逆転バッテリー
作者: SEELE   2008年10月07日(火) 19時53分52秒公開   ID:8VRrF0QMWss
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アカネ「そうね。現時点では凶器のバットとしか考えられないわね。」
オドロキ「(どうやら…捕まえたみたいだな。)」
オドロキ「裁判長!今のこの証言を証言に追加してください!」
サイバンチョ「…わかりました。証人。証言を修正してください。」
アカネ「…わかりました。」

アカネ「被害者は最後の力を振り絞って凶器を奪って被告人に反撃しました。」

 異 議 あ り !

オドロキ「被害者がバットを奪って被告人に反撃した…残念ですが、それは通りません。」
アカネ「な…なんでよ…説明しなさい!」
オドロキ「ならば聞きましょう宝月刑事。何故このバットに被害者の指紋が残っていないのか!」
サイバンチョ「た…確かに!バットを奪って反撃したのであれば必ず被害者の指紋が残ります!」
アカネ「くぅぅ…」

 異 議 あ り !

ツキヒメ「確かに…これで立証されたな。被害者が反撃に使ったのは凶器ではないことが。」
オドロキ「(やったぞ!これ判決は…)」
ミヌキ「オドロキさん!ガッツポーズはまだ早いです!見てください、月姫検事を。」
ツキヒメ「………」
オドロキ「(やれやれ…笑ってるぞ…)」
ツキヒメ「なら検察側は立証するまでだ。被告人がキゼツした他の理由をな!」
オドロキ「なんだってェェェェェッ!」

ざわつく法廷内に裁判長の木槌の音が響いた。

サイバンチョ「静粛に!月姫検事、説明を!」
ツキヒメ「あの日、全てを目撃した人物を証言台に立たせるぜ。それでカンペキに立証してやるぜ!」
オドロキ「(うう…不利だな…。)」
ツキヒメ「ちなみに警察に通報したのもその証人だ。」
オドロキ「(それは初耳だな。)」
ツキヒメ「では事件の目撃者を証言台へ!」

やがて一人の男が証言台に立った。
鋭い目つきのどっしりした男だった。

ツキヒメ「では証人、…名前と職業を。」
???「岡崎 龍三(おかざき たつさぶ)。半神ジャガースの監督をやっております。」
ツキヒメ「証人は事件当日、新垣勇輝が被害者を殺害する瞬間を目撃した。…間違いないだろうか。」
タツサブ「間違いない。私は全てを見たんだ。新垣くんが浜谷くんを殺害する瞬間を…。」
オドロキ「(新垣さんが犯人じゃないなら…犯人はあの証人だ!…それを立証する!)」
サイバンチョ「では証人。証言をお願いします。」

 待 っ た !

ツキヒメ「その前に…よろしいだろうか、裁判長。」
サイバンチョ「な、何ですかな?月姫検事。」
ツキヒメ「証人、俺のシルクハットにサインをお願いできないだろうか。」
オドロキ「(後にしろよ…)」
タツサブ「よろしいですよ検事さん。私ごときのサインでよければ。」
ミヌキ「私も欲しいです。岡崎監督のサイン!」
オドロキ「新垣さんのサイン貰っただろ?それでいいじゃないか。」
ミヌキ「岡崎さんのサインを貰ってこそ、魔術師です!」
オドロキ「(関係ないだろ…)」
ツキヒメ「…お待たせして申し訳ない。証人、証言をお願いしよう。」
オドロキ「(本当に迷惑だよな…)」

証言 〜目撃から通報まで〜

タツサブ「私はロッカールームに向かう為に室内練習場を通ったんです。」
タツサブ「すると新垣くんが浜谷くんを殴っている瞬間を見てしまいました。」
タツサブ「私は新垣くんを止めるために彼に当て身を…」
タツサブ「新垣くんをキゼツさせた後、警察に通報しました。」

サイバンチョ「この証言が本当なら…犯人は被告人で決まりですね…」
ツキヒメ「これ以上明解な証言はない。尋問など必要なし!裁判長、判決をお願いしよう!」

 異 議 あ り !

オドロキ「尋問は弁護側の義務であり権利です。尋問させてください!」
サイバンチョ「異議を認めます。弁護人、尋問を。」

尋問 〜目撃から通報まで〜

タツサブ「私はロッカールームに向かう為に室内練習場を通ったんです。」

 待 っ た !

オドロキ「あの…何の用でロッカールームに?」
タツサブ「そ、それは…」

 異 議 あ り !

