逆転スクール(2)
作者: たこやきDJ   URL: http://gyakutensaibansaikoudesu.rakurakuhp.net   2012年10月21日(日) 00時53分51秒公開   ID:LzdaZMFcgiE
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※後書きに重要な事を書きました



5月17日午前7時50分 横断歩道

世の中では地球温暖化やら人類滅亡やら色々騒いでる。
が、しかし、それは私の自転車には影響しない。今日も自転車の調子は快調だ。
ギア3だろうがギア1だろうがスイスイ走る。

「ふっふっふっふふーんふん〜♪」

鼻歌交じりに私は走っていた。
ランドセルを二年前に卒業した私は今バッグを背負って、横断歩道を渡っている。
風が気持ちいい。毎日がこれくらいの気温だったらいいのに。
おっと車だ。私は急いでブレーキをかける。

「あれ? 先に行けばいいのかな」

車の運転手は手を振っている。
私に先に行けと合図しているようだ。
それならばと私は自転車を走らせる。
スイスイと、スイスイと、鼻歌を歌いながら。
私は朝のこの時間が好きだ。


そんな事を考えている間に、学校に着いた。
時刻は8時10分。走ればまだ間に合う!
私は靴を入れ、スリッパに履き替えて走る。いや、走っちゃだめだ。プロ顔負けの速さで早歩きする。
これなら校則を破る心配はない。
ペタペタと廊下に音が響く。
校長室、印刷室と、教室をどんどん通り抜け、階段を駆け上り、教室に駆け込んで、いざゴールです!
……とはいかなかった。
無情にも、階段を駆け上る途中、死の宣告を知らせる鐘が鳴る。
ヤバい。この流れは非常にヤバい。
だがしかし、私はあきらめない!
私、今、教室に突入です!
ドアを開けて、中を見る。
……あの先生は居ない。
よっしゃ、私は小さくガッツポーズをとる。
そして席に座った。

「またギリギリじゃん」

そう言ってきたのは隣の席の小林 真理(こばやし まり)。まぁ、うん、幼馴染だ。
この学校でポニーテールを見かけたらまず彼女だと思っていい。その手首にゴムがあれば完璧だ。ミサンガとか云うらしいが、興味は無い。
幼馴染とはフラグがたつとか何とか言われているが、実際そんなことはない。

「仕方ないだろ。信号が……」

「分かった分かった。どうせ信号がちょうどぴったし赤に変わったとかいうんでしょ」

さすが幼馴染。完璧に分かっている。
私はバッグをロッカーに入れて本を取り出す。
ちなみに、「安楽椅子探偵」と云うタイトルの本だ。

「待ってたぞ透」

左前の席の下久保 亮介(しもくぼ りょうすけ)が言ってくる。
彼とは学校が統合した時に知り合った、友達だ。
赤みを帯びた黒髪を見たら彼だと思っていい。
ちなみに、透と云うのは私の名前だ。
本名は佐々波 透(さざなみ とおる)。
……どうしたの?
まさか、私の事を女だと思っていた読者は居ないよね。
私は男だ、正真正銘。
171.1p。60s。標準体型標準顔。面白いほど標準だ。
心の中では上品に私と言っているが、

「俺に何か?」

一人称は俺である。
流石にこの歳になると僕とも言いづらくなる。
三年前から俺にシフトチェンジした。

「ほら、宿題見せてくれよ」

先に言っておくが、私は真面目だ。
周りには漫画やお菓子を持ってくる輩が居るが、私は一切無い。
何が言いたいかというと、私はちゃんと宿題をやってくる子だということだ。
彼は残念ながらそこまで真面目では無い。酒飲みだ。
だが通報はしない。暗黙の了解というものだ。

「はいはい。たまには自分でやれ」

と言いながらノートを渡す私はツンデレとかそういう類のものではない。
ただひたすら純粋に、彼のためと言ったら嘘になる。
まぁいい。少なくとも、私は彼の事が好きだ。
彼はお礼を言い、ノートをうつす。
彼にとってこの席はちょうど良い。
私の席は中央の一番後ろにある。
彼はその左前。前から四番目だ。
そこはいわゆる遠い席という訳で、先生の目が届かない。
だから、彼は机の中に手を入れてノートを書きうつす事が出来るわけだ。
もっとも、今は先生が居ないので関係ないが。




私はことわざの凄さを改めてかみしめた。
「噂をすれば影がさす」。これは絶対だ。
なぜなら、先生がいきなり教室に入ってきたからだ。
亮介が慌ててノートを私に返す。
家でやればいいのになんてツッコミ、彼には通用しない。

