逆転探偵第一話:理科室の悪魔 | |
作者:
異議あ麟太郎
2011年06月18日(土) 21時43分01秒公開
ID:0iv14BfJ/zk
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朝、事件が起こってから全校生徒並びに全職員が事情聴取を受けていたので、帰れたのはもうすっかり日が暮れた頃だった。 「お帰りなさい龍介君」 「あれ? 春美さん帰ってくるの早いね」 今俺が話しているのは綾里春美さん。親父の知り合いらしく親父は失踪する時に赤ん坊の俺を春美さんに預けたらしい。 現在、春美さんは若干二十六歳にして警視庁捜査一課の警部である。いわゆるキャリア刑事ってやつだ。 話によると元は倉院流霊媒道とかいういかにも怪しい流派の使い手で霊媒師だったんだけどある事件がきっかけで刑事になったんだ。 「なに突っ立っているのご飯できてるわよ」 「あ、はい」 「今日あなたの学校で殺人事件が起こったそうじゃない」 春美さんがご飯を盛りながら言う。 「お、さすが警視庁のエリート警部! 耳が早い!」 「大人をバカにするんじゃないの。事件に首つっこもうとしてんじゃないでしょうね。四年前のあの事件以降、無駄に事件なんかに首をつっこもうとするんだから」 さすが春美さんだな相変わらず鋭い。 「別にそんなめんどいことしないよ」 「それならいんだけど。ねぇ、それよりどんな事件か聞かせてくれない?」 「あれ、知ってるんじゃないの?」 「自分の担当以外の事件をいちいち調べている暇はないの」 「あ、そう。悪いけど事件のことは知らないよ。だって事件に首をつっこんでないからさ」 危ない危ない危うくしゃべる所だった。なんでもないような聞き方をしてきて俺が事件に首を突っ込んでないかどうか調べるとは見事な誘導尋問だな。 「へえ、そう」 春美さんは猜疑の色を目に浮かべて俺を睨みつける。 「さてと、俺は勉強、勉強!」 こういう場合は逃げるに限る。 「風邪、治ったばかりなんだから寝るときは暖かくしなさいよ」 実は俺は先週の木曜に風邪をこじらせ木、金と休み土日を挟んで、ようやく今日登校出来たのである。 「へーい」 そう言って俺は自分の部屋に向かった。 -6月23日午前9時15分坂下中学校校門- 朝登校してきて俺の視界に飛び込んできたのは、校門のところにむらがっているマスコミだった。 やれやれさすがに中学校で教師が殺害となるとマスコミの飛びつきもシャレにならないな。妙な質問されちゃたまらないし裏の方から回って入るとするか。 俺は、学校の正門のほうには行かず、俺は右の方に曲がり、今は使われていない職員用の通用門から校内に入った。 -同日午前8時50分坂下中学2階廊下- 朝の廊下。教室に向かいつつ俺は今日どのようにして、事件を調査しようかどうしようか途方に暮れていた。事件の情報といえば昨日気楽刑事から聞きだしたことしか知らないし。 「あのう……」 教室の自分の席に座って窓の外を眺めながら、今後の行動方針を決めていると後ろから声が聞こえた。 「はい?」 声がした方向に振り向くと、そこには見慣れない少女が立っていた。どこのクラスの子だ? 「あなたがやろうとしていること手伝ってあげましょうか?」 「はい?」 三 -同日某時刻坂下中学2階廊下- 俺の目の前に現れた少女は、俺が今まで見た女性の中ではおそらく一番かわいいだろう――少なくても俺はそう思った。 髪は肩口まで伸ばしていて先っぽのところを黒いゴムで縛っている。目はパッチリ開いていて、そこがかわいらしさをだしていた。 「あんた誰?」 俺は目の前に立っている美少女に質問を投げかけた。軽い質問のつもりだったが彼女からの返答は俺の創造を上回る物だった。 「え……あなたと一緒のクラスなんだけど……」 「なに!」 全然知らなかった。もともと俺は人の顔と名前を覚えるのが苦手な性分だがクラスにこんな子がいたことに気がつかなかったなんて! 「クラスメイトの名前ぐらい覚えておきなさいよね! 私の名前は上崎絢音(かみざきあやね)よろしくね」 絢音――そういえばそんな奴がいたような。しかし、覚えていなくてもしかたがない。俺は部活で一緒の奴以外男子でさえ顔と名前の一致しない奴がいるのだ。ましてや女子なんて顔と名前が一致するのなんか片手で数えるくらいだ。 