Time Flowe 〜Eternal Member〜(PHANTASY STAR ONLINE)
作者: ふむー   2009年01月29日(木) 23時12分58秒公開   ID:Ri4epUyMQZM
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A.U.W.3084。星間移民計画の先遣部隊とも言える宇宙船「パイオニア1」からの連絡を受けた本格的超巨大型移民船「パイオニア2」が移民先の惑星「ラグオル」に着いた年。
惑星「ラグオル」の衛生軌道上に到着した「パイオニア2」は「パイオニア1」とコンタクトを取ろうとしたが、地表で謎の青い大爆発が発生した。その衝撃で通信は途切れ、それ以来音信不通となっていた。
その謎を解明しようと「パイオニア2」総督府は考えるが、軍事力の大半は「パイオニア1」に搭乗していたため、「パイオニア2」所属軍は役立たずに等しかった。そこで総督府はやむなく、ハンターズギルドという民間の組織に依頼をした。
ハンターズギルドは民間から寄せられる様々な依頼をこなす独立機関である。依頼を遂行する人々は「ハンターズ」と呼ばれ、剣等を扱うハンターズを「ハンター」、銃器を扱うハンターズを「レンジャー」、機杖を持ち、魔法を発展、再現した「テクニック」と呼ばれる技術を扱い戦うハンターズを「フォース」と呼ぶ。そのハンターズギルドは今回の依頼をハンターズ全員に遂行するよう指示をした。
何故そんな戦闘のエキスパートを軍に代わって調査のために派遣したのかというと、現在「ラグオル」地表では原生生物が狂暴化し、とてもではないが軍では太刀打ち出来なかったからである。
「パイオニア1」が森林地帯の一角を居住区として開発していた「セントラルドーム」。その付近に近づけば近づくほど原生生物の狂暴性は増していたため、ハンターズ達はその付近を調べる事になった。
着々と調査が進む中、ハンターズ達は「セントラルドーム」地下の巨大なドーム状の空間にドラゴンが棲みついていた事や、そのさらに下層の大洞窟に原生生物が変異したと思われる「アルタード・ビースト」が徘徊していた事、その下にある「パイオニア1」の発掘、採掘機関の排水ダクトになんらかの巨大な芋虫型の生物がいた事、その下層の発掘、採掘機関が暴走し、発掘専用メカが襲って来た事、その下層に古代遺跡がある事を突き止めた。その遺跡では戦闘能力が高い謎の生物達が潜み侵入者を排除しようと襲って来たり、調査に来たハンターズ達が行方不明になったりと、不思議な事ばかりが起きていた。
そして調査が難航する中、一人の青年と少年がセントラルドーム付近の森林にいた。


