第22話 T+Gウイルスと怪物
作者: 邪神   2012年07月07日(土) 20時01分05秒公開   ID:ruLD3r9Qyus
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9月29日 午後23時44分
ベン・ベルトリッチ、ウィリアム・バーキン、アネット・バーキン登場。



ベン・ベルトリッチが留置されているラクーン警察署の留置所でエイダ・ウォンと出会った正志達は、彼を救出するため中に入っていた。

ベンがいる監房は地下駐車場から離れた一番端の所にあった。正志はある予想を立てていた。

(おそらくここであの“化け物男”が現れるはずだ。ベンの死……それだけは絶対に阻止しないと。そして、あの女…エイダ・ウォン。俺には1つの考えがある)

「ここだ。ここにベンがいる」

正志がそう言いながらクレア・レオン・光平・エイダの4人を案内する。

ベンは監房の中で、金属の簡易ベットに寝転がってぐっすり熟睡していた。冷たい空気に血が腐敗している臭いが充満しているなかで寝ていられるのはすごいと感心した正志は、悪い気がしたものの彼を起こすことにした。

「あいつがベン・ベルトリッチか?」

レオンが尋ねると正志は頷いた。

正志達の気がベンに向いている時、エイダは先程通ってきた犬小屋の側にあったマンホールと棚に置いてあったマンホールキーを見たことを思い出して笑みを浮かべていた。彼女の冷たい微笑に気づいたのは光平ただ1人だった。

(あいつ、何でこんな時に笑ってやがる……?ただ者じゃないなあの女、気をつけるよう後で正志に言っとくか……)

「おい、ベルトリッチ!悪いけど起きてくれないか?」

正志がサムライエッジで牢屋の扉をガンガン叩いて言うと、ベンは不機嫌な声でうめいてゆっくりと起き上がった。

ボサボサのポニーテールの頭を掻きながらベットに座る。顔をしかめたベンは、うんざりした表情を浮かべて正志達を見た。

「一体何の用だ?俺は眠りたいんだよ」

(見つけにくい場所にいるせいだろうが……)

心の中で毒づいた正志はエイダをチラリと見た。

「この男だろ?」

エイダは頷いた。

「ベン」浮かべていた冷たい微笑を消し、必死な表情を作ったエイダは言った。

「恋人のジョンを探しているの。彼はシカゴを拠点としているアンブレラの支社で働いていたんだけど、数ヶ月前に行方不明になって。それで彼がこの街に、ラクーンシティにいる噂を聞いて来たんだけど。何か知ってるんでしょ?」

エイダはそこで話すのをやめて、ベンの表情を慎重に伺った。

(白々しいことを……。最初から知っているくせによ)

『バイオハザード』の全てを知り尽くしていることで、エイダの必死さの表情や言動が全て演技だったことを見抜いていた正志は、心の中で呆れていた。

「何も知らないよ」凄みを含んだ口調で言う。

「それに、もし何かを知っていたとしても、どうしてあんたに言わなきゃならねえんだ?」

(…ふん、そうくるのね。もしこいつらがいなければ銃を出して無理にでも白状させるところだけど。私は人を殺すことが楽しいわけじゃないし、私自身を活かした手段で口を割らせてやるわ。でもこいつらがいたんじゃそれはできない。しばらくしてからにしましょう)

(やっぱりそんなことを考えてやがったか。こいつが何かをやらかす前に正志に言っておくようにしよう)

エイダは必死な表情を浮かべたまま、心の中で次の計画を考えていた。光平はエイダの心を読み、懸念の表情を浮かべていた。

「じゃあ、俺も情報をやるからあんたも彼女に情報を教えてやってくれないか?簡単に言えば物々交換だ」

「ほう…。俺はそれでも構わないよ、あんたの情報次第だけどな」

正志はそう言いながらポーチから複数作っておいた「Nishiyama Repot」の一部を取り出してベンに渡した。

「それにはアンブレラが作り出した生物兵器の詳細や関係者の秘密が書かれている。俺が調べたんだ。相当レアな情報だと思うけどな」

正志はニヤリと笑いながら言った。ベンは渡された「Nishiyama Repot」をざっと見渡すと、カバンから書類を出した。

「こいつはすごいな。よし、いいだろう。交渉成立だ。これが俺が調べた情報だ、受け取れ」

正志はベンから書類を受け取り、一通り見た後エイダに渡した。

「これは…変態署長の過去とアンブレラとの癒着の関係についてか……。エイダ、君の恋人については載っていないみたいだね」

「そのようね……。ベン、ジョンについて何も知らないの?」

エイダが尋ねるとベンは首を横に振りながら言った。

「調べたんだが、数ヶ月前に行方不明になったということしかわからなかった」

ベンの答えに表情を変えないまま、エイダは「そう…。ありがとう」と呟いた。

「ジョンなら死んだよ。アークレイ研究所…通称・洋館で漏れ出したTウイルスに感染して、ゾンビ化しSTARSのメンバーに射殺された」

(もうすぐ奴が来る!早くベンを牢屋から出さなければ)