「悪かったな覚えてなくて。それで絢音さんは俺に何か用?」 「さんはつけなくていいわよ。なるほど君」 絢音は微笑みながら言った。本当にかわいい。 「さんは付けなくていいって言われてもなぁ、それに俺はなるほどじゃあなくてなるほどうだよ」 自分の名前を勝手にちじめられたら困るので俺はそう言う。 「どっちでもいいじゃない。それに、なるほうどうだと長ったらしいしなるほどの方が言いやすいでしょ」 絢音がなぜか怒ったような口調で言う。逆ギレか? 「……わかったよお前の好きにしろところで俺になんの用だ」 話がいつまでも進まないから俺は一歩引いて絢音に用件を尋ねる。 「さっきも言ったけどあなたのお手伝いをしてあげようと思って」 「何のお手伝いだよ?」 「決まってるでしょ練磨先生が理科室で殺された事件の捜査のお手伝い」 なっ! こいつ本気で言ってるのか? 「何でお前、俺が事件のこと調べてるって知ってるんだ」 疑惑の念を抱きながら俺は尋ねる。 「それは……あ、もうこんな時間早くしないとチャイムが鳴っちゃう。詳しい話は休み時間にするから」 「お、おい」 俺は絢音を引き止めて今すぐにでも聞きたかったが、時間が時間なので俺は後で聞くことにした。 -同日午後4時50分坂下中学2階廊下- 「さあ、聞かせてもらおうか? どうして俺が殺人事件のことを調べているのを知っているのかと、お前が俺の手伝いをする目的は何なのか?」 放課後――俺は絢音に話の続きを聞こうとしていた。 「それはね、春美さんに聞いたから。そんでもって私がなるほど君の助手に任命されたから」 一瞬頭が真っ白になるがすぐに我を取り戻して 「な、なんでお前春美さんのこと知ってんだよ」 「それは、なんと私が今日から春美さんの家に住むことになったからなのです!」 絢音は誇らしげに胸を張りながら言った。 「……バカな」 そんな話一つも聞いてない。この女は何か勘違いでもしてるんじゃないのか? 「バカって何よバカって! あ、春美さんが学校帰りに二人で買出ししてこいって」 「なぜお前が春美さんの家に住むことになったんだ! ていうかじゃあお前俺と一緒に住むのか!」 俺は腹の底から大声で人差し指を突きつけて叫ぶ。 「そういうことになるのかな。まあ私が春美さんの家に住むことのになったのは、簡単に言うと私の母親が入院しちゃって母親が退院するまで春美さんの家に住むことになったの。詳しいことは本人に聞いて」 絢音はなんてことないというような感じで言う。俺はあまりのことに気を失いそうになった。 -同日某時刻坂下中学1年2組教室- 「ここに第一発見者がいるのか?」 俺はお昼休み絢音に引っ張られて、第一発見者がいるという1年2組の教室に来ていた。ていうか結局のところ二人で事件の捜査をすることになった。 まったく、春美さんも何を考えているのか。 「ええと、話しによると一年二組の坂飲身矢啓太(さかのみやけいた)っていう子と竹之内州太郎(たけのうちしゅうたろう)っていう子と和久井額御(わくいがくお)っていう子が最初に理科室の扉の前に行き、はめガラスから中に教壇のところでうつ伏せになっている練磨先生を発見したらしいの」 そういえば気楽刑事もはめガラスから死体が発見されたって言ってたっけ。 「じゃあ話しを聞くとするか」 こうして俺はいや、俺達は本格的な捜査に乗り出した。 四 -6月23日午後1時18分坂下中学1年2組教室- 教室内にはお昼休みということもあってあまり人がいなかった。俺は第一発見者がいるのか不安になったが、絢音がすでに第一発見者の三人に話を通しておいたらしく俺らが教室に入ると男が三人近寄ってきた。 「あなたたち悪いわね。せっかくのお昼休みなのに」 絢音が近寄ってきた三人にそう言って頭を下げる。 「別にいいですよ暇だし。それに絢音さんの頼みとあらば!」 三人の中で一番背の低い男が言う。その熱い視線は絢音一点に注がれている。どうやらこの三人は絢音のファンみたいだな。 「じゃあ立ち話もなんですから」 そう三人の中の一人が言いながら椅子を勧めてきたので、俺と絢音は椅子に座り、話しを聞くことになった。 「何から話したらいいでしょうか?」 背の一番低い男が言う。 「まずは、自己紹介をしてくれ」 三人の顔と絢音から聞いた名前が一致しない俺はまず三人に自己紹介を求めることにした。 