第20話 異変、新たな出会い
作者: 邪神   2012年07月06日(金) 15時27分15秒公開   ID:ruLD3r9Qyus
9月29日 午後23時20分
エドワード・ジョンソン、ブライアン・アイアンズ登場。



ラクーン警察署の署長を務めるブライアン・アイアンズが身を隠している部屋の扉を開けると、正志達の目にはベッドに仰向けに乗せられている、もう一生何も映らない目を見開いた美しい女性の遺体が映った。そのベッドの隣にいる男の存在にも正志達は気づいた。

「綺麗だろ?これから剥製にする」

その男……ブライアン・アイアンズが言った。

「アイアンズ署長……?」

レオンが絶句する。

「こんな時にうろついているとは、お前らも“T+G”目当てか?」

アイアンズが聞いた。

「俺達はくだらないウイルスとやらに興味は全くないんだよ。あんたが“精神異常私利私欲署長”のニックネームで有名なブライアン・アイアンズだな?」

正志が尋ねると、アイアンズは睨んだ様な表情を浮かべた。

「なんだと!?お前日本人だな?」

アイアンズが言った。

「だったらなんだ、変態署長さんよ!」

正志が言うとアイアンズは憎しみの目で俺を睨む。

「あんたのことは全部知ってるよ。アンブレラや研究者のウィリアム・バーキンと癒着して多額の金を受け取ったり、アンブレラが関わった洋館事件を始めとするバイオハザード事件の真相を揉み消したり、大学時代に2度の婦女暴行に及んでいたりな」

正志の言葉にアイアンズは震えだした。

「なぜそれを知っている!?」

怒りで震えたアイアンズが言った。

「さあな。頭がおかしくなって部下を殺したり、自分の正体を知られたから秘書を殺したりする奴に何で教える必要がある!?」

正志が話を続けると、アイアンズはデザートイーグルを取り出して彼に向けた。

「黙れ!それ以上言ってみろ、撃つぞ!?お前も私の部下と同じように殺されて化け物の仲間になりたいか?」

アイアンズが銃を向けながら正志に言った。

「正志、もういいわ……」

「正志、よせ」

「やめとけ、正志」

クレア・レオン・光平の3人が正志に注意をする。しかし彼はそれを無視してアイアンズに言った。

「なあ、変態署長さんよ。ゾンビよりも恐ろしい化け物を知ってるか?……人間だよ」

正志の言葉に3人がはっとする。

「なんだと……?」

アイアンズが聞いた。

「俺は“ある事件”でその言葉の意味を嫌というほど味わったんだ。まあ、あんたに教える気はないから自分で考えな。ただ、その言葉の意味にあんたも該当してるってことだけは教えてやるぜ」

正志言った。

「お前、一体何者だ!?」

アイアンズがデザートイーグルを構えたまま聞いた。

「ゲーム好きのただのしがない大学生さ」

正志はサムライエッジを構えて答えた。

「大学生だと?日本人の学生のくせに、なぜそこまで私やアンブレラの情報に詳しいのだ?」

アイアンズがデザートイーグルを下ろし、聞いてきた。

「さっきも言ったろ。あんたに教えることなんてないってよ」

正志が言うと、アイアンズは再びデザートイーグルを構えた。

「くそ、殺してやる!お前のような……奴は、殺……し……て……や……る。う…うぅ。っぐ、ぐは……!ぐああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁー」

アイアンズがそう叫ぶと同時に苦しみ始めた。

「どうしたの!?」

「アイアンズ署長!?」

「一体どうしたんだ!?」

クレア・レオン・光平が言った。

「ちっ、やっぱりバーキンGに胚を植えつけられてたか!?」

正志がサムライエッジを構えて言った。

「G?Gってなんなの!?」

クレアが言った。

「シェリーの父親でアンブレラ社主任研究員のウィリアム・バーキンが開発したウイルスのことだ」

正志が言った。

「ぐあぁぁぁぁぁぁっ……」

アイアンズの凄まじい悲鳴が上がり、彼の体が不完全なG成体に喰い破られる。絶命したアイアンズの喰い破られた無残な死体は地面に転がり落ちた。

「一体なんだ、この化け物!」

光平が言った。

喰い破られたアイアンズの死体から、巨大な眼球と両腕が形成された大きな化け物がその姿を現した。

しかし、その姿は正志がゲームの『バイオハザード2』と『ダークサイド・クロニクルズ』で見たG成体とは何かが違っていた。

頭部が鋭い巨大な牙が生えた海水魚のタツノオトシゴのそれに酷似した形になり、巨大な体が強靭な筋肉と鋭い棘で覆われたような形になっている。正志が知っているG成体の面影はほとんど無く、左背面に存在する巨大な目玉が残っているのみだった。

(どういうことだ?俺が知ってるゲームのG成体とは全然別物じゃないか。どういうことだ!?まさか、世界の崩壊が原因か!?)

