第17話 正志の過去、シオリの正体 |
作者:
邪神
2012年07月05日(木) 21時13分13秒公開
ID:ruLD3r9Qyus
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「到着したぞ」 光平が言うと、俺とクレアは彼の肩に触れていた手を離した。 「サンキュー」 光平に礼を言うと、俺は辺りを見渡した。そこはネオンの眩しい光がちらつく、ラクーンショッピング街だった。 『…正志。正志…くん』 ふと俺の頭に声が聞こえる。辺りを見回すと、クレアと光平の動きが止まっていた。景色も黒く染まっていく。 (須田が現れた時と同じか……。今度は誰が現れる?) 俺が心の中でそう呟いたちょうどその時、突如現れた銀色のオーロラから結晶の巫女…シオリが姿を現した。 「あんたか、一体何のようだ?試練ならクリアしたぜ」 俺が言うとシオリは少し笑って言った。 「わかってるわ。ちょっと正志…くんと話がしたかっただけ」 「何だよ?」 俺は少しイラついて返事をする。 「運命って皮肉なものね。もう二度と会えないはずの“愛していた人”と、こういった形で再会することになるなんて……」 シオリが苦笑しながらゆっくりと語った。 「愛していた人……?どういう意味だ?」 「まだ私のことがわからないの?……“正志ちゃん”」 俺が警戒しながら尋ねると、シオリは言った。 「!そ、その呼び方は……。まさかお前は!?」 俺はパスケースを取り出し、中に入っている写真と彼女をよく見比べた。その写真は俺のかつての恋人・大倉詩織が写っている。 「詩織か?君は……大倉詩織なのか?」 正志が彼女の肩にゆっくりと手を置いて尋ねる。 こっくりと、彼女は首をゆっくりと縦に振った。 大倉詩織は俺と同い年の幼馴染で、かつての恋人だった人物。しかし彼女は俺が12歳の頃、大人のくだらなく醜い争いがキッカケで起きた“ある事件”に巻き込まれてしまい、命を落とした。死者であるはずの彼女と会えるはずがないのだが……。 「今から10年前、“安永財閥”の1人息子で次期当主だった俺と仲良くしていた一般市民のお前を邪魔に思った俺の“本当の両親”が、部下に命令させてお前とお前の両親を誘拐した。それでお前は殺されたはずだった。どうやって生き返ったんだ?」 俺が言うと詩織は指をパチンと鳴らした。すると黒い上空に映像が流れ始めた。 「正志くんの言う通りよ。私はあなたの実の両親に殺された。でもね、ある人物が私を生き返らせてくれたの?」 上空に照らされている映像には俺が持っている写真と同じ、9歳の詩織が無残な姿となって写っていた。そこに一筋の光が宿り、白いワンピースを着た1人の女性が姿を現して詩織に声を掛けた。 『聞こえますか?私は今、あなたの心に話しかけている』 『・・・・・・お姉さんは誰?』 9歳の詩織が答える。 『私は結晶の巫女。命を落としたあなたを生き返らせた者です』 『生き返った?私が?』 『そうよ。目を開けてごらんなさい、動けるはずよ』 寝かせられていた9歳の詩織がゆっくりと起き上がる。 『なぜ私を生き返らせたの?』 『あなたに感激したからです』 『感激?』 『西山正志に対して一途で心の底から彼を愛するあなたに対してです。今の世の中で、心の底から真剣に人を愛することができる人間はそういませんから』 『ありがとう。それで?』 詩織が尋ねる。 『あなたに、私の跡を継いでほしいのです』 そこで映像は終わった。 「私は生き返ったけど、その代償として先代の巫女の座を継がなければならなくなった」 詩織が徐々に俺に近づいてきながら言った。 「なぜ継がないといけなかった?」 俺が尋ねると詩織は淡々として答えた。 「先代が不治の病にかかっていたからよ。それで巫女としての素質がある私が跡を継いだの」 「そうか……」 俺は言葉が続かなかった。 「正直言うとね、『バイオハザード』の並行世界を守る戦士にあなたを選ぶことになるとは思わなかった」 詩織の言葉に自嘲しながら俺は返事を返す。 「俺もこんな形でお前と再会するなんて思わなかったよ」 そう返すと詩織は顔を赤くして言った。 「ねえ、私のことまだ好き?」 「そ、それは……」 一瞬、なぜか俺の脳裏にクレアの顔がかすめた。俺は口ごもった。 「……わかった。この答えは次に会った時に聞くわ。じゃあね正志」 そう言い残すと、詩織はオーロラの向こうへと姿を消した。 すると、時間と景色が元に戻る。 (まさか詩織が生きていたなんて……。俺はどうしたらいいんだ?) 呆然としながら心の中でそう考えていると、誰かの声が聞こえてきた。 「正志!?おい、正志!」 光平が俺の肩を揺さぶって声を掛けてくる。 「大丈夫だ。心配かけてすまない」 俺は虚勢を張っていた。本当は心に衝撃が走っていて、前が見えていなかった。 「……そうか。大丈夫ならいい」 光平は俺を見て何かを見抜いたようだが、気遣ってくれたのだろう。それ以上は何も言わなかった。 一方、クレアは心配した様子で俺を見つめていた。 |
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