逆転バッテリー
作者: SEELE   2008年10月07日(火) 19時53分52秒公開   ID:8VRrF0QMWss
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8月28日 某時刻 某球場室内練習場

「…やはり、腕を痛めているだろう。隠しても無駄だ、球のキレでわかる」

「しかし…今日の試合だけは降りるワケにはいかない、頼む、今日の先発はこの俺が…」

しかしキャッチャーの男は容赦なく言い放った。

「ダメだ、これ以上投げれば二度とボールを握れなくなる。俺が監督に今日の先発を変えてもらうよう提言しよう」

そう言い放たれると、ピッチャーの男はマウンドに蹲ってしまった

その刹那、一発の鈍い音、倒れこむキャッチャーの男、ピッチャーの男はただ動揺するだけだった。

「一体、何が起こったんだ…?」

8月28日 午前10時19分 成歩堂なんでも事務所

「パパ!覚えてるよね、今日の約束。」
「ああ、覚えてるよみぬき。あのことだろう?」
相変わらずな親子の会話が事務所内で行われていた。そしてその隣でせっせと洗濯物を干している王泥喜は、呆れた表情だった。

「成歩堂さん、またみぬきちゃんと何か約束したんですか?」
「ああ、なんでもみぬきはプロ野球を観に行きたいらしくてね、今日。僕が連れて行く約束をしていたんだよ。」
「…本当は成歩堂さんが観に行きたいだけでしょう?」
「…よくわかったね。まあ、たまには息抜きも必要かな、と思ってさ」
「(成歩堂さん、息抜きする程仕事してるか?)」

そう思いつつ王泥喜は茜からもらったかりんとうの袋を一袋封を開け、口にほうばった

正直、このかりんとうはかなり災いを呼んだ。
珍しくも茜が事務所を訪れ、お裾分けということでかりんとうを5袋くれたのだが、その後かりんとうをきらした茜が何度も事務所を訪れ、その度にかりんとうを食べられてしまい、結局残ったかりんとうは一袋。
…全く迷惑な話だ。一体何しに事務所を訪れたのか。

そんなことを考えてると成歩堂に呼ばれた。

「オドロキくん、なにやってるんだい?早く行くよ、球場に。」
「え?成歩堂さんとみぬきちゃんだけじゃないんですか?」
「いやいやオドロキくんのぶんのチケットもちゃんとあるよ。どうせ出かけるなら三人一緒に行きたいしね。」

プロ野球の入場券
半神ジャガース対横浜シャークスの試合の入場券。席は一塁アルプス指定席23段目104番

((プロ野球の入場券))をサイフにしまいこんだ

「(正直、興味ないんだよな…野球)」
「何してるんですかオドロキさん。早く行きますよ!」

みぬきに強引に腕を引っ張られ、しぶしぶ野球場へ向かうことにした

8月28日 午後12時10分 半神甲子園球場

「もう開門してるね、早速中に入ろうか」
「あ、待ってパパ。向こうで『奇跡のバッテリー』のプロマイド売ってるよ」
「(なるほど、みぬきちゃんが野球観戦について来たのはこの為だったのか…)」
「ねえパパ買いにいってもいい?」
みぬきは無邪気な顔で成歩道に聞いた。
「ああ、いいよみぬき。これで足りるかな?」
「(相変わらず娘には弱いんだな。成歩堂さん)」

((『奇跡のバッテリー』のプロマイド))を法廷記録にファイルした

『奇跡のバッテリー』のプロマイド
半神ジャガースの名バッテリー「奇跡のバッテリー」のプロマイド。最近話題のバッテリーらしい

「オドロキさん、非常識です!『奇跡のバッテリー』を知らないなんて!」

訳もわからずみぬきちゃんに怒られてしまった。
野球に興味のないオレが知ってるはずないんだけどな…

「『奇跡のバッテリー』と言えば今話題沸騰中の無敗のバッテリーですよ!エース新垣とキャッチャーの浜谷がバッテリーを組んで負けた試合は一切なし!まさに奇跡です!」

ひとしきり説明を受けた後、オレたちは野球場内に入ることになった。
…まさか、あんなことが起こるとは予想もしていなかった。

8月28日 午後12時23分 半神甲子園球場 一塁アルプス

「ひゃあ!大きな球場ですね!みぬきも、いつかはこんな大きなステージに立ってみたいです!」
「はっはっは。夢が大きくていいねえ、みぬきは。」

それぞれ勝手に盛り上がる二人とは違い、王泥喜はえらく消極的だった。
「早く、指定の席に行きましょうよ」
「まあ急ぐ気持ちもわかるけどオドロキくん。少しは球場内を探検しようじゃないか」
「そうですよ、オドロキさん。人生は探検心が大切なんですよ。」
「(それを言うなら 探究心 だろ…)」

