第10話 謎の女
作者: 邪神   2012年07月11日(水) 19時39分52秒公開   ID:LsmXA1cmAZk
9月29日 午後22時36分
白ワンピースの女登場。




『……て。きて…、起きて。起きて、正志くん……』

誰かに導かれる声が聞こえる。優しくそれでいて、母性があるような若い女性の声が。

その声で俺はゆっくり目を開けた。すると須田恭也と会話したときと同じ、黒い景色が飛び込んできた。

『誰だ…?誰が俺を呼んでいる?』

俺は声が聞こえるほうへ振り向いて叫んだ。しかし、誰の姿も見当たらない。

『誰だ!どこにいる!?』

俺がそう叫んだ途端、声が聞こえた。

『ここよ』

俺はうしろを振り向く。すると、白いワンピースを着た綺麗な女性が立っていた。俺はその顔に見覚えがあった。


――……こいつはっ!


俺はその女性の姿に見覚えがあった。過去の記憶を思い出すことにしてみる。

――助けて!

(あっ、あの夢に出てきた女だ!あの時の……!)


『お前は、夢に出てきた女だな!』

俺は走って女に掴み掛かった。しかし姿が消え、俺の手は空振りした。

『出て来い!あんな変な夢を見たせいで俺は…こんな世界に!』

『須田恭也から話は聞いたわね?この世界を救えるのは貴方だけなのよ』

女はゆっくりと穏やかに言った。

『何で俺なんだよ!?世界を救える奴なんて他にいっぱいいるだろ!』

確かに俺は『バイオハザード』は好きだった。しかし、それはあくまでゲームとしてである。

『私はこの世界を救うことが出来る人間を探し続けていた。そして見つかったのが貴方』

女は穏やかな表情で言った。

『どういうことだ?』

俺は尋ねた。女はゆっくりと近づいて語った。

『勇敢な性格で人を助けることができる優しい心を持ち、バイオハザードの知識に精通していて英語が完璧に話せる人間…私はこの条件に該当した者に貴方が見た夢と同じものを見せたの。夢の中で、ゾンビに襲われている私を助けてくれたのは貴方だけだったわ、正志くん』

女はゆっくりと微笑み俺の手を握った。

『だから、条件に当てはまってあんたを助けた俺は、この世界に放り込まれたのか』

俺の言葉に女がゆっくりと頷いた。

『須田恭也から話を聞いているならば、バイオハザードの世界以外にも六つのホラーゲームの並行世界が誕生したことは聞いているわね?』

女は右手をゆっくりと空に掲げた。すると須田に見せられた地球と同じものが現われた。


『貴方以外にも私の選んだ6人の人間が、残り六つの並行世界を救うために戦っているわ』

女はゆっくりと穏やかに喋る。俺は地球を見つめながら言った。

『世界を救うためにあんたは俺を戦士に選んだんだろ?………だったら、それを受け入れるしかなさそうだな』

俺はその運命を受け入れることを決意した。女は笑顔で頷いた。

『よく決意したわね、正志くん』

『俺じゃ役不足かもしれないが、まあやるだけやってみるさ』

ポーチからガムを取り出して口に入れ、噛みながら俺は言った。


『あなたにこれを渡すわ。役に立つはずよ』

女が何かを渡した。よく見ると、それは銃と懐中電灯だった。

『頑張ってね正志くん。あなたにもし命に危険が迫るような危機があれば、私や須田恭也を始めとする仲間達がすぐに助けに行くわ。それに、あなたには大切な仲間がついています。孤独な時や悲しみに満ちたことがあっても、彼女達は支えてくれるよ』


俺は女の言葉に頷いた。すると女は真剣な表情を浮かべてこう言った。

『これからあなたにある試練を与えます』

『試練?』

女はゆっくりと頷いた。

『これからあなたを、七つの並行世界の1つに案内する』

『じゃあバイオハザード以外のホラーゲームの世界に?』

俺は尋ねた。女は俺の腹に手をやった。

するとまぶしい光が俺の腹を覆っていく。

『リッカーに負わされた傷はこれで癒えた』

女は手を離して俺に呟いた。


『これからあなたに“ある物”を取ってきてもらうわ。しかし、それには非常に危険が伴う。覚悟は出来ているわね?』

俺はサムライエッジに弾丸を装填し頷いた。

『何を取ってくればいいんだ?それを教えてくれよ』

俺が尋ねると女は頷いて囁いた。

『ある“武器”よ』

『武器?』

『その通り。あなたが今いるバイオハザードの世界で、後々戦うことになる相手を倒すために必要不可欠な物』

(武器か……)

俺はサムライエッジを握りしめて決意を新たにした。

『先程申し上げたように、あなたが行う試練は非常に危険が伴います。いいわね?』

俺は目を見開いて首を縦に振った。女は右手を上に挙げた。


眩しい光とともに女の姿は消え去り、それと同時に俺の意識もそこで途絶えた…………。
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