名探偵コナン×逆転裁判 創世者の日記 序章 | |
作者:
真実の追求者
2011年10月03日(月) 03時28分56秒公開
ID:B3lXHCgMg/Y
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ある町のどこか暗い廃屋……。そこで、人は話をしている。 「それで…、計画の準備はどうなんだ?」 右手に持っているワイングラスを、ゆらゆらと動かしながら男は聞いた。 「ああ、順調だ。何度か試してみたが…、全部成功したぜ。クロス。」 ワイングラスを持った男……クロスに、もうひとりの男はドカッと音をたてながら、<ある実験>の成果報告を伝えた。 「ありがとう、レイル。これで彼等を<こちら>へ呼び寄せることも、たやすくなった。」 クロスはフッと微笑みながら、もう一人の男……レイルに礼を述べた。 「気にすんな。俺は元々、好きでやってるんだからな。」 レイルは謙遜するように、手を横に振った。 「ところで、ハカセはどこにいる?彼にも、お礼を言いたいのだが……。」 キョロキョロと、クロスは<ハカセ>たる人物を軽く探してみる。 「ハカセなら、あいつらが無事帰ってくるのを待ってるぜ。あいつらにも役割が色々あるし、帰りの途中でマシンが壊れないか心配みたいだしな。」 ソファのすぐ横にあるドアから、長身で、引き締まった体格の男が、クロスに<ハカセ>のことを報告する。 「おお、兄貴じゃねえか。こんな時間までどこで何やってたんだ?」 レイルは自分の兄の顔を見ると、どこか嬉しそうな表情になった。 「バランか、すまないな。お前にこんなことをやらせてしまって。本来なら、俺がやるべきはずなのに…。」 ワイングラスを、ソファの目前にあるテーブルに置いて、クロスは良い体格の男……バランに話しかけた。 「けっ、全くだ。こんな大事なときに、足首なんざ怪我しやがってよ……。」 バランは、クロスの足元を見ながら皮肉を込めた。とはいえ、彼の足元を見ているあたり、やはり心配なのだろう。 「ホントだよな〜、計画をたてたのもクロスだってのに、本番に支障が出るかもしれねぇ捻挫なんかしやがって…。」 レイルも、クロスに対してさらに皮肉を込めた。というより、むしろ軽く責めているような発言である。 「心配は要らないよ。計画を実行するのは一週間後…。私も大人なんだから、身体くらいきちんとその間に直せるよ。」 レイルとバランの一言に、クロスは心配いらない、と表情でも応えてみせる。 「さて、もうすぐ時間ですね。話の続きは、地下二階の食堂ということで………。ハカセも彼等も、もう戻っている頃でしょうから。」 クロスが食堂へ向かいはじめると、レイルとバランの二人も食堂へ向かった。 「あそこかよ……。いい加減、あのカビ臭いニオイをどうにかしてほしいぜ……。」 「全くだ……。集まるんなら、十分ここでも行けるのにな……。」 食堂の臭いに対して、愚痴をこぼしながら、だが。 クロス達が食堂に着くと、既に数人ほど椅子に座っているものがいた。 「飯、まだかよ〜? 俺、腹減って動けねェよ…。」 見た目が女性ではあるものの、口調がまるで育ち盛りの小学生を思わせるライア…。 「もうすぐ、終わる…。だから、待ってて。」 カタコトでしか喋ることの出来ないワルド。 「そうですよ、ライア。喋れば喋るほど、腹が減るというものです。ここは、じっとしていた方が得ですよ?」 どんな時でも、誰が相手でも、常に敬語を話す<ハカセ>こと、マクス。 いつもと変わらない光景。しかしそれは、今日で最後…。レイルとバランは物思いに更けた。 「何をしている? 早くいつもの席に座ったらどうだ?」 自分の席についていたクロスが、レイルとバランを呼びかけた。クロスの呼びかけで我に還ったレイルとバランは、すぐさま自分がよく座る席に座った。 「自分の役割は、それぞれ現段階で果たしたかい? みんな。」 クロスは、食堂にいる全員に確認を取り出した。 「ああ、現段階でいうなら、俺の役割はまだ果たしてねェな。まあ、まだ本番でもねぇから当たり前だけどな。」 レイルは気楽そうな声を出しながら、答えた。 「おめぇの分の役割と、自分の役割。両方果たしてやったぜ。」 肩が凝ったみたいに、腕を軽く振り回しながらバランは答えた。 「おぅ、俺の役割もちゃあんと果たしたぞ!どうだ!!」 ライアは、えっへん、といわんばかりに誇らしげに答える。 「役割、終わった。