逆転のブレイズ
作者: シアン   2013年01月03日(木) 11時48分53秒公開   ID:Wk8vzTtyS.E
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そして、

「ほらほら、はみちゃんも自己紹介自己紹介!」

真宵ちゃんが急かすと、春美ちゃんも、

「あっ、はい!わたくしは、綾里 春美です。ええと、小学3年生です。よろしくお願いします。」
と言った。

「へえ、3年生か。それじゃあ、瑠香と同じなんだね。少しの間だけど、仲良くしてやってね。」

との言葉に、

「はいっ!」

元気よく返事すると、瑠香ちゃんに向き直り、

「ええと、『瑠香ちゃん』と呼んでもよろしいでしょうか?」

と尋ねた。

瑠香ちゃんは嬉しそうに、

「もちろん!わたしも『春美ちゃん』って呼ぶね。よろしく!」

「ええ、こちらこそ!」

春美ちゃんも嬉しそうだ。

よかったなあ、あらためて友達になれたみたいで。




「僕は、弥座蕗 雅(みぞろ みやび)といいます。よろしくお願いします。」

・・・あれ?

「えっと・・・、『弥座蕗』さん、っておっしゃるんですか・・・?」

真宵ちゃんが尋ねると、

「え?・・・あっ、苗字・・・ですか?すみません、ちょっと事情がありまして・・・」

と雅さん。

「あっ、すみません、こちらこそ・・・」

真宵ちゃんがあわてて頭を下げる。

・・・兄妹なのに、苗字が違う?
どういうことなんだろう。
まあ、人の家の事情に首をつっこむものではないか・・・



そのとき、

「あっ、そうだ!」

瑠香ちゃんが何かを思い出したような顔をすると、腰につけていたポーチをごそごそと探りはじめた。

すぐにお目当てのものは見つかったようで、

「はい、これあげる!」

と、真宵ちゃんと春美ちゃんになにかを見せた。

「わあ、アメだぁ!」

真宵ちゃんがそれを見て目を輝かせた。

「真宵ちゃんと春美ちゃんは、どの味が好き?」

瑠香ちゃんに聞かれ、

「うーん、あたしは・・・これにしようかな。」

「わたくしは・・・これにします。」

真宵ちゃんはオレンジ味を、春美ちゃんはイチゴ味を選んだようだ。

「へぇ、それが好きなんだ。
わたしはレモン味が好きかなぁ。あとね、冥おねえちゃんはハッカ味が好きなんだって。」

そう言いながら、瑠香ちゃんもアメを選び、口の中に放り込んだ。



おいしそうにアメをなめている3人を見ながら、ぼくのアタマにはある疑問が浮かんでいた。

「・・・あの、なんで瑠香ちゃんはあんなにたくさんアメを持ち歩いているんですか?」

そう。瑠香ちゃんの持っているアメの数は、持ち歩くには多すぎるように思えたのだ。

ざっと30個くらいはあっただろう。

気になったので、隣にいた雅さんに聞いてみると、

「ああ、あれですか・・・。
友達にあげるため、っていうのももちろんありますけど、あのアメ玉パチンコに使うため、っていうのもあると思います。」

いきなりなんか物騒な単語が出てきたぞ。
・・・なんだそれ?