そんな会話をしていると、みぬきが何かを見つけて、拾ってきた。
「パパ!何か落ちてたよ。」
何かと思い見ると、それは手帳のようなものだった。
その途端、成歩堂は顔つきが変わった。
「…そうか、彼女もここに来てたんだね。」
「心当たりがあるんですか?」
「ああ、心当たりならあるさ、忘れるワケがない、僕の大切な人だからね。」
「もしかして、弁護士時代の恋人とか?」
みぬきは目を輝かせて言った。
「うーんちょっと違うかな?まあ彼女も困ってるだろうし、届けてあげようか。」

((手帳))を法廷記録にファイルした。

手帳
一塁アルプスに落ちていた手帳。
成歩堂さんの大切な人の物らしい。

「さあ行こうか。確か23段目の102、103、104だったね?」
自分の席に行こうとすると、ウグイス嬢のアナウンスが響いた。

「申し訳ございません。本日の半神ジャガース対横浜シャークスの試合は中止させていただきます」

「えぇぇぇぇっ!なんでですか、オドロキさん!」
「知らないよ。オレに聞くなよ」

ざわついたり不満の声が溢れる球場内に、再びウグイス嬢の声が響いた

「皆様、その場から離れないようお願いします。これは、警察からの要請です。」

「(…何か、あったんだ!)」
そう思ったのは王泥喜だけではなかった。

「行くよ、オドロキくん。」
「行きますよ、オドロキさん。」

しかし、重大な問題に気づいた。一体どこへ行けばいいのか、わからないのだ。
何処へいけば良いのかわからないでいた王泥喜たちに、一人の女性が話しかけてきた。

「あなたたち、弁護士とお見受けするわ。」

そういうと彼女は、ひとつの紙を取り出した

「殺人事件が起こったわ、現場は一塁アルプスの近くにある室内練習場よ。これがあれば現場に入れてもらえる筈だから。」

((現場進入許可書))を謎の女性からもらった

現場進入許可書
謎の女性からもらった。
これを渡すと現場にいれてもらえる。

「ありがとうございます。あの…あなたは?」

「…弁護士よ。」

そう言うと、彼女は去っていった。

「…?成歩堂さん?」
「ん?ああ、なんだい?」
「行きますよ、成歩堂さん。」

考え込む成歩堂をよそに、王泥喜たちは事件現場に向かった。

8月28日 午後1時4分 室内練習場前

「…この先が事件発生現場だね。」
息を切らせながら王泥喜たちは事件発生現場の前、すなわち室内練習場前にたどり着いた。
さあ入ろうとすると、最近聞いたことのある声に呼び止められた。
「待ちなさい、アンタたち!」
「あ…茜さんっ!」
やはり茜だった。正直、最近聞きたくない声ベスト3に入る声だ。
「アンタたちいい度胸ね。無断で殺人現場に侵入しようとするなんて。」
「あ、けどオレたち許可書、持ってますよ?」
茜は不思議そうな目でこちらを見てきた。
次の瞬間、こう言い放たれた。
「許可書があるのはわかったけど、これ一体誰が書いた許可書?」
「え…?弁護士を名乗る女性に渡されましたけど?」
そう言い返すと、茜は笑いをこらえながら言った。
「アンタ、誰かもわからない人から貰った許可書で、本当に現場に入れると思ってんの?」
さらに口撃は続く
「第一、現場責任者は私よ?どこの誰かが書いた許可書で、現場に入れるほどバカじゃないわよ。少しは考えたら?」
「(うう…ムカつく…)」

「現場に入りたかったら、かりんとう10袋納品しなさい!」
「(意外と簡単に入れるんだな…)」

すると今まで考え込んでいた成歩堂が、助太刀とばかりに口を開いた。
「茜ちゃん。その許可書、よく読んでみたらどうかな?きっと、頭の上がらない人物だと思うよ?」

茜は不満そうな顔で許可書を読みはじめた
しばらくすると、茜は大騒ぎをし始めた。
「ああああああっ!これ、真宵さんの…。」
しばらく大騒ぎした後、茜は人が変わったように現場の調査を許可した。
「真宵さんの頼みとあれば仕方ないわね…いいわ、現場の調査を許可してあげる。」
「やりましたね、オドロキさん!」
みぬきは大喜びしている。そして、茜は腑に落ちなさそうな顔で聞いてきた。
「ねえ、あなたは一体誰なの?真宵さんのことも知っていたみたいだし、私のことも…」
「本当に分からないのかい?…茜ちゃん。」
「も…もしかして、成歩堂さんですかっ?」
「ああ、久しぶり、茜ちゃん。」
茜は目に涙を浮かべながら言った。
「…変わりましたね、成歩堂さん。」
「ああ、10年前のあの時以来だね。」
前に聞いたことがある。茜さんのお姉さんが殺人容疑で起訴されて、それを無罪に導いたのが成歩堂さんだったそうだ。
「私、アメリカに行っても成歩堂さんのことは忘れませんでした。だって、お姉ちゃんの命の恩人ですから。その成歩堂さんが弁護士をやめされられちゃって…」
成歩堂は首を横に振った。
「茜ちゃんが悔やむことはない、あれは僕が自分で決めたことなんだから。」