みんな、料理、できた。」 ワルドは、夕食をおぼんに運びながらカタコトで答える。 「私も、現段階でやれるべきものはやりました。後は本番だけですね。」 マクスも、手元の資料を食い入るように見ながら答えた。 「みんな、ありがとう。ここまで計画が進められたのも、みんなの力があってこそだ。後は彼等を呼び寄せて、本番に臨むだけ。」 「彼等ってのは、確か…」 <彼等>の名前を思い出そうと、レイルは自らの記憶を遡ろうとする。だが、どうしても思い出せない。 「成歩堂龍一と…、工藤新一。否、今は江戸川コナンでしたね。」 マクスが手元の資料を読みながら答えた。 「そう、マクス。彼等なくして、この計画は達成出来ない。」 クロスが正解を称え、計画の話を始める。 「もう一つあるだろ?<創世者の日記>っていうモノがよ?」 レイルが異を唱える。しかし、その声はだらけさを感じさせる。 「そうだったね、レイル。六十年前にこの国の王が書いた日記……。我々にとっては、これも必要不可欠だ。この日記で…………、過去に決着をつけるのだ。」 過去に、永遠の復讐を…………。 GYAKUTEN SAIBAN SIDE… 〜2019年 3月29日 午後5時12分 成歩堂法律事務所〜 ここでは、主に一人の弁護士とその助手が働いている。いつもなら、一ヶ月に一度来るか来ないかの依頼は、今日は来ていて、その裁判を終えたところだ。 「いや〜、毎度のことだけど、危なかったね。なるほどくん!」 ちょんまげのような髪型に装束を着た少女、綾里真宵が、呑気な表情、態度を見せる。 「はぁ…。どうして毎回毎回、危なっかしい弁護になるのかな……?」 真宵とは対照的に、青いスーツ、後頭部に尖った髪型をした弁護士、成歩堂龍一は、不満をこぼした。 「いい加減、諦めなよ!お姉ちゃんだって、危なっかしい弁護をする時もあったんだから。いわゆる、デントーみたいなものだよ!」 「変な伝統を引き継いじゃったな…。僕も。」 遠い目をした成歩堂だが、真宵は能天気そうな態度を見せていた。 「そういえば、まだ新聞見てなかったな。」 我に還って、そのことを思い出した成歩堂は、郵便等の受け取り口から、新聞を取り出した。 「あ、そうだ!タソガレ山は昨日、勝ったのかな……?」 成歩堂が読んでいる新聞を、真宵は覗きこもうとした。が… 「真宵ちゃん、残念だけど、どこにもタソガレ山の記事なんて載ってないよ?」 成歩堂の一言によって、真宵は「えーっ?」と頬を膨らませた。 「変わりに、でっかく見出しになってるのが… 【高校生探偵工藤新一、謎の失踪!?】 …だね。」 「えっと、誰? その【クドウシンイチ】って……?」 聞きなれない名前を聞いた真宵は、頭の上に《?》マークを浮かばせながら質問した。 「僕も詳しくは知らないけど、この新聞を見ている限りじゃあ、様々な難事件を解決に導いてきた名探偵みたいだね。」 成歩堂の簡単な説明に、真宵はある人物を思い浮かべた。自分の故郷、倉院の里の秘宝、〈倉院のツボ〉を盗んだあの男を。 「その人………。悪者じゃないよね?」 真宵は、半信半疑の気持ちを持ちつつ、成歩堂聞いてみる。 「真宵ちゃん、星威岳哀牙のことを思い浮かべたんだろうけど……記事に載っているのこの人は高校生だし、結構まともに見えるよ。」 そう言って、成歩堂は新聞を真宵に見せた。そして真宵は食い入るように、新聞を見つめ始めた。 「たしかに……カッコいいし、イケメンだし、この人なら大丈夫だね!」 一通り、新聞を見終わった真宵は、力強く言い放った。 「ん…あれ?」 真宵は、ある部分に注目し、また新聞を食い入るように見つめる。 「どうかした?真宵ちゃん。」 真宵の行動が気になった成歩堂は、真宵に心配そうに問いかけた。 「この新聞の日付…、今日じゃないよ?」 「えっ!?」 真宵の一言が、成歩堂を新聞に注目させた。そして改めて、成歩堂は新聞の日付を確認する。 「一月六日、月曜日…。しかもこの新聞、2010年の新聞だ!だけど…。」 「だけど?」 「2010年の一月六日は…月曜日じゃないはずだ!」 「ええっ!うそー!?」 成歩堂の衝撃的な発言が、真宵を数分前の成歩堂より驚かせた。 「ほ、ホントなの……?」 念を入れるように、真宵は成歩堂に聞いた。 「ああ、ざっと逆算しただけだけど…間違いない。」 「ど、どういうこと……?」 誰に問いかける訳でもなく、真宵は呟いた。 