逆転検事小説集 逆転の幕開け
作者: 東条   2010年02月22日(月) 17時15分11秒公開   ID:Uk/VlOgR0.A
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逆転の幕開け
        プロローグ

「愛と感動のカルボナーラ、いよいよ始まるっスね」

糸鋸刑事は目を輝かせている。
「愛と感動のカルボナーラ」は、劇団「タリアイン」がこれから演じる劇だ。
他にも「哀しみのペペロンチーノ」などの有名作品を出して、近々海外公演も行うそうだ。
劇は素晴らしいできで、糸鋸刑事もラストは感動して、ネクタイを一本引き千切るほどだった。
だが、この感動的な劇に残酷でドス黒い何かが渦巻いている事を私は知らなかった。


つづく

逆転の幕開け
        前編

4月3日 17時30分 ウカイ劇場・門前

糸鋸刑事は何をしているのだ。
私は御剣 怜待、地方検事局で検事をしている。
今日は糸鋸刑事を誘って、劇を見に着たのだが。
トイレにいってくると言って、戻ってこない。
仕方ないので様子を見に行くことにした。」

同日 某時刻 ウカイ劇場・第1舞台前

見ると、糸鋸刑事は昼寝をしていた。
ソファの気持ちよさについ寝てしまったのだろう。
私は糸鋸刑事を起こした。

「糸鋸刑事!人を待たせておいて寝るとは!げん....」

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

とその刹那に悲鳴が聞こえた。
私は糸鋸刑事とともに悲鳴の聞こえた舞台に直行した。

同日 17時33分 ウカイ劇場・第1舞台

舞台を見ても特に変わった所はないな。
と思っていると誰かが入ってきた。

「何なんだ、今の悲鳴は劇の予行演習か?それにしては大きいし......」

その人物は中年の男性で頭に6本の毛しか生えておらず髪の毛の先は丸く曲がっていた。
明らかに怪しい気がするのだが。

「貴方たちは劇団のメンバーですか、私は根田 幹吉(ねた かんきち)フリーライターです」

フリーライターか、怪しすぎて取材されたら私なら一瞬で断ってしまうだろうな。
とりあえず、彼に自己紹介をした。
それより、悲鳴は何処から....。

「悲鳴は舞台裏からじゃないんでしょうか。
 行ってみますか、事件性も考えられるでしょうし」

その通りだな。
私は舞台裏に行った。
だが、まさかここでとんでもないものを見つけることになるとは、この時は夢に思わなかった。

同日 某時刻 舞台裏

「こっ!これは死体」

舞台裏を少し進んだところで、死体を発見してしまった。
被害者は先ほどまで舞台でヒロイン役をやっていた、星奈 金子(ほしな かねこ)。
舞台の明るいあの表情は、死の恐怖に歪んだ表情で我々の前に姿を現していた。
一体、犯人は......。

同日 18時00分 ウカイ劇場・第1舞台前

警察局にも連絡をとって応援を頼んでおいた。
私はウカイ劇場にその時いた人物を集めた。

「一人ずつ名前を言っていって欲しいっス」

「戸間 途一(とま といち)、劇団員で先ほどでは悪役を演じていた」

「海津 健(かいづ けん)です、先ほどは貴龍と最初に死体を発見した者です」

「......貴龍 洋平(きりゅう ようへい)です」

「根田 幹吉、検事さんは知っていると思いますがフリーライターです」

「大沢木 ナツミや!フリーカメラマンや!」

自己紹介は終わった。
これで事件を彩る登場人物はすべて登場したと言う事だ。








つづく

逆転の幕開け
          中編

同日 某時刻 劇場第1控え室

現場の捜査は今は他の刑事に任せて私は劇団の人間関係とアリバイを調べてみることにした。

「御剣検事、自分取調べをする前に事件の流れを知りたいっス!」

「うむ、被害者は星名 金子この劇団の劇団員だ
 死体は劇場の裏から発見された
 死因はナイフによる失血死だ
 殺された時刻は解剖記録がない事から断定はできないが、彼女は劇が終わった17時00分から死体が発見されるまでの30分に特定できる。
 さぁ、大体事件の流れは理解できただろう
 取調べに移るとしよう」

「劇団員の戸間だ
 アリバイ17時から30分間ずっと一人で控え室にいた
 残念ながら証明はできない」

彼のアリバイは不成立か.....。
後は劇団の人間関係を聞いてみよう。

「劇団の人間関係で気になった事は」

「そうだな、海津は星奈と付き合っている噂があったから、何かトラブルがあったのかもしれないし動機はあるな。
 他人からうざいと思われていたのは、海津だ
 星奈は劇団の中ではまともな人だったと思う
 検事さん、犯人は海津しかいないんじゃないか」

海津には動機がありか。
彼の証言が本当ならほぼ全員に星奈を殺す動機はないか。

「劇団員の海津です。
 アリバイですか。17時から30分間その犯行時刻もう少し特定できると思うんですけど」

「それは、何故か理由をお聞きしたい」

犯行時刻か。
海津は一体どのような情報を?