「おはよう」

そう言ったのが先生。
名前は森晶轟と云う。メガネをかけていて若い。
私達ナウなヤング(死語?)の会話にもついていけるので結構人気がある。

「おはようございます」

私達は読んでいた本を閉じて立った。
時計を見ると八時三十五分だった。朝の会が始まる時間だ。
ちなみに朝の会とは、あいさつ、健康観察、先生の話など、朝に済ませておくべきものを行う会だ。
今のであいさつは終わったわけだから。次は健康観察だ。

一人の女が教卓の前に出た。
岡瑠智美。整った顔立ち、性格も明るく良い。正直もっとモテてもおかしくない。そう思った。

「怪我、病気の人は居ませんか?」

彼女がそう言う。誰も反応しない。
みんな健康らしい。
彼女は席に戻った。
長い黒髪がふわりとする。
もっとモテても良いのに、やっぱりそう思った。

その後、朝の会は何事も無く進行した。
先生はこの後学校案内とかがあるらしい。
それが終わった後、一時間目は社会だなと思いながらバッグから社会一式セットを取り出した。
私は亮介と共に階段を上り、社会科教室へ向かった。

「ところでさぁ」

突然亮介が話しかけてきた。

「何?」

「お前って好きな人居るの?」

私は吹き出しそうになった。
いきなりそんな事を聞かれるとは思わなかったからだ。
私は適当に返事をして、その話を終わらせた。
ここだけの話だが……一応居る。
誰、とまでは言わないが。
私達は社会科教室に着いた。私達の教室と内装はあまり変わらない。
さて席に座ろうかとした時事件が起こった!

「ああっ!」

いきなり叫び声が教室中に響き渡った。
教室中のみんなが声の主を見る。
須田 悟(すだ さとる)だった。
のっぺりした髪形にメガネをかけている。

「我の……我の消しゴムが無い!」

彼の物はよく無くなる。
といっても、誰かが隠しているわけではない。
彼はその見かけゆえに秀才と間違われるが、実際は早とちりしやすいうえに勘違いの多いダメな子だ。
それと、彼には一つ特徴がある。

「そうか……佐々波! お前だな」

そう言って、彼は人差し指を突きつけてきた。
私は心の中でため息をついた。
彼の特徴、それは茶番だ。
といっても分からないだろうから分かりやすく記しておく。
彼はものを無くしては誰かのせいにして、自分の推理をする。
それを彼は'追究'合戦と呼ぶが、私達は茶番と呼んでいる。

「何で俺が?」

「ふっ。我が完璧に説明してみせようではないか!」

やっぱり始まるのか。
私は付き合ってやるかと思いながら、立ちあがった。

       証言開始
      〜完璧な説明〜

「貴様という奴は! 我の高貴なる助手とも言えるような消しゴムを盗み出すとは」
「しかも、スーパーボックスから盗み出すなど! ああ嘆かわしい!」
「高貴なる憤慨にして奇想天外な爆発によるギガデイン!」
「ああ、邪気眼が、邪気眼がうずくぅぅぅ!」
「……まぁ、というわけだ」

私は思わずツッコミたくなった。
ちなみに、私はツッコミもボケもできる。
そんなことより、この証言は何だ。完璧でも説明でも無い。
気付いている人も居るかもしれないが、彼はいわゆる厨二病と云うやつだ。
やたらに妙な言葉を使いたがるが、面倒くさい。さっさと終わらせてしまおう。
とりあえず、証言を'ゆさぶって'、相手のボロが出るのを待とう。
追究の始まりだ。
なんだかんだで乗り気な私である。

       追究開始
      〜完璧な説明〜

「貴様という奴は! 我の高貴なる助手とも言えるような消しゴムを盗み出すとは」

       待った!

私は証言をゆさぶる時、待ったと言う。
癖みたいなものなので気にしないでほしい。

「高貴なる助手……消しゴムのことか?」

確認するのもばかばかしいが一応しておく。
それにしても……消しゴムをそう表現する人なんて初めてだ。
私に言わせてみれば……白いゴム、だ。

「ああ、そうだとも。貴様は高貴な「分かった分かった」

全部喋られるのも面倒なので話を区切った。


「しかも、スーパーボックスから盗み出すなど! ああ嘆かわしい!」

       待った!

「……スーパーボックスって何?」

私は一応訊いておく。
どうせ彼の事だ、妙ちくりんな回答が返ってくるのだろう。

「筆箱の事に決まってるだろう」

やっぱり、想像通りだった。


「高貴なる憤慨にして奇想天外な爆発によるギガデイン!」
  
       待った!

「とりあえず、お前は何を言っているんだ!?」

高貴、憤慨、奇想天外、爆発ならなんとなく分かる。
だがギガデインって何だ!?

