第24話 光と闇、隠された因縁
作者: 邪神   2013年02月01日(金) 01時08分32秒公開   ID:o.caVtWgXPw
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9月30日 午前0時22分



下水道の地下広場に到着した正志達は、『バイオハザードシリーズ』の因縁の敵であるアルバート・ウェスカーと対峙していた。

(こいつが正真正銘本物のアルバート・ウェスカー…!まさかこんなに早く対面することになるとは思わなかったぜ)

正志はサムライエッジを構えながら、心で呟いた。切迫した緊張感とウェスカーに対する恐怖心で流れた冷や汗が背中をびっしょりと濡らす。

「お前が西山正志だな。会いたかったよ」

ウェスカーはニヤリと悪魔を彷彿させる笑みで顔を歪めながら言った。

「俺は会いたくなかったぜ。最低のクズ野郎なんかとはな」

正志はふてぶてしく笑いながら言葉を返す。

「言ってくれるな。まあいい、今のオレは機嫌がいいんだ。見逃してやろう」

ウェスカーは首をゴキゴキと鳴らしながら言った。

「正志、この男が?」

クレアが尋ねると正志はゆっくりと首を縦に振った。

「こいつがアルバート・ウェスカー。ゲーム『バイオハザード』の黒幕的な存在で、クレアの兄・クリスの宿敵でもある」

正志が言うと、クレア達の表情は困惑と恐怖の色で染まった。

(しかし、妙だな。ゲームのウェスカーの顔には、あんな目立つ大きな傷跡などなかったはず。どうなってんだ?)

ウェスカーの姿を観察した正志は、心の中で呟いた。

「この傷跡が気になるらしいな。無理もないだろう、こんなに派手なもの気にならないはずはない」

正志の視線に気づいたのだろう。ウェスカーが言った。

「俺の知ってるかぎり、ゲームに出てくる貴様の顔にはそんな傷跡はなかったからな。貴様に何があったのか教えてくれよ」

正志はサムライエッジを構えたまま尋ねた。

「いいだろう、初めて会った記念だ。教えてやる。この傷跡は『SIREN』の世界を司る光の戦士・神田光平に付けられたものだ」

「何!?」

正志は驚愕した。

「嘘を言うな。光平は『SIREN』の世界の人間で、貴様は『バイオハザード』の世界の人間だろ。絶対に遭遇できるはずがない」

正志が言うと、彼の言葉にクレア達も頷いた。

「そいつが言っていることは本当さ、正志」

すると正志達の背後から声がした。

「光平!無事だったか?」

正志が言うと、光平は余裕の笑みを浮かべて頷いた。

「久しぶりだな、光平」

ウェスカーの挨拶を聞いた光平は、彼を憎しみが込められた表情で睨みつけた。

「闇星事件以来だな。驚いたよ、あれだけやられてまだ懲りてなかったとはな」

光平が皮肉交じりに言うと、ウェスカーは笑った。

「さすがにしばらくは懲りたさ。オレをあそこまで追いつめたのはお前が初めてだったからな。だからオレもお前への対策をとったぞ」

ウェスカーは体中をゴキゴキ鳴らしながら言った。

「おい、光平。ウェスカーを知っているのか?」

正志が尋ねると光平は頷いた。

「ああ、ちょっとな。こいつはある人間の協力で様々な世界を行き来できる力を手に入れ、『SIREN』の世界にもやってきたんだ」

光平が言うと、正志は結晶の巫女・大倉詩織から与えられた試練のために訪れた『サイレントヒル』の並行世界にもウェスカーがいたことを思い出した。

「そうらしいな。俺が詩織から与えられた試練のために訪れた『サイレントヒル』の並行世界にも、こいつが侵入した形跡があった」

正志が言うと、ウェスカーは笑うのをやめた。

「なるほど、『サイレントヒル』の並行世界に行ったのか。ならば、あの病院の屋上は素晴らしい眺めになっていただろう?」

ウェスカーの言葉を聞いた正志の脳裏に、アルケミラ病院の屋上で見たバラバラにされた人間の体のパーツが散らばっていた凄惨な光景が蘇った。

「ふざけるな!貴様はそうやって罪のない人達を次から次に殺して、何が素晴らしいだ!?」

正志が言うとウェスカーは再び笑いはじめた。

「罪のない人間?笑わせてくれるな。人間は誰だって罪を1つは抱えている。正志、お前もそうだろ?」

「何のことだ?」

ウェスカーの言葉に正志はうろたえた。

「知らないとでも思っているのか?お前は結婚してるんだってな」

ウェスカーはそう言いながら指をパチッと鳴らした。

すると広場の壁に映像が流れはじめた。

「こ、これは……」

映像には、どこかの住宅の部屋の床に座り込んだ生気があまり感じられない若い女性と彼女に必死に何かを語りかける現在よりも若い正志が写っている。映像を見た正志の顔がみるみる強張っていく。