「実は17時20分に放送で星奈を呼び出したんです、少し用がありましてね
 でも彼女はこなかった
 つまり、0〜20分の間が犯行時刻と考えられるわけです
 僕は後の10分間は、1人でいて死体を発見する直前で合流しました」

確かに海津の言う通りだ、その考えで間違いはない。
海津のアリバイは成立、そして必然的に貴龍のアリバイも成立する。

「劇団の人間関係について教えてほしい」

「貴龍は新人の癖に舞台に上がっているから、戸間とかが生意気だって言っているぐらいだし、特に悪い所はないですよ」
貴龍の証言を聞いてみるか。

「貴龍です....アリバイ、海津さんと一緒にいましたし、証明できますよ」

「劇団の人間関係について聞かせてほしい」

「戸間さんは、海津さんの事を嫌っていた事ぐらいですね、それだけです」

う〜む、動機は分からないな。
後は劇団員以外の人物から情報を集めてみることにしよう。

「根田 幹吉です、0〜20分の間概ね彼女、大沢木君といました。」

「概ねと言うと、ずっと一緒にいなかったのだろうか?」

「ええ、トイレに行っている間の1〜2分ぐらいですね、さすがにそんな短時間じゃ不可能でしょう」

確かに時間的には不可能だろう。
彼らもほぼ完璧にアリバイ成立か。

「大沢木 ナツミや!あんた御剣やないか!
 久しぶりやな!で、聞きたい事は根田さんと一緒にいたかいないかやったっけ、一緒にいたで、犯行時刻の時」

そういえば、昔の事件で私を追い詰めた証人だったなこの人は。
彼女達のアリバイは成立か。
という事は犯行を行えたのは、戸間だけと言う事になる。
取調べで引き出せるのはこんなものか。


同日 某時刻 ウカイ劇場・第1舞台前

「そろそろ、死体の捜査も終わっているだろう、糸鋸刑事現場に行くぞ」

「了解っス!捜査っス!燃えてきたっス!!!!!」

凄い勢いで現場に急行したようだ。
私もゆっくり現場へと向かった。


同日 某時刻 劇場・舞台裏

まずは死体を捜査するか。
先程言った通り被害者は失血死、横にあるナイフが凶器だろう。
このナイフは舞台裏に置いてあったようだ。
この事から犯人は突発的に被害者を殺した可能性が見えてくる。
とにかくナイフのデータは捜査手帳に書いておこう。

「別の場所も調べてみるっス!」

これは、防犯カメラを管理するパソコンかこれは.....。

「刑事、防犯カメラについて情報は....」

「知らないっス!」

うむむむ....気になるのだが。
すると、丁度いいタイミングで海津がやってきた、どうやら舞台裏に忘れた台本を取りに来たらしい。
防犯カメラの事を知っているかもしれない

「これか、僕は詳しい操作方法を知らないですね貴龍に聞いたほうが良いと思いますね、彼このパソコンを前の公演でいじってたから」

なるほど...

「でも簡単なことなら説明できますよ、これは舞台裏に入ったり出たりする人物を撮影するために作られたものでデータはこの中に入っています。
 もしかしたら、犯人が写ってるかもしれません。
 写真のプリントアウトぐらいはできるので、プリントアウトしますね」

彼の様子を私は見守った。
どうやらプリントアウトできたようだ。

「こ....これは!!」

今回の劇の悪役の格好をした人間が舞台裏から出て行く画像だった。

「これは怪人タバスコ!、と言う事は犯人は戸間さんって事ですね!検事さんさっさとしょっぴいてください!」

この写真のことを操作手帳に加えておこう。
戸間は確か悪役を演じていた。
と言う事は戸間が犯人という説が強くなったと言う事だ。
本当に彼が犯人かは分からないが.......。
話を聞くしかあるまい。


