逆転バッテリー
作者: SEELE   2008年10月07日(火) 19時53分52秒公開   ID:8VRrF0QMWss
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「あの…オレ、王泥喜 法介って言います。これ…さっき落ちてたんで拾いましたよ」

オレはすぐに手帳を手渡した。すると彼女はすごい勢いでページをめくり始め、その後ホッとしたような表情に変わった

「トノサマンのレアカード、落としてなくて良かったぁ。」

…見かけによらず、内面は子供のようだ。
そしてオレは、成歩堂さんから頼まれた手紙のことを思い出した。
「そういえば…成歩堂さんから手紙を渡すのを頼まれていたんですけど、この真宵さんって、あなたのことですか?」
「え?なるほどくんから?…悪いけど、あなたたちは?」
「さっきも言いましたが、オレは王泥喜 法介って言います」
「そう…オドロキくんね。私は綾里 真宵っていうの、さっき言った通り、弁護士よ。」

…どうやら、成歩堂さんの言っていた大切な人とは真宵さんのことらしい。

「手紙届けてくれてありがと、お礼にいいこと教えてあげようか。」
「はい!、ぜひ教えてください!」
「一つ目、現時点で新垣勇輝には弁護士がいないわ。」
「そうなんですか?いかにも弁護士がつきそうな雰囲気なんですけど…」
「逆よ。依頼人は今最も話題の新垣勇輝。その裁判で敗訴すれば、自分たちの名前に傷がつくからね。」

正直、不快に思った。孤独な被告人に手を差し伸べるのが弁護士の役目。
何故そんな理由で依頼を引き受けないのか。

「新垣勇輝は今、留置所にいるわ。もしよければ、弁護してあげてね。」

この瞬間。オレは『奇跡のバッテリー』。新垣勇輝を弁護することを決めた。

「…二つ目、明日の検事は牙琉検事ではないわ。」
「え!なんでですか?」

そう驚きつつも、内心は少し安心した。苦手なんだよな…あの検事。

「今は海外出張中らしいよ。」
「(海外にいったい何しに行ってんだよ…)」

「…?じゃあ明日の検事は一体誰がするんですか?オドロキさん。」
「(…なんでオレに聞くんだよ)」
「明日の担当検事は月姫 烈(つきひめ れつ)。日本では初めての法廷らしいね。多分現場に来てる筈だから。」
「『日本では』初めて…?」
「そう、彼はアメリカでは37戦36勝。生半可な弁護士じゃ太刀打ちできないわね。」
「(無敗なワケじゃないんだな…)」

そこまで言うと、真宵は出口の方に足を向けた。
「じゃ、私は他にやることがあるから。」
そう言って帰っていってしまった。

「…オレたちも、まずは留置所に行ってみようか。」

オレたちは『奇跡のバッテリー』。新垣勇輝に会うために留置所に向かった。

8月 28日 午後2時50分 留置所 面会室

「ううっ…キンチョーしますね。オドロキさん。」
そりゃそうだ。なんでも相手は『奇跡のバッテリー』の新垣勇輝。オレだって緊張する。

「弁護の依頼状のついでに、サインも頼みますね。オドロキさん。」
「(何ノンキなこと言ってんだよ…)」

「入りなさい」…その声と同時に一人の男が入ってきた。意外と小柄な体だった

「あの…。あなたがたは一体…?」
「オレは弁護士の王泥喜 法介です。…話を伺いに来ました。」
「…もしかして僕の弁護を?」
「…はい。一体、何があったんですか?」

新垣さんは顔を暗くしながら、口を開いた。
「あの時は…試合前の投球練習をしていたんです。そしたらいきなり浜谷が倒れて…。そのまま逮捕されました。」
「(…おかしくないか?何か、隠してるような…。)」

そう思いつつも、オレは依頼状を書いてもらった。
「では、審理は明日の朝10時です。よろしくお願いしますね。」
「(…明日の裁判はゼッタイに負けられないな…)」
捜査に戻るために留置所を後にしようとすると、みぬきちゃんが声をあげた。

「あ、新垣さん!もしよければ、サインお願いします!」
「…いいですよ。こんな殺人事件の容疑者のサインでよければ。」
「そんなこと、ないです!新垣さんは無実ですよ!」

みぬきちゃんに色紙とペンを渡され、新垣さんはサインを書き始めた。
「ん?新垣さん、右で字を書いてますけど、左利きじゃないんですか?」
「ああ、世間じゃエース左腕とか言われてるけどね、本当は右利きなんです。」
「…それを知っている人は?」