ツキヒメ「証人が何の用でロッカールームへ行ったのか。そんなことは事件に関係ない!」
サイバンチョ「異議を認めます。弁護人は質問を変えるように。」
オドロキ「(無理矢理聞くワケには行かないしな…一体、何を聞こうか…)」
ミヌキ「とりあえず、何か聞いておきましょう!」
オドロキ「ロッカールームへ行く為の最短ルートはやはり…?」
タツサブ「当然、室内練習場を通るのが近いです。他に道もありますが、遠回りになりますね。」
ツキヒメ「詳しいことは一塁アルプス側の上面図を見て確認したまえ。」

証拠品((一塁アルプス側の上面図))を法廷記録にファイルした。

一塁アルプス側の上面図
一塁アルプス選手控え室の見取り図。
ロッカールームへの通路は三通りあり、最短ルートは室内練習場を通ること。

タツサブ「い、いいですかな?続けても。」

タツサブ「すると新垣くんが浜谷くんを殴っている瞬間を見てしまいました。」

 待 っ た !

オドロキ「本当に見たんですか!」
タツサブ「見ましたよ!」
オドロキ「(怒られた…)では、被害者はどこから殴られたんですか?」
タツサブ「後ろから殴られてましたよ。すごい音がしましたよ、ゴシャッ!って。」
オドロキ「(ゴシャッ!はさすがにシャレにならないな…)」
ミヌキ「人が死んでる時点でシャレになりません。オドロキさん!」

タツサブ「私は新垣くんを止めるために彼に当て身を…」

 待 っ た !

オドロキ「当て身ですか?一体、どこから?」
タツサブ「後ろからですよ。気づかれたら逃げられるか襲われるかわからないですからね。」
オドロキ「(と、言うことは新垣さんはキゼツさせられても…それが誰かわからなかった!)」

タツサブ「新垣くんをキゼツさせた後、警察に通報しました。」

 待 っ た !

オドロキ「本当ですか?浜谷さんを殺害した新垣さんを目撃して気絶させた後…警察に通報したと。」
タツサブ「ええ、本当ですよ。見たことだけ証言に出してますから…」
オドロキ「そうですか…それは残念でしたね。」
タツサブ「ど、どういう意味でしょうか…?」
オドロキ「あなたの目撃証言にはひとつ欠けている部分があるんですよ。」

 異 議 あ り !

ツキヒメ「なら証拠品で示してもらおう!証人の目撃証言に欠けている部分を示す証拠品を!」

バット
凶器。被害者の血痕が付着しており、被告人、新垣勇輝の右手の指紋が付着。被告人のロッカーで発見。

 く ら え !

オドロキ「月姫検事。この凶器、どこで見つかりましたか?」
ツキヒメ「それはモチロンロッカールーム…。…!」
オドロキ「気づきましたか?岡崎さんの証言を信じると…バットはロッカールームに運ばれていない!」
ツキヒメ「ウオオオオオッ!」

カンッ!カンッ!カンッ!

サイバンチョ「静粛にィィィッ!弁護人、説明を!」
オドロキ「いいですか!さっきも言いましたが岡崎さんの証言ではロッカールームで発見された凶器の説明にスジが通らない。このムジュンが示すこととは…」

 異 議 あ り !

ツキヒメ「とりあえず異議を申し立てるッ!」
サイバンチョ「とりあえず異議は却下します。弁護人、続けなさい。」
オドロキ「証人!あなたが犯人だということをハッキリ示しています!」
タツサブ「くはぁぁぁぁぁぁぁっ!」

 異 議 あ り !

ツキヒメ「貴様の告発はなんら根拠がない!この証人を告発するなら…説明してもらおう!証人が被害者を殺害した、その方法を!」
オドロキ「う!そ、それは…。」
ツキヒメ「どうやら説明できないみたいだな。なら、その告発には意味がない!」
サイバンチョ「…どうやら弁護人の告発を却下せざるを得ませんね…。」
ツキヒメ「ご理解、感謝する。裁判長。」
オドロキ「(うう…急ぎすぎたか…。)しかし、さっきの証言にムジュンがあったのは事実です!」
サイバンチョ「…確かにその通りですね。証人!説明をお願いしましょう。」
タツサブ「…わかりました。」
オドロキ「(とりあえず一つ一つムジュンを指摘するんだ。そして、必ず真相を見つける!)」

証言 〜目撃から通報まで2〜

タツサブ「本当のことをいうと…殺害した瞬間は見ていないんです。」
タツサブ「私が目撃したのは浜谷くんが殺害された後でした。」
タツサブ「凶器のバットはありませんでした。既に新垣くんのロッカーに移されたあとだったのでしょう。」
タツサブ「その後新垣くんをキゼツさせ、警察へ通報しました。」

サイバンチョ「なんと…殺害された瞬間を見ていない!」
タツサブ「申し訳ありません。しかし、できるだけ裁判に時間をかけないようにと…。」
サイバンチョ「…いかなる理由があろうと、あなたのしたことは偽証罪にあたります。処分は審理後に言い渡しましょう。」
オドロキ「(どうやら…とんでもないことを言ったことに気づいていないみたいだな…)」

尋問 〜目撃から通報まで2〜

タツサブ「本当のことをいうと…殺害した瞬間は見ていないんです。」

 待 っ た !

