名探偵コナン×逆転裁判 創世者の日記 序章
作者: 真実の追求者   2011年10月03日(月) 03時28分56秒公開   ID:B3lXHCgMg/Y
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小五郎は、現在別居中の妻、妃英理に話をするよう、蘭に頼み込んだ。
「う、うん。わかった……」
相当重い空気なのか、蘭は小五郎の頼みを引き受けた。いつもなら、自分でやりなさいよ、とでも言うだろうが、雰囲気がそれを許さなかったのかもしれない。蘭は自分の携帯電話を使って、英理の事務所へかけた。
その間に、コナンはさらに内容を知ろうと、改めて新聞を読み始めた。そして、成歩堂龍一という人物を、より詳しく知ることができた。

彼は弁護士になって三年目で、彼が弁護した被告はほとんどが無罪になっている。唯一、敗訴した事件もあるが、その被告人は本当に罪を犯した者で、大概は無実の罪を着せられた哀れな人達が多いようだ。
しかも、彼が今まで立ってきた法廷は、ほとんど有罪になり兼ねないほど最初から追い詰められているらしい。だが、最後の最後で逆転勝利を獲っている。これが、成歩堂龍一に関する情報と言ったところか。

記事を読み終えたコナンは、ある部分に注目した。それは当然、日付の部分である。だがこのことは、蘭が英理との電話を終えるまで言わないでおこう、と心の中で決めた。

「お母さん、そんな弁護士は聞いたこともないわよ…ってさ。」
英理との電話を終えた蘭が、小五郎に報告した。
「ううん、そうか……」
小五郎は深く考え込んだ。が、その小五郎の考えはコナンの一言によって断たれた。
「英理おばさんが知らないのも、無理はないんじゃない?」
「コナン君、どういうこと?」
「だってさー、日付のところ見てみてよ!」
コナンが指を指した日付の部分に、蘭と小五郎は注目した。
「嘘……!この新聞、日付が二月のものじゃない!?」
「いや、むしろもっと凄いのは……西暦だ!この新聞…………、2019年じゃねぇかよ!」
「ええっ、嘘!」
まるでお祭りのように2人は、騒ぎ、驚いた。
(未来から送られてきた新聞………か。一体誰がこんなことを…………?)

(いや、一体どうやって“この時代”に送ってきたんだ?)

ただ一人、コナンだけは新聞の謎について考えていた…。

もうすぐ出会う、成歩堂龍一の記事が載っていた新聞について………。




これが、もう一つの始まりである………。



DETECTIVE CONAN SIDE……
〜20××年 10月30日 毛利探偵事務所〜

『ふぅん、気になるわね…。未来からやってきた新聞、なんて。』
新聞の一件から一日経った後。蘭は親友、鈴木園子に電話していた。世間話や、昨日の新聞の件についても。正直、蘭はそんな話をしても笑われるだけだろう、と思っていた。だが、園子は友達歴十年以上。話すことには抵抗があったが、話しても大丈夫だろうという、蘭の独断から話してみた。その結果は、真剣に聞いてくれた。
「本当に、何がなんだか分からなくて……。園子に話せば、ちょっとは気が楽になるかなと思って話してみたの。」
『いいって、いいって! 何かあったときは、いつでもこの園子様に御相談なさい!』
「ありがとう、園子......。」
園子の明るく元気な声に、蘭は心の底から感謝した。
『ん〜、でも一体…どうしてこんなことが起こったのかしら…?』
改めて蘭と園子は、電話越しに新聞の謎を考えるのであった。
結局、謎は深まるばかりで何も案が浮かばなかったが…。
『あっ、そうだ蘭! せっかくだから皆で旅行に行かない…?』
園子の突然の妙案に蘭は戸惑ったが、話を聞くことにした。
「えっ、でも…。いいの?」
『ええ、パパとママ、ちょっと北海道に旅行に行くつもりだったんだけど…。パパが風邪をこじらせちゃってね…。行きたい人の分は出してあげるって言ってたから、一応行きたい人の予定聞いてくれる?』
「園子……。うん、わかった。和葉ちゃんや服部君にも聞いてみるよ!」
『んじゃ、またね! 蘭!』
そう言って園子は電話を切った。

