奪われた名声と自由2
作者: hunya   2013年01月16日(水) 07時18分10秒公開   ID:ya0yA9mObps
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九.(最悪の結果のこと)

数分後私は既に料理を片付けられ食後のコーヒーを置かれたテーブルに
うなだれていた。
写真の自画像は紛れもない親父の顔。
三人はみな嬉しそうにはしゃぎながら、良かったを連呼している。
そりゃ、良かったことにこしたことはない。罪人じゃなかったのだから。
しかし、今の私にはそれ以上に、怒りと悔しさが上回っていた。
私が見るのを少しためらい、後回しにした訳。

誰かに騙された……

私はテーブルを思いっきりたたきつけていた。何度も何度も……
その行動に三人いや宿にいる人たちが何事?のように見つめている。
「私、騙されてた。8年間もずっと。」
悔し涙が溢れだしてきた。
「一体どういうことだ?」
ハンカチを私に渡しながらセイバーが理由を聞いてきた。
村の我が家に届いたのは、処刑されたという報告書。
じゃあ何のために?誰がそんな偽の報告書を送ってきたのか?
国直属の警備団、自衛官などが殉職し、その人が妻子ある身柄だったとしたら……
当然その妻、子は生活保護が受けられるはずである。
ならたとえ只のワーパーだった人でも、一国の危機を救って倒れ、
その人物が妻子ある身、村の再建をしていると知ったら国はどうする?見殺しか?
「そりゃ、村の再建資金や、手伝い位してくれるわな当然」
セイバーのひと言に、私はテーブルをバンとひとたたきして、
「誰かに持っていかれた。親父の名声も、私たちの自由も。」
誰が好き好んでこんな危険な職業選ぶものか。
私は他に手段がなかったから、今の職業をやってるだけだ。
本当だったら今頃、かっこいい彼氏でも見つけて、綺麗な草原でお弁当広げて、
素敵な恋愛なんぞをしていたかもしれない。
「ジュノ来るか?真相確かめようぜ。」
セイバーの誘いに私は、
「有難う、でもその前に一度村に帰って確かめるわ。」
万が一のために保管してあるのだ。報告書が。
それを、持ってジュノのカムラナート大公に会って詳しいことを聞き出そうと考える。
「で村は何処にあるんですか?」
ショーテルの問いに私はコンシュタッド高原に村があることを伝える。
「割と近いじゃん、チョコボならすぐに着きそうだよ?」
ロッドが椅子の上に立ちながら私を見つめている。
「そうだな、一緒に行こうか?みんなで。」
セイバーのひと言に何でそこまでしてしてくれるの?と私は問う。
「こいつ助けてくれたの誰でしたっけ?」
セイバーはロッドの頭をポンポンっと叩く。
ロッドは照れくさそうに鼻をこしこしと擦っている。
えっそれだけの理由で?
更にセイバーは
「それに俺、曲がった奴が嫌いな性質でね。」
そして私の頭もポンと叩き、
「こーんな可愛いお嬢さんを、不幸な目にあわせてるなんて、お兄さん許さないぞっと。」
ポンポン叩かれながら私はまた泣き出してしまった。
「さて、泣いてる暇があるならさっさと出発しようぜ?」
私を覗き込みにっこりと優しく微笑むセイバーに私はちょっと照れくさくなり、
ごしごし涙を拭い、ほっぺを数回両手でパンパンと叩く。
「うん、行きましょう。絶対に騙した奴とっ捕まえてやる。」
私は右手を強く握り締める。
「じゃあこいつを君に渡しておこう。」
そういうとひとつのリンクシェルを私にくれた。
見てみると青と白のスプライトの綺麗なパールがついている。
「こいつらもおんなじ物付けてるんだぜ。」
二人をクイクイと親指でさしながら。
「これで君は俺たちの仲間だ。」
そして右手を差し出すセイバー。
ロッドもショーテルもその差し出された右手に手を重ねていく。
そして私もゆっくりとそっと手を重ねていく
「これでパーティの成立だな。」
そういうと彼は、私のアルミケースからひとつエーテルタバコをくわえ火をつけ煙をふかし、こう言った。
「宜しくな。」

十・(レイピア初パーティー結成のこと)