「だーかーらー! 高貴なる憤慨に」

「分かった! 分かったからもういい!」

無限に続きそうだったから話を遮った。
まぁ、怒ってるということでいいだろう。


「ああ、邪気眼が、邪気眼がうずくぅぅぅ!」

       待った!

「邪気眼って何だ!?」

改めて思うが、こいつと付き合ってると疲れる。
なぜなら、会話のほとんどが私の突っ込みになるからだ。

「第三の眼だ! おでこをよーく見るのだ!」

そう言ってこいつは自分のおでこを指さした。
うん、おでこだ。それだけ。眼なんてどこにも見当たらない。

「ふっ、貴様には何も見えないだろうな。この眼は正直者にしか……」

だめだこいつ、早く何とかしないと。
裸の王様やら色々混ざってやがる。



「……まぁ、というわけだ」

       待った!

「結局なんの説明にもなってないじゃないか!」

ここで彼の証言をまとめてみよう。
高貴なる助手はスーパーボックスで高貴なる憤慨だからギガデインとなり邪気眼がうずく。
……自分で言ってて悲しくなってきた。
何を言ってるんだ私は。

「ふっ、幼稚な貴様には分かるまい」

あーなぐりてぇ。こいつなぐりてぇ。
ちょっと周りのお前ら、見てないで助けろ。
私の手が今にも暴れ出しそうだ。

「なぁ、もう一度筆箱の中見てみろよ」

奴の事だ。筆箱の中にあるかもしれない。

「スーパーボックス! まさか、そんなはず……」

彼は筆箱の中を覗き込んで黙った。
……まさか。

「……佐々波、すまん、あった」

こいつ……厨二とかじゃなくて、多分ただのバカだ。
気付いたら私の手は奴の頬を軽く叩いてた。



その後、授業が始まった。
社会の先生の名前は研西 魂(みがにし たま)と云う。
「たま」という可愛い名前とは裏腹に、この先生は怖い。
どう怖いかというと、常に不気味な笑みを浮かべてたり、死神みたいな雰囲気だとか、そんな感じだ。
そのことから、みんな彼を裏では死神と呼んでいる。

「透、消しゴム貸して」

最近真理がよくこんな事を言う。
別にそれだけなら問題ないのだが、問題が一つ。

「その消しゴムは何だ?」

そう言って彼女のノートの上に転がっている消しゴムを指さした。
そう、彼女は自分の消しゴムを持っているのにもかかわらず私のを借りようとしてるのだ。
特に断る理由もないから貸すけど、全く女の考えることは分からん。

時計を見る。九時五分だ。
あー暇だ。心底暇だ。
何かスリリングな事起こらないかなー……。

「キャアァァァァァァァ!」

私の思いに応えるかのように、悲鳴が聞こえた。
この声は……須々木マコ先生だ。
突然の悲鳴に教室がざわつく。
そんな中死神が教卓を思いきり叩いた。

「静かに! 授業を続行します」

いやいやいやいやいやいや、ありえんだろ!
こんな悲鳴が聞こえるのに無視して授業とかあんたどんだけ無慈悲なんだよ。
教室はまだざわついている。

「これ以上騒いだら通知表が悲惨な事になりますよ」

半分の生徒が静かになった。
その中には私も含まれる。
だが点などどうでもいい輩はまだ騒いでる。
そいつらには先生のチョークロケットがヒットし、教室は静かになった。


同日9時40分 中学二年生の教室

分かりやすく状況を説明しよう。
警察がその辺をうろついている。
うん、異常だ。間違いない。
とりあえず、とりあえずだ。さっさと生徒を帰らせるべきだ。
しかし、死神は「校長が帰らせないと言ってた」と言ってた。
バカですかあなた方は。

「ヤバくない、これ」

亮介が言う。
ああ、間違いないな。
二時間目は家庭科の予定だったが、なんでも家庭科室が事件現場らしいのでとりあえず教室待機になった。
いや、帰らせろよ。

「ああ、ヤバい。だがよく見とけ。警察が校内を移動するところなんて一生に見られるか見られないかだ」

そんな会話の中、前の方で怒声が聞こえた。

「はぁ!? 私じゃないわよ!」

その声の主は藤崎 加奈子(ふじさき かなこ)だった。
柔道部の部員で体格がでかい。
彼女はとある子のえりを掴んでいた。
佐多中絵美だ。

「でも、消しゴムが無くて……」

話の内容からして、彼女の消しゴムが無くなったらしい。
それを、藤崎に訊いた結果今の状況らしい。

「私じゃないっつってんだろ!」

とても女らしからぬ言動だ。
佐多中は可哀そうな事に苛められている。

⇒To Be Continued...

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