G成体は咆哮を上げながら正志達に近づいた。

「皆、気を抜くな!気を抜いたら確実に死ぬぞ!」

「わかったわ!」

「わかった!」

「わかったぜ!正志(俺は不死身だから死なないけどな)」

正志の言葉に3人が頷いた。

正志はショットガンを、クレアはグレネードランチャーを、レオンはアイアンズの死体から拾ったデザートイーグルを、光平は89式小銃を構えた。

G成体はジャンプして巨大な両腕を振り下ろして正志達を攻撃してきた。正志の「危ない!よけろ!」の言葉に3人全員が素早く攻撃をかわした。

4人がそれぞれ銃弾を浴びせる。しかし、命中したもののG成体は平気な様子で再び攻撃を開始した。

「効いてないのか!?」

正志が驚愕した様子で言った。

「ちっ!正志、こいつの弱点はなんだ?ゲームをプレイしたなら知ってるんだろ!?」

レオンが聞いた。

「頭部と巨大な目玉だ。だが気をつけろ!こいつ、俺の知ってる奴と姿が全く違うんだ。弱点も違うかもしれない!」

正志の言葉に3人が驚く。

「何だと!?ちくしょう!」

「なんですって!?」

「何!?」

レオンが苛立ちながら須田恭也から託されたライフルを使い、G成体の頭部と巨大な目玉を狙撃した。銃弾が命中しG成体は怯んだ。

「何なんだよこの化け物!」

レオンがそう言いながら狙撃を続けた。クレアと光平も頭部と目玉を銃撃する。正志はG成体に接近して近距離から頭部にショットガンを乱射した。

「効いてるのか!?」

正志が言った。

G成体は撃たれたことで出血して怯んでいたが、平気な様子で再び立ち上がった。

「おい、傷が回復しているぞ!」

光平が言った。正志・クレア・レオンが見ると、4人の攻撃でダメージを受けていたG成体の傷がみるみるうちに回復していた。

(なんだよこいつ……。不完全なG成体に回復能力があるなんて、聞いたことも見たこともないぞ。しかも、あの姿も俺が知ってるゲームの『バイオ』に出てくるG成体とは全く違う。これも世界が崩壊していることが原因なのか!?)

正志は心の中でそんなことを考えながら、ふとある事実を思い出した。

「……そうだ!クレア硫酸弾を使うんだ、効果があるかもしれない!」

正志の言葉に頷いたクレアはグレネードランチャーに硫酸弾を装填し、G成体に向かって撃ち放った。

硫酸弾がG成体に直撃する。それと同時に濃硫酸がG成体に撒き散らされる。

硫酸弾の直撃でG成体は倒れたが、再び何事もなかったかのように立ち上がってきた。

「こいつ不死身かよ!?あれだけの攻撃を喰らってまだ平気なのか!?」

正志が唖然とする。

「どうすればいいの……?」

冷汗を掻きながら焦ったクレアが呟いた。

「ちっ」

腕を振り下ろしてきたG成体の攻撃をギリギリで交わし、正志はショットガンからH&K MP5に持ち替えて再び銃撃を開始した。

しかし、ダメージを与えても恐るべき回復力で蘇生し、G成体は再び襲い掛かってきた。

(こいつの頭、どこかで見覚えが……)

G成体の頭を見た光平は、心の中でそんなことを考えていた。光の戦士として異形の支配者達を滅ぼすための旅をしていた途中、このG成体に似た支配者と戦ったことを思い出したのだ。

「うっ、うわ!」

「クレア、逃げろ!」

G成体が壁の方にいるクレアに襲い掛かろうとしていた。正志が走って駆け寄るが間に合わない。

走ったG成体が両腕をクレアに向かって振り下ろして直撃しようとしたその時!

