彼の始まり


某日　某時刻
「クッ、これからどうするかな・・・。」

俺の名前は神乃木　荘龍　元弁護士だ。今は仮出所中の検事、ゴドーだ。
だがもう検事に戻る気もない。

「クッ、戻ったとして、どの面下げてあいつらに会うんだ？」
そう自問自答する。
あの葉桜院の事件のあと成歩堂とその助手、綾里真宵は何度も面会に来た。
あいつらはきっと俺を責めないだろう。それはあの裁判からも感じる
ことができた。
「だが俺は、許せねぇんだよ。」
それは誰でもない、自分自身。２つの命をこぼした情けない男。
「そういえば、まだ、あいつにあってなかったな・・・。行ってみる、か？」
俺にとってこの世界で最も大切で、最も行きづらい場所。綾里　千尋の眠る場所。
裁判の時には会ったが、まだ一度も墓参りには行かなかった。いや、行けなかった、というほうが正しいか・・・。
成歩堂たちよりも会いづらいが・・・。
「クッ、苦いコーヒーだぜ。」
１杯飲むとなぜか足が動き出した。
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　同日　某時刻　霊園
「来ちまったな・・・。ここか、コネコちゃんの墓は。」
そう言ってそっと手を合わせる。
『先輩。』
そう呼ばれて妙な感じがした。まるで何かに包み込まれるような温かい感覚
「！！」
「クッ、コネコちゃんかい。お迎えか？」
『そんなわけないじゃないですか！』
すごく久しぶりな感じがする。この間会ったのにな。
「なにか用なのか？」
『それはこっちのセリフですよ。ゴドー検事。』
用なんてあるわけがなかった。まして千尋に会えるなんて誰が思うんだ？
「・・・・すまなかった。」
思いがけず口から漏れた言葉はそれだけだった。俺は千尋に謝らなければいけないことが
ありすぎた。
『何のことですか？』
「？」
『フフッ聞き方を変えますね。どれのことですか？』
「クッ、そういうことか。まず、ここに来るのが遅すぎたことだ。どうしてもここにくる決心がつかなかった。
そしてもうひとつ、おまえを、守れなかったことだ。大事なときに寝過ごしちまった。情けねえ。」
『そのことはもういいんです。あれは私が勝手に巻き込まれてしまっただけですから。あの時あなたは毒と戦っていた。
仕方がないじゃないですか。それに真宵に霊媒してもらえれば会えるわけですし。』
「クッ、そんな問題だったのかい。」
『ですけど、ここに来るのが遅かったことは許せません。どうして来てくれなっかったんですか？』
「あわせる顔がなかった。おまえを守れなかったこと。そしておまえが死んだという現実からにげたかったのさ。」
そう、そして名前も捨てた。それは自分から逃げるため。弱い自分から目をそむけるため。
『本当は動けるのならすぐ来てほしかった。』
「クッ、弱い男だ。つくづく自分に嫌気が差すぜ。おまえの大切な人も殺しちまった。」
『でも、それでもあなたは真宵を助けてくれた。』
「そいつはちがうぜ。少なくともあのときの俺にはそんな気持ちはなかった。
ただ目の前にいる俺の人生を壊した女に復讐の刃をつきたてただけなのさ。」そして天流斎エリスを殺した。
『結果的には「法廷でも言っただろ。本当に守りたかったのなら成歩堂
に伝えればよかったのにそれをしなかった。きっと俺はどんな形であれあの女に復讐したかったのさ。」
『それならその証拠はあるんですか？』
千尋は優しく微笑んで俺に言った。
「クッ・・、証拠は・・・ない。」
『誰かあなたを恨んでる？』
「！！」
『少なくとも私も真宵も恨んでないわ。もちろんお母さんも。』
「・・・そうだとしても俺は許せない、俺自身を。」
『それはどうして？』
・・・どうして？そんな簡単な質問に答えられない。
『あなたは何から許されたいの？』
「クッ、それは・・・」
天流斎エリスを殺した罪？ちがう。
千尋を守れなかった罪？ちがう。
「俺が許せなかったのは・・・現実から、神乃木　荘龍から逃げた罪。」
それは俺にとってどんな罪よりも重かった。それが、許せない。
『罪って許されるものなのかしら？罪が簡単に許されるのなら誰も後悔なんてしない。
そして、過去を変えることなんてできない。だから裁判をして罪を償う。そうでしょ。神乃木さん。』
そういってまた千尋は微笑む。
千尋の語る言葉がコーヒーにいれるミルクのように俺の闇を切り裂いてくれた。
「クッ、償う・・・か。」
そして、１つの答えを見た気がして、　　笑った。
『もう、大丈夫みたいね。』
「クッ、すべてお見通しかこのコネコちゃんは。」
『これからどうするんですか？』
「決まっているだろ、もう一度やりなおすのさ。神乃木　荘龍として。」そして償うために。
『そう。それじゃあ私は行くわね。成歩堂君をよろしくね。』
「あいつは強い。俺よりもな。おまえにそだてられたんだからな。
・・・じゃあな千尋。」
『さようなら神乃木さん。』
そうして千尋は消えた。俺の迷いとともに。
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　同日　同時刻　霊園
「？」夢だったのか？立ったまま寝ていたのか？
・・・いや、それはどうでもいいことだ。
「クッ、供え物を忘れたな。」
そういってコーヒーをつくる。ミルクと砂糖の入った甘いコーヒーを。
「おごってやるぜ。千尋。」
コーヒーを置き、歩き出した。
また、はじめから歩き出すためのコーヒー
「神乃木ブレンドNo.1だぜ。」


そして神乃木は再び最強の弁護士となるがそれは別の物語。



あとがき

人生で初めて小説らしきものを書きました。
なんかよくわからないものをかいてしまいましたが、読んでいただいたら恐縮です。
あぁ〜微妙だな〜これ。




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