「あの・・・アメ玉パチンコ、とは?」

「瑠香が持ち歩いている護身用具みたいなものです。
普通のパチンコみたいなんですけど、玉はアメ玉なんですよ。」

護身用具・・・。

「・・・瑠香ちゃんはなにか危ない目に遭ったことでも?」

「いえ・・・よく分からないんです。けど、あれは狩魔さん・・・僕たちのおじさんからのプレゼントみたいです。」

『僕たちのおじさん』ってことは・・・狩魔豪検事?
狩魔検事は何を考えていたんだろう・・・



「あの、すいません。成歩堂さん?」

雅さんの声にはっと我に返る。

「は、はい。なんですか?」

あわてて聞き返すと、雅さんは改まった表情になり、

「お願いがあるのですが・・・
今夜、瑠香をあなたたちのテントに泊めさせてもらえませんか?」

とぼくに言った。

「えっ?・・・えっと、大丈夫だとはおもうんですけど・・・どうしてですか?」

とぼくが聞くと、

「瑠香は、真宵さんや春美ちゃんとだいぶ仲が良くなっているようなので・・・
真宵さんたちといたほうが、瑠香にとっても楽しいと思うんです。」
と雅さん。

なるほど・・・
ぼくたちのテントは、真宵ちゃんがどこからか持ってきたもので、結構大きい。入ろうと思えば4人くらいは入れるだろう。

これなら瑠香ちゃんを泊めることもできる。

「分かりました。」

すると雅さんはほっとした表情になって、

「そうですか、ありがとうございます!必要なものは瑠香に渡しておきますね。」
と言った。そして、

「瑠香!今夜のことだけど・・・」と、瑠香ちゃんに知らせにいった。



その知らせを聞いた3人は、とてもうれしそうだった。

「よーし!今夜はずーっとおしゃべりするぞー!」と張り切る真宵ちゃんを、
「ちゃんと寝てくれよ・・・」とたしなめるはめになったが。



ともかく、そんなこんなで時間は過ぎていった。

ぼくたちは協力してテントを張り、そのあとで雅さんにカレーをごちそうになった。



そしてぼくたちは眠りについた。



真宵ちゃんと春美ちゃんにできた、新しい友達。


真宵ちゃんが5杯もおかわりするほどおいしかった、雅さん特製カレー。


とにもかくにも、平和に終わった1日。


そう思っていた。


次の日の明け方、サイレンの音によって目を覚ますまでは・・・








2月5日 午前4時00分


次の日の明け方。


まだ夢うつつのぼくの頭に、どこかで聞いたような音が鳴り響く・・・。


この音は・・・


・・・救急車の、サイレン?

「っ!」

ぼくの頭から、一瞬で眠気が吹き飛んだ。



・・・どこからだ?
どこから聞こえる?

遠くから響く音に、耳をすます。

「あっちは・・・」

たしか、木材小屋があった方向・・・

不安になったぼくは、小屋のほうへ様子を見に行くことにした。

真宵ちゃんたちを起こさないように、ゆっくりと・・・






2月5日 午前4時20分


「―――!」


ぼくは、目の前の光景に息をのんだ。



小屋が、焼けている・・・。



見るも無残なそのさまに、ぼくはただ茫然と立ち尽くしていた。

そのとき、

「きゃあ!」

いきなり後ろから声がした。

「わっ!」

思わずぼくも声をあげる。

後ろを振り向くと、そこには一人の女性が驚いたような顔をして立っていた。


「・・・あ、あなた、何してるんですかっ!」

「・・・え?」


どういうことだ?

「な、なんでこんなところにいるんですか・・・。
そこで数時間前に火事が起きてたっていうのに・・・。
あ、そ、そうか!あなた犯人なんですね!?
『犯人は現場に戻る』って昔から言いますから!」
「え、ちょ、ちょっと待っ・・・」
「なんてことしてくれたんですかっ!
警察呼びますよ!警察っ!
警察に逮捕してもらうんですからっ!」


息つく暇もないほどの勢いで、一気にまくしたてられる。

その凄さといったら・・・。オバチャンのマシンガントークに匹敵するほどだ。・・・いやそれは言い過ぎか。


「ちょっと待ってください!
ぼくは、様子を見に来ただけで、なにもしてませんよ。」

彼女を止めようとするが、

「ウソです!犯人に限ってそう言うんです!
『自分は関係ない』とか!
私の目はごまかせませんよっ!」

・・・ダメだ。パニックになっているのか、落ち着きそうもない。



ぼくがおろおろしていると、

「あっ!そこのアンタ、何してるッスか!?ここは事件現場ッスよ!タイホッス!逮捕するッス!」


・・・また同じような人が・・・


「・・・イトノコ刑事?」

「またアンタッスか!
本当にどこにでも出てくるッスねー。」
『どこにでも出てくる』・・・
ぼくはそんなに事件現場によくいるのだろうか。


そして、イトノコ刑事がいるってことは、やっぱり・・・

「またなにか、事件が起きたんですか?」

「えっ!・・・あ・・・いやいや、じ、事件なんて、そんなもの、起きてないッス!全然!そんなことないッス!
・・・じゃあ、自分はこれで・・・」

急に立ち去ろうとするイトノコ刑事。


「待ってください!ここでなにがあったんですか?」

急いで呼びとめる。

「え?・・・じ、自分は、ここにキャンプに来てただけッスから。ハッハッハッ・・・」


びっくりするくらい分かりやすい嘘に、空笑い。


「・・・さっき『事件現場』とか『逮捕』とか言ってたじゃないですか」
「・・・
な、何のことだか分からな『イトノコ刑事?』
・・・アンタはほんとになんでもお見通しッスね・・・」

いや、今のはイトノコ刑事が口をすべらせただけだと思うんだけど。

「そうッス。ここで事件が起きたッス。
・・・ほんとうは言っちゃダメッス。秘密ッスよ。」

そう前置きしてイトノコ刑事は話し始めた。

「今日の午前4時ごろ、警察に電話が入ったッス。
『家が焼けて、その跡に人が倒れている』という内容だったッス。
ここはけっこう山の中ッスから、到着するのに30分くらいかかったッス。」