恐るべき敵の襲来を予測した正志がサムライエッジを取り出しながらエイダに言った。

「何でそんなことがあなたに言えるのかしら?」

エイダが冷たい口調で答える。

「わかるんだよ。これでも俺はお前の全ての秘密を知ってるんだぜ」

「どういうことなの?正志」

「どういうことなんだ?」

(正志の奴、何をする気だ…?)

正志の言葉にクレア・レオンが問いかける。光平は心の中でそう思いながらワルサーP99に手をかけた。

「何のこと?」

エイダは無の表情でそう答えた。

「後で教えてやる」

そう答えた正志は、サムライエッジをベンがいる監房の扉に向け引き金を引いた。

バンッ!

銃弾が鍵穴に命中し、扉が開いた。

「おいベルトリッチ、ここから出ろ。“奴”が上から来る!みんな離れろ!」

正志の問いかけにエイダを除いた全員が頷いた。

「おい、何で扉を壊しやがった!?ここが一番安全なんだぞ!」

「密室が一番危ないんだ!死にたくなかったら俺の指示に従え!」

ベンの問いかけに正志が怒りの口調で叫んだ。

「もっとスクープ暴きたいんだろ?だったら頼むから聞いてくれ」

「わかった……」

正志の懇願する言葉にベンは渋々ながら頷いた。

「これ使え」

正志はH&K MP5をベンに渡しながら言った。ベンは少し笑顔を見せながら「サンキュー」と言葉を返した。

そしてベンのいた独房の天井から大きな音が聞こえてきた。それは地響きのような凄まじいものだった。

「来るぞ!気を抜くな」

正志の言葉にエイダを除いた全員が頷き、銃を構える。

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ………。

地震のような揺れが起こり、天井が崩れる。

そして、T+Gウイルスを自らの体に注入し、最強のクリーチャー・T+Gバーキンと化したウィリアム・バーキンがその姿を現した。

体には凄まじいほどの電撃が纏い、鷹や鷲などの猛禽類によく見られる湾曲した鋭く長い脚爪を持つ足、両手には巨大な爪が形成されている。

正志が知っている、ゲームの『ガンサバイバー4』に登場するモーフィアス・D・デュバルがT+Gウイルスを注入し怪物化した際に現れた、体の女性化という現象は全く見られない。T+Gウイルスを改良したのだろうか。