「この人は…正志の白い電子機器の画面に写っていた女性よね?」

クレアがレオンとベンに尋ねると、2人とも困惑した表情を浮かべながら頷いた。

「正志、昔のお前の本名は安永正志だったらしいな?」

ウェスカーはそう言いながら映像を一時停止した。

「えっ!?正志の名字は西山でしょ?」

クレアが言うとウェスカーは首を横に振った。

「それは現在の名字で、昔の名字は安永。西山というのは正志を引き取った義理の両親の名字だ」

ウェスカーは本人に似つかわしくないほど丁寧に語った。

「それで正志の罪とは何だ?」

光平が静かに尋ねると、ウェスカーは笑うのをやめて言った。

「こいつは2つの罪を抱えている。1つは見殺しにされた最愛の恋人を助けなかったこと、もう1つは自分を引き取ってくれた義理の父親が死んだ後にその妻…つまり義理の母親を奪ったことだ」

ウェスカーの言葉に正志は青ざめた顔で茫然と突っ伏していた。

「1つ目の見殺しにされた恋人を助けなかったというのは、どういうことだ?」

「こいつは、幼い頃恋人になった女の子が事件に巻き込まれた時に、ヤバイ状況だと知りながら助けずに見殺しにしたのさ。女の子が助けを求めていたのにな」

ウェスカーがそう言い終えた瞬間、銃声が鳴り響いた。

光平達が振り向くと、正志がウェスカーにサムライエッジを撃ち放っていた。

「黙って聞いてれば、好き放題言いやがって!貴様ごときに何がわかる!?」

正志が怒りを浮かべながら叫んだ。

「やっぱり思った通りのクズ野郎だな、貴様は。もう容赦しねえぞ!」

正志は怒りを爆発させて、サムライエッジを連発した。

「落ち着け、正志!」

光平が叫ぶものの、怒りのあまり我を忘れた正志の耳には届かない。

「フッ、無駄なことを。まあいい、初めて会った記念だ。進化したオレの力を少しだけ見せてやる……」

ウェスカーは右腕に力を込めた。すると薄い緑色のエネルギーが集まった。

サムライエッジの弾丸を高速を超越した動きで次々に回避し、ウェスカーは右腕に集まったエネルギー弾を正志に撃ち放った。

エネルギー弾は正志の体に命中した。

「ぐっ…」

エネルギー弾をまともに受けた正志は崩れ落ちる。

「「「「正志!」」」」

仲間達が叫ぶ。

(今のは確か、『鬼武者』の敵・幻魔が使用する幻魔弾。なぜウェスカーが幻魔の力を!?)

痛みに耐えている正志は、心の中で今起きている事実に驚愕していた。

「貴様、幻魔の血を体に取り込んだな?」

ゆっくりと立ち上がった正志が尋ねると、ウェスカーは再びニヤリと笑った。

「よくわかったな、その通りだ。闇星事件で光平に敗れてから、オレは『鬼武者』の並行世界の高等幻魔・ギルデンスタンの手術を受け、幻魔王・フォーティンブラスと織田信長の血を体に取り込んだ。おかげで凄まじい力を得ることができた。進化したオレの力を味あわせてやる」

ウェスカーはそう言いながら、左腕に力を込めた。腕に青白い稲妻が走る。

「光平、クレア達を安全な場所に避難させろ!皆には死んでもらっちゃ困るんでな」

立ち上がった正志は、ウェスカーを睨みながら光平に言った。

「お前はどうするつもりだ!?」

光平が叫ぶと正志は後ろを振り返らず、手を振りながら言った。

「俺のことは気にするな。後は頼んだぜ……相棒」

そう告げると正志はウェスカーの元へ駆けていった。

「うおおおおおおおおおおーっ!」

正志は全速力でウェスカーに突撃する。

「バカめ!」

ウェスカーは正志に向かって雷を放った。

バチバチと凄まじい雷音と衝撃音が鳴り響く。

「正志!正志!…くそっ!!」

光平は迷いながらもクレア達の元に駆け寄り、瞬間移動した。

何が起きたのか、想像はしたくなかった。





光平はクレア達を連れて結晶の巫女・大倉詩織が生活している、結晶の間に瞬間移動していた。ここは詩織が張った結晶の結界と光平が張った光の結界によって守られているため、ウェスカーでも侵入することはできない。

