーっみーっまーっせーっんーっ!」 何も、そこまで叫ばなくてもいいのに……。さすがに全体の、とは言えないが、近くのあのズッシリとした重たそうなシャンデリアがゆれたような気が。 ぼくが真宵ちゃんに呆れていると、少し遅れて、 「うおぉぉぉぉわあぁぁぁっ!」 「きゃわわわあああ!」 2つの悲鳴のような叫びが聞こえた。 「な、なるほどくん、ビックリしたよー……。」 ちょうど、ぼくの近くにあるテーブルの下に隠れて言う、真宵ちゃん。 「って、テーブルの下に隠れて、しかも泣くなよ!」 ぼくが真宵ちゃんをテーブルの下から引っ張り出していると、ぶっとい声が聞こえた。 「なっ、なんなんだおまえらあぁ!いつからそこにいたんだあぁ!」 ……さっきからいて、そして話しかけていたんだけど……。 ここは、改めて聞きなおしたほうがいいみたいだな。 「ぼくは、弁護士の成歩堂です。破貞さんですか?昨日の話しを聞かせてほ……」 ぼくがまだ、言い終わらないうちに、 「おおうっ! オレがその、破貞 元気ってもんだぜえぇ!何だ、何だあぁ?オレって人気者ってヤツなのかあぁ?があぁっあぁっあぁっあぁっ!」 ……勝手にペラペラ1人でしゃべり出したぞ……。でも、どうやらこの人が破貞さんであることは間違いないみたいだ。 「スゴく落ち着きがない人だね……。なるほどくん。」 テーブルの下から出てきた真宵ちゃんが、困った顔で言った。 確かに落ち着きがない。 というか、破貞さんが話し出してから、周りの空気が3度くらい上昇したんじゃないか? 「……そうみたいだね。真宵ちゃん。」 こんなことをしている間にも、また話し出す、破貞さん。 「で、で?この、人気もんなオレに、弁護士の兄ちゃんがなんか用でもあんのかあぁ? あぁ、そうか、分かったぞっ! このオレのサインがほしいんだなあぁ! おおぅっ!くれてやるよっ!ありがたく受けとんなあぁ。」 途中、口を挟む間もなく、何やら紙とペンを取り出して、おもむろに書き出したぞ……。 というか、この人の中では弁護士イコール、サインがほしい人という方程式があるのだろうか。 しかも、サインって普通、頼んでもらう物じゃないのか? しばらくして、破貞さんが、ペンのキャップをはめた。どうやら、書き終わったみたいだ。 「大切にしなよおぉっ!があぁっがあぁっがあぁっがあぁっ!」 口を大きく開けて、気持ちよさそうに笑う破貞さん。 ぼくも、あんな笑いをしてみたいもんだ。 ぼくは、さっきもらった粗末とも立派とも言えない紙に目をやった。真宵ちゃんも、のぞき込んでくる。そして、声に出して読み出した。 「このオレの、ナイス・ボディ。負ける奴は1人もいねぇっ! by破貞 元気 ……だって。なんじゃこりゃ。」 複雑な顔をする真宵ちゃん。 そりゃあそうだろう。書いてあることが意味不明な上に、あの性格には合わないほどのきれいな字だ。 「真宵ちゃん、あげるよ。トノサマンのスタッフのサインだぞ。」 「……いらない。なるほどくんが持ってたほうがいいよ。ほら、一応証拠品だし。」 ぼくはまだ、これを証拠品にした覚えはないぞ。 でも、もうもらってしまった物は、もらってしまった物だし……。 ぼくはしぶしぶ《破貞直筆のサイン》を、法廷記録に挿んだ。 何か今日、こういうのが多くないか? まぁ、いいか。今までだって、意外なところに逆転のチャンスはあった。 持っておいてもそんはないだろう。……多分。 さて、破貞さんに話しを聞かないとな。 あの、朝の謎のメモのことについて。 「破貞さん、事件があった日の朝のことなんですけど、話しを聞かせてもらえますか?」 「…………。」 な、何だ?また、黙っちゃったぞ。 「うおおおぉぉぉっ! すんげえぇ燃えてきたあぁっ!燃えてきたぞおぉっ! それって、調査って奴だよなぁ?そうだよなぁっ!」 こぶしを前に突き出しながら1人で燃えてる破貞さん。 ……すさまじい人だな。周りの温度が、さらに3度上昇した気がする。あ、暑い……。 