第1話 到着、ラクーン警察署 |
作者:
邪神
2012年07月06日(金) 18時20分09秒公開
ID:ruLD3r9Qyus
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9月29日 午後18時47分 走ったせいで流れている大量の汗を拭きながら、正志はその建物の扉を開けた。 ガコン、ギイィィィ…………。 ゲームの『バイオハザード』で散々聞いた、あの扉の開閉音と同じ音が流れる。 足を踏み入れると、元美術館だったこともあり、中はかなり広かった。 目の前にあるのは、静まり返る警察署のホールだけだ。 人の気配はなく、ゾンビの特徴的なあの呻き声は聞こえてこない。 (“彼ら”はもうここへ来ているのか…?そうだ!西側オフィスに、黒人のマービンとかいう男が倒れていたはずだ。彼から話を聞こう) ホールの中心にある受付のような場所で15発入ったハンドガンの弾を拾い、黒人警官のマーピンがいる西側オフィスの扉を開ける。 ガコン、ギイィィィ…………。 レストランで手に入れたショットガンを構え中に進む。 ゾンビがいないか確認してゆっくりと足を進めた。 「うぅぅ……」 突然の呻き声に驚いた正志は、オフィス内を見渡した。 すると、奥の個室の壁に横たわりながら、苦しそうに顔を歪める黒人警官がいた。 正志が近づいてしゃがみこむと、警官が口を開いた。 「だ、誰だお前は…。日本人か……?」 「そうだ。日本人の西山正志だ。あんた、マービン・ブラナーだろ?」 正志が名前を名乗り質問をすると、警官が驚いた。 「そうだ、俺はマービンだ。なぜ知っている……?」 「ちょっと訳ありでね。それで、聞きたいことがあるんだが」 正志が髪を掻きながら尋ねる。 「な…、なんだ?」 マービンが腹部を手で押さえながら苦しそうに言う。 「ここにレオンって名前の新人警官か、特殊部隊STARSのアルファチーム隊員クリス・レッドフィールドの妹のクレアって奴、どっちか来なかったか?」 「レオンとは連絡が取れてない。彼は来ていないが、クリスの妹ならさっきここに来たぞ」 マービンが目を閉じながら答えた。 「そうか、ありがとう」 正志は笑顔で礼を言った。 「た…タダシといったな、君に頼みたいことがある……」 「なんだ?」 怪我の痛みと戦っているのだろう。マービンは正志の手を握りながら呟いた。 「俺のことはいいから……、他の生き残りを助けてやってくれ」 「わかってるよ。俺はあんたが最期にどんな末路を迎えるか、それを知ってるんだ」 それは正志の言葉通りだった。 ゲームの『バイオハザード2』に登場するマービンは、最初こそはただの怪我人であるものの、プレイヤーがステージの奥に進むとゾンビ化して襲いかかってくるのだ。『バイオハザード』の大ファンである正志は、当たり前のようにその事実を知っている。 「不思議な男だな、君は……」 マービンが笑いながらまた呟く。そして左胸ポケットと制服のズボンのポケットからハンドガンの弾を取り出して、正志の手に押しつけた。 「使ってくれ、俺にはもう必要なさそうだからな」 正志は大事そうに弾丸を受け取りポーチに入れた。 「ありがとう、大事に使わせてもらうよ」 礼を言った正志にマービンがまた何かを差し出した。 「これも使え、何かの役に立つはずだ」 それは、針金のような物で作られたキーピックだった。 「ありがとう」 正志が礼を言うとマービンが言った。 「さあ、もう行け…!頼んだぞ」 「わかった。マービンさん、ありがとよ」 正志はマービンにそう言うとオフィスを出た。すると後から扉に鍵が掛けられた。 正志は一瞬振り返ったが、すぐに視線を戻し、受付のような場所にあったコンピュータを操作した。 コンピュータの画面には「ドアロック解除」の文字が映し出されている。 (やっぱり“彼女”が、ここの扉を開けたんだ…!早く合流しないと……) ショットガンに弾丸を1発装填し、西側オフィスの隣にある大きな扉を開ける。 ガコン、ギイィィィ…………。 中に入ると、そこは来客用の受付場所だった。正志は来客用のソファーに座り、アイテムを確認する。 ハンドガンの弾が50発、ショットガンの弾丸が19発あった。今自分が所持している武器はショットガンだけであるが、ハンドガンはまだ手に入れていなかった。 銃の弾丸を腰につけているポーチに入れて、正志は立ち上がった。 ふと部屋の中を見渡すと机があり、キーピックを使って引き出しを開けると救急スプレーが2個入っていた。 (おかしいな…、『バイオ2』の“彼女”の表編のステージなら、ここにはスプレーが1個しか入っていないはずなんだが……) 取りあえずスプレーを2個全て取ってポーチに入れ、歩こうとした…その時! 「キャーっ!」 悲鳴が聞こえた。声からして若い女性のようだった。 (何だ、今の悲鳴は!?どこかで聞いたことがあるような……) 正志は悲鳴が聞こえた場所へと急いだ。 バンっ…………! 扉を蹴りあげて、廊下に出た。正志は走る。 彼の心にはある確信があった。悲鳴の主が、ホールのドアロックを解除した“彼女”だということに……。 |
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