扉が開き、1人の男が姿を現した。

「お嬢さん、伏せてろ!」

その男がロケットランチャーを構えてクレアに言った。

「あんたらも壁の方にいろ!爆風に巻き込まれるぞ」

男が正志・レオン・光平に言った。3人は頷いて爆風に巻き込まれない壁に向かって走った。

「くらえ!」

男がG成体に向かってロケットランチャーを放った。

ロケットランチャーの銃弾がG成体に直撃し、凄まじい爆音が鳴り響いた。

「やったか!?」

正志が言った。

G成体は跡形も無く消滅した。

「見たか!化け物め」

男がG成体のいた所に唾を吐いて言った。

「危ない所を助けてくれてありがとう」

正志が男に礼を言った。男は何かを取り出しながらと言った。

「気にするな、マサシ」

「マサシではなくタダシだ。ていうか、俺のことを知ってるか?」

正志が尋ねると、男は頷いて言った。

「ああ、ちょっとだけどな。呼び間違えてすまない。オレの名前はエドワード・ジョンソン。エディって呼んでくれ。よろしく」

エディ・ジョンソンが言った。年齢は30代だろうか。エディは黒人で坊主に近い髪型。身長も光平よりも高く、筋肉質のがっしりした体だった。

「わかった。俺は西山正志、よろしくな。呼び方は好きにして構わないぜ」

正志が言うとエディは取り出した何かを渡しながら言った。

「じゃあ、マサシって呼ばせてもらうことにするよ。それと……これらを渡しとく。あんたたちが持ってる武器じゃ、この先は危険だぞ」

「マサシ」と呼ばれることに違和感と多少の怒りを感じながらも、正志はエディからそれらを受け取った。

「ああ、ありがとう。これはマインスロアー・ショットガン2丁・弾薬か」

正志はマインスロアーと弾薬のいくつかを受け取ると、ショットガンの2つと残りの弾薬をクレアとレオンに渡した。最初、正志はショットガンの1つを光平にも渡そうとしたが、「自分は充分な武器を持ってるからいらない」と断られたためクレアに渡した。

(ん?エディが着ている制服、どこかで見たことがあるような……。思い出した!『3』に登場したカルロス達が着ていたアンブレラの私設部隊UBCSの隊服か!)

「UBCSの隊員なのか?」

正志が尋ねるとエディは頷いた。

「ああ、そうさ」

エディが頷きながら答えた。

「UBCSってなんだ?」

レオンが言った。

「UBCS。正式名称はUmbrella Biohazard Countermeasure Service(アンブレラ バイオハザード対策部隊)。アンブレラ社が自社の開発するウイルスやクリーチャー等に依る災害・事件・事故や、アンブレラに対する企業テロに対応させる名目で組織され、問題が発生した場合に汚染地域に真っ先に派遣される部隊編制の大半を傭兵で占めた非正規部隊のことだ」

正志が丁寧に説明した。するとエディが感心した表情を見せた。

「その通り。開発途中の生物兵器がフィールドテストの最中に暴走し、研究員に多数の死傷者が出たり、施設や実験機材が破壊される事件が多々発生したため、制御不能へと陥った生物兵器を鎮圧するためにUBCSが設立されたってわけさ」

エディも丁寧に詳細な説明を付け加えた。

「市民救出が任務のはずのUBCS隊員がなぜ警察署に?」

正志が尋ねるとエディは足で地面を軽くコツコツと蹴りながら答えた。

「ああ。アンブレラの地下研究所にちょっと用があって、警察署から進入したほうが早いと思ったからさ。それで研究所に行こうとしたら銃声が聞こえたんで、ここに駆けつけたって訳だ」

エディが撃ち尽くしたロケットランチャーを地面に放り投げた。

「そうか……。とにかく助けてくれてありがとう」

正志が握手を求めた。エディは笑って彼の手を強く握った。

「助けてくれてありがとう、私はクレア・レッドフィールド」

「すまない、俺はレオン・ケネディ」

「ありがとな、俺は神田光平」

3人もそれぞれ挨拶と礼を言った。

「ああ、よろしくな。それじゃあオレは先に行くとするよ。気をつけろ、マサシ。この先は何があるかわからない。死ぬんじゃないぞ」

「ああ、あんたもな」

彼が言うと、正志は頷いて言った。

エディは手を振りながら部屋を出ていった。

「よし、俺達も先へ進もう。モタモタしている時間は無い」

正志の言葉に3人が頷き、4人は部屋を出た。
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