同日 某時刻 劇場第1控え室

「と言う事だ、戸間さんこの人物は貴方なのだろうか?」

これまでの捜査で得た情報を私は話した。
勿論彼はやっていないと主張した。
すると横から海津が割り込んできた。

「嘘をつくなよ!おまえだけアリバイがないって事も知ってるんだ!
 ここに写っているのはおまえしか有り得ないんだよトマト君!」

「御剣検事、トマト君って誰っスか?」

話の流れからして、戸間の事だろう。
しかも写真の撮影された時刻は5時13分、その間にアリバイのない者は彼だけだ。
しかし、戸間さん以外に犯行を不可能にしたこの状況に作為を感じる。
もう一度調べるしかないな。


つづく

逆転の幕開け
          後編

同日 某時刻 舞台裏

もう一度捜査をする事にした。
ただ防犯カメラの映像には疑問点があった。
防犯カメラの管理をするパソコンのスイッチは何時もは切っているらしい。
それは、犯人と被害者の争いでスイッチが入ってしまったと言う事で片付いてしまった。
実際死体と防犯カメラを管理するパソコンは近くにあった。
だが、本当にそうなのだろうか。

「御剣検事、この箱はなんなんスか?」

「海外公演の荷物だ、今日の19時頃本当ならこの荷物は運び出され海外に送られるはずだったそうだ」

改めて考えると意外と重要かもしれない。
この荷物の事も操作手帳に書き加えておこう。
その後も捜査を続けたがたいした手がかりがなかった。
そして、もう一つ疑問があった悪役の衣装がなくなっているのだ。
この悪役の衣装は一体何処にあるのだろう。
戸間によると衣装は防犯カメラを管理するパソコンにかけておいたらしい。

衣装がなくなった事頭の隅に置いておいた方が良いな。

同日 某時刻 第1劇場前

「疲れたっスね!御剣検事、ジュース買わないっスか」

「事件が解決したらおごってあげるから我慢したまえ」

事件を解決するまで私には休みなどない。
次は何処を捜査するべきだろうか。

「検事さん....ですよね」

行き成り、後ろから貴龍が現れた。
一体何の用だろう。

「放送で海津が呼び出してたんですが来なかったので探しましたよ早く行きましょう」


同日 某時刻 劇場第1控え室

そこには海津と戸間がいた。
海津は強気な口調で喋り始めた。

「はっきり言います、このトマトをさっさと逮捕してください。
 それでこの事件は解決ですから」

戸間を逮捕してもらう事が目的か。
彼の態度は少し気になるがしかし戸間が犯人と言う説これに矛盾はないのだろうか。

「検事さん!騙されるな、俺は犯人じゃ...」

「君が犯人でないのなら堂々としたまえ!
 私が全て立証して見せよう」

海津に戸間を逮捕する理由を説明してもらうか。
その説明にはおそらく矛盾があるはずだ。
私は海津に説明をお願いした。

証言開始!

「検事さんは信じてないかもしれないけど、
 戸間が犯人と言う事は間違いないんですよ。
 ただ一人アリバイが成立しなかったこと。
 写真に移った悪役の姿。
 全ての事実が戸間を示しているのだから。」

この証言の中にきっと矛盾がある。
何時もより指に力がこみ上げてきた。
まずはゆさぶりからはじめるか。

追求開始!

「待った!写真に写った悪役の姿を戸間と断定することはできない」

「待った!しかしアリバイが成立していないのは戸間一人こいつは戸間しかありえないんです」

う〜む、攻撃の手段を変えてみるか。
悪役について聞いてみるか。

「海津君、悪役について教えてほしい」

「パンフレットに書いてありますよ、写真と説明が」

写真を見てみるか。
真っ黒いマントに身を包み、顔に包帯を巻き、肩にピンク色の布をつけている。
待てよ、これはあの証拠品と矛盾している。

「異議あり!」

「パンフレットの写真には、黒いマントと包帯そしてピンク色の布が写っているこれが悪役の正しい姿だ。
 しかしこの写真の悪役の肩にはピンク色の布など付いていない!!」

「ななな.....なんんだってぇぇぇぇぇ〜〜〜」

叫んだと思ったら急に自信満々な態度が崩れてしまった。
何故ピンク色の布が消えてしまったのか。
ピンク色の布は黒いマントに固定されている。
黒いマントを着ているのにピンク色の布が消えた矛盾。
答えはただひとつだ。

「犯人はマントを裏返しに着たからだ
 ピンク色の布が消えた矛盾はこれで説明がつく」

「だ、だからどうしたって言うんですか!
 まままま、間違えただけでしょう!」

間違えたか......。
しかしそれは考えにくい。

「彼は悪役を演じている、そして劇団員は同じ劇で2つの役を演じることもあるのだから、早く着替える事も多い。

⇒To Be Continued...

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