蘭が園子に電話をしていた同時刻。コナンは本来の自分の家の隣の住人、阿笠博士の家にいた。今自分が通っている帝丹小学校の仲間とともに。
「ふむぅ…これが未来からやってきた新聞、というわけか……。」
新聞を観察しながら阿笠は、うむぅ、と項垂れた。
「その新聞を送ってきた人物、誰だか解らないの?」
コナンと同じ境遇を持つ少女、灰原哀が聞いた。
「解るわけねぇだろ? 夕刊を受け取ったのは蘭だし、その夕刊は昨日蘭に聞いてみたけど、玄関でそれを取り出したんだ。もし会ったとしても、気にも留めなかっただろうぜ。そいつの顔や服装なんて、いちいち気にしてられねぇからな。」
哀の質問にも、コナンは早口で、面倒くさそうな面持ちで答えた。
「まぁ、それもそうね…。」
哀もそれ程期待してなかったのか、無表情で答えを受け流した。
「そういや、あいつらは? リビングで博士のゲームでもやってんのか?」
コナンがふと気付くと、キョロキョロと辺りを見回した。コナンの言う“あいつら”とは、小嶋元太、円谷光彦、吉田歩美のことである。彼等はコナン、哀を含めた五人で、“少年探偵団”というものを結成している。事件に巻き込まれることもあり、そして事件を解決することもある。基本的には、コナンが巻き込まれることが多いのだが。
「ええ、その通りよ。それがどうかしたの?」
「いや、せっかくだから…アイツをこのくだらねぇ戯言に付き合わせてやろうと思ってな。」
「アイツ、というのは新一君、もしや…。」
阿笠が思い浮かべた人物を言う前に、コナンは新一用として使う携帯電話をポケットから取り出し、阿笠が思い浮かべた人物へ繋がる電話番号をかけた。
プルルル、プルルル………。
この音がどれほど続くか。と阿笠は思ったが、三回程で鳴り終わり、その人物へと繋がった。
『おー、工藤! めっちゃ久しぶりやな!』
明るく陽気な大阪弁の声が響きわたった。
「ああ、久しぶりだな。服部。」
コナンは大阪にいる、親友であり、同じ探偵としてのライバル…服部平次の名を呼んだ。
『ホンマ、ええタイミングで来たで工藤! お前に伝えたろ思とった矢先に電話かけてきてくれるんやからな! ほんで、何や? 話したいことあるんやったら話してみ!』
コナンは平次の明るい雰囲気に翻弄されたものの、話すことにした。未来からやってきた新聞………。その記事に載っていた弁護士、成歩堂龍一について………。
『………………………。』
コナンは一通りの話を終えると、平次の反応の様子を窺った。どんな反応を見せるのか、気になって仕方がない。
『成歩堂龍一、か……。』
「正直、信じ難い話なんだろうけど、本当なんだぜ? まぁ、お前に話したのも、気休めにはなるかなと思ってよ……。」
『オレは信じるで、その話。』
「えっ?」
電話越しに聞いた一言が信じられなかった。まさか信じてくれるとは。
『オレがお前に話したろ思とったことも、みんな似たようなモンやからな。』
だが、平次の一言はさらにコナンを驚かせた。
『昨日、手紙が送られてきたんや。宛先はオレなんやけど、送ってきた人の名前が書かれてなかったんや。』
コナンは黙って、平次の話を聞くことにした。この話を聞けば、新しい何かが見えるような気がしたから。
『手紙にはこう書いてあったで。

【服部 平次様

貴方が数々の難事件を解決していると、風の噂でお聞きになり、このような手紙を送ってきた次第でございます。
実は私たちが現在住んでいる街で、ある事件が起ころうとしているのです。
詳しいことはこちらに着いた時にお教え致します。なお、この依頼は貴方が断ろうが絶対に引き受けるものです。それを忘れないでください。この依頼は、異世界の真実を解明する者にも送りましたので、あしからず。
その異世界の新聞を同封させましたので、読んでおいてください。】

…こんな感じでな。ちょっと、記事の写メ送るさかい。少し待っといてや。』
そう言って平次は、一旦電話を切った。
その直後、またコナンの電話の着信音が鳴りだした。あくまで、“江戸川コナン”として使用している携帯からだが。コナンは電話の相手を確認し、相手は蘭であることが分かると、電話を繋げた。
「もしもし、蘭姉ちゃん?」
『あ、コナン君。ちょっと聞きたいんだけど、明日から四日間は、暇?』
突然、蘭からそんなことを聞かれると言葉に詰まるが、何とかコナンは「う、うん。暇だよ。」と答えることができた。
『良かった…。実は園子が、明日から四日間、皆で北海道に旅行へ行かないかって。コナン君、今は阿笠博士の家にいるんでしょ?』
「うん、解った。元太達に、四連休は暇か確認してきてほしいんでしょ? 」
『うん、ゴメンね。こんな事頼んじゃって。』
「いいよ、別に。平次兄ちゃんにもこの事、頼んでおくから。」
『ありがとう、コナン君。じゃあ、よろしくね。』
「うん、じゃあね。」
会話を終えて、コナンは蘭との電話を切った。
「あら、皆でってことは、私たちも入っているのかしら?」
蘭との電話を聞いていた哀が、コナンに確かめるように質問した。
「だろうな。というわけで、博士と灰原は、明日暇か?」
(何がというわけよ…。)
哀は勝手に話をすすめるコナンに、少々呆れてしまったようだ。
「まあ、その茹でた頭を冷やすにはちょうどいいんじゃない?」
「もちろん、構わんぞ。子供たちには、ワシから伝えてこよう。」
二人は承諾してくれた。平次には、自分から伝えておこうと、コナンは思った。
そんな時、コナンが新一として使っている携帯から、メールの着信音が鳴った。先程の平次との電話で言っていた写メが届いたようだ。見出しの文字が大きく活字の方は読めないが、おそらく見出しだけでも十分だろう。そう判断したコナンは記事の見出しに集中することにした。