これはかなり重要な証拠だ!そう思い聞いてみると、予想通りの答えだった。

「この事を知っているのは、浜谷と監督だけです。それ以外には左利きとしか言ってません」

「けど、よく利き腕と逆の手であんなピッチングを…」

新垣さんは少し笑って、こう答えた。
「…だから『奇跡のバッテリー』なんですよ。そのフレーズ考えたの、監督ですし。」

証拠品((新垣勇輝の証言書))のデータを法廷記録にファイルした。

新垣勇輝の証言書
一般的には左利きだが、実は右利き。
知っているのは監督と被害者のみ。

「…ありがとうございました。」
そう一礼して、留置所をあとにした

8月28日 午後3時14分 一塁側選手控え室

「あ、オドロキくん。どうかな?調子は。」
陽気な声で話しかけてきたのは、成歩堂さんだった。
「…証拠は揃いつつあります。けどまだ何か足りないような…。」
「じゃあとっておきのイイ情報をあげよう。かなり、決定的な。」
「決定的な…?」
「うん。このロッカールームで大量の血痕が確認されたよ。」
「え?けど殺人現場は室内練習場じゃ…?」
「ここまで言えばわかるだろう、オドロキくん。後は自分で考えるんだ。」

そう言うと、成歩堂さんはまたどこかへ行ってしまった。
「(教えてくれればいいのに…)」

けど、これで明日の法廷は大丈夫だ。明日で新垣さんの無罪を立証できる。
「さあ帰ろうかみぬきちゃん。」
「はい!殺人事件の捜査でしたけど、結構楽しかったです!新垣さんのサインも貰いましたし。」

ドンッ!
「きゃっ!」

オレたちが控え室からでると、一人の男とぶつかった。
「………」
男は何も言わずに去っていってしまった。
「あの人、魔術師の人でしょうか?シルクハットかぶってたし。」
「バランさんみたいな怪しさもあったしね。」
「怪しいって言わない!」
「(十分怪しいぞ…バランさん。)」

あの男が一体誰だったのか?そんなことも考えつつ、事務所に戻った。
しかし、あの男が明日、重要な人物になるとは思わなかった。

8月29日 午前9時55分 被告人第2控え室

「証拠品を確認しておくか…」

【証拠品ファイル】
((プロ野球の入場券))
半神ジャガース対横浜シャークスの試合の入場券。席は一塁アルプス指定席23段目104番

((『奇跡のバッテリー』のブロマイド))
半神ジャガースの名バッテリー「奇跡のバッテリー」のブロマイド。エース左腕新垣とキャッチャー浜谷の写真がコピーされている。

((手帳))
一塁アルプスに落ちていた手帳。
弁護士、綾里真宵のもの。

((バット))
凶器。被害者の血痕が付着しており、被告人、新垣勇輝の右手の指紋が付着。被告人のロッカーで発見。

((初動捜査報告書))
12時50分頃、目撃者の通報によって現場に突入。浜谷 守(20)が殺害され、新垣 勇輝(20)を逮捕。新垣 勇輝は気絶した状態で発見された。

((新垣勇輝の証言書))
一般的には左利きだが、実は右利き。
知っているのは監督と被害者のみ

【人物ファイル】
成歩堂 龍一(34)
ピアノを弾けないピアニスト。かつては凄腕の弁護士だった。

成歩堂 みぬき(16)
魔術師を目指す女の子。成歩堂龍一の娘。
得意技は「ぼうしクン」

綾里 真宵(27)
成歩堂さんの弁護士時代の助手らしい。
弁護士をやっている。

宝月 茜(26)
殺人の初動捜査を担当する刑事。
好物はかりんとうで武器もかりんとう。

新垣 勇輝(20)
今回の依頼人。相方キャッチャーの浜谷守を殺害した罪に問われる。
『奇跡のバッテリー』で知られるエース左腕。

浜谷 守(20)
被害者。『奇跡のバッテリー』で知られる名捕手。

月姫 烈(27)
アメリカで37戦36勝をあげた敏腕天才検事。
今回の担当検事。

法廷記録を見ていると、新垣さんが口を挟んだ。

「証拠品、かなり少ないですね。…大丈夫なんですか?」

不安そうに聞いてきたが、オレは自信を持って答えた。

「大丈夫です!あなたが無実なら、必ず無罪にしてみせます!」
「王泥喜さん、声がかすれて裏返って聞こえにくいですよ…」
「(うう…やっぱりキンチョーするな…)」
「みぬきとしては今日の検事さんのほうが気になります!」

…思い出した。今日の担当検事はわずか一回しか敗北したことのない天才検事。そう考えると尚更キンチョーしてきた…

「うん…大丈夫だよ。みぬきちゃん。」
「オドロキさん、コシが引けてます!」
「まもなく開廷時間です。弁護人と被告人はただちに入廷してください。」

法廷係官に呼ばれ、オレたちは法廷に向かった。

8月29日 午後10時 地方裁判所 第3法廷

カンッ!