オドロキ「と、言うことは…既に殺害された後だったと?」
タツサブ「…はい。既に死んでいた浜谷くんとその横で立ち尽くす新垣くんをハッキリと見ました。」
オドロキ「あなたは通り過ぎただけですよね?何故死んでいたと分かったんですか?」
タツサブ「うっ!それは…」
オドロキ「(もう限界だな…。早く決めてやるか。)」

タツサブ「私が目撃したのは浜谷くんが殺害された後でした。」

 待 っ た !

オドロキ「何故、そのとき既に死んでいたと?」
タツサブ「………」

 異 議 あ り !

ツキヒメ「そんなことはどうでもいい!」
サイバンチョ「いやいやいや!どうでも良くないでしょう!月姫検事!」
ツキヒメ「くっ…」
ミヌキ「月姫検事、急に口数が少なくなりましたね。」
オドロキ「そうだね、早く決めてやろうか。」
ミヌキ「やっぱり、岡崎カントクが…?」
オドロキ「おそらく、ね。」

タツサブ「凶器のバットはありませんでした。既に新垣くんのロッカーに移されたあとだったのでしょう。」

 異 議 あ り !

オドロキ「岡崎さん…とんでもないことを口走りましたね…。」
タツサブ「な、なんだと!ふざけるな!このバカ弁護士が!」
ツキヒメ「バカはアンタだっ!岡崎さんっ!」
タツサブ「な、なんだと…」
サイバンチョ「ど、どういうことですか?月姫検事。説明を!」
ツキヒメ「………」
オドロキ「ではオレが変わりに説明しましょう。裁判長。」
サイバンチョ「お、お願いします。」
オドロキ「あなたはこう発言した。『凶器のバットはなかった、既に新垣さんのロッカーに移ったから』…。」
タツサブ「それがどうした!」
オドロキ「では聞きましょう岡崎さん。何故凶器が、バットが新垣さんのロッカーから発見されたと知っているんですか?」
タツサブ「あっ!」
オドロキ「オレたちはこの法廷内で凶器がロッカールームで発見されたことは言いました。しかし、『誰のロッカールームだったのか』そのことについては、ただの一度も説明していない!」
タツサブ「ぐっ!グオオオオオオッ!」

 異 議 あ り !

ツキヒメ「そ、それがどうした!この証人を再び告発するというのなら、証拠を見せてみろ、決定的な証拠を!」
オドロキ「いいですよ。カンペキに立証してみせましょう。岡崎さんが真犯人であると言うことを!」


((新垣勇輝の証言書))
一般的には左利きだが、実は右利き。
知っているのは監督と被害者のみ

 く ら え !

オドロキ「皆さん知っていましたか?被告人、新垣さんは右利きなんです。」
ツキヒメ「な、なんだと!被告人が…右利き…。」
オドロキ「それで…月姫検事。凶器のバットはどちらの手の指紋がついていたんですか?」
ツキヒメ「み、右手だが…?」
オドロキ「しかし皆さん。新垣さんはどちらの腕で投げていましたか?」
ツキヒメ「世間ではエース左腕だと言っているが…」
オドロキ「そうですね。新垣さんの証言では、新垣さんが右利きだと知っている人物が二人います。」
オドロキ「証言書によると…そのことを知っているのは被害者と…そして、証人!あなただけだっ!」

「………」

オドロキ「ど、どうしたんですか?皆さん。」
サイバンチョ「それはこちらのセリフですぞ、弁護人!」
ツキヒメ「オレにしてみれば、『それがどうした』…そう思うね。」
オドロキ「ど、どういうことですか?」
ツキヒメ「お前の言い分はこうだ、証人があの現場を偽装した…そうだろう?」
オドロキ「ま、まさか…」
ツキヒメ「その通り、この証人が現場を偽装した、その立証が全くされていない!」
オドロキ「ぐ…うおおおおおおっ!」

カンッ!カンッ!カンッ!

サイバンチョ「これはもうキマリでしょう。二度による証人の告発に失敗。弁護人の立証には反証の力がない!」

 待 っ た !

オドロキ「待ってください!まだ弁護側の立証は終わってません!」
サイバンチョ「いいえ、これ以上続けても時間のムダです。被告人、新垣勇輝に判決を言い渡します。」

 異 議 あ り !

判決を言い渡そうとした瞬間、証人席側から女性の異議か響き渡った。

オドロキ「あ、あなたは…真宵さんっ!」
マヨイ「全く…傍聴席で聞いてたけど、危なっかしい弁護ね。オドロキくん。」
サイバンチョ「ど、どうしたんですか?綾里弁護士。」
マヨイ「当然、持ってきたんですよ。決定的な証拠を。」

ざわめく法廷内の雰囲気とは裏腹に、裁判長の顔つきは冷めていた。

サイバンチョ「弁護人は2度決定的な証拠を提出して…双方とも失敗しています。これ以上の証拠品は必要ない…そう考えます。」

⇒To Be Continued...

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