第一話 〜日常の崩壊〜


「師匠……た、助けて………」
俺の前に一人の少年が地面に仰向けに寝て転がっている。
年齢は十四、未熟な顔立ちだが悪くはない。深緑の短髪が風に揺られ、石鹸の匂いが俺の鼻に届く。瞳の色は黒で、服の生地の色も同じである。服には水色の糸で縫われた様々な彩色が施してあり、生地の色がその彩色を目立たせている。
背は平均より低いぐらいだが、決して運動神経は悪くない。「むしろ小回りが利いていいのではないか」と思うほど俊敏だ。頭には二股帽子をかぶっていて、帽子の先に付いている水色のポンポンが身体を動かす度に揺れる。名をウェイト=クルックンと言い、男ニューマンのフォース「フォニューム」であり、俺の弟子である。まだまだ未熟ではあるが筋は悪くは無く、俺はこいつをスパルタ修行で鍛えている。ちなみに今もその修行中である。
「はぁっ……師匠………?」
明らかに疲れ果てているといった顔をしている。しかしそんな顔をしても俺は騙されない。
「ウェイト、そんな事を何回やっても俺は騙されんぞ」
こいつは疲れたフリをして休憩する癖がある。俺は一度も騙された事は無いが、俺の知り合いはいつもこの手に騙される。そんなに演技がうまいわけでもないんだがなぁ………。
「……ちぇっ、やっぱだめか」
予想通り嘘だった様だ。ウェイトは大地に預けた身体を「よっ」と声を出しながら起こし立ちあがり、岩に座っていた俺の背後に向かって火球発射テクニック、「フォイエ」を放った。
『ゴゥッ!』という音と共に生き物の叫び声が聞こえ、その方向に視線を向けると茶色い猪のような生き物、「ブーマ」が炎上しながら吠えていた。
『ガアァァァァッ!』
程よく食べ頃のような良い匂いを匂わせてきた所で、その背後から金色の毛皮の同じような生き物、「ゴブーマ」が飛び出してくる。ウェイトは「ゴブーマ」に向かって手をかざす。すると上空から落雷が発生し、「ゴブーマ」を電撃で包み込む。そして黒焦げになった二匹は同時にその場に倒れ込む。
「……ふむ、一応、ブーマとゴブーマの弱点は覚えてたか」
「へへっ、見直した?」
「全然」
ズバッとウェイトにキツイ言葉を浴びせながら遠くの巨大な体躯のゴリラのような生き物、「ヒルデベア」を見る。よーく見てみると、その背後に同じような体躯をした「ヒルデルト」もいる。
「ヒルデベア」と「ヒルデルト」はどちらも発達した両腕で殴ってくる。しかし唯一違う事と言えば「ヒルデベア」は火球を吐くのに対し、「ヒルデルト」は電撃を吐くのだ。しかも「ヒルデルト」の方が戦闘能力は高く、今のウェイトには少々キツイ相手かもしれない。
「仕方無い、ヒルデルトは俺が倒すか」
「む、師匠、俺の事甘く見てない?」
「……お前じゃ無理だろ」
「ひっでー、見てろよ!」
そう言いながら二匹に突っ込んでいくウェイトに、俺は防御力増加テクニックである「デバンド」をかける。多少の無理はこれで平気だろう。
と、突然背後に気配が生まれると同時に大地が揺れた。視線を背後に向けると、そこには「ヒルデベア」の希少種である「ヒルデブルー」と「ヒルデルト」の希少種「ヒルデトゥール」がいた。「ヒルデブルー」は凍気を吐き、「ヒルデトゥール」は闇のテクニックである「メギド」を吐いてくる。どちらも「ヒルデベア」と「ヒルデルト」の二匹よりも格段に能力が高く危険である。さっきウェイトをあの二匹へ向かわせて逆に正解だったのかもしれない。ゆうに三メートル以上の体躯を持つこの四匹はセントラルドーム付近で生息する最も危険な生き物でもある。
「………だが、俺に勝てると思うなよ?」
俺はこの二匹を見上げながら両の連続射撃攻撃用二丁武器であるマシンガン系統の武器、「M&A60ヴァイス」を腰から抜き、まず「ヒルデブルー」へ向けて両方のトリガーを引く。二つの射撃口から三発ずつ、計六発の黄色いフォトン弾が「ヒルデブルー」の両眼球に吸い込まれるように全弾命中する。
『グガアッ!』
吠えながら眼を押さえる「ヒルデブルー」に向かって炎の初級テクニック「フォイエ」を放ち、炎上させる。炎上し全身火傷を負って大地に身を預ける「ヒルデブルー」から視線をはずし、「ヒルデトゥール」へと視線を移すと、腕を振りかぶって俺を殴り飛ばそうとする姿があった。迫り来る「ヒルデトゥール」の拳が俺に到達する前に、収納機能があるこの服に「M&A60ヴァイス」をしまい、代わりに日本刀と呼ばれる実刀、「アギト」を構える。そしてその迫り来る拳の腕の手首に向かって跳躍しながら攻撃を避けつつ斬りつけ、拳だけを斬り落とす。
飛び散る赤い鮮血と共に吠える「ヒルデトゥール」。痛みに耐えるように転げ回る「ヒルデトゥール」の首にすかさず刀の刃を食い込ませ、そのまま胴体と頭部を切断する。すると勢い良く切り口から鮮血が噴出する。
しばらく噴出していた血が収まる頃、ウェイトが俺の所へ走って戻ってきた。
「師匠、終わったよ」
「お、倒せたか」
ウェイトの後ろの遠い場所に、凍傷によって倒れた「ヒルデベア」と、無数の針跡が全身について倒れている「ヒルデルト」がいた。
「ちゃんと弱点を狙ってるな」
「ああ、もうこいつらは楽勝だよ」
「でかい口を叩くな未熟者が」
「ちぇー、いーじゃん」
不満を口にするウェイトをよそに、頭上の木の枝に複数の気配が生まれる。枝を見るとヒヨコのような外見を持ち、黄色い毛皮と腹部の白い毛皮で身を包み、眉間から伸びる二本の触角を持つ生き物がいた。女性から「可愛い」と評判の「ラッピー」種の「ラグ・ラッピー」だ。
本星の「ラッピー」と同じらしいが、この「ラグオル」のは結構狂暴で、俺達ハンターズを何度もつっついて攻撃してくるがそんなに強くはない。
しかし問題は今確認した数だ。ゆうに五十匹は軽く超えている。しかも白い毛皮だけで統一された「エル・ラッピー」や「ラグ・ラッピー」の希少種の青い毛皮の「アル・ラッピー」、「エル・ラッピー」の希少種で、黄色、橙、緑と三色の毛皮を持つ「パル・ラッピー」も確認した。ウェイトに戦わせるのは少しばかり無理があるかもしれない。だが、俺の修行方針上、スパルタ教育なので無理してでも戦わせる。
「ウェイト、今木の枝にいるラッピーを全部倒せ。それが終わったら五分休憩を入れて修行再開だ」
「あれを全部か……って無理に決まってるでしょ!」
「無理でもやれ、俺は一度メディカルセンターに行って治療してくる。俺が戻ってきたら交代してやる」
「ちょ、師匠!」
そう言うウェイトを残して木陰から身を退けて安全地帯で転移テクニックである「リューカー」を使い、「パイオニア2」への転送ポータルを作成する。
「じゃ、ウェイト。頑張れ」
不満の声が転送開始直後に聞こえたかもしれないが、それを聞き取る前に俺は「パイオニア2」へと転送されていた。