私は商業区門ので口で一人、彼らが来るのを待っていた。
コンシュタッド高原。私の村に向かう為に。
春には色とりどりの花を咲かせ、夏にはあたり一面が鮮やかな緑色にそまり、秋にはおいしい果実を実らせ冬が来ると、あたり一面が銀世界になる。
……と、ここまで書くと、まぁなんて良いところなんでしょ。そんなところに住んで、癒されてみたい。なんて思うだろうが、実際はそんな甘い物ではない。
毎日、冒険者がぞろぞろと蟻の行列。おまけに、あたり一面モンスターだらけ……こんなところに住んでいる物好きは、おそらく私たち位だろう。
私は腰を下ろし東の方角を眺める。
数分後2羽のチョコボが、やって来た。
乗っているのはショーテルとセイバーの二人。
「あれロッドはどうしたの?」
私の質問にショーテルの背中が答える。
「ここだよ。」
なんとロッドはショーテルの背中に帯で縛り付けられている。
しかも後ろ向きで……
「こうしておくと後方気にしなくていいんですよ。」
ショーテルの言葉に私は納得した。
なるほどね、でもそれだと酔ったりしないのか?
「さて、お前さんものりな。」
セイバーは手綱を引きチョコボをしゃがませる。
そして私は、チョコボに飛び乗りセイバーの背中にしがみつく。
「鎧つけてなきゃ最高なのになぁ。」
セイバーはため息ひとつついた。
確かにゴツゴツと鎧が当たる。
つけてなければ背中の温もりも感じられるだろう。
私は、ここまで良くしてくれている彼に少し、好意を抱いていた。ちょこっと顔が熱くなってきた。
それに察したかセイバーはひと言。
「ひょっとして惚れたりした。」
私はぷいっと無言で横に視線をそむけた。
くすくす笑ってるショーテルとロッド……うぅ〜恥ずかしい……
セイバーは軽く笑いながらチョコボの腹に軽く踵を当てる。
立ち上がるチョコボ。
「じゃいきますよ。お嬢さん。」
そう言うと手綱をしならせチョコボを走らせた。
地面が……人が……モンスターが……景色が……飛ぶように視線から消えてゆく……鼓膜からは風の音が駆け抜けてゆく……
「速い、すっご〜い」
私の感激の声を上げる。
「だろ〜。これならすぐ着くよ。」
前方を駆けるチョコボから縛られたロッドが、手を振りながら答える。
「飛ばすからしっかりつかまっててくれよ。」
セイバーのひと言に私は彼の背中にしっかりと体をくっつける。
手綱がまたしなる。
どんどん加速していく。
もう景色が分からないほどの速さになっている。聞こえてくるのは風の音だけになってしまっていた。

十一.(詐欺師をぶっ飛ばせのこと)

もう半日は走ってきたのだろうか、一度休憩をはさみまた出発をする私たち三人。
休憩をしたのは、ロッドがチョコボ酔いしたからである。
ちゅーか普通するだろ?その乗り方だと……
私は何故普通に乗らないのかと一度尋ねたのだが。
その理由はロッドを前に乗っけると、ずっとしゃべりっぱなしで
五月蝿いらしいのだ。おまけに胸まで触る始末……すけべなのか?
吐くものもないくらい吐いたらしいので取りあえず出発となったのだが……
並みのステーキ食うからだろ?タルタル用のセットもあったのに……
せっかく奮発して食べさせた最高の肉……しくしく
「もうすぐだよ。」
私は村がある方角を指差した、ポツポツと並ぶ風車小屋。ここいらが、私たちの村である。
数分後村に到着しチョコボから降り大声で村人を呼んだ。
私の声が辺りに響き渡る。
そして、ひょこひょことでて来る村の住人。
その数私を含め30人。小さなむらなのだ。
私たち三人はチョコボから降りることにした。
するとチョコボは、一鳴きしバストゥークの我が家へと帰っていった。
「おぉ、お嬢かえってきたのか?」
一人の男性が、私に近づいてきた。
「お帰り、レイピア。」
四十半ばの女性が私に話しかけてくる。
「ただいま、叔母様。」
そういうと私は彼女に抱きついた。
「あんな大金どうしたんだい?」
私は、頭を撫でてくれているおば様に、今までの経緯を話した。
その夜……
盛大な料理が並ぶ……羊の丸焼きに、ワインそして私たち。
相変わらず、青い顔してるロッド……まだ醒めてないのか?
「しかし、今まで騙されてたなんて。」
皆が口をそろえて同じ事を繰り返し
「じゃあ、これは貴方に渡しておくわね。」
叔母様はれいの報告書を私に渡してくれた。
「そんじゃ俺は一足先にジュノにかえるわ。」
セイバーは、報告書をひょいと取り上げ……
「なんか分かったら連絡する。リンクシェルは常時身につけて置くようにしてくれ。」
胡坐を組んでいた彼はすくりと立ち上がり、身支度をととのえ始めた。
村人たちは彼に声援を送っている。
「そんじゃいってくるわ。」
彼は一枚の紙を体に貼り付け両手で印を結ぶ。
すると彼の体は光り輝き光の霧になり天高く飛び去っていった。
『デジョン』
一瞬で設定している目的地へ運んでくれる黒魔法。
それを誰でも扱えるように一枚の紙に封印した呪符である。ただ一回限りなのだが。
「で私たちはどうします?」
ショーテルはお行儀よくちょこんと座りワインをちびちび飲んでいる。
「取りあえずバストゥークで彼の連絡を待つわ。」
私は、ショーテルにそう言うと、すくっと立ち上がり、
「みんな、ちょっと聞いて。」
村人の視線をこっちに集める。
「この前送ったお金で半年持たせて頂戴。」
そして鞘か剣を抜き眺めながら
「今の今まで騙してた奴とっ捕まえてくるから。」
盛大な拍手が高原に響き渡る……私は剣を夜空に高々と掲げた