「あ、それもそうですね、じゃあまずは僕から竹之内州太郎(たけのうちしゅうたろう)って言います」 絢音に熱い視線を贈っていた背の低い男が答える。背が低く、野球部なのか坊主頭で愛敬のある顔をしている。 「和久井額御(わくいがくお)と言います」 俺と絢音に椅子を勧めてきた男が州太郎に続いて自己紹介をしてきた。額御は三人の中で一番背が高く、表情がキリッとしていて例えるならビジネスマンのような感じが受けて取られる。 「坂飲身矢啓太(さかのみやけいた)です」 最後に自己紹介をしてきたのが三人の中で背の高さが真ん中で目が細くボーッとしたような男だ。 「成歩堂龍介だよろしく。じゃあ君たちが事件を発見するまでの経緯と発見時の状況を詳しく話してくれ」 俺はそう言うと足を組み手のひらを組み合わせて、そのところにあごを乗せ話しを聞く体勢に入る。 まず、州太郎が口を開き話し始める。 「あれは、一時間目の授業が始まるちょっと前でした。一時間目の授業が理科室だったので、理科係の俺たち三人は理科室の鍵を取りに職員室に行ったのですが理科室の鍵がなかったんです」 「ちょっと待って」 話しを途中で止め、俺は質問をする。 「何でしょう?」 「職員室に理科室に鍵を取りに行った時に被害者、練磨先生には会わなかったのか?」 すると額御が俺の質問に答える。 「会いませんでした。理科室の鍵もなかったから俺たち練磨先生が理科室の鍵を持って先に行ったのかもって思って理科室に向かったんです」 「なるほどね、話しを続けてくれ」 そう言うと今度は啓太が話を始めた。 「理科室に行ったら鍵がかかってて、ドアのはめガラスから中をのぞくと部屋の中は電気が消えていて、薄暗く、しかも煙が部屋の中に漂っていました。そこで教壇の方をよく見ると、練磨先生らしき人がうつぶせになっていてただ事じゃないと思っていたらクラスのみんな来て騒ぎになって、とりあえず州太郎と俺が先生を二人呼んできて、ドアを二人の先生が体当たりで壊すと、みんなどっと何があったと興味心身で理科室の中に流れ込んでいったんです。そして、先生方は練磨先生が死んでるのを確認して中に入った生徒をみんな外に出したんです」 「なるほど、悪かったな時間取らせちゃって」 そう言うと俺は絢音を連れて一年二組の教室を後にした。 -同日某時刻坂下中学2階廊下- 三人の話を聞いた俺は、密室トリックの鍵を確かに握ったような感じを持っていた。 「ねえ、なるほど君」 考えこんでいるところに俺の顔を覗くように首を傾げて、絢音が話しかけてくる。あらためてまじかで見ると、顔のバランスが整っていて本当にかわいい。俺は少しドギマギしながら 「何だよ」 「何かわかった?」 絢音は何かを期待するような目でこっちを見る。やれやれこんな顔されたらどんなことあっても憎めないな。 「別になんも」 あえてわざとらしく答える。 「なによそれ!」 俺の答え方が気にいらなかったのか少し怒っている。 「絶対何か隠してるでしょ」 「なんも隠してねえよ」 俺がそう答えたとき一人の教師が前から歩いてきて、やがてこっちをチラッと見ながらさって行った。 「おい、絢音今の誰だっけ」 「一年の数学担当の成宮建造(なりみやけんぞう)先生よ?確か昨日学校を風邪ひいて休んでたみないだけど。」 「ふーん……おっと、もうすぐ昼休み終わるぜ」 俺はそう言うと絢音とともに教室に戻って行った。 五 -6月23日午後6時15分安井スーパー- 俺は学校帰りに絢音と一緒に買出しをしていた。俺はバスケ部に入っていて今日は練習が長引いたというのに絢音はずっと校門のところで待っていた。おかげで一緒に出てきたバスケ部の知り合いに妙な勘繰りをされたみたいだ。まあ、俺はあまり人と関係持たないから変な噂が広まっても気にしないんだが――。 しかし、思春期真っ盛りの中学生の男女二人に買い物を頼むなんて、しかも兄弟でもなんでもない俺のほうは今日始めて存在を知った女の子と買い物だぞ! まったく春美さんは何を考えて生きているんだ! 「なるほど君何してんの! あとハンペンとちくわ買わなくちゃいけないんだから」 「はいはい」 ⇒To Be Continued... |
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