第18話 新たなる影
作者: 邪神   2012年07月06日(金) 18時10分25秒公開   ID:ruLD3r9Qyus
9月29日 午後23時13分



白ワンピースの女の正体が死んだはずの恋人・大倉詩織だったことがわかり、俺は現実を受け入れられずにいた。

「正志、大丈夫なの?」

クレアが心配した様子で俺に声をかけた。

「大丈夫だよ」

彼女に心配をかけさせたくないため、俺は適当な感じで答えを返した。

「西山さん、無事でしたか?」

突然、背後から声が聞こえた。俺は後ろを振り返る。

「はっ・・・・・・須田か。無事だよ、心配かけてすまない」

「そうですか、無事でよかった。安心しました」

俺が言うと須田は安堵の表情を浮かべて言葉を返す。

「なあ須田、お前って光平と同じ『SIREN』の世界から来たのか?俺さ、ゲームの『SIREN』でお前を見たことあるんだけど」

俺が聞くと須田は首を横に振って答えた。

「いいえ、僕は『クロックタワー』の世界から来ました。西山さんが言う『SIREN』の世界の須田恭也とは別人ですよ」

俺は納得し「わかった」と答える。すると光平が言った。

「正志の言う『SIREN』の世界の須田ならもう死んでいる」

光平の言葉に俺は驚いた。

「そうなのか?」

「ああ。夜見島事件…正志の世界ではその『SIREN2』というタイトルのゲームの4年後に起きた“ある事件”で戦死したんだ。俺の小学校の頃からの幼馴染であり、かけがえのない親友でもあったんだが……」

光平はさらに言葉を続けた。

「俺はその事件で光の戦士になったんだ」

「光の戦士に?」

俺が聞くと光平は頷いた。

「不死身の体になったことで須田……恭也は、異界を巡り化け物を倒し続ける戦士としての使命を全うする裏で、心の中は“永遠に生き続けなければならない”というその運命に翻弄され苦しんでいた。体が朽ちるその時まで使命を果たさなければならないからね。俺は戦死したあいつから、戦士としての役目を受け継いだ」

光平があるものを取り出して俺に見せてくれた。

それは一枚の写真だった。高校生の頃だろうか、ブレザータイプの制服を着て肩を組んで笑っている光平と須田が写っている。

「恭也が羽生蛇村で起きた事件に巻き込まれる直前、二人で撮った最後の写真だ」

「良い笑顔だな」

写真の中の光平と須田は親友という関係が良く分かる笑顔を浮かべている。

「俺が殺したようなもんだが……」

光平がボソリと小声で呟いたその言葉に俺は気づかなかった。

「そろそろ警察署に戻りましょう」

須田が言った。俺達は頷く。

「正志、クレア!」

レオンが走って俺とクレアの元へ来た。

「大丈夫だったか?レオン」

俺が尋ねると、レオンは頷いた。

「大丈夫だ。危ない所を須田が助けてくれたんだ」

レオンが言うと須田が照れて笑った。そして須田が言った。

「レオンさんを無事に合流させることができましたし、僕は一度自分の世界に戻ります」

須田が言った。俺は聞いた。

「また来れるのか?」

「はい、落ち着いたらまた来ます。僕も最近は優達に顔を見せてませんから、あいつらが心配ですし」俺の問いに須田は頷いて言った。

「優?優って誰だ?」

俺が聞くと須田が言った。

「御堂島 優(ミドウシマ ユウ)。7つのホラーゲームの一つ・『クロックタワー』の主人公の1人で、僕の恋人です」

「へえ」

俺は口笛を吹いて言った。

「では、またお会いましょう。神田さん、後はよろしくお願いします」

須田が言うと光平は頷き、須田はオーロラの向こうに姿を消した。

「よし、準備はできたか?そろそろ行こう」

その後の光平の言葉に俺達は頷いた。光平の瞬間移動で警察署に戻る。




その時、正志達は気づいていなかった。正志達が話している様子を“ある男”が見ていたことを……。

「久しぶりだな、憎きクリスの妹・クレア、レオン、神田光平。そして、オレと同じ素質と器を持つ西山正志。知らないゴミが1匹いたようだが、まあいいだろう。オレの新たな計画は既に動き始めている、お前達に止められるかな?」

その男は正志達をバカにしたように冷たく笑い、黒いオーロラの向こうへ消えて行った。
■作者からのメッセージ
作者からのメッセージはありません。

■一覧に戻る ■感想を見る ■削除・編集