十二.(コンシュタッドを離れてのこと)

次の日の朝早く、私たち3人はバストゥークへ向かう為、身支度をととのえ始めていた。
村の人達から、二日分の食料を分けてもらい個々にサックへと詰め込んでいく。
「さて、準備はいいかしら?」
私の合図に二人ともこくりと頷いた。 
チョコボがいない為、徒歩になる。おそらく早くて一日半はかかるだろう。無論何もなければの話だが……
私たちは高原を抜けるため歩き出した。
まあモンスターどもに囲まれても三人もいれば問題ないだろう。
ここいら辺りなら私一人でもやっていけるのだから。
半日歩いたところで2体のクゥダフに遭遇した。
1体は戦士系もう1体は魔道師系か……
「私はあっち相手にするから片方お願い。」
私は魔道師系のクゥダフを指差す。
「はい、じゃあ戦士系は私たちが相手します。」
戦闘開始である。
私は両手で印を結び相手が唱えるよりも一足早く魔法を放つ。
「静寂よ!」
『サイレス』
相手の魔力を封じる黒魔術。
魔法の詠唱を出来なくし一時的に発声が出来なくなる。
魔法は相手にすると厄介なのだ、なので先に封印しておくのがベスト。
戦士系クゥダフにロッドが走りよる。
そして目の前でロッドの姿が消えた……
なに?どういうことなの?
「へへーん。」
クゥダフの後で相手が手にしていた剣を持っている。凄い……ぜんぜん見えなかった。
ロッドは一瞬で相手の武器を奪っていたのだ。
「はっ。」
そしてショーテルは相手の懐に素早く入り、相手の顎をめがけ蹴りを突き上げる。
空中へ飛ばされるクゥダフ。
「そらよ、返すぜ。」
そういうと先ほど奪った剣を飛ばされているクゥダフめがけ投げつけた。
ダシュッ
剣は背中に突き刺さり貫通、腹にまで達している。串刺しという奴だ。どさりと音を立て地面に這い蹲るクゥダフ。もう、絶命しているだろう。
凄い、これが連携なのか……気をとり直し私もそろそろ行動にでる。右手に集中させ魔法を放つ。
「束縛よ!」
『バインド』
黒魔法系弱体魔法
相手に精神をコントロールし動けなくしてしまう魔法。
そして距離をおいて術の詠唱をする。
「木々を揺らす風の精霊よ、我が剣となりて、刃と成せ。」
『エアロ』
黒魔法系精霊術。
一定の範囲に強烈な疾風を巻き起こし真空の刃を発生させる魔法だ。
クゥダフにそれが襲い掛かる。
そしてバラバラに刻み始めていった。
「ひゅ〜やっぱ魔法は凄いや。」
ロッドが私のお尻をポンポンたたきながら……
「こらこら、触るのやめなさいって。」
ごうん。
ショーテルの拳骨がロッドに炸裂する。
「いい加減にしなさい。ロッド。」
……今ので死んでないのだろうか……すんごい音したけど?
「あーぅぅー。」
頭を抑えて唸っているロッド、あ、生きてた。
「にしても凄いわよね。貴方たち。」
私はロッドの頭に出来たどでかいタンコブを眺めつつひと言。
「もう三年の付き合いですから。即席のパーティーとはちがいますよ。」
照れながらショーテルは語る。
「それにロッドの早業すごいよねぇ。」
あたしの言葉に反応したのかロッドは立ち上がり、
「これのことかな。」
私の目の前で消えた……
はっもしかして……やっぱり無い……腰につけた剣が鞘ごと。
「へー凄い剣だなぁー。かっこいー。」
ロッド自分の背丈よりもながいであろう、私から奪った剣をするりと抜き眺めている。
「わわっ重い。」
バランスを崩しロッドはすっころんだ。
キィィィン
剣先が若干赤に染まる……
「わっちゃっちゃっちゃぁー」
えっ……彼のお尻に火が付いている。私は慌てて魔法を唱える。

⇒To Be Continued...

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