そこまで喋ると成歩堂は、足を事件現場のほうに向けた。
「さて、現場に入らせてもらっていいのかな?そろそろ、捜査をしないと」
「モチロンですよ!成歩堂さんの頼みなら、私も協力します。カガク的に」

…完全に成歩堂さんのペースだ
しかし、言ってることはもっともだ。
オレたちは事件現場へ向かうことにした。

8月28日 午後1時13分 一塁側室内練習場

「ここが殺人現場か…。」
「被害者の名前は 浜谷 守(はまや まもる)奇跡のバッテリーで知られる一流捕手よ」
「あの…死因はなんなんですか?」
「発生直後だし解剖記録はまだ届いてないけど、おそらく鈍器による後頭部への一撃ね。」

事件現場では被害者がうつ伏せで倒れており、野球の用具と思われるものが散乱していた。

「この事件、ひとつ不自然な点があるのよね…。」
茜さんのいう 不自然な点 が気になり、かりんとうを喰らうのを覚悟して聞いた。
「何なんですか?不自然な点って。」
「犯人が気絶して倒れていたのよね…」
「えっ!犯人が?で、誰だったんですか?」
もしやと思いつつ聞いてみると、返ってきたのは予想通りの名前だった

「気絶していたのは新垣 勇輝(あらがき ゆうき)。先ほど緊急逮捕したわ。」

えぇぇぇぇぇっ!というみぬきちゃんの声が現場内に響いた。

「もしかして…奇跡のバッテリーのピッチャーがキャッチャーを殺しちゃったわけですか?」
「現時点では私たちはそう考えているわ。彼の指紋が残った凶器もあったし。」
「凶器…ですか。」
「そうよ。彼の右手の指紋がべったりついたバットが、彼のロッカーに隠されていたわ」

((バット))のデータを法廷記録にファイルした

バット
凶器。被害者の血痕が付着しており、被告人、新垣勇輝の右手の指紋が付着。被告人のロッカーで発見。

「…さて、私もそろそろ事情聴取に行かなきゃなんないのね。あんた達も他の所を調べてきたら?」

と言って茜さんは行ってしまった。あの台詞からして、他の現場の捜査を許可してくれたようだ

「あれ?茜さん、何か落としましたよ。」
「どうやらこれは…調査の報告書らしいね。」

((初動捜査報告書))のデータを法廷記録にファイルした

初動捜査報告書
12時50分頃、目撃者の通報によって現場に突入。浜谷 守(20)が殺害され、新垣 勇輝(20)を逮捕。新垣 勇輝は気絶した状態で発見された。

「さて…そろそろ他の所も調べてみようか、ここにいても仕方がないし。」

成歩堂さんはそう言うと、ロッカールームの方へ向かっていった。
「オドロキくんは他の所を調べて貰えるかな?僕はこちら側を調べたいんだ。それと…」
「なんですか?成歩堂さん。」
「…いや。お願いがあるんだ、さっきの子に出会ったら、これと手帳を返してやってくれないか?」

成歩堂さんから手渡されたのは手紙だった。
「真宵ちゃんへ」…そう書いてある

((手紙))をポケットに突っ込んだ

手紙
成歩堂さんから先ほどの子へ渡すよう頼まれた手紙。差出人:成歩堂 龍一、宛先:綾里真宵

「じゃあ頼むよ、オドロキくん。僕も証拠を見つけたら伝えにいくよ。」

成歩堂さんの頼みで、オレたちは一旦室内練習場をあとにした

8月28日 午後1時48分 室内練習場前

事件が発生してまもないため、室内練習場前でも警官たちが忙しく動き回っている

「さあ、捜査に行きましょうオドロキさん!グズグズしない!」
「捜査に行こうって言われても…どこから手を付ければいいか、わかんないし」
「ううう〜どうしましょう…」

オレたちが考えにふけっていると、さっきの女性を見かけた。オレはすぐに声をかけた
「あの…さっきの方ですよね?」
「え…それ、私のこと?」
「(他に誰がいるって言うんだよ…)」

⇒To Be Continued...

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