これが、一つ目の始まりであることを知らずに…。 DETECTIVE CONAN SIDE…… 〜20××年 10月29日 毛利探偵事務所〜 「ようし、そこだっ! そのまま逃げ切れ!」 仕事場といえるべき場所で、立派なちょび髭を生やした三十代後半の男性が、一人盛り上がっている。彼の名は、毛利小五郎。この毛利探偵事務所の、唯一の働くべき者なのだ。しかし今は依頼がないため、趣味のギャンブルの内の一つ、競馬をしているわけである。 「ただいまー。」 そんな中、ある眼鏡の少年が事務所に帰ってきた。だが、一人競馬で忙しい(?)小五郎は、結局無視している。 (おっちゃん、また競馬なんかやってんのかよ…。) 声には出さずに、競馬に勤しんでいる小五郎に呆れた少年の名は、江戸川コナン。現在、小学一年生である。 しかし、彼の本当の名前は工藤新一……。様々な難事件を解決してきた、高校生名探偵である。何故その彼がこんな姿をしているのか。それは、ある組織の一人に、体が小学生程度に縮んでしまう薬を飲まされたせいなのだ。ちなみに、その組織はそんな効果があるとは知らず、その薬を使って新一を殺そうとしたわけだ。薬を飲まされた本人は、組織や周りの人間に正体がばれないように、組織の手がかりをつかむためにこの毛利探偵事務所で、《江戸川コナン》として生活している。 「あ〜くそっ、もう少しだったのになぁ…。ん、おおコナン。帰ってきてたのか。」 「ただいま、おじさん。また競馬やってたんだね…。」 よく飽きないね、と最後に言って、コナンはいつも読んでいる週刊誌をテーブルからとり、そして読み始めた。 「うるせぇ、あ〜今日は僅差だったなぁ…。まさか6−4だったとは…。」 ブツブツと、不満をこぼす小五郎だった。そんな小五郎を見ていたコナンはこう思った。 (いい加減、諦めろよ……。) 「ただいまー!」 競馬が終わって、二時間くらい経った頃。新聞を読んでいた小五郎と、週刊誌を読んでいたコナンの手が止まった。 「おかえり、蘭姉ちゃん。」 「おお、おかえり、蘭。ずいぶん早かったじゃねえか?」 二人は、ロングヘアーの女子高生、毛利蘭を迎えた。毛利という名字の通り、彼女は毛利小五郎の娘である。 「顧問の先生が、風邪ひいちゃって今日は休みになったのよ。夕刊、テーブルに置いとくから。」 そう言って蘭は、夕刊の新聞を応接に使われるテーブルに置き、三階へ駆け上がった。おそらく、制服から着替えるのだろう。 「ったく……。新聞なんて滅多に読まねェのによ…。」 小五郎は愚痴をこぼしながらも、結局夕刊の新聞を読み始める。 (それで結局読むおっちゃんは一体何なんだよ…?) コナンはそんな小五郎に、ツッコミをかました。 「うん…?何だ、こりゃ?」 突然、小五郎は新聞の活字を読んでいたその目を止まらせた。そして、食い入るようにじっと新聞を見つめている。 (どうしたんだ、おっちゃん? なんか気になるニュースでもあったのか…?) 「おーい、蘭!」 いきなり小五郎は、三階にいる蘭を呼び出した。 「何〜、お父さん?」 小五郎に呼ばれた蘭は、意外と早く反応した。 「着替えが終わったら、こっちに来てくれ! なるべく早くな!」 「は、はぁい!」 一体どうしたのだろう、とコナンは気になった。 それから三分ほど経って、蘭は事務所のフロアへと戻った。 「どうしたの? 急に呼び出して……。」 蘭もいきなり小五郎に呼び出されて、訳のわからない、といわんばかりの顔をしている。 「なぁ、蘭。こんな弁護士、今までいたか?」 そう言って小五郎は、蘭に新聞を差し出した。 「こんな弁護士って…?」 小五郎の蘭に対する疑問が、コナンの内側に眠る好奇心を目覚めさせた。コナンも蘭の横から、新聞を読むことにした。 「えっと……。 【弁護士 成歩堂龍一 勝訴! 法廷で真犯人を暴き出す】 ……ううん、今まで聞いたこともないよ、そんな弁護士さん。」 蘭はそう言い放ち、首を傾げた。 (それより何だよ、この髪型…。) コナンは成歩堂の髪型にツッコミを入れた。もちろん、心の中で。 青いスーツに、その胸元に輝く弁護士バッジ。服装はまだしも、彼の髪型は後頭部に反るように尖っているのだ。これでは、ツッコミを入れないほうがおかしい。 「一応、英理に聞いてみてくれるか?」 ⇒To Be Continued... |
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