「シェリーはどこだ!?シェリーはどこにいる!?」

そう叫びながらT+Gバーキンはジャンプしながら正志達に両腕を振り下ろした。自我を保っているため、言葉を発している。

「ちっ、皆避けろ!」

攻撃を避けた正志達は、すぐさま銃撃を開始した。

「無駄だ、そんな攻撃は効かん!」

しかし、T+Gバーキンが言った通り、その体に纏う電気バリアで攻撃は全て無効化されてしまう。

「そ、そんな…!」

「攻撃が効かない!?」

「ちくしょう!」

「くそったれ!」

クレア・レオン・光平・ベンも予想外の事態にうろたえる。

「シェリーはどこだ!?」

T+Gバーキンは右腕に電気を集中させ、パンチを繰り出した。

「シェリー・バーキンなら死んだ!」

T+Gバーキンの攻撃をうまくかわした正志は、マインスロアーに持ち替えて照準を合わせて叫んだ。

「何!?嘘を言うな!」

正志の言葉にうろたえたT+Gバーキンは、周囲に電撃を放った。

「皆、離れてろ!」

正志の言葉を聞いた4人はT+Gバーキンから離れた。

「本当さ!お前達クズどもとクズ会社が作ったゴミウイルスに感染しゾンビ化した」

T+Gバーキンにマインスロアーを撃ち放つ。

「これでもくらいやがれ!このクズ野郎!」

「ぐっ!」

放たれた弾丸がT+Gバーキンの両目に突き刺さった。T+Gバーキンが呻く。

「うぎゃあああああああーっ!」

正志はマインスロアーを連発した。弾丸が次々に突き刺さり、最後の弾丸も両目に突き刺さった。

「シェリーに胚を植えつけようとしたらしいが、残念だったな!そうはいかない、お前の負けだ!」

「ぐああああああー!」

正志が言うと同時に、突き刺さったマインスロアーの弾丸が爆発する。

凄まじい爆風が巻き起こり、T+Gバーキンの悲鳴も上がった。

「しまった!俺としたことが、マインスロアーを使った敵の近くにいると爆風に巻き込まれることを忘れていた。ちくしょう、爆風に巻き込まれる…!」

爆風の影響で正志は身動きができない。

「正志、今行くわ!待ってて」

クレアがそう言いながら正志の下へ向かう。しかしそれをレオンが止めた。

「クレア、よすんだ!今行ったら君も爆風に巻き込まれるぞ!」

「で、でも…。このままじゃ正志が…!」

「俺に任せて!」

言い争っていた2人に光平がそう告げた。

すると光平は瞬間移動して正志がいる場所に向かった。

「おい正志、しっかりするんだ!」

しかし既に遅く、正志は爆風に巻き込まれてしまっていた。ダメージを受けたためか、気を失っている。

再び瞬間移動し、クレア・レオン・ベンがいる所に戻る。

「正志!?ねえ、しっかりして!」

光平がゆっくりと正志を寝かせた。

「俺はあの化け物がまだいるか見てくる。ここを離れるなよ」

レオンはそう言うとT+Gバーキンがいた場所に向かった。

クレアは正志に膝枕をしてゆっくりと寝かせた。

「正志、しっかりして!」

クレアの言葉にも正志は反応しない。気を失ったままだ。息はしているので死んではいない。

「爆風に巻き込まれたため、怪我を負ったようです。俺が見た限り、命に関わるほど重傷ではないですから安心してください」

「そう。少し安心した。ありがとう」

光平が優しくそう言うと、クレアは安堵の表情を浮かべた。

「そういえばお前、後ろに日本の自衛隊が使っている銃を背負っているが、一体何者なんだ?」

「アメリカ軍に派遣された自衛隊の隊員です。神田光平と申します。以後お見知りおきを」

ベンが聞くと光平は丁寧な口調で自己紹介をした。

「そうか、よろしく」

ベンも納得した表情を浮かべ挨拶を返す。

「待たせたな!奴はいなかった」

レオンがそう言いながら戻ってきた。

レオンの言葉を聞いたクレア達はベンの監房の隣にある監房で少し休憩をとることにした。

クレアに膝枕されている正志の意識はまだ戻らない。

「正志……」

クレアは正志を見つめていた。すると正志のズボンのポケットから何かが落ちた。

「これは正志の……」

クレアは落ちた物を拾った。

それは正志が愛用しているスマートフォン・iPhoneだった。クレアは先程正志が使用していたことを思い出し、iPhoneの画面に触れる。すると画面に光が灯り、待ち受け画面になった。

クレアは画面を見た瞬間、頭が真っ白になるほど呆然となった。

画面には正志と彼に寄り添うスラリとした背が高い茶髪の美しい女性、そして真ん中に幼い男の子が写っている。

「正志の奴、結婚してたのか?」

画像を見たレオンが驚いた口調で言った。

「シオリさんに瓜二つですね、この女性」

光平が言った。

「シオリって、例の結晶の巫女?」

「ええ。でもシオリさんよりも年齢が上のようですけど」

クレアが聞くと光平は頷いてそう答えた。

「よくわからんが、この写真に写っているガキはこの正志って野郎の息子なんじゃないか?顔つき…特に目や口元が似ている。それ以外の部分はこの写真の女に似ているしな」

ベンが言った。言われてみると、写真の男の子は正志と女性に少し似ている。

クレアは正志の両手を見た。指輪をはめていることは確認できない。指輪をしていたがどこかで外れて落とした・元々結婚しておらず指輪をはめる必要がなかった・結婚したが指輪ははめていない……のいずれかが理由なのだろうが、真相はわからない。

「……うっ、うう」

「正志!?」

正志が呻き声を上げた。クレアは急いでiPhoneを彼のポケットに戻した。

「正志、気がついたか?」

「ああ」

光平が正志に駆け寄りながら尋ねると、正志はゆっくり起き上がりながら答えた。

「体は大丈夫か?」

「胸と背中が激しく痛む」

レオンが聞くと正志はぶっきらぼうに答えた。

「ちょっと待ってろ。俺が治してやる」

そう言うと光平は正志の体に向かって両手を向けて力を込めた。

すると、光平の両手から金色の綺麗な光が放たれて正志の体を包み込んだ。

(何だ、この光……。優しくて暖かいぬくもりがする)

正志がそう思っていると、体を包み込んでいた光が少しずつ消えた。

⇒To Be Continued...

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