転送が終わると、なんとも機械的な場所にたどり着いた。歩くたびにコツコツとなる地面、頭上を飛ぶ移動用の乗り物、自動ドアの先に並ぶ武器屋や道具屋や防具屋、それに鑑定屋。近代的な科学が培われた街並みが辺り一面に広がっている。
俺が転送された場所は「ハンターズ専用区域」と呼ばれ、限られた一般人や軍人、それにハンターズギルドの面々しか出入りを許されていない区域であり、「ラグオル」に向かえる転送装置のある数少ない場所でもある。
そんな見慣れた街並みを見回しながら、医療機関である「メディカルセンター」へ向かっていると、背後から声が聞こえる。
「アトラスさん!」
急に俺の名を呼ぶ声が聞こえる。
っと、ここで説明しておこう。俺の名はアトラス=グルート。年齢は二十歳。赤い髪と青い眼に赤と黒の装飾のバンダナ、黒をベースとした服に赤い彩色が施されたフォース服を着るハンターズだ。フォースといっても、俺は武器を扱って近接戦闘もこなす、遠距離戦闘や補助テクニックだけを使うフォースではない。ヒューマンのフォースで「フォーマー」と呼ばれる職業のハンターズだ。自分で言うのもなんだが、俺は弟子を持つぐらいの強さを持っている。腕もある。別にナルシストというわけでもないのだが。と……説明はこの辺にしておこう。
声の聞こえた方向を見て、最初に視線に飛び込んだのは黒いフォース服。赤い糸で施された装飾や、その服と同じ素材で作られた帽子をかぶり、空色の短髪を揺らしながら俺の方へと走ってくる少女がいた。赤色の眼が特徴的で、ニューマン特有の長い耳を持つ小柄な体躯、それに健康そうな綺麗な肌と整った顔立ち。どこからどうみてもモテる外見をしたこの少女、俺の幼馴染のレイ=フォルンで、フォニュエールと呼ばれるフォースである。年齢は十七歳。いつもは笑顔でいっぱいなのだが、今の表情は真剣極まり無い顔である。
俺のすぐ側まで走ってくると、急にレイの身体が俺にぶつかって………否、レイがいきなり抱きついてきた。レイの身体が俺の黒い生地と赤の装飾が施された服へと沈む。
「うおっ!?」
石鹸の香りや柔らかい感触が俺の嗅覚と触覚を同時に攻める。突然のうれし……ゴホン、驚く出来事に声を出してしまうが、幸い通りに人影も無く、見られる事はなかったが妙に気恥ずかしい。名残惜しい感情を押さえつつレイの肩をつかんで彼女を俺から引きはなすと、彼女は慌てながら声を発しようとする。
「あ、あの、その………」
「深呼吸でもして落ち着け。……で、どうした?」
深呼吸を促されたレイは二度、三度と深く呼吸を重ね、落ち着いた所で真相を告げようと口を開こうとして、俺の携帯端末の着信音が鳴った。
「レイ、ちょっと待っててくれ……誰だ?」
腕の端末から中継映像表示用の画面が現れ、そこから通信先の映像が映し出される。見えるのはさっきまでいた森、そして無数の倒れている「ラッピー」、そしてウェイト。
『師匠、終わったよ』
「早いな」
『楽勝楽勝!』
「いきがるなっつーの、そこいらの死んだフリしてるラッピーからちゃんとアイテム取れよ。そんでそれが終わったら戻るまで待ってろ」
戦闘に敗れ、生命維持に支障をきたしそうになった「ラッピー」は死んだフリをして相手を騙す。こちらが一定距離離れるか、一定の時間が経つとその場から退散する。その逃走途中に少しでも攻撃を加えるとなんらかのアイテムを落とすのが「ラッピー」達の不思議な習性だ。

⇒To Be Continued...

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