サイバンチョ「これより新垣 勇輝の法廷を開廷します。」
オドロキ「弁護側、準備完了しています。」

オレの準備は万端だが、検察側の準備はできていないようだった。

サイバンチョ「コラッ!弁護人!月姫検事はどうしたのですか。」
オドロキ「し、知りません!(オレに聞かないでくれ…)」
サイバンチョ「…仕方ありません。月姫検事にはペナルティを与えておきましょう。本人がいない間に。」
オドロキ「(…黒いな、裁判長)」

しかし次の瞬間。法廷内に異議が響いた。

異 議 あ り !

???「検察側、準備完了している!」
サイバンチョ「あ、あなたは…月姫検事!」
オドロキ「あの検事…昨日、すれ違った…?」
ミヌキ「あの人…検事さんだったんですか。」

魔術師をイメージさせるシルクハットをかぶり、手には煙草、鋭い目線。…間違いない、昨日の男だ。
ツキヒメ「卑怯じゃねぇか裁判長。人のいない間にペナルティとはな…」
サイバンチョ「す、すみません!もうしません!」
オドロキ「(弱ェ!)」
サイバンチョ「で、では月姫検事。冒頭弁論をお願いします。」
ツキヒメ「被告人、新垣勇輝は名声に溺れ、許されざる罪を犯した。これからこの私がその犯行を完全に立証してみせよう!」
オドロキ「(…その立証、打ち砕いてやるさ!)」
ツキヒメ「では最初の証人、宝月刑事を入廷させよう!」
オドロキ「(どうでもいいけどテンションの高い検事だな…)」

そして最初の証人として茜さんが証言台に立った。やはり手にはかりんとうがあった。

ツキヒメ「驚いたね、オレの経歴に泥をぬった君が刑事だったとは。」
アカネ「何言ってるんですか月姫検事!あなたが自分で勝手にしたことでしょう!」
ツキヒメ「…来月の給与査定、楽しみにしておくといい。」
オドロキ「(理不尽な検事さんだな…)」

どうやら二人の間には何か因縁があるみたいだな…喋り方を見れば誰にでもわかる。

ツキヒメ「では証人、改めて名前と職業を。」
アカネ「宝月 茜です。…刑事やってます」
サイバンチョ「とりあえず証言をお願いしましょう。」

証言 〜事件のあらまし〜

「事件は一塁アルプス側室内練習場で起こりました」
「被害者の死因は鈍器で後頭部を殴られたことによる脳内出血です。」
「現場には被害者、浜谷守と被告人、新垣勇輝が気絶している状態で発見されました。」
「凶器と思われるバットは被告人のロッカーから発見されました。…当然、指紋がべったりついていました」
「以上の理由により新垣勇輝を緊急逮捕しました。」

サイバンチョ「被告人が…気絶?」
アカネ「警察では被害者の最後の抵抗だと考えています。」
サイバンチョ「ふむう…では弁護人、尋問を。」
オドロキ「(とりあえず今は情報を集めるんだ!ムジュンを叩きつけるのはそれからでいい…)」

尋問 〜事件のあらまし〜

アカネ「事件は一塁アルプス側室内練習場で起こりました」

 待 っ た !

オドロキ「室内練習場内ですか…」
アカネ「そうよ。ここに現場突入直後に撮影した写真があるわ。」
サイバンチョ「…受理します。」

証拠品((現場写真))のデータを法廷記録にファイルした

現場写真
現場突入直後に撮影した写真。
気絶した被告人と殺害された被害者が写っている。野球用具が散乱している。

アカネ「被害者の死因は鈍器で後頭部を殴られたことによる脳内出血です。」

 待 っ た !

オドロキ「凶器はこのバットですね?」
アカネ「そのバットが凶器と見て間違いないと思うわ。他の凶器は発見されてないし。」
オドロキ「(ふうん…)」
アカネ「これが被害者の解剖記録です。」

証拠品((解剖記録))のデータを法廷記録にファイルした。

浜谷守の解剖記録
死亡推定時刻は午後12時から1時。
死因は鈍器で後頭部を殴られたことによる脳内出血。

アカネ「現場には被害者、浜谷守と被告人、新垣勇輝が気絶している状態で発見されました。」

 待 っ た !

オドロキ「被告人が気絶…?何故ですか?」
アカネ「さっき言った通り、被害者の抵抗だと考えているわ。」
オドロキ「しかし…被害者は殴られて死にかけていた。抵抗できるようには思えないんですけど…」

 異 議 あ り !

ツキヒメ「そうは思えなくても実際に被告人は気絶した状態で発見されたんだ。そうしか考えられないだろう。」
オドロキ「では他のことを聞きます。反撃した際に使用した武器というのは?」

⇒To Be Continued...

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