「あの日はよぉ、5時に打ち合わせっつうから、4時半くらいに船に言ったわけよ! そしたらよぉっ!ニボサブの奴、打ち合わせの時間ちょうどに来やがってよぉっ、結局、始まる時間が遅れちまったって分けよ! ……まぁ、だからといって何か変わったわけじゃねぇんだけどな。」 そういえばニボシさん、5時に船についたっていってたな。寝坊でもしたのだろうか? 「破貞さん、そのニボシさんが言ってたことなんですけど、打ち合わせのとき、少し抜けたそうですね。」 ぼくがそう聞くと、普段でも大きい目が、さらに大きくなった。 「あぁ、そうなんだよおぉっ、兄ちゃん!聞いてくれよぉっ! オレさぁ、急にトイレに行きたくなったんでよぉ、少し抜けたんだ。」 ぼくはそのとき、破貞さんのしゃべり方にあせりがあるのを感じていた。 ……やっぱりあのメモは、破貞さんが置いた物なのだろうか? ぼくは法廷記録から《ニボシさんへのメモ》を取り出した。 これを見せて、サイコ・ロックが出てきたら、破貞さんが置いたという可能性が高くなる。 「破貞さん。もうしかして、これに見覚えありますか?」 ぼくは、あの問題のメモを破貞さんに見せた。 少し考えてから、破貞さんが答えた。 「なんだぁ、それ?見たことねぇなぁ。」 「……なるほどくん、どうだった?」 少し間を置いてから、真宵ちゃんが小声で話しかけてきた。 ぼくは今、破貞さんを見ている。 だけど、あの重い金属の音は聞こえてくることはなかった。 サイコ・ロックはなし。 「破貞さんは本当にこのメモに覚えはないみたいだよ。」 「あれ。そうなの?」 目を丸くしてビックリする真宵ちゃん。 まぁ、そうだろうな。それにしても、破貞さんが置いていないのなら誰が置いたんだろうな。このメモ。 まぁでも、今それを考えても仕方がないか。 「ということは、打ち合わせのとき少し抜けたのは、トイレに行っただけなんですね?」 ジャラジャラジャラ…… ガシャン! 「おぉう、もちろんだっ!」 破貞さんがそう言った瞬間、あの重い金属の音が聞こえた。そしてぼくの目の前に、5個の南京錠が現れた。 この質問で、サイコ・ロックか。 トイレに行ったわけではない。 だとすると、いったいどこに行っていたんだろう。 「なるほどくん、もしかして……?」 ぼくは小さくうん。と言ってうなずいた。 今のところ、事件に関係ないこととはいえ、やっぱり気になるな。でも、秘密にしてる以上は、聞いても答えてくれないだろう。ニボシさん同様。 トイレに行ったのではない。という可能性を探すしかないみたいだ。 ……それはあくまでも、朝のことと事件との関連性が生まれたとき、だけど。 「いいなあぁ、いいなあぁ! 燃えるねぇっ!調査はよおぉっ!」 こぶしを前に付き出す破貞さん。 ぼくは思った。破貞さんが燃えてどうするんだよ……。 そしてぼくが口を挟む間もなく、再びしゃべり出した。 「オレよぉ!そういう必死な奴ら見てっと、ほっとけねぇんだっ! オレのちょっとした情報をくれてやるぞぉっ!」 「なるほどくん、くれてやるんだって!よかったね!」 真宵ちゃんがうれしそうに言った。 くれてもらえるのはありがたいけど、いい情報であることを願う。 「情報って、何なんですか?」 「まぁ、まぁ。そうあせっちゃダメだぞ。 せっかちだなぁ、兄ちゃん。があぁっがあぁっがあぁっがあぁっ!」 一番せっかちな人に、大口を開けて笑いながら言われてしまった……。 存分に大笑いした後に、破貞さんが話し出した。 「オレがよぉ、トイレ行ったときのことなんだけどよぉ。そのとき、誰かいたような気配がしたんだよなぁっ。」 頭を、ニットぼうの上から掻きながら言う破貞さん。 誰かがいた?それってどういうことなんだろう。 「それは、間違いないことなんですか?」 ぼくがそう聞くと、少し考えるようなそぶりをしてから、破貞さんが答えた。 ⇒To Be Continued... |
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