「ちくしょう!」

正志を守れなかった光平は、怒りの感情を地球の核の壁に右腕を叩きつけることでぶつけていた。壁にはヒビが入り、クレア達は呆然としたまま光平を見つめていた。

正志はクレア達を守るため、自分だけ残った。彼を守れなかったことへの悔しさを覚えた光平は腕を何度も壁に叩きつけた。

「その辺にしておくのよ、光平!」

腕を叩きつけていた光平の動きが超能力のようなもので止められた。クレア達は声が聞こえた方向へ振り向いた。

「クリスタルシャイニングスターズのリーダーを務めているあなたがそんなことでどうするの?ちゃんとなさい!」

そう言いながら現れたのは、白いワンピースを着た長身の美女だった。

「あっ、あなたは……」

女性を見たクレアの顔が固まる。女性の顔は、正志の持っていた白い電子機器の画面に映っていた女性と瓜二つだったからだ。

「詩織さん、申し訳ありません」

光平は壁から腕を離すと、詩織と呼んだ女性に頭を下げた。

「じゃあ、あなたが正志の言っていた結晶の巫女?」

クレアが尋ねると、女性は頷いた。

「皆、取り乱してすまなかった。紹介しよう、結晶の巫女・詩織さんだ」

光平は血だらけになった右腕を治癒し、女性をクレア達に紹介した。

「あなた達に話があります。しかし、それはクレアさんとレオンさんにだけです。ベンさんとアネットさんには眠っておいてもらいましょう」

そう言うとその女性…詩織は両腕をベンとアネットのそれぞれに向けた。

「何!?」

「えっ!?」

ベンとアネットが驚くが、詩織の腕から黄緑色のエネルギーが放たれ、彼らの頭に命中する。すると、2人が突然倒れ、寝息を立てて熟睡しはじめた。

「2人に何をしやがった!?」

レオンが詩織に掴みかかるが、光平が取り押さえた。

「落ち着け、ケネディ!詩織さんは2人の生命エネルギーを鈍らせて、睡眠状態にさせただけだ。話が終わればすぐに起こす」

光平が叫んで説明すると、レオンは抵抗をやめた。

「わかった。だが2人は大切な仲間だ。もし何かしやがったら、俺とクレアが許さない。いいな!?」

レオンが凄んで言うと、光平と詩織は頷いた。

「まず、自己紹介をしましょう。私は結晶の巫女を務める大倉詩織と申します」

詩織が深くお辞儀をしながら、礼儀正しく言った。

「私はクレア・レッドフィールド」

「俺はレオン・ケネディ」

クレアとレオンがそれぞれ自己紹介する。

「それで、話というのは?」

クレアが尋ねると、詩織がゆっくりと語り始めた。

「まず、正志くんのことです。彼は私が結成し光平がリーダーを務めるクリスタルシャイニングスターズのメンバー達が保護しました」

詩織がそう告げると、クレアとレオンは安堵の表情を浮かべた。

「よかったわ」

「安心したぜ」

2人は口を揃えて呟いた。

「そういえば、クリスタルシャイニングスターズって何なの?」

クレアが言うと、詩織は指をパチッと鳴らした。

すると壁に映像が映し出された。映像にはリーダーの光平をはじめ、須田恭也や7つのゲームの主人公やその仲間・関係者などが映っている。

「私が結成した、正義の人間が集まったチームのことです。輝きの意味を持つシャイニング・結晶の意味を持つクリスタル・星の意味を持つスターから取って名づけました」

詩織が言うと、クレアはわかったようなわかっていないような、どちらかわからない表情を浮かべた。

「話を戻しましょう。もう1つは、アルバート・ウェスカーのことです」

詩織が言うとクレアとレオンは顔を強張らせた。

「私達が会った奴は、正志が詳しく教えてくれた奴より異常に強かったわ」

クレアが言うと、レオンも頷いた。

「クレアさんの言う通りだ。闇星事件で戦った時よりも、あのクズ野郎は遥かに強くなってやがる」

光平が言った。

「正志は幻魔の血を取り込んだと言っていたけど、幻魔って何なの?」

クレアが言うと、詩織はゆっくりと語り始めた。

「幻魔というのは、7つのゲームの1つ・『鬼武者』に登場する敵のことです。幻魔の血を取り込んだ者は絶大の力を得ることができますが、人間としての意思や理性を次第に失い、最後は化け物になってしまいます」

詩織が言うとクレアとレオンは真剣な表情で言葉を聞いていた。

「だが、ウェスカーは見ただけでは普通の人間のように見えたし、理性なども保ったままだったぞ」

レオンの言葉にクレアが頷いた。

「幻魔の血を取り込んだ人間全員がそうなるわけではありません。非常に稀な確率で、意思や理性を失うことなく幻魔の力を自由自在に使いこなすことができる人間がいます」

⇒To Be Continued...

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