それからイトノコ刑事が話してくれたことをまとめると・・・



3;26 警察に電話が入る
3:28  病院に電話が入る
4:00頃 警察・救急車到着



まだ情報が少なすぎるなあ・・・。

とりあえず、メモしておこう。

新しく得た情報は、書き足していくようにして・・・。



『事件メモ』をとりあえずポケットにしまった。



・・・これでよし。


そして、もうひとつ気になることが・・・。

「イトノコ刑事。
この事件の通報者は、なぜいきなり警察に連絡したんでしょうか?
普通は、呼ぶのは救急車からだと思いますけど・・・」

「それは通報者に聞くッス。」

・・・にべもなくつっぱねられた。


「通報者とは・・・?
今どこにいらっしゃるんですか?」

「アンタのななめ前にいるッス。」

「え!?」

ぼくのななめ前、そこにいるのは、

「あなたが通報したんですか?」

「は、はい・・・。」

先ほどの女性だった。

先ほどの剣幕とはうってかわって、気が抜けたような表情をしている。


「なぜ先に警察に連絡したんですか?
不注意による火事、とは考えなかったのですか?」

「だ、だって・・・
燃える小屋のほうから、ふたりの人影が見えて、そのひとりが走って行ったんですっ!
逃げるみたいに・・・!」

「何ですって!」

ということは、

「あなたは、放火を見たというんですか!」

「は、はい・・・。
わたし、どうすればいいのか分からなくなって、
『これは事件だ』と思って、
警察に連絡したんです。」

そうだったのか・・・。


そうすると、

「イトノコ刑事、『倒れていた人』というのは?
無事なんですか?」

「とりあえず、生きてはいるッスけど・・・
かなり危ない状態ッス。
今は病院に運ばれているッス。」

「そうなんですか・・・。」



でも・・・

その人は、迫ってくる炎や煙から、逃げようとしなかったのだろうか?


イトノコ刑事に聞いてみる。

「それが・・・。
被害者は、煙に巻かれたとき、気絶していたみたいッス。
今のところ、頭を殴られたのではないか、と医者が言っていたそうッス。」

身動きがとれなかったわけか。



「つまり、これは殺人未遂・・・ということですか?」

「・・・そう考えられているッス。」




♪プルルルル・・・


だれかの携帯電話の着信音が鳴った。
「あ、自分ッスね・・・
はい、もしもし、糸鋸ッス。
・・・・・・

分かったッス!すぐそちらに向かうッス!」
そう言ってイトノコ刑事は電話を切った。

「自分は警察のほうに戻るッス。」
「何かあったんですか?」
「今、検問に、山から出て行こうとする一台の車がひっかかったそうっッス。
警察官が声をかけると、あわてたようにそのまま出て行こうとしたので、事件に関わりがある可能性を考え、
警察に来てもらうことになったッス。」


「じゃあ自分は行くッス。
くれぐれもこれ以上首をつっこまないことッス!」
イトノコ刑事はそう言って、

「アンタも一緒に来るッス!」
通報者の女性を連れて走って行った。


あとに残されたぼくは、とりあえずテントに戻ろうとした。

すると、


♪チャラッチャ〜チャチャ チャラチャチャ〜


ぼくの携帯が鳴った。

電話は、真宵ちゃんからだった。

「・・・はい、もしも『なるほどくんっ!
今どこ!?』

かなりあわてた様子の真宵ちゃん。

「ああ、ごめん。
いまそっちに戻る・・・『瑠香ちゃんは!?一緒にいる!?』

・・・えっ?
瑠香ちゃん・・・?

「い、いや・・・ぼくひとりだけど。」

『瑠香ちゃんがいないの!
雅さんも・・・!
なんか警察も来てるみたいだし、何かあったんじゃないかと思って・・・。』

瑠香ちゃんと、雅さんが・・・いない?

「と、とにかく、すぐそっちに戻るよ。」

ぼくはそう言って通話を切った。


いやな予感がする。
はやく真宵ちゃんたちのところへ戻ろう・・・!





2月5日 午前4時45分


はぁはぁ・・・
やっと着いた。

「なるほどくんっ!」

「真宵ちゃん!」

おろおろしている真宵ちゃん。

「瑠香ちゃんと雅さんがいなくなったって・・・?」

「そうなの!
さっき、目が覚めたら、瑠香ちゃんがいなくて・・・」

不安げな表情を浮かべる真宵ちゃん。

「最初は散歩にでも行ったのかな、って思ってたんだけど、外に出て少し辺りを周ってみたら、警察の人を見かけて・・・。
不安になって雅さんに知らせようとしたら、雅さんもいなかったの。」

二人がどこかへ消えた・・・

「な・・・なるほどくん!
瑠香ちゃんは・・・瑠香ちゃんは無事なのですよね!?」

⇒To Be Continued...

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