【天才検事 御剣怜侍 真実を鮮やかに見つけ出す!】

これが、記事の見出しである。
コナンが記事の見出しを読み終えると、平次からの電話が鳴った。コナンはすぐさま、平次との電話を繋げた。
「もしもし。」
『よぉ、工藤。見出ししか字ィ読めへんかったやろ。その御剣っちゅう検事については、オレが説明したるわ。』
「ああ、よろしくな。」
そして、平次は異世界の天才検事・御剣怜侍についての情報を話した。

御剣怜侍は、当時国内最年少で検事になったらしいで。確か、そん時は二十歳やったな。初の法廷で被告人が自殺してしもたせいで、そん時の審理は無効。せやけどそれから五年間、一度も無罪判決を取られたことはなかった。裏に黒い噂が立っとったんや、証言の操作や証拠品の捏造がな。あの成歩堂龍一に出会うまではな。二つの事件で御剣の兄ちゃんは、被告人を有罪にすることはでけへんかった。成歩堂の兄ちゃんが、真相を法廷で暴いたからやな。そして挙句のはてに、ある事件の被告人にされて、成歩堂の兄ちゃんに助けられたんや。その二ヶ月後、ある殺人事件の担当検事をすることになって真相解明後、突然の失踪や。その一年後に帰国して、また成歩堂の兄ちゃんと戦ったんや。結局、その被告人は有罪同然の罪やったらしいから、まぁ、良かったんやろけどな。その後は、理想の審理を求めて各地を旅してきたらしいで。今は日本で、事件の真相を暴いとるみたいやな。大体、こんなところやな。オレから伝えられる情報は。

「サンキュー、服部。」
『気にすんなさかい、情報交換ちゅうヤツやこれも。』
平次がニッコリと笑いながら言っているのが、コナンには想像できた。同時に、忘れないように旅行の件について聞き出さなければ。
「なぁ、服部。明日から四日間、お前、暇か?」
『せやな。中間テストも、ちょうど終わった頃やしな。それがどないしたんや?』
「蘭がみんなで旅行に行かないかってさ。事の発端は、園子らしいけどな。」
『ああ、あのカチューシャの姉ちゃんか。』
「一応、彼女にも伝えてくれねぇか?」
『彼女って、和葉のことか?』
「ああ、蘭のことだから、きっと聞くと思うぞ。」
『しゃーないわ、直接聞きに行くさかい。報告はあの姉ちゃんのトコロに頼むで。』
「悪いな、じゃあまた明日。」
『おう、楽しみにしとるで!』
それが、今日最後のコナンと平次との会話だった。




GYAKUTEN SAIBAN SIDE……
〜4月3日 午前10時25分 上級検事執務室 1202号〜

「本当なのか、御剣! あの新聞が異世界のものだなんて!!」
成歩堂がチェスボードのをドン、と叩きながら叫んだためか、ボードの上の駒がいくつか床に落ちてしまった。成歩堂と御剣は、何とかチェスの駒を元の位置に戻した。
成歩堂龍一が“工藤新一失踪”の新聞を入手してから五日ほど経った。成歩堂はその数日間、御剣に連絡をとろうと思っていたが、その御剣は事件があったらしく、連絡がとれなかった。日付が全く違う新聞について、相談しようにもできなければ意味がない。そんな朝を感じていた成歩堂だったが、突然御剣から電話がかかってきた。内容は「話したいこと、というより相談したいことがある。今すぐに執務室へ来てほしい。」というものだった。そして成歩堂は、“工藤新一失踪”の記事が書かれた新聞について話した。当然、日付が今のものとは違うことも。そして御剣から返ってきた言葉が、「それはこの世界の新聞ではない」という奇想天外な一言だった。こうして、最初の成歩堂の台詞に戻る訳である。

⇒To Be Continued...

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